人事畑を歩んできたゲストは何者か
冒頭で吉田さんは、共通の知人からの紹介でコラボが実現したことに触れ、今回を楽しみにしていたと語ります。
まず森数さんが、これまでのキャリアの変遷を自己紹介という形で説明します。
新卒で転職エージェントのジェーシーリクルートメントに入社しまして、その後、大手やスタートアップで人事を経験しました。
前職ではフルリモート経営の株式会社キャスターで執行役員として複数のHR系事業や組織開発を監修していました。
現在は人材エージェントの株式会社ミライフに参画し、個人のキャリア戦略支援や企業の組織作りを進めていると話します。名古屋在住で、二児の母でもあるそうです。
キャリアの多くを人事、そしてHR領域の事業経営に費やしてきた点が、この回の議論の土台になっています。
経営者のキャリア相談が増えている理由
森数さんは毎日多くの個人からキャリア相談を受けており、転職も手段の一つとなった場合には転職支援まで担うと説明します。
一方で、近年は経営者からの相談も多いといいます。転職のためではなく、自分がどのロールを持ち続け、どのロールを他者に任せるかを考えるためだそうです。
自分自身が事業を伸ばしていく上で、キャリアの振り返りや棚卸しはすごく重要になってきます。
吉田さんは、経営者、特に小さな事業ではあらゆる業務を担わなければならないと応じます。
営業もマーケティングも業務設計もこなす必要があるものの、得意分野は一つか二つに限られる。だからこそ不得意な分野を担う人を雇う発想になる、と整理します。
この考え方は、個人のキャリアでも事業でも組織でも同じだと森数さんは話します。
社労士資格を「不利を埋める手段」として取った経緯
森数さんは事業会社での経験が長い一方で、社労士事務所に勤めた経験もあり、社労士の資格も持っています。
吉田さんが資格取得の理由を尋ねると、森数さんは自らを「キャリア戦略マニア」と表現しながら、当時の状況を語ります。
自分の置かれている環境を見た時に、不利な状況だと思ったんですね。小さい子供が二人いて、地方に住んでいて、どうやってキャリア戦略を描くか。その手段の一つとして社労士を取っておいた方がいいと判断しました。
二人目を妊娠していた30代半ばのタイミングで、このままではキャリアを選ぶ立場に回れないのではという不安があったと振り返ります。
めちゃめちゃポジティブに働くことはないだろうと踏んで、それを埋めるための手段として取りました。
吉田さんは、自身も頑張って取得した資格をこれほどサッと語れる点に感心したと述べます。
評価制度と給与制度は本当にリンクさせるべきか
ここから本題の給与設計に入ります。吉田さんは、評価制度と給与制度をリンクさせる際に気をつけることを尋ねます。
森数さんの返答は、そもそも論から始まりました。
完全にリンクさせる必要はあるんだっけ、というところと、賃金制度がないから作らなきゃ、評価制度がないから作らなきゃという感じで始めると、結局ちぐはぐしたことになってしまうと思うんです。
吉田さんは、この視点を意外だと感じたと率直に語ります。多くの経営者は、両者を「リンクさせなければいけないもの」と思い込んでいるからです。
評価制度と給与制度は、リンクさせなくても大丈夫なのでしょうか。
完全にリンクさせる必要はなく、別で考えてもよい、というのが森数さんの答えです。給料を決めるために面談や目標設定があるという構図になると、成長にフォーカスした行動が取りにくくなるためだと説明します。
給与は「誰のどんな行動に払うか」から考える
リンクを弱めるなら給与はどう決めるのか、という問いに対し、森数さんは自身が常に持っている問いを挙げます。
これは会社のメッセージそのものであり、まずここを言語化することから始めると、評価の制度や運用でカバーしやすくなると話します。
具体例として、売上を上げている人だけを評価してお金を払う会社なのか、そうでないのか、といった行動へのフォーカスが挙げられました。
わかりやすい例として、バリューや行動指針を掲げる会社が、それをより解像度の高い言葉にして評価制度へ落とし込むケースが多いと補足します。
吉田さんは、行動指針はふわっとしていて明日何をすればいいかわかりにくいことが多いと応じます。それを細かく言語化し、給与や評価の制度に組み込むイメージだと整理しました。
森数さんは、そうすることで会社のメッセージが評価やフィードバックの場面で従業員に伝わりやすくなると言います。
言ってることとやってることが違う会社だな、あっちではこう言ってるのにこれは評価されないんだな、というちぐはぐなことが起こりにくくなると思います。
リンクさせすぎると起こる弊害とは
吉田さんは、評価は面談で目標設定や振り返りを行い、給与は行動指針から落とし込んだ基準で判断する、という切り分けのイメージを確認します。
森数さんは、そうしたバッファーを持たせないと、評価面談が評価を決めるだけの場になってしまうと指摘します。
その結果、社員に「自分ができることを証明したい」という証明マインドのスイッチが入り、ストレッチした目標を立てにくくなるといいます。
評価を決めるためだけの面談だと、自分がやったプラスアルファのことは評価されない。それならやったら馬鹿らしいな、となってしまうんです。
だからこそ、完璧にリンクさせすぎると、成長より証明に意識が向いてしまうと森数さんは説明します。
吉田さんも、評価には答えがなく難しいと同意します。ずる賢い人はクリアしやすい目標を立て、出来の良くない人は目標設定そのものが難しいといった問題があるためです。
すべてが給与に反映される仕組みでは、公平な給与決定につながらないケースがあると吉田さんは受け止めます。
結局、見てくれてないなという不満が増大して、できる人から辞めていくことにつながりかねないと思います。
評価制度と給与制度はリンクさせすぎると、かえって弊害が起こるという気づきに、吉田さんは強く共感していました。
まとめ
この回は、評価制度と給与制度を必ずしも完全にリンクさせる必要はない、という視点を軸に進みました。給与は「誰のどんな行動にお金を払うか」から考え、評価は成長にフォーカスする。両者を切り分ける発想が、公平さと社員の成長の両立につながると語られています。
- 評価制度と給与制度は、完全にリンクさせなくてもよいという発想がある
- 給与設計はまず「誰のどんな行動にお金を払うか」という問いから始める
- 行動指針を解像度の高い言葉にして制度へ落とし込むと、会社のメッセージが伝わりやすくなる
- リンクさせすぎると証明マインドが強まり、ストレッチした目標を立てにくくなる
- 評価は他者比較のジャッジ、成長は自分との勝負として切り分ける視点が示された



