記念すべき150回、リスナーからの相談は「資格以外に何が必要か」
今回の放送は、社労士・吉田優一さんが続けてきたポッドキャストの150回目にあたります。特別な企画があるわけではなく、いつも通りリスナーからの質問に答える回として進められました。
2年以上前に始めたこのポッドキャストもついに150回まで来ました。今も聞いてくれている皆さん、ありがとうございます。
寄せられた相談は、吉田さんが出演したYouTube動画を見たリスナーからのものです。動画では、無職期間を経て十数年で東京のITに強い社労士法人の代表になった経歴や、社労士の資格に出会えてよかったという話がされていました。
相談者が知りたかったのは、資格そのものではなく、その周辺にあるものでした。精神面、これまでの経験、知識、テクニック、習慣など、資格以外で大事なことは何かという問いです。
精神面やこれまでの経験、知識、テクニック、習慣など、資格やそれに関すること以外で大事なことはありますか。私もいつか先生のようにかっこよく活躍できる姿を目指したいです。
吉田さんは、相談者があげた「経験・精神面・知識・テクニック」の4つに沿って、一つずつ回答していく形で話を進めます。
経験は「実務経験」と「営業経験」があると独立後に有利
最初のテーマは経験です。吉田さんは、実務経験と営業経験は、あったら独立後にものすごく有利になると話します。
資格を取って実務経験も営業経験もほとんどない中で開業し、成功してしまう「即独」の人もいます。吉田さんはそうした人を超人だと評しつつ、自身は実務経験ありで営業経験なしで独立したと明かします。
実務経験がなぜ便利かというと、商談の場面で効いてくるからです。商談相手は、その社労士が本当に頼りになる人かどうかを確かめたくて、自分の悩みを話してきます。
その悩みに対して、過去の経験や裁判例を踏まえた対応をその場でスラスラ言えると、頼りがいのある社労士だと受け取られ、商談が成立しやすくなると吉田さんは説明します。
実務経験は、事務所が発展してスタッフを雇う場面でも役立ちます。スタッフから処理方法を質問されたときにすぐ答えられれば、上司としてもやりやすいというわけです。
一方の営業経験について、吉田さんは自身にはない状態で独立したと率直に語ります。そのぶんを補うために、本や講座で学んだといいます。
営業では、青木毅さんの「質問型営業」という本とポッドキャストを繰り返し読み、聞いて身につけたと話します。
社労士に限定した学びとしては、TACの小林先生による実務講座が役に立ったといいます。受注後の実務が中心ながら、営業のマインドもたびたび語られていた点が参考になったそうです。
具体例として吉田さんがあげたのは、スポットで離職票を受け取ったときの心構えです。ただ処理するのではなく、次につなげる意識を持てという教えでした。
(離職票を)もらった時には賃金台帳とか出勤簿とかがあるから、それを基に改善提案とか問題点を指摘して、そこから顧問契約につなげるぐらいの意識がないとダメですよ。
繊細さだけでは折れる。ミスと向き合う「鈍感力」が要る
2つ目のテーマは精神面です。吉田さんは、このエピソードのタイトルにもなった繊細さと鈍感力は、両方あった方がいいと話します。
社労士の仕事では、繊細さがあらゆる場面で必要になります。給与計算は細かい作業の連続で、そこをやりきる力が欠かせません。
お客さんとのコミュニケーションでも繊細さが求められます。その逆をガサツと表現しつつ、そうした姿勢では相手の気持ちを汲み取れず、うまくやり取りできないと吉田さんは指摘します。
ただし、とにかく繊細であればいいわけではありません。ここで鈍感力が登場します。
社労士の仕事は絶対にミスをしてはいけない仕事ですが、それでもミスは必ず起きると吉田さんは言います。給与計算やその他の成果物で、どんな人でも必ずミスをするという前提です。
問題は、その後です。反省すべきところは反省しつつも、繊細すぎるとそこでメンタル不調に陥ってしまう危険があります。
実際に士業で、メンタル不調で開業できなくなったっていう人はいらっしゃいました。
この繊細さと鈍感力のバランスは、開業社労士だけの話ではありません。吉田さんは、勤務社労士でも同じだと付け加えます。
むしろ勤務社労士の方が、お客さんから偉そうに言われる場面もあるといいます。開業の先生には敬語なのに、スタッフにはタメ口で話してくるようなお客さんもいるためです。
そうした相手に負けないメンタルを保つには鈍感力が必要で、勤務でも開業でも社労士には欠かせないと吉田さんはまとめます。
給与計算の細かい作業をやりきり、お客さんの気持ちを汲み取ってコミュニケーションするために必要
必ず起きるミスや、マナーの悪い相手に折れず、反省しつつ切り替えていくために必要
マーケティングの知識が「誰に何を伝えるか」を鍛える
3つ目のテーマは知識です。吉田さんは、マーケティングの知識がすごく役に立ったと話します。
マーケティング部門にいたわけではありませんが、そこで学んだのは、メッセージが多すぎると広告で伝わらない、誰に何を伝えるのかを絞らないと伝わらない、という考え方でした。
この発想は社労士の実務にも効いてきます。お客さんとコミュニケーションするときにも、何を伝えたいのかを整理して話せるようになったといいます。
たとえば就業規則も、正社員就業規則なら正社員に服務規律を守らせたいという狙いがあり、誰に何をという点でマーケティングに近い考え方だと吉田さんは説明します。
文章を作るにしても労務相談に答えるにしても、誰に何をしてほしいからこれを作るのかを意識すると、アウトプットが洗練されてくるといいます。
相手が社長か中間管理職か一般職かでコミュニケーションを変える
4つ目のテーマはテクニックです。吉田さんは、勤務社労士時代に学んだこととして、相手によってコミュニケーションを変えることをあげます。
社労士のお客さんは大きく3パターンに分けられると吉田さんは言います。社長か、中間管理職か、一般職の方か、です。
社長への提案では、事業が発展するという切り口が受けます。たとえば未払い賃金がある場合、法律違反だからやめた方がいいと言うのではなく、事業への影響として伝えるのが効果的だといいます。
未払い賃金があるからスタッフさんが辞めちゃうかもしれない、採用力が低くなるかもしれない、だから事業発展しないんです。だからここ直しましょうよって言うと、なるほどってなります。
中間管理職の相手には、別の勘所があります。吉田さんによれば、中間管理職の人が一番怖いのは、上長から怒られることです。
そのため、なぜこの処理にしたのかと上司から問い詰められたときに反論できる材料を渡してあげると、とても喜ばれるといいます。社労士が力になってくれていると感じてもらえる場面です。
最後は一般職の方です。社労士と継続的にやり取りする担当者には女性が多いと吉田さんは話し、経理総務を兼任するような担当者へのある心がけを紹介します。
その理由は、給料計算を任される担当者の事情にあります。吉田さんの経験では、結婚して子どもがいて落ち着いた女性に自社の給料を任せているケースが多いといいます。
そうした担当者は残業ができなかったり、一定の時間になったら保育園にお迎えに行かなければならなかったりします。夕方に重い話を持っていくと残業につながりかねないため、重要な話をどこで伝えるかに気を遣っているのです。
| 相手 | 相手の関心・事情 | 効くアプローチ |
|---|---|---|
| 社長 | 事業が発展するかどうか | 法律違反ではなく事業への影響として提案する |
| 中間管理職 | 上長から怒られたくない | 上司に問い詰められたとき反論できる材料を渡す |
| 一般職の担当者 | 残業や保育園のお迎えなど時間の制約 | 夕方に重い話を持っていかない |
落ち込みすぎず前向きに。繊細さと鈍感力の両立が核心
熱量高く話すうちに10分が過ぎ、吉田さんは相談への回答をここで締めくくります。経験、精神面、知識、テクニックと語ってきた中で、一番伝えたいことを最後に置きました。
それは、このエピソードのタイトルにもなった、繊細さと鈍感力の両方が要るという一点です。どちらか一方に偏らず、両立させることが核心だと吉田さんは強調します。
繊細さと鈍感力、両方ないといけないと思うので、あまり落ち込まずに前向きにやってった方がいいと思います。
まとめ
社労士として活躍するには資格だけでなく、経験、精神面、知識、テクニックが効いてくると吉田さんは語りました。中でも繊細さと鈍感力を両立させ、落ち込みすぎず前向きに続けることが最も伝えたい点でした。
- 実務経験と営業経験があると、商談やスタッフ対応で独立後に有利になる
- 繊細さは仕事に不可欠だが、必ず起きるミスに折れないための鈍感力も欠かせない
- マーケティングで学ぶ「誰に何を伝えるか」の発想が、文章や労務相談の質を高める
- 相手が社長か中間管理職か一般職かで、効くコミュニケーションは変わる
- 一番の核心は、繊細さと鈍感力を両立させ、前向きに続けること






