都心と地方で分かれる通勤手段の前提
今週のテーマは通勤手当の論点です。Xで「通勤手当って奥深い」と発信したところ反響があり、体系的に話すことになったと吉田さんは説明します。
最初の論点は、何を通勤手段として認めるかです。ここで大きく効いてくるのが、都心と地方の違いだと話されています。
東京など都心では、JRや地下鉄、バスといった公共交通機関が発達しています。そのため電車やバスでの通勤が一般的で、自転車や自動車、バイク、LUUPは禁止としている会社が多いといいます。
一方、同じルールを地方でそのまま適用すると、誰も通勤できなくなる場合があります。最寄り駅から距離があり、駐車場付きの建物に通うには自動車に乗るしかない会社も珍しくないためです。
地方でその同じことをやったらどうするかっていうと、誰も通勤できないみたいなことが起こるんです。
そのため、スタッフ全員が自動車で通勤している地方の会社も珍しくないと話されています。
自動車・バイク・自転車・LUUPそれぞれの論点
通勤手段ごとに、考えるべき点は異なります。電車やバスは、定期代やICチケットの実費が明白なため、それを支払うケースが多いとされます。
自動車通勤は、基本的にマイカーが前提となるため、移動距離かける単価を設定して支給することが多いといいます。
バイクは自動車とほぼ同じ扱いですが、生身で乗るぶん危険度が高いと吉田さんは指摘します。ただし、あえて解禁することにメリットがある場合もあると話されています。
たとえば現場職で男性が多い職場では、バイク通勤を認められること自体が採用上の強みになることがあります。その場合も、保険をどうするかは考えたほうがよいとしています。
自転車は健康経営の観点でも解禁しやすく、危険度もバイクより低いとされます。ただし加害者になれば損害賠償リスクがあり、被害者になる可能性もあるため、ヘルメットや自転車保険といった論点は残ります。
LUUPは、若手が多く渋谷にオフィスを構えるような会社では通勤に使う例が珍しくなくなってきたといいます。
吉田さんはLUUPについて、歩行中に接触事故寸前の場面に遭遇したことがあり、個人的には危険だと感じていると話します。
LUUP自体には損害保険が付いているとされますが、どの条件で保険金が下りるのかを確認したうえで通勤を認めたほうがよいと注意を促しています。
お酒に酔った状態でLUUPを運転して事故が起こったら保険金とか下りないと思うんで、どういう条件で保険金が下りるのかは分析した上で認めた方がいいはずです。
公共交通機関が発達。電車・バス中心で、自転車・自動車・バイク・LUUPは禁止が多い
駅から遠く駐車場も多い。自動車通勤が前提となり、全員が車という会社も珍しくない
金額設定の入口となる「上限」の考え方
ここからは金額の論点です。まず出てくるのが、通勤手当に上限を設定するかどうかだと話されています。月額上限1万5000円や5万円といった設定は珍しくないといいます。
上限を設ける理由の1つは、想定外の遠方から通う人への対策です。東京本社の会社なら、通常は埼玉・千葉・神奈川あたりから通う前提で予算を組んでいると吉田さんは説明します。
しかし、たとえば軽井沢に転居して新幹線通勤をしたいという人が出てくるかもしれません。実費全額支給のルールだと、新幹線定期の代金まで会社が負担することになります。
これを避けたい場合に、月額3万円や5万円といった上限を設定するのです。
もう1つの狙いは、あえて低い上限にすることで近隣の人だけを採用しやすくすることです。上限1万5000円のように設定して、通勤圏を絞る戦略もあると話されています。
欠勤・有休・定期分岐という運用上の論点
次に、欠勤したときに通勤手当を減らすかどうかという論点があります。定期代はすでに購入済みで、JRも地下鉄も返金してくれないためです。
減らすかどうかをあらかじめ決めておかないと、有給休暇取得時の扱いも含めて、本人とのトラブルになる可能性があると指摘されています。
さらに、支給を定期にするか、1日あたりのICカード往復料金にするかという「定期分岐問題」もあります。週に何日以上通えば定期が得になるか、その分岐点が路線ごとに異なるためです。
JRと地下鉄とバス、地下鉄も何種類もあるじゃないですか。で、それぞれでその分岐が違うんですよ。
最も経済的な金額で出すルールにすると、本人が何を買っていても最小金額をシミュレーションして支給することになります。管理側で計算しきれない場合は、正社員は定期代といった一定のルールで金額を決めることになると話されています。
まとめ払いと自動車の単価設定
定期のまとめ払いをするかどうかも論点です。定期は1か月・3か月・6か月から選べますが、吉田さんは中小企業では3か月や6か月のまとめ払いをやめたほうがよいと考えを示します。
理由は、突然退職する人がいるためです。6か月定期を支給した翌月に退職されると、回収できない問題が起きます。
加えて、まとめ払いは社会保険料の随時改定や算定基礎届の計算が大変になり、いつからいつまでの定期かを管理する手間も増えるといいます。そのため単月払いをすすめています。
シンプル化するために、私は単月払いというか、ひと月分の定期をひたすら支払うというのがいいと思います。
自動車通勤では、移動距離かける単価で金額を決めます。たとえば1キロあたり50円のように、燃費とガソリン代から合理的に算出する方法があると説明されています。
ただしガソリン価格は刻々と変動するため、いつ見直すかのルールが必要です。ルーズな管理だと、ガソリン単価が高い時期に入社した人ほど通勤手当が高くなる不平等が生じると指摘されています。
さらに、マイカー通勤で会社もメリットを受けている以上、車検代やタイヤ交換費用などの間接費用をどこまで負担するかという論点も出てきます。会社としてどこまでを通勤手当と考えるかを決める必要があるとしています。
実費過不足問題と就業規則での整理
最後は実費過不足問題です。1か月分の定期代を出すシンプルなルールにしても、それで終わりではないと話されています。
厳密に管理するなら、本人が給与計算期間の初日に定期を買い、購入した証明を出す運用が必要になります。
実例として、東証一部上場企業に勤める友人は、6か月分の定期代を受け取る代わりに、通勤定期の写しを提出し、実際に該当期間の定期を買った記録まで会社に出しているといいます。
この方法なら過不足はなくなりますが、中小企業でそこまでやるのは難しいという論点もあります。給与計算期間の途中で入社する人にいくら出すかも、あわせて決めておく必要があるとしています。
手段と金額設定だけでこれだけ論点があるため、後で揉めないよう、就業規則や賃金規定を作る段階でしっかり決めておくことがすすめられています。今回は前編で、後編でも引き続き通勤の話をするとのことです。
まとめ
通勤手当は、何を通勤手段として認めるかという入口から、上限や欠勤時の扱い、まとめ払い、自動車の単価設定、実費の過不足まで、多くの論点を含むテーマです。都心と地方の前提の違いをふまえ、賃金規定の段階でルールを固めておくことが大切だと語られました。
- 通勤手段の前提は都心と地方で大きく異なり、公共交通中心か自動車中心かで認め方が変わる
- バイク・自転車・LUUPは採用や健康面のメリットがある一方、事故や保険のリスクを整理する必要がある
- 上限設定は遠方通勤への対策や採用圏の調整に使えるが、欠勤・有休時の減額ルールもあわせて決めておく
- 中小企業では定期の単月払いがすすめられ、自動車はガソリン単価の見直しや間接費負担の考え方が論点になる
- 実費の過不足を防ぐには証明提出などの運用があるが、現実的な落としどころを賃金規定で決めておくとよい
