そもそも雇用保険は「入る・入らない」を選べない
この回で吉田さんが取り上げるのは、会社が雇用保険に入らなかった場合にどうなるのか、というテーマです。前回の労災保険に続く内容として語られています。
大前提として、労災保険も雇用保険も法律で加入が決められており、要件に該当したら必ず入らなければならないものだと吉田さんは説明します。
選択の余地はないので入ってください。
そのうえで吉田さんは、会社経営をしているとお金の勘定もあり、「入らなかったらどうなるんだろう」と素朴な疑問を抱く人もいるだろうと話します。そうした人に向けて、未加入のデメリットを説明していくという趣旨です。
なぜ雇用保険は「必ずどこかで揉める」のか
吉田さんが最初に強調するのは、雇用保険に入っていないと必ずどこかで揉める、という点です。もし放送を聞いている経営者で未加入の会社があれば、早急に社会保険労務士に相談して入ることを勧めています。
ここで吉田さんは労災保険との違いを説明します。労災保険の場合、理論上は問題が表面化しないこともあり得ると言います。
例えば事業が10年やってたけれども、たまたま10年間労災事故がなかったから労災保険使わなくて問題が明るみに出なかったとかはあり得るんですよ。
一方で雇用保険は事情が違います。退職者はその後に失業保険を受け取る前提で動いているため、そこで問題が必ず表に出ると吉田さんは指摘します。
そこでなんか、なんで私失業保険もらえないんですかっていう話で揉めます。
失業保険がもらえず、損害賠償請求に発展する流れ
吉田さんはまず、週20時間以上で雇っているスタッフは、ざっくり言うと雇用保険に入れなければいけないと説明します。週20時間以上 ── 雇用保険の加入要件の一つ。1週間の所定労働時間が20時間以上などの条件を満たすと、原則として雇用保険への加入が必要になる。
そうした人が転職先の決まらないまま退職すると、多くはハローワークに行って失業保険をもらう流れになります。ところが会社が雇用保険に入っていなかった場合、問題が起きると吉田さんは言います。
失業保険をもらう時に、会社として雇用保険に入ってなかったら、加入記録がないからもらえないんですよ。
その結果、退職者は「なんで雇用保険入ってないんですか」と直近で退職した会社に文句を言うことになります。雇用保険の加入記録は転職前の職歴とつなげることもできるため、以前の勤務先にも波及し得ると吉田さんは説明します。
週20時間以上で雇用
加入義務があるのに未加入のまま雇用を続ける
退職
転職先が決まらないまま退職する
失業保険を申請
ハローワークで申請するが加入記録がなくもらえない
損害賠償請求
「入れてくれなかったから受け取れない」として請求に発展し得る
在職中の給付も受け取れず、会社のイメージも下がる
吉田さんは、「うちの会社は誰も辞めないから大丈夫」と考える経営者がいるかもしれないと想定します。しかし、それでも安心はできないと否定します。
理由は、雇用保険には失業保険以外にもさまざまな給付があるからです。代表例として吉田さんが挙げるのが、育休に入るとお金が出る育児休業給付金です。育児休業給付金 ── 育児休業を取得した労働者に対し、雇用保険から一定期間支給される給付。雇用保険に加入していないと受け取れない。
女性の労働者の方がご妊娠されて出産したらほぼ育休取りますから、その時に(育児休業給付金の)お金がもらえないってなったら、まあ揉めますよね。
吉田さんは、介護給付など在職中の人にも関わる給付が雇用保険にはあると付け加えます。労働者の給付に直結するため、高い確率で揉めるという説明です。
さらに、雇用保険に入っていないことがSNSなどで拡散されれば、会社のブランドイメージ低下につながると吉田さんは指摘します。これは労災保険についても同じだと述べています。
許認可や取引で本業が止まるリスク
吉田さんが次に挙げるのは、ビジネスそのものへの影響です。派遣業などの許認可系のビジネスでは、申請書類に雇用保険の番号を書かなければならないと説明します。
雇用保険に入ってなければそもそもその申請できませんから、(申請書類を)空欄で出して行政官庁が受け取ってくれるはずがない。
そのため、雇用保険に入っていないとビジネスをスタートできない可能性があると吉田さんは述べます。
取引先の信用調査でも影響が出ます。取引の際に雇用保険番号の提示を求められることがあり、これは建設業で非常に多いと吉田さんは話します。
仮に商談が盛り上がり、来月から一緒に建設現場をやろうという段階まで進んだとしても、実は未加入だとわかれば破談になる恐れがあると吉田さんは説明します。本業そのものに影響が出るというわけです。
助成金の取りこぼしという見過ごせない損失
吉田さんが最後に、そして特に重要だと強調するのが、会社として受け取る助成金が受け取れなくなる点です。補助金や助成金全般については個人的にそこまでおすすめのものは多くないとしつつ、会社にマッチすればいいものもあると述べています。
具体例として吉田さんが挙げるのが、非正規社員を正社員に転換する取り組みを促進する会社向けの助成金です。キャリアアップ助成金 ── 非正規雇用の労働者の正社員転換や処遇改善に取り組む事業主を支援する厚生労働省の助成金。要件を満たすと会社に助成金が支給される。
一定の要件に該当する非正規スタッフの方を正社員転換すると、会社に57万円支給されるという助成金なんです。
吉田さんは、コロナ禍で雇用を守るために出された雇用調整助成金にも触れます。こうした助成金も、雇用保険に入っていないと受け取れなくなると説明します。
厚生労働省の助成金は数多くあり、未加入だとそれらがもらえず損をしてしまう可能性があると吉田さんはまとめます。
| デメリット | 具体的な影響 |
|---|---|
| 失業保険のトラブル | 退職者が受け取れず損害賠償請求に発展し得る |
| 在職中の給付 | 育児休業給付金や介護給付が受け取れず揉める |
| ビジネスへの影響 | 許認可の申請ができず、取引の商談も破談になる恐れ |
| 助成金 | キャリアアップ助成金などを受け取れず損をする |
吉田さんは、そもそも入る・入らないという選択肢はないとしたうえで、もし未加入の会社があれば社会保険労務士や行政機関に相談し、早急に適正化するよう動いてほしいと呼びかけています。
まとめ
この回は、雇用保険の未加入が会社にもたらすデメリットを整理する内容でした。労働者とのトラブルから本業や助成金への影響まで、幅広く損失につながることが具体的に語られています。
- 雇用保険は要件に該当したら必ず入るもので、入る・入らないの選択肢はない
- 退職者の失業保険をめぐって損害賠償請求に発展する恐れがある
- 育児休業給付金など在職中の給付も受け取れず、SNS拡散でイメージも下がる
- 許認可の申請や取引先の信用調査で本業が止まるリスクがある
- キャリアアップ助成金など厚生労働省の助成金を取りこぼす損失がある






