2024年の法改正、まず押さえるべきは4月1日
この回のテーマは、2024年に控えている人事労務関係の法改正です。吉田さんは大きな改正もあると前置きしたうえで、施行時期ごとに順番に解説していきます。
最初に来るのが2024年4月1日からの改正で、業種によっては大きな影響があるとされています。
建設業・運転手・医師に及ぶ時間外労働の上限規制
4月1日の改正の1つ目は、建設業、自動車運転業務、医師における時間外労働の上限規制の猶予期間の終了です。一般的な業種ではすでに施行済みですが、この3業種は猶予されていました。
時間外労働には上限が法律で決められています。例えば1か月に残業できる時間は100時間未満、年間の残業は720時間以内といった内容です。
この上限は、建設業などではいきなり守るのが難しいという理由で、収録時点の2023年12月まで適用を猶予する形になっていました。
しかし業種や業務内容によって例外を作り続けるのは望ましくないとして、2024年4月からは建設業、運転手、医師も上限規制の対象になります。
吉田さんは、この3つのなかでも建設業への影響は特に大きいと話します。工期や納期がある業態のため、単月の労働時間が長くなりやすいからです。
本当に4月1日からこれ(上限規制)が適用されて、うちの会社うまくやっていけるのかな、なんていう声も聞こえます。
ただ、法律がここからさらに猶予されることはないため、どの会社もこの上限規制の対象になると吉田さんは説明します。
本人同意が必要になる裁量労働制の手続き見直し
4月の改正の2つ目は、裁量労働制の導入・継続手続きの見直しです。専門業務型裁量労働制は、研究開発や弁護士、コピーライターなど専門性の高い仕事に適用される制度です。
この制度では、仕事の進め方や出退勤の時間を自分で決めて働きます。これまでは就業規則への記載や労使協定などの手順を踏めば、会社が一方的に適用できました。
しかし吉田さんは、この仕組みを悪用する会社が一定数いたと指摘します。裁量労働制では何時間働いても契約上の時間で働いたことになるため、無制限に残業させる使われ方があったといいます。
こうした健康被害を防ぐ観点から、今後は本人が同意しないと裁量労働制を適用できなくなります。本人がやめたいと申し出れば撤回できるルールも設けられました。
すでに導入している会社は、撤回された場合にどう対応するかを考えておく必要があると吉田さんは述べています。
転勤・異動トラブルを防ぐ労働条件明示ルールの変更
4月の改正の3つ目は、労働条件の明示ルールの変更です。会社は新しくスタッフを雇い入れた際、契約内容がわかる労働条件通知書を交付する必要があります。
今回の変更で、就業場所の変更範囲や業務内容の変更範囲を記載しなければならなくなりました。有期雇用の場合はさらに追加項目があります。
この背景には、変更範囲を明示しないことで生じるトラブルがあります。吉田さんは具体例を挙げて説明しています。
東京で採用されたのに、いきなり「じゃあ来月から北海道に行ってください」なんて言われると、「そんな話聞いてなかったです」っていうようなトラブルがあった。
明示ルールの変更は、こうした認識のずれを防ぐための改正だと位置づけられています。
大企業向けに引き上げられる障害者雇用率
4月の改正の4つ目は、障害者雇用率の引き上げです。これは大きな会社が対象で、現行2.3パーセントの雇用率が4月1日から2.5パーセントになります。
吉田さんは、実務の中身が大きく変わるわけではないものの、事業規模によっては障害者を雇用する人数を増やす必要が出てくると説明します。
2.5パーセントで計算して雇用率を満たしていない場合、放送が公開される来年の時点ではそろそろ雇い入れの計画を立てないと遅いくらいだと話しています。
10月に控える社会保険の適用拡大とは
4月に加えてもう一つ忘れてはいけないのが、2024年10月1日の法改正です。短時間労働者に対する社会保険の適用拡大が進みます。
この適用拡大は徐々に対象を広げてきました。前回は社会保険の加入者が101人以上の会社が対象でしたが、今回は51人以上の企業にも拡大されます。
前提として、現状では正社員のおおむね4分の3の所定労働時間で働く人、簡単に言えば週30時間以上働く人を社会保険に入れるルールになっています。
つまり30時間未満の人であれば、社会保険に入らなくてもいい、入れないっていうのが、今の原則ルールなんです。
年金財政の問題などを背景に、社会保険の加入者を増やす方向で短時間労働者の適用が進められています。10月からは被保険者51人以上の会社でも、短時間労働者を社会保険に入れる必要があります。
対象となる短時間労働者の条件は、次のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 月額の給与が8万8000円以上であること
- 学生でないことなど
一言でいえば、週20時間以上働く人で、これまで社会保険に入る必要がなかった人も、一定の会社規模であれば加入が必要になるということです。
自社の対応は追いついているか
吉田さんは、影響度が大きいのは会社によって異なるとしつつ、時間外労働の上限規制は業種によって、特に建設業で大きな影響があると改めて指摘します。
そのうえで、自社の法改正への対応が追いついているかを確認し、万全の体制で改正を迎えるよう準備していこうと呼びかけています。
まとめ
2024年の人事労務の法改正は、4月1日と10月1日に集中しています。施行時期ごとに自社に関係する項目を洗い出し、早めに準備を進めることが求められます。
- 2024年4月から建設業・運転手・医師も時間外労働の上限規制の対象になり、特に建設業への影響が大きい
- 裁量労働制は本人の同意が必要になり、本人が申し出れば撤回できるルールが設けられた
- 労働条件通知書に就業場所や業務内容の変更範囲の明示が必要になった
- 障害者雇用率が4月から2.3パーセントから2.5パーセントに引き上げられる
- 10月から被保険者51人以上の会社でも、週20時間以上などの短時間労働者の社会保険加入が必要になる






