社員から「休ませてほしい」と言われたら会社はどうする?
吉田さんはまず、会社を運営していると社員から「ちょっと休ませてもらえませんか」と相談されることがあると切り出します。
その相談を受けたとき、会社としてどう対応すべきかが今回の出発点です。
吉田さんによると、通常の会社の就業規則には休職制度が定められています。社員の申し出た理由が就業規則の休職事由に該当すれば、会社は休職を認めなければならないとされています。
その休みたいですっていう理由が、その就業規則に書いてある休職事由、休職できる理由に該当すれば、会社としては休職を認めないといけないんですね。
休職を認めるケースとして多いのは、病気や怪我で仕事ができなくなった場合だと吉田さんは説明します。
体を動かす仕事で骨折し、治るまで3ヶ月ほど休みたいといった相談が例に挙げられています。
一方で、社労士として扱う中では怪我のケースはむしろ珍しいそうです。最近もっとも多いのはメンタル不調による休職だと話されています。
一番多いのは最近やっぱりメンタル不調で休ませてもらえませんか、働き過ぎたりとか、いろいろプライベートで辛いことがあったりとか。
吉田さんは、働きすぎが原因だと労災の論点も出てくると触れつつ、原因がはっきりしないまま気持ちが乗らなくなるケースもあると述べます。
そうした社員が医師の診察を受けてうつ病と診断され、休職を希望してくるのはよくあることだとしています。
休職制度は「必ず設けるもの」ではない
吉田さんは原理原則として、休職制度は会社が必ず設けなければならないものではないと解説します。
仮に休職制度がない会社で、病気で働けない社員が出た場合、休みの期間にもよるものの、突き詰めると最終的には解雇になると述べます。
その理由として吉田さんは、会社と労働者の契約は「会社が給料を払い、社員が仕事をする」という約束だと説明します。どちらか一方が履行されていなければ、契約は解約できるという考え方です。
病気で働けない状態が続けば、期間によっては最終的に解雇になりうる
一定期間は解雇せず、治療と復職を目指す猶予が与えられる
ただし吉田さんは、病気になったらすぐ解雇では社員が安心して働けないと指摘します。だからこそ会社は一定期間待つのだと説明します。
待つ期間は会社によって幅があり、短いところで3ヶ月や半年、大企業では2年ほど待つ場合もあると紹介されています。
吉田さんは、中小企業でも最低3ヶ月ほどは休職できる仕組みになっているのが一般的だとまとめます。社員から休職の申し出があれば、就業規則に基づいて休職させる必要があるのが大前提だとしています。
休職の種類は多いほどいい?中小企業が絞るべき理由
吉田さんは、就業規則によっては休職の種類がたくさん定められている場合があると注意を促します。ネット上のテンプレートを使うと、種類が多くなりがちだそうです。
病気休職のほかに、起訴休職や公職就任による休職といった制度が挙げられています。
吉田さんは、起訴休職も公職就任による休職もそれ自体は素晴らしいとしつつ、中小企業では設けない方がよいと考えを示します。
その理由として、地方議員になって2年休むと言われたらその間どうするのか、起訴休職ではいつ戻るのかわからない、といった実務上の問題を挙げています。
起訴休職だったら、その人っていつ戻ってくるのかわからないですよね。
結論として吉田さんは、スタートアップや伸び盛りの会社なら病気休職ぐらいを準備しておけば十分だと述べています。
休職の入り口でやること:診断書と就業規則どおりの手続き
ここから吉田さんは事務的な手続きの話に入ります。社員から病気で休みたいと相談があったら、まず診断書をもらうと説明します。
診断書で確認するのは、本当に病気なのか、何ヶ月ほど休む必要があるのか、どのような病気なのかといった点です。今後どう復職を目指すかを一緒に考えるために、専門家である医師の意見を聞くのが目的だとしています。
例えば1ヶ月ほどで治る病気なら、まず1ヶ月休んで療養に専念してもらい、復職を目指すという流れになります。
そのうえで吉田さんが非常に重要だと強調するのが、休職制度を適用するときは就業規則に書かれた手続き・方法のとおりに進めることです。
休職制度を適用する場合は、就業規則に書いてある手続き、方法、それ通りに進めてください。
例えば「1ヶ月間欠勤が続いたら休職を適用する」と就業規則にあるなら、そのとおりにする必要があります。2週間しか欠勤していないのに休職に入れると、手続き違反になると吉田さんは指摘します。
吉田さんによると、手続き違反があっても直ちに労働基準監督署から指導が入るわけではありません。ただし、後々揉める可能性があるといいます。
休職期間は3ヶ月や6ヶ月などと就業規則で設定されており、その間に復職できない場合は一般的に退職になります。
退職の局面では、辞めたくない、もう少しで治るといった社員側の思いと、これ以上は待てないという会社側の判断がぶつかり、見解の違いから揉めることがあると説明されています。
そのとき休職の入り方が就業規則どおりでないと、「そこがおかしい、だから自分はまだ在籍できる」と主張されかねません。だからこそ手続きどおりに進めるべきだと吉田さんは念を押します。
口約束の休職はなぜ危ない?「休職辞令」で決めておくこと
手続きどおりに進めるうえで非常に重要な書類として、吉田さんは休職辞令を挙げます。
吉田さんによると、大企業は当然作成している一方、中小企業では口約束で休職に入ってしまうことがあります。
口約束のままだと、後で「言った・言わない」で揉めるのが問題だと吉田さんは指摘します。
中小企業だと口約束で休職に入ったりするんですね。そうすると後で言った言わないで揉めるんですよ。
そこで休職辞令を1枚作り、いつからいつまで休職なのか、休職期間中の給与はどうなるのかを明記しておくよう勧めています。
さらに休職期間中も社会保険料はかかり続けるため、それを社員からどう会社に振り込んでもらい、最終的にどう精算するかも書類にまとめておくとよいとされています。
休職には復職やリハビリ勤務など論点が多く、今回は基礎に絞ったと吉田さんは締めくくっています。
まとめ
今回は「一人目の休職」をテーマに、社員から休職を申し出られたときの会社の対応の基礎が語られました。休職を認める前提と、種類の絞り込み、そして手続きの徹底という3点が要点です。
- 就業規則に休職制度がある以上、事由に該当する申し出があれば会社は休職を認める必要がある
- 休職制度がなければ突き詰めると解雇になりうるが、社員が安心して働けるよう一定期間待つのが休職制度の趣旨
- 中小企業やスタートアップは、起訴休職や公職休職まで設けず病気休職ぐらいに絞るのが無難
- 休職開始時は診断書を取り、就業規則の手続きどおりに進めないと後の退職局面で揉めやすい
- 口約束を避け、期間・給与・社会保険料の精算などを休職辞令に明記して休職に入るのが望ましい






