1カ月のインターン、給与は払うべき?
この秋で初めて学生インターンの受け入れをしようと考えています。1カ月程度、実際の業務に携わってもらう職場体験のような形を想定しているのですが、この場合、給与を支払う必要がありますか?
この質問に対して、社労士の吉田さんの答えは明確でした。
はい、この場合、給与を支払った方が良いと思います。
理由は、1カ月という期間の長さと、実際の業務に携わるという点にあります。
1カ月程度という期間、結構長いと思うんですけれども、実際の業務に携わってもらうというお話もあるので、そうなると他の従業員さんと同じような形で働いていると思うので、給与の支払いが必要という結論になりますね。
アシスタントの安田さんは、就活のときからインターンが何なのかよくわからなかったと打ち明けます。話は、そもそも企業がなぜ学生インターンを受け入れるのか、という点へ進みます。
企業がインターンを受け入れる2つの理由
吉田さんは、企業がインターンを受け入れる理由は大きく分けて2つだと話します。
戦力として実際の業務に携わってもらう
職場体験や見学を通じて採用につなげる
多くの会社は、この両方を兼ねているといいます。採用もしたいし、労働力も確保したい、という形です。
一石二鳥みたいな感じなんですね。
かつてインターンは珍しいものでしたが、今では中小零細企業でも受け入れが珍しくなくなったと吉田さんは説明します。
だからこそ、初めて受け入れる際に考えてほしいのは、なんで学生のインターンを受け入れるのかという点だと吉田さんは強調します。
この目的が、給与を払うべきかどうかの判断に直結するからです。
目的が「労働力」か「採用」かで払うべきかが変わる
目的によって、給与の扱いは分かれます。労働力の確保が目的なら、話はシンプルです。
労働力の確保を目的としているのであれば、それはシンプルにお金を払わなきゃいけないですねっていうことになるので。
この場合、労働基準法上の労働者 ── 使用者の指揮命令を受けて働き、その対価として賃金を受け取る人。この扱いになると最低賃金など労働基準法の保護が適用されるとして扱われ、最低賃金が適用されます。
一方、採用目的で、職場見学に近い形であれば、雇用契約ではないと判断され、賃金を払わなくてよいケースもあると吉田さんは補足します。
質問者のケースは1カ月と長期ですが、インターンには1日、1週間、3日など、さまざまな形があるとふたりは確認します。
雇用契約か業務委託か、悪用されやすい落とし穴
戦力として業務を行ってもらう場合、契約の形は雇用契約と業務委託契約の2つが考えられます。ここで吉田さんははっきりと立場を示します。
その理由は、業務委託契約の性質にあります。業務委託は、会社が細かい指示を出さず、仕事を引き受けた側が自分で考えて完了できる状態が前提だからです。
仕事を引き受けた側が、自分個人で考えて仕事を完了できる状態になっていないと、なかなか業務委託とは言えないと思うんですよ。
学生には職業経験がないため、会社から細かく指示を受けて働くのが普通です。そうなると労働基準法上の労働者に該当し、雇用契約を結ぶのが妥当だといいます。
吉田さんが業務委託の話をあえて出したのは、インターンを悪用する人がいるからです。
学生だから給料にあまり敏感じゃないだろう、つまり安く働いてもらえるだろうっていうことを目的にして、インターンを受け入れて。
雇用契約にすると最低賃金が適用されるため、形だけ業務委託契約にして、実際の労働時間に対して最低賃金以下の低い条件で働かせるケースがあると指摘します。
こうしたやり方は、場合によっては最低賃金違反として罰せられる可能性もあると吉田さんは注意を促します。
安田さんは、今はYouTubeなどでインターンの賃金に関する情報が出ているため、学生が知識を持っていれば訴えられる可能性もなくはない、と付け加えました。
ワンデーインターンでも「秘密保持契約」は必要
期間の長短だけで給与の有無が決まるわけではない、と吉田さんは前置きします。
1日だけのワンデーインターンでは、職場の見学や先輩社員とのディスカッションなど、労働にあたらない内容が多いため、給与を払わなくてよいケースが多いといいます。
ただし、給与が発生しないからといって何もしなくていいわけではありません。ここが重要な点です。
ワンデーでも会社の中に入っていただくということは、場合によっては会社の機密情報とか、隠さなきゃいけない情報を目にしたりアクセスしたりする可能性があるんですよ。
そのため、お金が発生しない場合であっても、秘密保持契約などは必要だと吉田さんは話します。
判断に迷ったら「雇用契約」が安全な理由
自社のインターンが労働にあたるのか、職場見学として給与を払わなくてよいのか。判断がつかない場合の指針も吉田さんは示します。
正直よくわからないという場合は、私はまあ雇用契約にしておけば。
雇用契約にしておけば、秘密保持の問題も含めて、会社がいろいろな指示を出せるようになるためです。何か起こる前に備えられる、という考え方です。
迷ったときに雇用契約を選んでおくことが、トラブルを未然に防ぐ現実的な選択だとまとめられました。
まとめ
インターンに給与を払うかどうかは、期間の長短ではなく「なぜ受け入れるのか」という目的で判断します。実際の業務に携わってもらうなら雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を払うのが基本です。迷ったときは雇用契約を選ぶのが安全だと吉田さんは話しています。
- インターン受け入れの目的は「労働力の確保」か「採用」に大きく分かれる
- 戦力として業務をしてもらうなら、最低賃金が適用される雇用契約にすべき
- 形だけの業務委託で低い条件で働かせると、最低賃金違反に問われる可能性がある
- 給与が発生しないワンデーインターンでも、秘密保持契約は結んでおく
- 労働か見学か判断に迷う場合は、雇用契約にしておくのが安全






