この回の前提と「未確定」という注意点
この回は、社会保険労務士の吉田優一さんが労働基準法の大改正について解説する新年一発目の回です。冒頭でまず、大きな注意点が告げられます。
収録は年末に行われましたが、その後に法案の国会提出見送りがあったと説明されています。本編では2027年4月改正の予想が語られますが、吉田さん自身がそれもさすがにないだろうと補足しています。
なんと国会提出見送り、法案の国会提出見送りというのがありました。
(2027年4月改正の予想は)これはさすがにないかなと思います。なので参考程度に皆さん聞いていただけたらなと思います。
本編でも、この改正がすべて未確定の情報である点が繰り返し強調されます。社労士試験を目指す人は、頭が混乱するかもしれないため合格後に聞く方がよいかもしれない、とまで話されています。
全国展開の会社を悩ませる「事業場」という概念
最初に紹介されるのが、労働基準法の「事業場」という概念を見直す動きです。労基法は法人単位ではなく、事業所ごとにルールを適用する考え方をとっていると説明されます。
たとえば東京・名古屋・大阪に拠点がある会社では、それぞれの場所で就業規則を適用したり、労使協定書を作ったりする必要があります。この場所ごとの単位をやめようという話が出ているそうです。
吉田さんは、拠点が3つ程度ならそれほど苦ではないと言います。しかし、全国に400店舗や500店舗を展開するような会社では、場所ごとの対応がめちゃめちゃ大変だと指摘します。
中には例えば全国展開してて400店舗あるとか500店舗あるなんて会社があると思います。そういう会社めちゃめちゃ大変なんですよ。
現場の人は労務のルールがわからないことも多く、労使コミュニケーションも各拠点でやらなければならない。こうした負担を踏まえて改正の話が進んでいるようだ、とまとめられます。
連続48日勤務が可能な現状と、連続勤務の上限規制
1つ目の具体的な論点は、連続勤務の上限規制です。吉田さんはまず、現状の制度の異常さを指摘します。
労基法の原則では週に1回休ませる必要があります。しかし変形週休制や変形労働時間制などを組み合わせると、最大48日連続で働いても労基法違反にならない状態が作れてしまうといいます。
ただし吉田さんは、これは白か黒かでいえば当然グレーな処理であり、安全配慮義務違反という論点も残ると釘を刺します。今の制度でも絶対にやめてほしい、との立場です。
この状況を受けて、14日以上の連続勤務を禁止するルールができるのではないかと言われています。吉田さんはこれをまっとうな改正だと評価します。
なんか14日も連続勤務してたらなかなかね、パフォーマンスも上がってこないですよね、人間。
後出しの法定休日をやめる「特定義務」
次の論点は、法定休日の明確な特定義務です。法定休日とは、労働基準法で定められた週1回の休みのことで、日曜に設定している会社が多いと説明されます。
法定休日に働くと1.35倍の割増賃金が発生します。この賃金を節約したい会社は、あえて法定休日を決めないという対応をとることがあるといいます。
たとえば土日休みの会社で、土曜に出れば日曜が法定休日、日曜に出れば土曜が法定休日、という後出しの指定が今はできてしまう。それをやめようというルールです。
ここで吉田さんは、割増賃金の趣旨についてよくある誤解を正します。頑張ったから払うのではなく、使用者に長時間労働をさせないための仕組みだと説明します。
法定休日を明確に特定させることで、働かせるなら1.35倍を払い、嫌ならちゃんと休ませてほしい。そういうメッセージの改正だとまとめられます。
睡眠時間を守る「勤務間インターバル」の義務化
3つ目は勤務間インターバルの話です。原則11時間の勤務間インターバル制度が義務化されるのではないかと言われています。
吉田さんは具体例を挙げます。終電ギリギリの深夜0時まで働き、翌朝8時に出社するケースです。
この場合、帰宅が1時、食事や入浴を経て就寝が2時、翌朝8時に出社となると、睡眠時間を削らざるを得なくなると説明されます。
睡眠時間を削ると健康被害の確率が出てくるっていうようなデータがあるんで、ちゃんと休ませなきゃいけない、ちゃんと寝かさないといけないよなっていう
こうした健康管理の観点から、勤務間インターバルの義務化が予想されているとまとめられます。
有給の賃金計算と「つながらない権利」
4つ目は有給休暇賃金の算定方式の統一です。有給を取ったときの賃金の計算方法には、いくつかの種類があると説明されます。
通常の賃金方式なら、パートタイマーが8時間の日に有給を取れば時給×8時間分がもらえます。一方、平均賃金方式や標準報酬日額を使う計算もあります。
吉田さんによれば、平均賃金方式は通常の計算と比べてものすごく下がるため、結局不平等だといいます。これを統一していく考えで、真っ当な改正だと評価しています。
5つ目は、つながらない権利に関するガイドラインの策定です。諸外国では、退勤後に上司から連絡が来ないことが権利として確保されているそうです。
日本ではまずガイドラインの策定にとどまり、法律上の義務にはならないと吉田さんは見ています。就業時間外のチャットや電話について、つながらない権利のガイドラインができるそうです。
吉田さんは、業務にLINEやFacebook Messengerを使わせる会社はブラックかもしれないと述べます。ただしLINE WORKSなら問題ないとの見方も示しています。
バンバンバンバン就業時間外でもあの連絡が来るような会社っていうのは、だんだんだんだんみんな退職してって淘汰されるんじゃないかなと思います。
副業の残業計算と週44時間特例の見直し
6つ目は、副業・兼業者の割増賃金の計算ルールの見直しです。吉田さんは、労働時間は会社が違っても通算されるという原則を、多くの客が知らないと指摘します。
たとえば午前にA社で5時間、午後にB社で5時間働くと、後から働かせるB社側で1日8時間を超えます。この超えた2時間分に0.25を上乗せして払う必要があるといいます。
しかし、このルール通りに運用している会社はほとんどないと吉田さんは言います。厳密にやろうとすると、他社のタイムカードの提出が必要になるからです。
他社のタイムカードは機密情報にあたる可能性があり、通常は出してもらえません。そのため、正しく計算するのは物理的・原理的に難しいと説明されます。
自己申告でなんか使用者がそれでお金払わなきゃいけないのおかしいんじゃない?なんて論点もあるんです。
吉田さんは、一説では廃止されるだろうと見つつ、廃止されれば労働組合系の団体が黙っていないだろうとも述べ、行方は不透明だとしています。
最後の7つ目は、週44時間の特例廃止です。接客系の業種で、一事業所10名未満であれば法定労働時間が週44時間まで拡張される特例があると説明されます。
この特例と変形労働時間制を組み合わせると、たとえば月間180時間ほど働いても残業がつかない、といった運用が可能になるといいます。
これは、かつて業種ごとにあった法定労働時間を週40時間に収束させていく流れの中で生き残った特例だそうです。吉田さんは、さすがに廃止した方がいいと述べています。
改正が遅れそうな理由と、制度設計への備え
最後に吉田さんは全体を整理します。まず、労基法の改正はすべて未確定の情報であり、大改正と言われるほどの大改正感もない、と率直に述べます。
改正時期については、2026年の段階でも明確に決まっていないため、早くて2027年4月ごろではないかという「吉田予想」を示します。根拠はないと断っています。
さらに、総理大臣が変わり、ワークライフバランスに関する発言があった点も影響し、改正にはまだ時間がかかるのではないかと見ています。
予想される変更点は7つに整理されます。読者が全体像をつかめるよう、ここで一覧としてまとめられています。
- 事業場の概念が変わる
- 14日以上の連続勤務が禁止される
- 法定休日の明確な特定義務ができる
- 勤務間インターバル制度が義務化される
- 有給休暇の賃金算定方法が変わる
- つながらない権利のガイドラインができる
- 副業者の割増賃金の計算ルールが変わる
- 週44時間の特例が廃止される
吉田さんは、これらは変わるかもしれないという前提で、人事制度を改定する人は踏まえて作っておくとよいと助言します。新制度を始めた直後に作り直す事態を避けられるからです。
まとめ
この回は、2026年以降に予想される労基法の大改正について、すべて未確定という前提で7つの論点を整理する内容でした。連続勤務や勤務間インターバルなど、働き方の健康面に関わる項目が多く、制度設計への早めの備えが呼びかけられています。
- 紹介された改正論点はすべて未確定で、施行時期も決まっていない
- 連続勤務の上限(14日以上禁止)や勤務間インターバル11時間など、健康管理に関わる項目が中心
- 割増賃金は「頑張った報酬」ではなく、使用者に長時間労働をさせないための仕組み
- 副業者の労働時間通算や週44時間特例など、運用が難しい制度の見直しも論点に挙がっている
- 変わる前提で人事制度を設計しておくと、施行後の作り直しを避けやすい






