中途採用の給与、そもそもどう決める?
今回のテーマは、リスナーからの相談です。中途採用での給与の決め方にいつも悩むという声に対して、吉田さん自身も「悩んでいる」と率直に打ち明けるところから話が始まります。
はい、私も悩んでます。逆に聞きたいぐらいって言ったら、ちょっと怒られちゃうかもしれないんですけど。
とはいえ専門家として、決め方はきちんと整理されています。吉田さんは、中途採用の給与の決め方には大きく3つあると説明します。
1つ目は、転職する人の現在の給与、つまり前職の給与を元に決める方法です。前職踏襲の形で、同じ金額を出すから来てほしいと提示します。
2つ目は、受け入れる側である自社の給与テーブルに合わせて決める方法です。その人の実力が自社なら何等級に該当するかで、年収500万といった形に落とし込みます。
3つ目は、競合他社が出しているオファー金額に合わせる方法です。本人の現給与や自社テーブルは無視して、他社から年収600万のオファーが出ているなら、それを転職の際の給料にするという決め方です。
転職元の給与を踏襲する。同じ金額を出すから来てほしい、という提示
自社なら何等級かで年収を決める。人気企業はこれだけで決めることも
ただし現実は単純ではありません。自社テーブルだけで決められるのは人気のある会社で、それでもなかなか人は集まらないと吉田さんは言います。
自社の給与テーブルありつつも、転職してきた人でどうしても欲しいっていう場合は、テーブルから外れて前職の給与を参考にして決めている、実は、みたいなことは珍しくないです。
結論として、前職・自社の給与テーブル・競合のオファー金額の3つを満遍なく考慮して決めていくのが、現実的なやり方だと整理されます。
高すぎるオファーがなぜ社内を揉めさせるのか
給与を決めるとき、企業がその人をどれだけ欲しいかという熱望度も作用しそうだ、と安田さんは指摘します。
需要と供給のバランスもありますし、本人の熱量もあるので、どうしても来てくださいって言われたら、やっぱり立場上会社の方が弱くなっちゃうんで、相当な金額を積まないと来てもらえないですね。
ここで吉田さんが重要だと強調するのが、金額のバランスです。低すぎれば入社を決めてもらえず、辞退されてしまいます。一方で高すぎるオファーには、別の落とし穴があります。
高すぎる金額を出すと、社内の給与体系と矛盾が生じます。先に入社して頑張っている人よりも、今日入社してきた人の方が給料が高いという、アンバランスな状態が生まれてしまうのです。
揉めそうですね。
揉めるんですよ、これ本当に。時々給料明細の見せ合いをしたりするんで、なんで後から入ってきたあの人の方が高いんですか、みたいな話になるので。
だからこそ、あまりにも自社の給与体系と違う給与は出さない方がいい、と吉田さんは話します。後から説明できる範囲に収めることが、社内の納得感を守ることにつながります。
現給料も本音も、まず聞くところから
では具体的にどういう流れで進めるのがいいのか。これには正解がなく、会社ごとの決めの部分があると前置きした上で、吉田さんはありがちなパターンを紹介します。
まず候補者に、今の給料はいくらなのか、正直いくらになったら来てくれるのかを率直に聞きます。聞かないと始まらないからです。
さらに、転職において何を重視しているのかも確認します。単純にお金なのか、それともスキルの取得なのか。スキル重視の場合でも、どこまで年収ダウンを許容できるのかまで踏み込んで確認するのが第一ステップです。
次に、その人の能力を自社の給与テーブルに当てはめるといくらになるかを考えます。これが2ステップ目です。
最後に、競合他社がいる場合は、そのオファー金額がいくらかを確認します。ここで吉田さんは、やってはいけない決め方をはっきり示します。
自社テーブルで500万と考えている人に、競合が1000万を出しているからといって、1000万に合わせるのはやめた方がいいというのが吉田さんの見立てです。
そうですよね。
一方で、自社が500万で採用したい人に、競合が520万でオファーを出しているなら、少し背伸びして採用した方がいい時もある、と続けます。差がわずかなら調整の余地があるというわけです。
こうして駆け引きをしながら最終的に決めていくプロセスになりがちだ、と吉田さんはまとめます。
転職者は嘘をつかない、企業は誠実に
話は採用される側の視点に移ります。競合他社の金額や自分の希望額を聞かれたとき、転職する側は素直に答えた方がいいのか、と安田さんが尋ねます。
吉田さんの答えは、素直に答えた方がいい、というものです。そして絶対にやってはいけないのは嘘だと強調します。
前職で900万もらってますって言っていた人が入社してきて、全然仕事ができない。源泉徴収票を確認したんですか、って聞いたら、確認してない。蓋を開けてみたら全然違った、みたいな。
だから転職する側も給与を盛らない方がいい、と吉田さんは言います。ただし、正解があるわけではないとも付け加えます。
意見を全部素直に言えば「めんどくさそう」と思われて採用が決まらないこともあり、逆に言わなければ「何を考えているかわからない」と思われることもある。会社との相性の面もある、と安田さんも応じます。
私は正直に全部話す、特に採用担当の人とは腹を割って話せる会社に転職をした方がいいと思ってますね。
ここからは会社側が気をつけるべき点です。大前提として、求人票の給与内容で嘘をついてはいけない、と吉田さんは念を押します。
あからさまな嘘をつく会社はほとんどないものの、パッと見で給与が高そうに見える求人はある、というのが注意点です。
賞与6ヶ月分出しますって書いてあったら、すごくいい会社だなって思うじゃないですか。でも、実際は基本給の6ヶ月分しか出なくて、手当がちょこちょこついてて、基本給が実は10万しかない、とか。
普通の人は月給総額の6ヶ月分が賞与として出ると考えます。ところが基本給に手当をいくつも重ねる設計だと、実際の賞与額は大きく違ってきます。この設計自体は違法ではありませんが、応募者との間にギャップが生まれてしまいます。
だからこそ、盛りすぎた求人や誤解を招く求人はまずやめよう、というのが1つ目のポイントです。
求人票と入社条件のズレは、法律で明示が必要
交渉を経て入社が決まったら、雇用契約書をきちんと作り、どういう条件なのかを説明した上で入社してもらう。ここも重要だと吉田さんは話します。
その理由として挙げられるのが、入社の話がなくなることの重さです。今の会社に退職を伝えた後で「やっぱりやめましょうか」とはできないからこそ、条件をきちんと説明し、合意に至ることが欠かせません。
さらに、この誠実さは法律にも規定されています。求人票の労働条件と、実際に入社する時の労働条件が違う場合は、どこが変わったのかを明示しなければならない、という決まりがあると吉田さんは説明します。
もう法律で決まってるんですね。
よくある例として、正社員求人で応募した人を正社員では採用できず、契約社員なら入社させられるというケースが挙げられます。この場合も、求人票は正社員だったが入社時は契約社員になると、きちんと説明しなければなりません。
状況が変わること自体はあり得ます。だからこそ、説明責任を果たした上で入社を決めてもらうことが大事だという点で、2人の話は一致します。
アシスタント安田さんの最終回、番組が伝えてきたこと
この回をもって、アシスタントの安田さんの出演は最後となります。吉田さんは今後も番組を続けていく予定だと語ります。
一人でお話するのはちょっと不安なんですけど、続けていこうと思ってます。安田さんのおかげで、私、ラジオ素人が、すごくラジオ感のある、締まりのある給与設計相談室になりました。
安田さんも、この番組を通して視野が広がったと振り返ります。フリーランスやサラリーマン時代を通じて、従業員側の立場で物事を判断しがちだったといいます。
それが番組を通して、会社を存続させるための経営者側の目線や考え方を吉田さんから教わり、いろいろと腑に落ちたと話します。社労士という職業についても、深く知ることができたと振り返りました。
社労士って、人が生きていくために必要不可欠な心、時間、お金、こういったものを守るために働いてくださっている、とても意義のある正義感にあふれるお仕事だな、って感じました。
番組の締めくくりとして、2人は互いへの感謝を交わし、次回以降も給与設計相談室が続いていくことを伝えました。
まとめ
中途採用のオファー金額は、前職の給与・自社の給与テーブル・競合のオファーという3つを満遍なく考慮して決めるのが現実的です。高すぎる金額は社内のバランスを崩し、嘘や誤解を招く求人は入社後のギャップを生みます。誠実に条件を伝えることが、採用する側にとっても採用される側にとっても土台になります。
- 中途採用の給与は、前職・自社テーブル・競合オファーの3軸で総合的に判断する
- 競合が大きく上回るからと金額を丸ごと合わせるのは避け、差がわずかなら背伸びも検討する
- 高すぎるオファーは社内の給与体系と矛盾し、既存社員との間で揉める原因になる
- 転職者は給与を盛らず、企業は求人票で誤解を招く見せ方をしない
- 求人票と実際の労働条件が違う場合は、変更点を明示することが法律でも求められている





