退職金への憧れと、覚えておきたい金額の目安
今回から4回に分けて退職金制度を扱うシリーズが始まります。第1回のテーマは、制度の概要と、作ることのメリット・デメリットです。
吉田さんはまず、退職金への個人的な思いから話し始めます。これまでの人生で一度も退職金を受け取ったことがないといいます。
個人的な退職金に対する思いを話すと、退職金やっぱりいいなって思います。
退職時に100万円、定年まで勤めた場合は2000万、3000万というお金が一気に入ってくることに、憧れを感じると話します。
金額の目安についても触れられました。この数字は、これから退職金制度を作る人が覚えておいたほうがよいと語られています。
退職金があると、なぜ求人で有利になるのか
本題として、まず退職金制度を作るメリットが語られます。最初に挙げられたのは、求人面で有利になる点です。
求人票や求人広告に「退職金制度あり」と書けるため、制度がない求人に比べて印象が良くなると説明されています。
求人票とか求人広告に退職金制度ありと書けますから、その時点で、お仕事を探している方からすれば、あ、この会社いい会社なんじゃないかなって思ってもらいやすくなるわけです。
人材採用という面では、退職金制度があったほうがよいというのが吉田さんの見方です。
同じ100万でも、退職金で受け取ると得になる理由
退職金には、給与として受け取る場合と比べたときのメリットもあります。ここでは、まとめて100万円を受け取るケースで比較されました。
1つ目は社会保険料です。在職中に給与や賞与で100万円を受け取ると、そこには必ず社会保険料がかかります。
一方、退職金として受け取った場合は、退職の事実が本当であれば基本的に社会保険料はかかりません。社会保険料 ── 健康保険や厚生年金などの保険料。給与や賞与の額に応じてかかり、会社と本人が分担して負担する。
ただし、社会保険料はプラスとマイナスの両面があるとも補足されます。払えば先々の年金に反映されるため、かかること自体が一概にマイナスとは言えないとのことです。
2つ目は税金です。基本的に、給与で受け取るよりも退職金で受け取るほうが税金は安くなるといわれています。
そのため、同じ100万円を会社から従業員に動かすなら、資金効率だけを考えれば退職金として渡すほうがよいと語られました。
社会保険料が必ずかかる。将来の年金には反映される
退職が本当なら社会保険料はかからず、税金も安くなる
一度始めたらやめられない、退職金制度のデメリット
退職金制度はメリットだけではありません。ここからはデメリットが順に語られます。
1つ目は、一度始めた退職金制度をやめることは正直難しいという点です。
従業員に説明し、全員が心の底から納得して同意すれば理論上はやめられますが、現実的には困難だといいます。
そのため、会社の考え方やステージが変わって給与制度を変えたくなったときに、手厚い退職金制度があると柔軟な設計ができなくなることがあります。導入は慎重に考えたほうがよいと語られました。
2つ目は、退職一時金制度で起きうる資金の問題です。退職一時金制度 ── 退職時にまとまった退職金を一括で受け取るタイプの制度。分割で年金のように受け取る方式とは区別される。
退職時に高額な退職金を一発で払うタイプの場合、退職が連続すると、その資金を準備しなければならないという問題があります。
たとえば、ある年に定年を迎える人が多いと、一気にお金がかかります。場合によっては、会社が借り入れをして資金を調達しなければならないかもしれないと説明されました。
退職金に回すと、月々の給与が低く見える
3つ目のデメリットは、月次の給与への影響です。同じ賃金原資でも、退職金に回すと月々の給与が低く見えるかもしれません。
賃金総額が同じなら、一部を退職金に回すぶん、月次の給与を下げたり賞与で調整したりする給与設計になりがちだからです。
つまり、退職金制度は求人で有利になる一方、月次の給与が低く見えることでマイナスに働く可能性もあります。業界や職種によって、どちらを厚くするかの判断が変わってくるというわけです。
月次の給与が高いほうが求人で有利な業界なら退職金は少なめに、退職金制度があるほうが有利と判断するなら制度を作ったほうがよいと語られました。
退職金を準備する4つの方法
最後に、退職金の準備方法のさわりが紹介されます。準備の方法は大きく4つに分けられ、中小企業では主にこの4パターンになるといいます。
現預金
儲かったお金を貯金し、退職金の原資にする
中退共
中小企業退職金共済制度を使う
生命保険
生命保険を使って準備する
選択型確定拠出年金
選択型の確定拠出年金を使う
今回はこのうち1つ目、現預金で準備する方法の問題点が取り上げられました。
現預金での退職金準備がおすすめできない理由
会社で儲かったお金を銀行口座に貯めておき、退職者が出たときに支払う。一見自然な方法ですが、吉田さんははっきりおすすめできないと話します。
理由は、税金面での資金効率が非常に悪いからです。
そもそも会社にお金が貯まっているということは、会社が儲かっているということです。儲かれば法人税を納めなければなりません。
つまり、儲かって法人税を払い、残ったお金を退職金に充て、その退職金にもまた税金がかかります。同じお金に二回税金がかかってしまうという点が問題です。
中退共、生命保険、選択型確定拠出年金の3つについては、当社がおすすめするものとして、次回以降にメリット・デメリットが語られる予定です。
なお、最後にひとつ注意点も添えられました。3つの制度を紹介したものの、絶対にこれがいいという制度はないといいます。
この制度がいいですよ、絶対にいいですよって言ってる人がいたら、それはあんまり深く退職金のことを理解してない方なのかなと思うので、ご注意ください。
会社によって合う・合わないがあり、制度ごとにメリットとデメリットがあるためです。細かい内容は、これから始まる3回のシリーズで解説されます。
まとめ
退職金制度の第1回は、制度を作るメリットとデメリット、そして準備方法の基本を整理する回でした。求人での有利さや税・社会保険料の面での利点がある一方、一度始めるとやめにくく、資金や給与設計への影響もあります。準備方法にも一長一短があり、絶対の正解はないという姿勢で語られています。
- 大企業は約2000万、中小企業は約1000万が定年退職金の目安とされる
- 退職金は「制度あり」と書けて求人で有利になり、社会保険料や税金の面でも給与より有利になりやすい
- 一度始めた退職金制度はやめにくく、退職の集中による資金負担や月次給与が低く見える点に注意が必要
- 準備方法は現預金・中退共・生命保険・選択型確定拠出年金の4つ。現預金は二重に税金がかかり資金効率が悪い
- どの制度が合うかは会社次第で、絶対にこれがいいという正解はない




