なぜいま「2026年以降の法改正」をまとめて押さえるのか
この回のテーマは、2026年以降に予定されている労働法の法改正です。前編・後編の2回に分けて解説され、後編は年明け1回目の放送で扱われる予定です。
2026年は労働関係の法改正が目白押しで、それ以降も施行が決まっている、あるいは予定されているものがあると吉田さんは話します。この回は個別テーマを深掘りするのではなく、まず全体像を押さえる位置づけです。
2026年もなんか労働関係法改正が目白押しっていう感じで、それ以降も法改正が予定されているものもあるんで、そこを順番にダイジェスト的にお伝えする会になります。
個別テーマの深掘り回は後日別に予定されているとのことで、今回は5つの変更点を順番に取り上げていきます。
カスハラ対策の義務化 土下座を求める客への対応も会社の責任に
1つ目は、カスタマーハラスメント対策の義務化です。施行日はまだ正式に決まっていませんが、2026年中の施行が予定されており、吉田さんは秋ごろになるのではないかと予想しています。
吉田さんが挙げた例は、注文を受けたコーラの代わりにオレンジジュースを出してしまったといったミスに対し、謝れば済むはずのところで「土下座しろ」と求めるようなケースです。こうした行為がカスハラに該当します。
これに対し、会社として対策を講じることが義務化されます。吉田さんは、これまでもカスハラを放置していた場合は問題になり得たと説明します。
ものすごいボロクソスタッフが言われてるのを社長が知ってて黙認してたら、で、それで結果そのスタッフさんがメンタル不調になっちゃったとかになったら、それは当然今までもダメだったんです。
吉田さんによれば、これまでも放置すれば安全配慮義務違反 ── 会社が従業員の生命や健康を危険から守るよう配慮する義務。これを怠ると損害賠償責任などを問われることがあります。が成立し得ましたが、カスハラ対策の義務化で、より一層見過ごしてはいけない状況になったといいます。
概要としては、クレーム対応時のマニュアル策定と、従業員がカスハラを受けたときの相談窓口の設置が求められます。お客様がいる会社であれば、どこも関係するテーマだと吉田さんは話します。
就活セクハラの防止措置 応募者を守るルールが新たに義務化
2つ目は、就活セクハラの防止措置です。これも2026年中の施行が予定されており、施行日は未定ですが、吉田さんは秋口ごろではないかと予想しています。
ここでの「就活」は就職活動のことで、相続などの終活とは別の話だと吉田さんは補足します。就活セクハラのわかりやすい例として挙げられたのは、「うちの会社に就職させてあげるから今度デートに行こう」といった行為です。
防止措置として求められるのは、まず就業規則などへの明文化です。自社に応募してくれた方に対してセクハラをしてはいけない、という内容を書き込む必要が出てきます。
さらに、これまで社内向けに行ってきたセクハラ研修の対象を、応募者にも広げる必要があると吉田さんは説明します。
今までのセクハラ研修だと社内でセクハラしちゃいけないですよ、が多かったと思うんですけども、応募してくる方に対してもセクハラしちゃいけないですよっていうのが研修とかにも入れなきゃいけなくなるはずなんです。
吉田さんは、中小企業はむしろ人手不足で「こちらに来てください」という立場になりやすいと指摘します。一方で、大企業や人気の業種では気づかないうちに就活セクハラが起きている可能性があるため、注意が必要だと話しています。
障害者雇用の法定雇用率が上昇 対象は「37.5人以上」の時代へ
3つ目は、障害者雇用の法定雇用率の引き上げです。2026年7月施行で、2.5%から2.7%に上がります。
これにより、対象となる事業主の規模がついに40人を切ると吉田さんは説明します。2.5%の時代は40人以上の会社が障害者を1人雇用する必要がありましたが、今後は37.5人以上が対象になります。
これなんか時代も変わったなって思います。
吉田さんは、長く社労士をしてきた立場から、従来は障害者雇用を50人という節目とあわせて案内していたと振り返ります。産業医や衛生管理者 ── 労働者数が一定以上の事業場で選任が義務づけられる、職場の衛生管理を担う者。事業場ごとに選任します。の選任義務が1事業所50人以上で発生するため、この節目に障害者雇用も重ねて準備していたといいます。
しかし今回、対象が37.5人まで下がったことで、その扱いは変わると吉田さんは話します。
さすがにこの37.5ってなると、(障害者雇用を50人の節目と)一緒にするのはもう無理ですねって思いました。
吉田さんは、この差を事業計画の観点でも説明します。毎月1人が入社するようなハイペースな会社でも、年間の入社は12人、退職も考えれば純増は10人ほどだといいます。
50人と37.5人の差は12.5人あるため、これからは障害者雇用を、産業医や衛生管理者と同じ事業年度ではなく、1つ前や2つ前の事業年度で先に考える必要が出てくると吉田さんは話しています。
老齢厚生年金の減額基準が緩和 高齢者の「働き控え」を防ぐ狙い
4つ目は、老齢厚生年金の減額基準の緩和です。ここで関わるのが、在職老齢年金というルールだと吉田さんは説明します。
吉田さんによれば、賞与の割り戻しなど計算は本来複雑ですが、単純化すると、月々の賃金と老齢厚生年金の額を足した金額で判定されます。対象は老齢厚生年金を受け取る年代なので、少なくとも60歳以上になります。
これまでは、合計が50万円を超えた場合に一定の計算式で減額が始まり、たくさん稼いでいる人だと老齢厚生年金がゼロになることもありました。
ご高齢の方ですごく活躍している人って、じゃあ年金が減額されるぐらいだったら働くのやめようかなとか、働き控えしようかなみたいなことが現場で起こってました。
この働き控えに対応するため、今後は賃金と老齢厚生年金の合計が月62万円を超えた場合に減額が始まるルールに変わります。基準が上がることで、能力の高い高齢者が活躍しやすくなると吉田さんは話します。
施行は2026年4月です。4月から3月を事業年度とする会社なら、高齢者の活躍の仕方を考え直すきっかけになると吉田さんは指摘します。
ストレスチェックの義務が全事業場へ なぜ外部委託が前提になるのか
5つ目は、ストレスチェックの義務化の拡大です。現在は1事業所50人以上の会社が対象で、これは産業医や衛生管理者と同じラインだと吉田さんは説明します。
今後は対象が全事業場、つまりすべての会社に広がります。施行時期は明確には決まっていませんが、遅くとも2028年4月までになるとのことです。
今のところこの日から始まりますって決まってないんですけど、まあいつか始まるよねっていうのは頭の片隅に入れておかなきゃいけない。
実務上のアクションとして吉田さんが挙げるのは、外部業者の選定です。多くの会社は外部に委託しており、従業員に電子メールでストレスチェックが届き、回答後に分析結果が会社へ送られるサービスが一般的だと説明します。
なぜ自社だけで完結できないのか。吉田さんは、社長や人事権を持つ人が回答結果そのものを直接見られない仕組みだからだと説明します。
ストレスチェックで社長の存在がストレスですとかって正直に書いたら、それで飛ばされたとかになったら問題じゃないですか。
吉田さんは、上の立場の人が見られないデータを社内に持つのは望ましくないため、外部への委託を選ぶ会社が多いと話します。
今後の義務拡大に伴い、中小零細企業もストレスチェックが必要になります。吉田さんは、いま使っている労務系SaaS ── インターネット経由で利用するソフトウェアサービス。勤怠や給与など、労務管理の業務システムとして使われるものを指します。や労務関係のサービスに上乗せで提案されるケースが多いのではないかと予想し、そのまま追加してもらうのが楽だろうと話しています。
来年は労基法の大改正 前編のまとめと後編の予告
この回は、2025年最後の放送として、2026年以降の法改正をダイジェストで伝える内容でした。放送は190回近くに達しており、吉田さんはリスナーへの感謝を述べています。
後編にあたる新年1回目の放送では、労働基準法の大改正について解説する予定だと予告されています。
まとめ
2026年以降は、カスハラ対策や就活セクハラ防止措置の義務化、障害者雇用の法定雇用率の引き上げ、年金の減額基準の緩和、ストレスチェックの対象拡大と、労働法の改正が続きます。施行時期を踏まえ、会社ごとに事業計画や体制づくりを前倒しで考えておくことが求められます。
- カスハラ対策は2026年中に義務化され、マニュアル策定と相談窓口の設置が必要になる
- 就活セクハラ防止措置も2026年中に義務化され、就業規則への明文化や研修対象の拡大が求められる
- 障害者雇用の法定雇用率は2026年7月に2.7%へ上がり、対象は37.5人以上の会社に広がる
- 老齢厚生年金の減額基準は2026年4月に月62万円超へ緩和され、高齢者が働き続けやすくなる
- ストレスチェックは遅くとも2028年4月までに全事業場へ拡大され、外部委託が前提になる見込み






