リモートワークの費用負担、そもそも誰が持つべき?
今回の相談は、リモートワークの会社を経営している人からのものです。従業員から、水道光熱費、通信費、環境設備、机の費用などを会社で負担してほしいと相談があり、どうするべきか、という質問です。
吉田さんはまず、原理原則から答えます。業務に関係する費用は会社が負担するべき、というのが基本の考え方です。
相談内容からは少し逸れますが、と前置きしつつ、吉田さんは具体例を挙げます。営業で会社の車が必要になれば会社が負担しますし、建設系で道具が必要になれば、ドライバーのような小物も含めて会社が持つべきだと話します。
就業規則に書けば従業員負担にできる、という例外
ただし例外があります。就業規則にきちんと定めをすれば、業務に関係する費用でも従業員に負担してもらうことができる、と吉田さんは説明します。
今回のリモートワークの相談に当てはめると、就業規則に「水道光熱費は従業員負担」などと書いてあれば、そのまま従業員負担にして問題はない、ということになります。
一方で、就業規則に書いていない場合は、基本的に会社負担になってしまうと吉田さんは話します。
ここで吉田さんは、水道光熱費や通信費ならではの難しさに触れます。どこからどこまでが業務で、どこからがプライベートなのか、線引きがわからない費用だからです。
そこで一般的な解決策として使われるのが、リモートワーク手当です。
原則
業務に関係する費用は会社が負担する
例外
就業規則に定めれば従業員負担にできる
線引きが難しい費用
手当という形で事実上の費用負担に整理する
吉田さんによれば、リモートワーク手当を5000円や3000円などつけて、これが事実上の費用負担なんですよ、という形にして整理することが多いそうです。
水道光熱費や通信費を従業員負担にしたい場合は、話し合いを重ねてどこまでが従業員負担でどこからが会社負担かを合意し、就業規則に明記したうえで負担してもらうことを吉田さんは勧めます。
サラリーマン時代に感じた「隠れ費用」という悪い自己負担
ここから吉田さんは話の趣向を変え、会社経営者として自己負担について気をつけるべき点に踏み込みます。良い自己負担もあれば、悪い自己負担もある、という切り口です。
吉田さんは今、法人の代表者として経営者側の立場ですが、それまではサラリーマンをやっていたため、どちらの気持ちもわかると話します。振り返ると、意外とちょこちょこ自己負担があったといいます。
例に挙げるのは、外回りの時間つぶしです。午前中に会社を訪問し、午後のアポまで時間があるからカフェに入る、というよくある場面です。
こうした費用をわざわざ領収書で精算している会社はあまりなく、従業員が負担していることが多い、と吉田さんは指摘します。小さくても、たまっていけば結構な金額になると話します。
その最たるものが、接待交際費として精算できないような飲み会の費用です。実は従業員が負担していた、ということがあると吉田さんは言います。
(飲み会の自己負担が)多いと従業員の満足度がすごく下がると思います。
飲み会の費用と時給、どこまでが会社の責任か
吉田さんは、週に1回お客さんとの飲み会があるケースを例に挙げます。お客さんとの飲み会はマイナスだけでなく、人生いろいろ学べるといったプラスもある、と前置きします。
一方で、今風の若者の考えでいえば、飲み会の時間に時給が出ないのか、と言う人もたくさんいると吉田さんは話します。その気持ちはすごくよくわかる、とも述べます。
ただし労働基準法上の整理は別だ、と吉田さんは説明します。出席が義務付けられておらず、従業員が自由な意思で参加した飲み会は労働時間ではないため、時給などは発生しません。労働時間 ── 使用者の指揮命令下に置かれている時間を指す。参加が義務付けられていない飲み会は、原則としてこれに含まれないと考えられている。
とはいえ心理的には仕事の延長線上で、ほぼ仕事のようなものだと吉田さんは言います。気を遣わなければならず、リラックスして食事に集中することはできないからです。
さらに、飲み会の費用が割り勘で従業員負担になっている場合の負担感にも触れます。夜ご飯は本来食べるものだから本人負担だという論点もあるものの、飲み会になれば費用は高額になり、頻度が高ければ相当な負担になると話します。
だからこそ、隠れ費用のようなものがあるなら、会社は積極的に負担していった方がいい、というのが吉田さんの考えです。
何でも会社負担が正解ではない、「痛み」が人を動かす
では、何でもかんでも会社が負担した方がいいのか。吉田さんは、そうは思わないと言います。
理由として挙げるのが、人間の弱さです。自分の痛みを伴わないと頑張れない、というのが吉田さんの見方です。
たとえに使うのはダイエットです。成功する人としない人の一つのバロメーターとして、いくらお金を使ったかによって成功確率が変わる、と吉田さんは話します。
ジムの入会金やパーソナルトレーナーに50万や100万をかけて決意した人と、1円も使わず自分で筋トレや食事制限をしようとした人では、成功する確率が高いのは前者だといいます。
自己啓発費は折半に、業務命令なら全額会社負担に
この考え方を会社経営に置き換えると、勉強のための本の話になります。業務に関する勉強のための本を全額会社が負担すると、他人が負担したものだから痛みが伴わず読まない、いわゆる積ん読になることが珍しくない、と吉田さんは指摘します。
一方、自分の貯金や身銭を切って買った本は、その費用を取り返したいと思うのが自然なので頑張って読む、と吉田さんは話します。結果としてその人のキャリア形成や実力になり、プラスになるわけです。
そのため、特に自己啓発や自分で資格を取るような場面では、全額会社負担にせず、一定程度は本人に負担させた方が良い結果になると吉田さんは述べます。
痛みが伴わず、本を買っても読まない積ん読になりやすい
費用を取り返したい心理が働き、学びが実力につながりやすい
ただし資格の話には注意点があります。業務命令として資格を取ってくださいと言った場合は、資格取得費用は原則会社が持つべきだと吉田さんは言います。このセミナーで勉強してきてくださいと業務命令で言った場合も、もちろん会社が持つべきです。
区別の基準は、本人の自由意志かどうかです。ホワイトカラーが多い日本の現状を踏まえると、自立して自分で必要なものを考え能力開発していくことは本人のためでもあると吉田さんは話します。
だからこそ、ある程度いい自己負担制度を会社の中で作ることが、本人のためでもあり、会社のためにもなる、というのが吉田さんの結論です。
まとめ
業務に関する費用は会社が負担するのが原則で、従業員負担にするには就業規則への明記と合意が必要です。一方で、痛みを伴う自己負担が本人の成長につながる場面もあり、費用の性質によって負担の分け方を変える視点が語られました。
- 業務に関係する費用は会社が負担するのが原理原則
- 就業規則に定めて合意すれば従業員負担にすることもできる
- 線引きが難しい費用はリモートワーク手当などの形で整理することが多い
- 飲み会や外回り中のカフェ代など、隠れた自己負担は満足度低下につながるため会社が積極的に持つべき
- 自己啓発や資格取得は、身銭を切る痛みが学びを促すため、業務命令でなければ一部本人負担にした方が良い結果になりやすい






