独立して初めて気づく「賞与のない世界」
冒頭で吉田さんは、独立開業して経営側に回ると賞与がなくなる寂しさに触れます。
7月や12月が来ても何もない、という実感から話は始まります。
7月、12月に賞与を受け取っている人の話を聞くと、やっぱり羨ましいなとは思います。
事前確定届出給与を使えば役員でも賞与を設定できますが、手続きが大変なので実際には設定していないと話されています。
賞与は必ず出さなければいけないのか
ある程度の規模の会社なら、正社員に夏と冬の賞与を支給するのが当たり前という感覚があります。
しかし法的には、会社が必ず賞与を出さなければいけないというルールはありません。
そのため「賞与がありません」という状態自体は違法ではないと説明されます。
具体例として、創業したての会社は賞与原資がないため出せないケースが挙げられます。
また、年俸制で決めたい、固定給にすべて反映させたいという考え方から、あえて賞与を設けない会社もあります。
大企業でも賞与を廃止して固定給に乗せる動きがあり、最近は増えてきている印象だと話されています。
なぜ月給を抑えて賞与に振るのか
吉田さんは、標準的な賞与設計がなぜそうなっているのかを整理します。
月給は生活のために支払うものと位置づけ、そこまで高くはしません。
一方で賞与は、業績や個人の頑張りに応じて支払うものと整理します。
その理由は、月給の減額には本人の同意が必要だからです。頑張ったスタッフに報いようと月給を上げると、経営が苦しくなったときに下げられず苦しくなります。
固定給を上げるっていうのは経営側からするとリスクがある行為だから避けたい。でも頑張ってくれたスタッフがいるから還元したいよねってなった時に活躍するのが賞与です。
賞与は前年に100万円出したからといって、翌年も必ず出す必要はありません。
だからこそ、業績や個人の成績に応じて上げ下げしやすいのが賞与のメリットだと説明されます。
生活のために支払う。減額には本人の同意が必要で、下げにくい
業績や個人の頑張りに応じて支払う。上げ下げがしやすく還元に使いやすい
安全策をとるなら、月給を抑えめにして賞与に年収のウエイトを寄せると経営は楽になります。
ただし、賞与の金額は外から見えづらいため、賞与に振りすぎると求人で不利になる点には注意が必要だと話されています。
7月と12月、査定期間のズレに注意
日本では慣習的に7月と12月に賞与を支給することが多く、夏の賞与、冬の賞与と呼ばれます。
ここで注意したいのは、7月と12月は等間隔ではないという点です。
7月から12月までは5か月ですが、12月から翌7月までは7か月あります。
7月の賞与は6月まで、12月の賞与は11月までを査定期間にすると、夏は7か月分、冬は5か月分と査定期間に差が出てしまうんです。
そのため査定期間は緻密に設計したほうがよいと話されます。
よくある例として、3月決算の会社では、4月から9月の分を12月に、10月から翌3月の分を7月に支給するケースが多いと紹介されます。
金額はどう決めるのか
金額の決定基準として、就業規則にまず出てくるのは会社の業績です。
次に個人の勤務成績、つまり頑張りが加わります。
流れとしては、まず業績を踏まえて全体の賞与原資を決めます。たとえば1000万円ほど利益が出そうなら、その30%の300万円を原資にするといった形です。
その原資を、勤務成績に応じて優秀な人に多く、そうでない人に少なく分配していきます。
一方でスモールビジネスの会社では、決定基準が定まっておらず、慣行として月給1か月分を夏冬に出すところもあります。
これ自体は悪いことではなく、労働者にとっては見通しが立ちやすいという利点があると話されています。
決定基準は先に開示しておく
吉田さんが強調するのは、どんな決定基準であっても、先に開示しておいたほうがよいという点です。
毎回1か月分を出している会社でも、それが固定的に出しているのか、たまたま業績が良くて出しているのかで意味が変わります。
業績と連動する考え方なら、業績が上がれば賞与も上がり、下がれば下がるはずです。ここを説明していないとトラブルになります。
無難なのは、業績と勤務成績を踏まえて決定するというタイプだと整理されます。
金額を下げると契約違反になる場合
金額は自由に設定できるため、前年より下がったからといって違法になることは非常に考えにくいと話されます。
ただし、契約違反になる可能性はゼロではありません。
たとえば年俸1000万円を14で割った額を月給とし、夏冬に1か月分ずつ出すと契約書に明示している場合です。
この場合に賞与を出さないと、雇用契約書や就業規則の内容にもよりますが、契約違反として争ったときに会社が負ける可能性があると説明されます。
年俸制ほど明確でなくても、毎年1か月分を出してきて慣行になっている場合は、労働者から暗黙の了解による契約が成立していると主張されるかもしれません。
そういう時はよりちゃんと説明して、減額の理由に納得してもらう、理解してもらうということが必要だと思います。
まとめ
賞与は法律上必ず出す必要はなく、金額も自由に設計できる一方、査定期間の設計や決定基準の開示、契約内容によっては減額がトラブルにつながることが整理されました。後編ではトラブル事例が紹介される予定です。
- 会社が賞与を必ず出す法的義務はなく、賞与なしでも違法ではない
- 月給は下げにくいため、還元は上げ下げしやすい賞与で行うのが基本設計
- 7月と12月は等間隔でないため、査定期間は緻密に設計する必要がある
- 決定基準は業績と勤務成績を踏まえるのが無難で、先に開示しておくとトラブルを防げる
- 年俸制や慣行で金額が約束されている場合、減額は契約違反になる可能性がある
