そもそも年次有給休暇とは何か
今回のテーマは、年次有給休暇の時間単位での取得です。質問箱に寄せられた、時間有給についての個別具体的な相談がきっかけになっています。
いただいた質問はXで引用する形でポストされているため、詳しい内容はそちらで確認できると案内されています。この回では、その前提となる時間単位有給の基本から話が進みます。
まず前提として、年次有給休暇とは何かが説明されます。吉田さんによれば、入社して半年したら10日付与され、その権利を使うと会社を合法的に休めるもの、というかなり大雑把な理解でよいとのことです。
1日単位だけでは使いづらい
問題は、この会社を休める権利が、原則の使い方だと使いづらい点にあると吉田さんは指摘します。大原則では、年次有給休暇は1日単位で消化することになっているためです。
丸一日仕事を忘れて休めるのは良いことです。ただ、これしか認められないと、丸一日休むか会社に出るかというゼロか100かの二択しかなくなり、大変な事態が起こり得ます。
丸一日ね、仕事を忘れて休めるっていうのはすごくいいことなんですけれども、これしか認めないと、丸一日休むか会社に出るか、そのゼロか100の二択しかないと大変だっていうことが起こり得ます。
例えば、半日や数時間だけ休みたい労働者が有給を使うとき、1日単位しか使えないと丸一日が休みになります。結果として仕事が終わらず休日出勤することになれば、おかしな話だと吉田さんは言います。
そこで労働者を守り、時間をうまく使ってもらうために、1日単位以外の取得も認められています。よくあるのが半日単位で、0.5日を消化する形です。
時間単位有給が生まれた背景
半日単位でも使えるならよいと思うかもしれませんが、意外と使いづらい場面があると吉田さんは続けます。
例えば、午前中に子どもを病院で診察してから、1時間だけ遅刻して出社したいという状況です。選択肢が半日か1日しかないと、午前は丸ごと休むことになり、家でぼーっと過ごすしかありません。結果として仕事が進まず残業になることもあり得ます。
そうした労働者の声を反映して出てきたのが、時間単位の有給制度です。これは1時間ごとに有給を取得できる制度だと説明されます。
例えば所定労働時間が8時間の人なら、1日休むことは8時間分休めることを意味します。その1日分の権利を8分割し、1時間ごとに取得できるようになったという仕組みです。
1日単位のみ
丸一日休むか出社かの二択しかない
半日単位を追加
午前・午後だけ休めるが1時間だけの調整には向かない
時間単位を追加
1日分の権利を分割し1時間ごとに取得できる
別の具体例として、社労士なら一度は受ける相談も紹介されます。有給を申請したスタッフが1時間だけ働いているが、どうすればいいかという相談です。
これについて吉田さんは、1時間働いた時点で有給は成立していないと回答すると言います。半日や時間単位の有給があれば、それ以外の部分を有給で消化した扱いにできるため、本人にとっても得になるとのことです。
導入には就業規則と労使協定が必要
ここからは、時間単位有給を導入する際の具体的な手順が説明されます。自社で使いたいと思ったら、就業規則の作成と労使協定書の作成が必要になります。
注意点は、就業規則だけでは認められないことです。半日有給は就業規則に定めればできますが、時間単位までやる場合は労使協定書の締結が必要になると吉田さんは強調します。
就業規則に定めれば導入できる
就業規則に加えて労使協定書の締結が必要
記載内容については、深掘りしてもあまり得るものはなく、決まりきった書き方があるとのことです。それをベースに、社労士などの専門家と相談しながら決めればよいとされています。
1年40時間という上限がある理由
時間単位の有給には制限があり、最大の制限は、1年で40時間分までしか使えない点だと説明されます。
これは法律で上限時間が定められているため、特約があっても、うちの会社だけは年間80時間使えるといったことはできません。
上限がある理由について、吉田さんは厚生労働省の考え方を挙げます。年次有給休暇は本来、丸一日休んでほしいというのが本音で、1日ゆっくり休んで健康管理の観点からリフレッシュしてほしいという趣旨だと言います。
もし時間単位の有給を無制限に認めると、付与された10日をすべて時間で消化するといったことも起こり得ます。それでは本来の趣旨から外れてしまうため、時間の条件があるという説明です。
管理が面倒だからまず勧めない
導入した方がいいかとお客さんに聞かれたとき、吉田さんはまず、管理が面倒なのでやめた方がいいと必ず伝えると言います。
特に中小企業で管理能力が低い会社では、時間単位の有給の残時間管理がとても大変だとのことです。
時間単位の有給なんですけど、管理が面倒なのでやめた方がいいですよっていうのは必ず言います。
理由として、中小企業では1日単位の残日数すら正確に把握していない会社が珍しくないことが挙げられます。そこにさらに、40時間のうち何時間使ったのかをスタッフ全員ごとに管理する必要が加わるためです。
そのため吉田さんは、避けた方が後で後悔しない、と社長に伝える言い方をしていると話します。
本当に管理するなら、勤怠システムに付属する管理ソフトを入れるか、Excelで残時間管理の仕組みを作り、一つひとつ何時間消化したかを追っていくことになります。
繰り越しをめぐるよくある誤解
時間単位の有給はあまり使われていないため、時々勘違いがあるとして、吉田さんは繰り越しに関する誤解を取り上げます。
前提として、有給の使っていない分は翌年に繰り越せます。初年度に10日付与されて3日しか使わなければ、残りの7日が次の年に繰り越せます。ただし繰り越しは1年だけです。
ここでよくある誤解が、時間単位で3時間繰り越されたから、次の年に使える時間単位の有給は43時間になるのではないか、という考え方です。しかしこれは間違いだと吉田さんは指摘します。
この誤解が生じる仮説として、10日付与されたうち5日は1日単位の有給、残りの5日分は時間単位で付与されている、と考えているのではないかと吉田さんは推測します。
しかし実際は違います。有給はあくまで、1日単位でも半日単位でも1時間単位でも使える会社があれば、それをどう使うかは労働者が自由に決められるものだ、というのが正しい理解です。
吉田さんはこの感覚をお金に例えます。どう使うかは労働者が自由に決められるという点を、両替のイメージで説明しています。
千円札をお小遣いでもらって、500円玉2枚に両替して使うのも自由じゃないですか。千円札をもらって、100円玉10枚に両替して100円ずつ使っていくのも自由じゃないですか、という感じです。
つまり、繰り越されるのはあくまで有給の日数であり、時間単位の枠がそのまま翌年に上乗せされるわけではない、という点に注意が必要だとまとめられています。
大企業で導入が増える時間単位有給
中小企業や零細企業ではあまり時間有給は使われないものの、大きな会社ではしっかり管理したいという事情から、導入する会社がどんどん増えていると吉田さんは述べます。
そのうえで、導入するならしっかり管理してほしいと呼びかけ、この回のまとめとしています。
まとめ
時間単位の年次有給休暇は、1日単位や半日単位では対応しきれない細かな休みを、労働者が柔軟に取れるようにする制度です。導入要件や上限、管理の負担、繰り越しの考え方まで押さえておくことが大切だと解説されました。
- 年次有給休暇は原則1日単位だが、半日単位や時間単位でも取得できる
- 時間単位有給の導入には、就業規則に加えて労使協定書の締結が必要
- 時間単位で使えるのは1年で40時間分までと法律で上限が定められている
- 残時間管理が煩雑なため、管理能力に不安のある会社にはまず勧めないとされる
- 繰り越されるのは有給の日数で、時間単位の枠がそのまま翌年に上乗せされるわけではない






