なぜ社労士がここまでITに振り切ったのか
この回は、リスナーからの質問に答える形で進みます。質問は、社労士として活躍する中で、どうしてここまでITに振り切ろうと思ったのか、何かきっかけがあったのか、というものです。
以前から気になっていたのですが、どうしてここまでITに振り切ろうと思ったんですか?何かきっかけがあったんでしょうか?
吉田さんは、きっかけはあると答え、それを順番に話していく回にすると宣言します。本人いわく「ほぼ自分語りの会」です。
いい人生から一転、大学中退で棒に振った20代
まず吉田さんは、自身の経歴を改めて紹介します。中高一貫校から慶應大学に進学するまでは、順調な人生だったと振り返ります。
ところが大学に進学したあと、やりたいことを見失ってしまいます。荒んだ時期を経て、道を外れ、犯罪はしていないものの大学を中退してしまったと話します。
いい大学に行ったんだから、もう黙って卒業して、そこそこの企業でおりこうにやってればよかったのに、なぜか大学を中退してしまうと。
日本では大学を中退すると理由を必ず聞かれるほどで、就職口がなかったと言います。20代は棒に振ってしまったと吉田さんは振り返ります。
転機は20代後半でした。社労士の資格を取り、この資格に出会ったことで人生を挽回できたと話します。
中学で最下位を取り続けた少年を変えた1冊
ここから吉田さんは、自分の思考方法が固まった原体験として大学受験の話を始めます。その前提として、実は中高時代は問題のない人生どころか「ダメ人間」だったと打ち明けます。
中学では40人ほどのクラスで、毎回40番や42番といった最下位を取り続けていたと言います。原因は、中学受験にまつわる母親の言葉を子どもながらに真に受けたことでした。
母親が、中学受験すれば英語勉強しなくていいから、とにかくあなた中学受験しなさいみたいなことを言ったんですけど、小学生の私はそれを信じてですね、中学受験すれば勉強しなくていいんだって本気で思い込んだ。
入学後に勉強しなかった結果、最下位になります。しかも吉田さんは帰宅部だったため、部活で疲れているわけでもなく、先生に呼び出されて怒られていたと話します。
そんな吉田さんを変えたのが1冊の本でした。数学の細野真宏先生の、わかりにくい内容をわかりやすく解説する本に出会ったのです。
この本をきっかけに、吉田さんは勉強の面白さに取り憑かれ、ひたすら勉強するようになります。そこで、正しいやり方をやれば成果が出るということに気づいたと言います。
物理の「MA=F」に見た、一つの原理で世界を説明する快感
大学受験を通じた出会いは、細野先生の本だけではありませんでした。吉田さんはその後、河合塾に通います。
そこで出会ったのが物理の園田先生でした。ニュートン物理学の講義がとても面白く、世の中の現象を一つの数式で説明できるという世界観に触れたと話します。
世の中というのはMA=Fという数式で全部現象を解き明かせるんだみたいな世界観なんですよ。一つのことで世の中を全部説明できるんだみたいな世界観が世の中にあるってことを知って、こういう考え方美しいなと思ったんです。
さらに東大卒の野尻先生の講義では、それまでわからなかった数学的記号法が頭にすっと入ってきたと言います。こうした受験期の学びが、吉田さんの思考の土台になりました。
これらの経験から吉田さんが得た原体験は、一つの原理原則から世の中を全部説明していくことは興奮する面白いことだ、という感覚でした。
受験の原体験と労務システムが「そっくり」だった理由
吉田さんは、この受験の原体験が、社労士の仕事で使うITツールとよく似ていると説明します。具体的には、勤怠や給与、人事情報を扱うクラウドツールの連携です。
たとえばSmartHRを上流に置き、そこに一つのデータを格納して、勤怠のKing of Timeやマネーフォワードクラウド給与へと流していく、という構成です。
最初にデータが一つ入力されれば、あとは全部連携して正しい成果物が出来上がる。吉田さんは、これを物理の「MA=F」で世の中の現象を説明できることになぞらえます。
勤務社労士時代の「手入力地獄」と、勉強会で見た美しい方法
もう一つの原体験は、35歳ごろの出来事でした。吉田さんは、とあるベンダーのクラウドツールの勉強会に参加します。
そこで登壇していたのが、当時ヒトカラメディアのCFOをされていたという大津さんでした。大津さんは、SmartHRを上流に持ってきて、各SaaSに個人情報を流すという仕組みをプレゼンしていました。
一方、当時勤務社労士だった吉田さんの業務フローは、まったく違うものでした。集めたスタッフの個人情報を、給与計算ソフト、社保手続きのソフト、管理台帳へと、それぞれ手入力していく流れです。
この手入力を連続する業務フローでは、よく見ると入力先ごとにデータが食い違うことがあり、クレームにつながってつらい思いをしていたと吉田さんは振り返ります。
これに対し、勉強会で聞いた方法はSmartHRから全部流していくため、転記のときに手入力が発生せず、基本的にミスが起きないものでした。
こんな世の中に美しい方法があるんだなと思って、私はこれを独立したら絶対にやるんだって思いで独立しました。
集めた個人情報を給与ソフト・社保手続きソフト・管理台帳へそれぞれ手入力。入力先ごとにデータが食い違い、クレームになることがあった
SmartHRを上流に置き各SaaSへデータを流す。転記時の手入力が発生せず、基本的にミスが起きない
2つの原体験が「ONE HEARTがITにこだわる理由」になった
吉田さんは、ここまでの話を2つの原体験として整理します。一つは大学受験で物理に出会い、一つの法則で世の中を解明していくことに触れたこと。もう一つは、勤務社労士時代の勉強会で、SmartHRを上流に置いてクラウドツールをAPIでつなぐ価値を学んだことです。
大学受験の原体験
物理のMA=Fなど、一つの原理から世の中を全部説明する面白さを知る
勤務社労士時代
個人情報を各ソフトに手入力する業務フローで、データの食い違いに苦しむ
ベンダーの勉強会
SmartHRを上流に置きSaaSをつなぐ方法に出会い、独立したら絶対にやると決意
ONE HEART設立後
スタッフと一緒に、ITにこだわる労務のあり方を実践
独立してONE HEARTを立ち上げたあと、スタッフと一緒にやっていく中で、この方法を絶対にやりたいと思った。それが社会保険労務士法人ONE HEARTがITにこだわる理由だと吉田さんは締めくくります。
まとめ
今回は、社労士の吉田優一さんが、自身のITへのこだわりの源を2つの原体験として振り返る回でした。大学受験で得た「一つの原理から全部を説明する面白さ」と、勤務社労士時代に見た「手入力をなくす美しい仕組み」が、ONE HEARTのITへのこだわりにつながっています。
- 質問は「なぜここまでITに振り切ったのか」。吉田さんは2つの原体験をたどって答えた
- 中高は最下位続きだったが、細野真宏の本で「正しいやり方をやれば成果が出る」と気づいた
- 物理のMA=Fに、一つの原理から世の中を全部説明する面白さを感じたのが1つ目の原体験
- 勤務社労士時代の手入力フローの苦労と、SmartHRを上流に置く方法との出会いが2つ目の原体験
- 一つのデータからすべてを連携させる発想が、受験の原体験とITツールで一致している






