そもそも「静かな退職」とは何か
この回は、安田さんからの一つの問いかけから始まります。アメリカで「静かな退職」が社会現象になっているというニュースを見た、日本でも同じことは始まっているのか、という質問です。
アメリカで静かな退職、クワイエットクイッティングというのが社会現象になっているというニュースを見たんですね。これ、日本でも同じことは始まってたりするんでしょうか?
すでに日本でもある、昔からあることだと思っています。
まず吉田さんは、聞き慣れない言葉であるクワイエットクイッティングの定義を説明します。実際に会社を辞めるわけではない点がポイントです。
会社には在籍し、必要最低限の業務はこなす。けれど仕事への熱意は低く、会社への帰属意識も低い状態で在職し続ける状態を指します。
経営者からすると、事実上退職したと言ったら言い過ぎですけど、ほとんど退職してるような状態と同じですよねっていう意味で、この静かな退職、クワイエットクイッティングっていう言葉が定義されているんです。
なぜ今この言葉が生まれたのか
吉田さんは、この言葉が出てきた背景にコロナ禍での在宅勤務の増加があると指摘します。
会社にリアルで出社しないと、仲間意識や職場への帰属意識が薄れ、仕事観そのものが変化していくといいます。
同じ空間で働いていれば、忙しそうな隣の人を助けようと思ったり、優秀な人を見て「ああなりたい」と思ったりする。そうした刺激がない状態が続くと、最低限のことだけやればいいという意識に傾いていくと話されています。
安田さんも、コロナ禍で職場環境がガラッと変わった実感を語ります。やる気が少なめの人が周りに感化されて頑張れていた、できる人を見て学びがあった、といった側面が会社に行くことにはあったと振り返ります。
吉田さんは、仕事の動機はプラスの欲求だけではないとも補足します。怖い上司に怒られたくないという気持ちで奮起していた部分も、リモートでは効きにくくなるといいます。
対面で怒られるのとZoom越しに怒られるのと、Zoom越しに怒られるのもそれはそれで怖いと思うんですけど、もしかしたらそういったところで奮起する材料がなくなっちゃうのかなと思います。
窓際族との違いと、Z世代への広がり
日本では昔から似た問題があったと吉田さんは言います。窓際族やぶら下がり社員といった言葉です。話を最初に聞いたときの正直な感想は「よくある話だな」だったといいます。
ただし、従来の窓際族との違いも指摘されます。窓際族が出世コースを外れた中高年に多かったのに対し、クワイエットクイッティングはZ世代など若い世代にまで広がっている点が新しいといいます。
窓際族って、出世コースを外れたおじさんが社内で居場所がなくなっちゃったりとか、ちょっと腐った状態になって仕事ができなくなったみたいなことが多いんですけど、このクワイエットクイッティングはZ世代まで広がっているんです。
安田さんは、Z世代が悟り世代とも呼ばれる点に触れます。出世やお金を稼ぎたいという意識がもともと強くない世代に、コロナ禍のリモートワークが加わって輪をかけているのではないか、という見立てです。
日本のエンゲージメントは世界最低水準
ここで吉田さんは、経営者に知っておいてほしいデータを持ち出します。日本の従業員エンゲージメントは、他国と比べて非常に低いという点です。
根拠として挙げられたのは、アメリカの調査会社ギャラップが2017年に行った調査です。少し古いデータだと断りつつ紹介されました。
熱意あふれる従業員はわずか6%で、調査対象139カ国中132位という結果です。安田さんは「大丈夫なんですかね」と一気に心配になったと反応します。
日本がすごい一気に心配になったんですけど。
吉田さんは、国民性の問題もあるので鵜呑みにはできないと補足しつつ、もともと帰属意識が低いところにリモートが加わってさらに低下する構図を示します。
オフィスでやっていたことをそのまま自宅でやろうというのが第一段階。その次の段階として、下がる前提で対策を考える必要がある、というのが吉田さんの主張です。
目標と評価基準を明確にし、コミュニケーションに投資する
では会社はどう対策すればよいのか。安田さんの質問に対し、吉田さんはまず目標と評価基準をはっきりさせることを挙げます。
あなたにはこの給料を払っています。その代わりに仕事はこれをやってほしいんです、というのを十分にイメージした上で働いていただく、入社していただくのがまず一つです。
もう一つが、コミュニケーションへの投資です。同じ空間にいれば「ちょっと教えてよ」と気軽にできたことが、リモートでは非常にしづらくなると指摘します。
吉田さん自身、お客さんから「先生、いつ忙しいのかわからない」と言われた経験もあるといいます。誰がどれくらい忙しいのかが見えにくいのがリモートの難点です。
その予防策として、面談の時間をあらかじめ決めて運用する方法が挙げられました。安田さんは、カレンダーアプリで従業員の空き時間が見えるようにしておく工夫も提案します。
対策しないと何が起きるのか、その悪循環
吉田さんは、対策しないとどうなるかもリスナーに伝えたいと話を進めます。
リモートで散り散りになっていても、長く続けば「あいつ仕事してないぞ」というのは結局バレる、といいます。
あいつも仕事してないんだったら、俺もちょっと手抜こうかなみたいな話が出てくるし、頑張っている優秀な社員は、頑張っているのが無駄じゃんという話になって辞める可能性があると思います。
結果として、ぶら下がり社員ばかりの会社になると、やる気を持って入ってきた新しいスタッフも同質化し、新たなぶら下がり社員を生んでしまう、という悪循環が描かれます。
だからこそ、評価基準や役割を明示した上でフィードバックし、きちんと運用していくことが重要だと締めくくられます。
安田さんは「朱に交われば赤くなる」ということわざを引き、やる気のある人が入っても環境次第でやる気が減っていく悪循環は簡単に想像できると応じます。そういう芽がちょっと出てきたら、対策をしっかりと講じていくことが大事だとまとめました。
働き好きの国、というイメージとのギャップ
最後に安田さんは、日本のエンゲージメントの低さに世界の人ほど驚いたのではないか、という視点を提示します。
過労死という言葉が英語でも浸透するほど、日本は会社に帰属意識がある人が多いと思われていそうなのに、実際のデータは真逆だった、というギャップです。
日本のイメージだと会社のために自分の命を危険にさらしてまで働くような人がいるように見えますけど、客観的なデータはそうじゃなくて、会社と自分の関係性を冷たくドライに考えている人が多いのかなという結果ですね。
イメージと客観的データのずれこそが、この回で得られた新たな発見だと安田さんは振り返り、対談は締めくくられます。
まとめ
クワイエットクイッティング(静かな退職)は、辞めないまま熱意と帰属意識だけが下がる状態を指します。日本ではもともとエンゲージメントが世界最低水準にあり、コロナ禍のリモートワークがそれを加速させています。放置すれば同質化の悪循環を招くため、目標と評価基準の明示、コミュニケーションへの投資、継続的なフィードバックが対策の柱になります。
- 静かな退職とは、在籍しつつ最低限の仕事しかせず熱意・帰属意識が低い状態
- コロナ禍のリモートで、職場からの刺激や奮起の材料が失われ加速した
- ギャラップ2017年調査で、日本の熱意ある社員は6%、139カ国中132位
- 対策の柱は、目標と評価基準の明示・コミュニケーションへの投資・フィードバックの運用
- 放置すると優秀な社員が離れ、新しい人材も同質化する悪循環に陥る





