5月病とは何か、そしてなぜこの話をするのか
今回のテーマは「5月病に備えて知っておきたいこと」です。収録は前月ですが、放送は5月ごろになるだろうとして、この話題が選ばれました。
5月病には正確な定義がないと吉田さんは話します。入社して1か月ほどでやる気が出なくなり、会社に行きたくなくなるのも5月病ですし、深刻なケースでは病名のつくメンタル不調も含まれると考えられます。
本題に入る前に、吉田さんは「メンタル不調は本当に病気だ」という点を強調します。
「気合が足りないだけ」と思っていた自分がうつ病になった
吉田さんがこの点をあえて話すのには理由があります。うつ病という言葉は浸透してきた一方で、「気合でなんとかなる」「あいつはやる気がないだけだ」という論調が一定数残っているからです。
それは間違っている、と吉田さんは言い切ります。かつて自分自身がそう考えていたからです。
正直な話、うつ病なんてならないでしょうとか、不眠症とかそんなになるわけないじゃんとか思ったんですよ。気合がないだけだと。
ところが吉田さん自身、10年以上前にうつ病と診断された経験があります。診断されて初めて「これがうつ病なんだ」と実感したと振り返ります。
当時は大学生でした。今から考えると、診断の1年ほど前から兆候はあったといいます。学校の授業に行けなくなり、行きたくないと感じるようになっていました。
最初は気合と根性でなんとかなると思うタイプだったため、自分の気合が足りないだけだと考えていたそうです。それでも朝は起きられませんでした。
だんだんひどくなり、本当に起きられなくなって病院に行ったところ、診断が下りました。一定期間しっかり休んだことで健康を取り戻し、それから10年以上、再発はしていないといいます。
休職制度は「解雇の先延ばし」だという原理原則
ここから経営者視点の本題に入ります。会社では、遅刻が増えたり元気がなさそうな社員が、ある日診断書を持ってきて「実はうつ病でした」と打ち明けるケースが時々あるといいます。
その場合、多くの会社には休職制度があり、一定期間会社を休んでもらって療養に専念してもらうのが、よくある最初の流れです。
では、そもそもなぜ休職制度があるのでしょうか。吉田さんは労働契約の原理原則から説明します。
労働契約とは、会社が給与を払い、社員が労働を提供するという約束です。がんなどの重い病気や、交通事故で体が動かなくなった場合など、プライベートな理由であっても労務提供ができなくなれば、それは債務不履行にあたります。
そのため、冷たい言い方をすれば、契約が解除され解雇になるというのが原理原則だと吉田さんは話します。
ただし、働けなくなったからすぐさようなら、という会社はほとんどありません。そこで休職制度を使って解雇を一定期間先延ばしにする仕組みが用意されています。
休職制度は社員にも会社にも得になる
休職制度があることで、社員は何かの理由で働けなくなってもすぐには辞めさせられないと感じ、安心して働けるようになります。
その結果、この会社で働き続けよう、この会社に応募しようという人が増えます。つまり人材採用の面でも、巡り巡って経営者側にプラスになると吉田さんは説明します。
では休職制度は絶対に必要なものなのでしょうか。結論として、病気休職については絶対に必要なものではないと吉田さんは述べます。業種業態によっては休職を一切認めない会社もありえます。
ただし休職制度がないと安心して働けないため、せめて病気休職は作ったほうがよいとしています。
休職制度をきちんと作るもう一つの利点は、復帰できない場合の線引きを平等にできることです。ここで吉田さんはAさんとBさんの例を挙げます。
同じようにメンタル不調になったのに、Aさんは6か月待ってもらい、Bさんは3か月で退職になったとしたら不公平です。
そこで「6か月まで休める」「3か月まで休める」といった明確な線引きを設け、全員が平等に休む権利を使えるようにする。それが休職制度のポイントだと吉田さんは話します。
休職は誰が決めるのか、医師の意見をどう扱うか
5月病でメンタル不調の診断書を持ってきた社員が現れたら、会社がまずやるべきことは休職制度の適用を検討することです。
ただし休職の判断は難しいと吉田さんは言います。そこでよくある勘違いのポイントとして、「休職は誰が決めるのか」という問いを立てます。
医師が決めるのか、従業員が「休職したい」と言って決めるのか、それとも会社が決めるのか。論点はいくつもあります。
結論として、休職させるかどうかを判断するのは会社です。ただし会社が完全に独断で判断できるわけではありません。
他の人の意見、特にお医者さんの意見を無視して休職制度を適用すると、大きなトラブルになります。
その理由は、裁判所や法律の前提として、医師の意見が非常に価値のあるものとされているからです。医師は資格商売の中でも特にグレードの高い職種で、その診断の判断には大きな重みがあると吉田さんは説明します。
そのため会社は、休職や復職をさせるかを決める際に、医師の意見を十分に加味する必要があります。
たとえば医師が休職と判断しているのに無理やり働かせたり、逆に医師が復職できると判断しているのに復職させないといった対応は、非常にリスクが高いと吉田さんは注意を促します。
それでも判断に迷う場面は多いため、医師の意見をもとに会社が考えつつ、顧問社労士や弁護士に相談して対応を決めていく流れになります。
診断書を受け取る
社員が突然、メンタル不調の診断書を持ってくる
休職制度の適用を検討
会社にある休職制度を使えるかを確認する
医師の意見を確認
医師が休職・復職についてどう言っているかを加味する
専門家に相談
判断に迷う場合は顧問社労士や弁護士に相談して決める
まとめ
5月病をきっかけに、休職制度の意味と判断の勘所が語られた回でした。メンタル不調は病気であり、休職制度は本来解雇になる場面を先延ばしにして社員を守る仕組みだと整理されています。診断書を持ってこられたら、まず休職制度の適用と医師の意見を確認し、適切に対応することが大切です。
- メンタル不調は本当の病気であり、気合や根性の問題ではない
- 休職制度は、働けなくなった社員をすぐ解雇せず、一定期間待つための仕組み
- 病気休職は法律上必須ではないが、社員の安心と採用のためにも設けたほうがよい
- 休職を判断するのは会社だが、医師の意見を無視するとトラブルになる
- 判断に迷う場合は、医師の意見をもとに顧問社労士や弁護士に相談する






