移動時間が長い、というスタッフの不満はどこから来るのか
この回は、リスナーからの1つの質問から始まります。
移動時間の長いスタッフから不満の声が上がっています。どうすればいいですか?
吉田さんはまず、この「移動時間」が仕事の前後の時間を指しているのではないかと読み解きます。
仕事中の移動であれば給料は支払われているはずで、むしろ移動のほうが楽なくらいなので、不満にはならないだろうと話します。
一方で、仕事が始まる前や終わった後に長い移動時間があると、事実上プライベートの時間が削られてしまいます。
プライベートの時間が事実上侵食されてるじゃないか。
トータルでの拘束時間が長くなることが、不満の正体だと考えられます。
そもそも移動時間は、どこまで労働時間になるのか
本題に入る前に、吉田さんは移動時間がどこまで労働時間になるのかを整理します。まず出てくるのが通勤時間です。
結論として、通勤時間は基本的に労働時間にはならないと説明されています。
たとえば東京本社に、東京から短時間で通う人もいれば、神奈川の南の方から長時間かけて通う人もいます。それでも通勤時間は労働時間にならないため、給与としては基本的に変わらないという整理になります。
次に営業職などに多い、直行・直帰の移動時間です。これも基本的には労働時間にならないとされています。
自宅が神奈川で、朝そこから埼玉の取引先へ直行する場合、その移動時間は労働時間としてカウントされません。
3つ目が出張先への移動時間です。これも労働時間にはなりません。東京から福岡へ出張する際に前日から前乗りしても、その移動は基本的に労働時間にならないという考え方です。
これらに共通する理由はシンプルです。
その移動時間に何をしててもいいから、自由だからっていうのが簡単な説明になります。
ただし、移動時間中に会議をしていたり、電話でお客さんに応対していたりすれば、それは労働時間になるので注意が必要だと補足されています。
通勤時間、直行・直帰、出張先への前乗りなどの移動時間。移動中に何をしても自由なため
移動中に会議や電話応対をしている場合、および業務時間中の拠点間移動
相談への回答は「日当や手当で不公平感をなくす」
ここで相談のケースに戻ります。通勤や直行直帰、出張先への移動時間が長いスタッフから不満が上がっている、という状況です。
これらの移動時間は労働時間にならないため、残業代を支払うのはおかしいと吉田さんは整理します。
とはいえ、金銭的な報酬がゼロというのもかわいそうです。そこで一般的にとられるのが、出張日当や一定額の手当です。
一回三千円とか一回五千円とか、そういったものをつけて、そこで不満を解消していくケースが多いです。
ただし、ここで1つ注意点があります。移動時間が何でも労働時間にならないわけではありません。
業務時間中の移動に関しては労働時間になる可能性が非常に高いので、そこの点はご注意ください。
たとえば朝に東京本店へ出社し、メールチェックや同僚との打ち合わせをしてから神奈川の支店へ移動する場合、この移動は労働時間と判定されます。
判断に迷うケースは多いため、会社の独断で労働時間かどうかを決めつけず、専門家に相談したほうがよいと話されています。
不公平感を放置すると、人は職場を去っていく
吉田さんは、労働時間にならない場合でも、身体的な負荷や時間的な拘束が大きいスタッフには、何らかの金銭的な報酬で不公平感を取り除くことが一般的だと述べます。
これを放置すると、長期的にどうなるのか。
朝俺だけ早起きしてるなとか、私だけ帰るの遅いなってなると、不公平だよね、この職場ってなって、職場を去る人も出てくるかもしれない。
だからこそ、その点には配慮したほうがよいと話されています。
「全部労働時間にすればいい」がおすすめできない理由
こうした議論を経営者と細かく続けていると、気の短い方の中には面倒に感じる人もいるといいます。
もうこんな議論するんだったら面倒くさいなと。もう全部移動時間、労働時間にしちゃっていいですよ。うち儲かってるし、金払いますから。
しかし吉田さんは、社労士としてこれをおすすめしないと言い切ります。移動時間を労働時間だと認めてしまうことになるからです。
1つ目の理由は、割増賃金、つまり残業代を払わなければならなくなることです。お金を多く払うこと自体は止めないとしつつ、見落としがちな点があると指摘します。
それが3協定です。会社はこの協定を結び、その範囲内でしか残業をさせられません。
移動時間をどんどん労働時間として整理していくと、月45時間、年間360時間といった上限をすぐに使い切ってしまうと吉田さんは説明します。
その結果、本当に会社がピンチのときに時間外労働を命じられなかったり、残り時間を気にしながら命じたりする事態になりかねません。
だからこそ、お金があるからといって移動時間をすべて労働時間にするのはやめておいたほうがいいというのが吉田さんの見解です。
まとめ
移動時間の長いスタッフへの不満には、まず「その移動時間が労働時間かどうか」を正しく見極めることが出発点になります。そのうえで、労働時間でなくても負荷が高い場合は、日当や手当で不公平感を埋めるのが現実的な解だと語られました。
- 通勤・直行直帰・出張先への移動時間は、原則として労働時間にならない
- 移動中の会議や電話応対、業務時間中の拠点間移動は労働時間になる
- 労働時間でなくても負荷が高い場合は、日当や一定額の手当で不公平感を取り除くのが一般的
- 安易に移動時間を全部労働時間にすると、残業代に加え3協定の上限を早く使い切ってしまう
- 判断に迷うケースは会社で決めつけず、専門家に相談するのが安全






