なぜ「廃止しても大丈夫だった」話をするのか
今回のテーマは「廃止撤廃しても何も起こらなかったこと」です。吉田さんは、サービスに付随した業務を引き受けすぎると生産性が下がると指摘します。
本来やらなくてもよい業務を抱え込むことで、社労士としての生産性が落ちてしまう。だからこそ、やめても問題なかった具体例を共有したいと吉田さんは話します。
前提として吉田さんが重視するのは、コア業務への特化です。代表もスタッフも、自分の持ち時間をどれだけ売上に直結する業務へ投下できるかが重要だと語ります。
コア業務に特化することには、2つのメリットがあると整理されます。スタッフは価値ある業務に従事できるやりがいを得られ、経営側は生産性が上がって儲かる会社になっていくという点です。
最初の一回、あえて会わないという選択
1つ目の廃止例は「ご挨拶」です。日常の「お疲れ様です」ではなく、顧問契約を開始するときの初回訪問・名刺交換・ご挨拶をやめたという話です。
士業の顧問契約では、最初に一度会って話すのが当たり前とされがちです。しかし吉田さんは、それをやめても何も問題は起こっていないと言います。
どうしても会いたいという顧客とは会うケースもありますが、基本的には会っていません。具体的には、ここ1年で契約した顧客の7割から8割はリアルで会ったことがないそうです。
道端で(顧客が)向こうから歩いてきたとしても、気づかない恐れもあるぐらいの感じですよね。
ずっとリモートでしか会っていない相手と直接会うと、意外と恥ずかしかったり、「この人こんなに背が高かったんだ」という驚きがあると、吉田さんは余談として話しています。
開業案内も年賀状も。節目の挨拶をすべてやめた
2つ目の廃止例は「節目のご挨拶」です。きっかけは、開業時に資金調達を支援したインクの若林さんとの面談でした。
開業のお知らせとして二つ折りの厚紙の案内を作るのは大変だと吉田さんがこぼしたところ、若林さんからやめることを勧められたといいます。
会社っていうのはやらないことを決めるのが重要だから(開業案内は)やめた方がいいですよ。別にFacebookで一言言えばいいんじゃないですか。
吉田さんはその通りにしました。開業案内を出さなくても、どこからも文句を言われることはなかったそうです。
その後、節目のご挨拶はことごとくやめています。移転案内はチャットで済ませ、お歳暮・お中元のお礼状の手書きもやめ、年賀状も出さなくなり、お歳暮は開業から一度も出していないといいます。
移転案内などは手間がかかると吉田さんは説明します。取引先が50社でも、契約関係にない関係先まで含めると100社、200社になり、送付には費用も時間もかかると言います。
さらに、名前や住所に間違いがあれば失礼になるため全件を点検する必要があり、やりだすとキリがない。だからこそ思い切ってやめた方がいいというのが吉田さんの考えです。
ただし1点、注意も添えています。こうした案内は顧客リストや紹介者リストの管理にはプラスになるため、挨拶を廃止するだけだとマイナスになりかねないという指摘です。
吉田さんはその代わりに、社外の人が自社とどういう関係性なのかをすべてリスト化して管理しているといいます。顧問先か、仕事を紹介してくれそうな人か、見込み客かといった区分です。
社会保険手続きでも「ここまではやらない」を決めた
コアである社会保険手続きのサービスの中でも、一部を廃止したと吉田さんは話します。まず取り上げるのが、健康保険の資格取得証明書の取得代行です。
この取得代行は社労士サービスの一部だと吉田さんは思っていました。しかし年金事務所へ行き、書類の発行を待って持ち帰り、郵送するという流れで、半日ほど潰れてしまう業務でした。
思い切ってやめた結果、何も変わらなかったと吉田さんは言います。
同様に、離職票を本人の自宅へ郵送する対応もやめました。以前は離職票を作ったら印刷して本人宅まで送るのが当たり前だと考えていたそうです。
現在はPDFの状態で顧客に納品するところまでとし、印刷と本人への自宅郵送は顧客側に任せる形に変えました。それでも問題は起こらなかったといいます。
給与明細も同様です。給与計算とは計算する業務であり、明細を印刷して袋に入れ納品するところまではサービス範囲に含めなくてよいはずだと吉田さんは考え直しました。
現在はWEB明細のみで対応していますが、今のところ何の問題も起きていないそうです。コアサービスの中でも一部の業務は削れると吉田さんは伝えます。
ZOOMも代表電話も。当たり前のツールを疑う
最後にツールの話です。当社は最初からツールを絞り込んでおり、給与計算はマネーフォワードで必ず行うなどのルールが決まっていると吉田さんは説明します。
最近廃止したのはZOOMです。コロナ禍で一気に広まったツールですが、オンライン会議機能以外は使っていなかったため、やめたといいます。
Google Workspaceを契約するとGoogle Meetが無料でついてくるため、それに統一しました。最初は慣れなかったと吉田さんは振り返ります。
ZOOMにあったノイズキャンセリングや、動画がなめらかに再生される品質が失われ、オンライン会議のレベルはやや下がったと感じたそうです。それでも話せれば顧客は文句を言わず、自身もそれでよいと考えているため、問題はなかったといいます。
当たり前のように使ってるツールも、実はこれ(ツール)は廃止できるんじゃないかって疑ってかかってみるっていうのは重要ですね。
開業直後から続けてきた取り組みとして、直通電話や代表電話もやめています。03で始まる番号は常に24時間対応のフロントデスクという受電代行へ転送し、そこで受電する仕組みです。
電話は集中力の低下や作業の中断、言った言わないの問題を招くため、できるだけ避けたいツールだと吉田さんは考えています。受電代行への置き換えで、働きやすい環境ができたと話します。
反発する顧客が離れると、会社は逆に強くなる
この回で吉田さんが伝えたかったのは、商慣行として続いてきたことが実は重要ではなかった場合が多い、という点です。廃止していくことで生産性の向上につながると言います。
もう1つ重要な点として、廃止すれば反発する顧客は必ず出てくると吉田さんは認めます。ただし、その反発する顧客はやがて離れていくといいます。
結果として、自社に合うお客さんだけで固められるようになるというのが吉田さんの主張です。経営哲学や理念に共感する顧客だけが残り、仕事が進みやすくなり、満足度も上がると語ります。
どういう社労士法人を作りたいか、どういう会社を作りたいかという哲学をもとに、何をやるか・やらないかを決めていく。それがいい会社を作る上での一番重要なポイントだと吉田さんは締めくくります。
まとめ
吉田さんは、初回の挨拶訪問、節目の挨拶、社会保険手続きの一部、給与明細の印刷、ZOOMや代表電話といった慣行を実際に廃止しても問題は起きなかったと語りました。何をやめるかは、自社の哲学を軸に判断すべきだという回でした。
- 付随業務を抱え込むと生産性が下がるため、コア業務への特化が重要
- 初回訪問や節目の挨拶、離職票の郵送、明細の印刷などは廃止しても問題なかった
- 挨拶をやめる代わりに、顧客や紹介者の関係性はリスト化して管理している
- 当たり前に使うツールも廃止できないか疑い、ZOOMや代表電話を置き換えた
- 廃止に反発する顧客は離れ、自社の理念に合う顧客だけが残って会社は強くなる






