2024年4月から労働条件通知書の記載事項が増える
この回で吉田優一さんが最初に取り上げるのは、2024年4月から労働条件通知書の記載項目が増えるという話です。
収録は2023年7月時点で行われており、施行までおよそ8〜9か月後の変更として紹介されています。
そもそも労働条件通知書とは、会社が労働者を雇ったときに発行しなければならない文書のことです。労働条件通知書 ── 労働者を雇い入れる際に、賃金や労働時間などの労働条件を書面などで明示するための文書。記載すべき項目は労働基準法で定められている。
書かれる内容は、給与の金額、契約の開始時期、有期雇用であれば終了予定の時期、勤務場所、勤務時間などです。
これらの記載項目は労働基準法で定められており、その項目が増えるというのが今回の改正の中身だと説明されています。
有期契約労働者に追加される3つの明示事項
吉田さんは、有期契約労働者に対する明示事項の追加として、増える項目は3つだと整理します。
1つ目は更新上限の明示です。たとえば更新は3回まで、あるいは3年までといった上限を記載する必要が出てきます。
2つ目は無期転換の申込機会の明示です。無期転換権が発生するなら、発生するタイミングごとに「あなたには無期転換権がある」ことを通知書に盛り込む必要があります。
3つ目は無期転換後の労働条件の明示です。転換権を使った場合にどのような労働条件になるのかを、あらかじめ示さなければなりません。
ここで「無期転換」という言葉が出てきたため、吉田さんは続けて無期転換権そのものの説明へと話を移します。
無期転換権とは何か。2013年に生まれた仕組み
無期転換権が生まれたのは、吉田さんの体感ではつい最近のように感じるものの、資料を見ると2013年の話だといいます。
2013年に労働契約法が改正・施行され、そこで無期転換権が法律上設定されました。無期転換権 ── 有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、労働者が申し込むことで無期労働契約に転換できる権利。2013年施行の改正労働契約法で導入された。
どのような権利かというと、半年更新や1年更新といった有期雇用契約の人が更新を重ね、累計の契約期間が溜まっていく点が出発点になります。
その通算契約期間が5年を超えると、超えたタイミングから、労働者が「無期契約に変えたい」と申し出れば、会社はそれを受け入れなければならないというルールです。
それが5年を超えるのであれば、超えたタイミングから、その労働者の方が無期契約に変えたいですって会社に申し出をすれば、会社はそれをのまなきゃいけない。
2013年からカウントが始まるため、有期雇用の人が5年経過する2018年に、世の中に無期転換権を持つ労働者が誕生するという流れになります。
なお、2013年より前の契約期間は法律上カウントされない点も、あわせて説明されています。
2018年に人事が身構えた理由
当初は5年も先の話ということで、あまり切迫感はなかったものの、2017年頃になると会社の社長や人事部が大騒ぎしていたと吉田さんは振り返ります。
その理由は、有期雇用契約の人は、会社から見ると契約期間の終了時に辞めてもらうことが比較的容易だからです。
無期転換すると無期契約になるから、じゃあ会社側から、やっぱり合わないから辞めてくださいということが非常に言いづらくなる。
無期契約になると、会社側から契約を終わらせにくくなり、人件費の管理といった経営計画にも影響が及びます。
さらに、どこに誰を置くのかという人事配置にも影響が出るため、2018年になったら会社のやり方を変えなければならないのではと不安に思う人が多かったといいます。
いざ2018年、無期転換権はほとんど使われなかった
ところが2018年になると、実際には多くの人が無期転換権を使わなかったと吉田さんは説明します。
その最大の理由として、厚生労働省の調査でも、ほとんどの人が無期転換という権利があること自体を知らなかった点が挙げられています。
ほとんど皆さん、無期転換っていう権利があるっていうことを知らなかったんですよ。
そこで、労働者にきちんと周知して理解してもらう必要があるという考えから、労働条件通知書に無期転換権があることや転換後の労働条件を伝える義務が、今回の改正で会社に課されたと整理されています。
知っていてもあえて使わない人がいた理由
吉田さんは余談として、無期転換のことを知っていても、あえて権利を使わない人がいたという実務の一面を紹介します。
専門家から見れば、無期雇用は労働者にとっていつでも辞められ、いつまでも雇用が続く点でメリットが大きいはずだと考えられます。
それでも使わない人に理由を尋ねると、有期雇用契約のほうが気楽で、辞めたいときに辞められるからだという答えが返ってきたといいます。
有期雇用契約の方が気楽だからですと。(有期雇用だと)辞めたい時に辞められる。
ただし法律上は、無期雇用なら14日前に予告すればいつでも辞められる一方、有期雇用は契約期間の途中で辞めるのが基本的に難しく、むしろ辞めづらい面があると吉田さんは補足します。
それでも人間は心理的な生き物であり、契約期間満了で辞めさせてくださいと言いやすい有期雇用を、あえて好んで維持した人もいたと語られています。
契約期間満了で辞められる有期雇用のほうが「気楽で辞めやすい」と感じる人がいた
無期雇用は14日前の予告でいつでも辞められ、有期雇用は期間途中の退職が基本的に難しい
経営者は無期転換権にどう対応すべきか
話は再び経営者目線に戻り、会社として無期転換権にどう対応すべきかが整理されます。
すでに多くの会社は対応済みですが、これから有期雇用の人を雇う場合や、これから起業する人は未対応のため、必要な準備を改めて確認していきます。
1つ目は、無期転換権を行使したらどの雇用形態・どの労働条件になるのかを、会社の中で決めておくことです。
よくある勘違いとして、有期雇用で5年を超えて無期転換権を使えば正社員になれると考える人がいますが、必ずしも正社員にする必要はありません。
正社員とはまた違う、新たなその無期雇用契約の雇用形態を会社の中に準備して、そこに転換していただくっていうのは問題ない。
正社員とは別の無期雇用の雇用形態を用意し、そこへ転換してもらう形でよく、むしろそうしている会社が多いと吉田さんは述べています。
もう1つは、有期雇用の人をどう処遇していくかを考えることです。無期転換後の労働条件を整備するということは、裏を返せば有期雇用の人を雇うということだからです。
そのうえで労働条件通知書を発行する際には、更新上限の明示に加え、無期転換権が生じていればその明示と、転換後の労働条件の明示が必要になると締めくくられています。
まとめ
この回は、2024年4月からの労働条件通知書の明示事項追加を入り口に、2013年に生まれた無期転換権の意味と、あまり使われてこなかった経緯、そして経営者が取るべき対応を整理する内容でした。
- 2024年4月から、有期契約労働者への労働条件通知書に「更新上限」「無期転換の申込機会」「無期転換後の労働条件」の明示が加わる
- 無期転換権は2013年施行の改正労働契約法によるもので、有期契約の通算が5年を超えると労働者の申し出で無期契約に転換できる
- 2018年に権利を持つ人が生まれたが、権利の存在自体が知られておらず、ほとんど使われなかった
- 無期転換しても必ず正社員になるわけではなく、別の無期雇用の雇用形態を用意して転換してもらう形も可能
- これから有期雇用を扱う会社は、転換後の雇用形態・労働条件を社内で決め、通知書での明示に対応する必要がある






