休憩に「上限」がないという盲点
番組冒頭で吉田さんは、前回の休憩の原則論を軽く振り返ります。労働時間が8時間を超えたら1時間の休憩を与えなければならない、休憩は自由に使わせなければならない、みんな一緒に休憩を取らなければならない、といった内容でした。
その上で今回のテーマとして、休憩には闇深いところがあり、悪用されているケースもあると切り出します。
吉田さんがまず指摘するのは、労働基準法上、休憩時間に上限の規制がないという点です。8時間超で1時間の休憩を与える義務はあっても、長すぎることを禁じるルールはないと説明します。
そのため、1日の休憩時間が5時間になったとしても、原理原則論では違法にはならないと述べます。
ただし例外もあると補足します。運送業のように拘束時間で上限が定められている業種もあるため、注意が必要だと話しています。
営業職と塾講師で分かれる「休憩」の扱い
吉田さんは、休憩の長さは業種によって平等・不平等があると指摘します。飲食業のように、ランチとディナー両方を営業すると、その間の2〜3時間が全部休憩になるケースを例に挙げます。
一方で営業職は、商談と商談の間は当たり前に労働時間になると説明します。午前にA社、続いてB社、C社と回り、午後まで仕事をしていれば、その間はずっと労働になるという例です。
しかし業種によっては、この間の時間をうまく休憩にしてしまうケースもあると話します。吉田さんが聞いた例として挙げるのが、塾講師のコマ(授業)の間の扱いです。
朝9時に1コマ目が始まり10時に終わる。次の授業が午後13時なら、その10時から13時までを休憩にしてしまう、という運用です。すると給料を払っているのは午前と午後の授業2時間分だけになります。
吉田さんは、本当に自由に利用させているのであれば、この運用は違法ではないと補足します。ただし、働く人からすれば不満が溜まる仕組みだと指摘します。
商談と商談の間は当たり前に労働時間になる
授業と授業の間を休憩とし、給料は授業分だけになる運用もある
人材獲得競争と「合法だから」の落とし穴
吉田さんは、合法だからと休憩を長くする運用を続けていると、スタッフが不満を持ち、他の業界に転職してしまうと警鐘を鳴らします。
長い休憩を運用している会社であれば、見直したほうがいいと述べます。業種によっては見直しが難しい場合もあると認めつつ、今は人材獲得競争が進んでいる点を強調します。
その上で、他の業界に取られないような人材活用の仕組みや人材配置を考えた上で、休憩が長くなりすぎないようにしていったほうがいいと話しています。
建設業と飲食店に潜む未払い賃金のリスク
吉田さんは、休憩の活用方法、悪く言えば悪用について、いろんな業種から相談されると明かします。具体的にどの業種で焦点になるかを挙げていきます。
まず出てくるのが、労働時間が長くなりがちな建設業です。昼の休憩1時間に加え、午前の休憩30分、午後の休憩30分といった形で設定し、長くなる拘束時間を労働時間としては長すぎないよう整理するケースがあると説明します。
ただし注意点があると釘を刺します。休憩時間としている以上、本当に休憩を取っていないと、未払い賃金が溜まったり、労働時間が長くなって36協定違反になったりすると話します。
次に飲食店です。ランチとディナーの間を休憩としながら、実際にはディナーの食材を仕込んでいるケースも珍しくないと指摘します。
吉田さんは、仕込みをしている時間は、出るところに出られれば労働時間になると説明します。そのリスクを理解した上で運用しなければならないと注意を促します。
社労士としてこうした運用は勧めないとしつつ、いろんな業界の相談に乗っていると、この運用にしないと仕事が回らないという現場もあるため、実態として紹介したと述べています。
休憩5時間が即違法にならない法律への疑問
残りの時間で吉田さんが語るのは、労働基準法34条に定める休憩そのものが、時代に沿わなくなっているのではないかという問題提起です。
休憩に上限がないこと、そして1日休憩5時間が即違法にならないことは、おかしいと感じると述べます。
その上で、休憩が長くなるなら、拘束時間に対して一定の給料を保証すべきだと提案します。保証給のような金銭的補償がないと、やはり不満が溜まると考えているためです。
具体案として、たとえば休憩が3時間を超えてきたら、そこから保証給が出るといったルールを整備すべきではないかと、個人的な意見として語っています。
「8時間超で1時間休憩」は本当に労働者保護か
一方で吉田さんは、職種によっては8時間超で1時間の休憩が必ず必要か、という別の疑問も投げかけます。
自身が経営する社会保険労務士法人では、30代40代で子育て中のスタッフが多いと説明します。そうした人の働き方を見ていると、感じることがあるといいます。
吉田さんによれば、1時間まるまる休憩を取るより、休憩を30分にして少しでも早く帰り、溜まった家事を消化したいと考える人もいると話します。
吉田さん自身も労働者の時は1時間まるまる休憩を取ったことがほとんどなく、30分ほどで食事を済ませてすぐ仕事に戻っていたと振り返ります。個人的には、そういう人のほうがハイパフォーマーが多い気がすると述べます。
こうした実感から、8時間超で必ず1時間の休憩を取らせるルールが、本当に労働者の保護になっているのか疑問だとしています。
個人的な意見として、労使協定や就業規則を整備したら、1日の休憩時間を30分まで短縮できるといった法律ができたほうがいいのではないかと提案します。事務職であれば30分あればいいのではないかという考えです。
ただし一方で、建設業のように、休憩を取らないと一歩踏み外せば人の命に関わる仕事もあると補足します。そうした業種は、今まで通りきちんと休憩を取らせたほうがいいと述べています。
まとめ
休憩時間には上限規制がないため、5時間の休憩でも原理原則では違法になりません。吉田さんは、これを利用した塾講師や飲食店の運用実態を紹介しつつ、未払い賃金や36協定違反のリスク、そして時代に合わない労働基準法34条への疑問を語りました。
- 労働基準法上、休憩時間に上限の規制はなく、休憩5時間でも即違法にはならない
- 塾講師のコマの間や飲食店の仕込み時間など、休憩を悪用に近い形で使う運用が業種によって存在する
- 休憩としている時間でも実際に働いていれば労働時間となり、未払い賃金や36協定違反のリスクがある
- 合法でも長すぎる休憩は不満につながり、人材獲得競争のなかで転職を招きかねない
- 吉田さんは、長時間休憩への保証給や、事務職向けに休憩を30分まで短縮できる仕組みなど、法改正の必要性を個人的意見として提起している






