個人プレーは、なぜ生まれてしまうのか
人事評価を導入すると、多くの人が成果を出そうと個人プレーに走ってギクシャクしてしまいます。どうすればいいですか?
吉田さんはまず、この現象がよくあるパターンだと指摘します。評価の基準が営業目標のような個人の頑張りだけに紐付いていると起こりやすい、というのがその見立てです。
個人プレーに走って、俺さえ成果出してればそれでいいっていう話になりがちなんですね
わかりやすい評価だからこそ、副作用も出やすいという流れです。
ただし吉田さんは、会社は個人の頑張りだけでなく全体のことも考える必要があると付け加えます。だからこそ、個人目標だけでなくチームでの達成目標を評価基準に組み込むとよい、と提案します。
「誰が教えたか」を記録するという発想
ここで吉田さんが紹介するのが、会社の仕事をあらかじめ列挙しておくという方法です。鍵の開け閉めや書類作成といった基礎的なものから、顧客対応や経営企画、マーケティングまで、業務を洗い出しておきます。
通常こうしたリストは、誰がどこまでできるかを管理するために使われます。しかし吉田さんは、そこにもう一つの記録を加えることを勧めます。
それを教えた人が誰なのかっていうのを記録しておくんです
それはどういう理由でですか?
営業成績だけで評価する制度では、新人や後輩をほったらかして自分の歩合だけを追うのが、成果を出すうえで最も合理的になってしまうからです。
一方で、会社にとって後輩の指導は立派な仕事です。世話好きな人が指導に時間を割いた結果、自分の営業成績が下がると、成績だけの評価では低く見られてしまいます。
そこを補うのが指導の記録だ、と吉田さんは説明します。たくさん教えたことを、営業成績に換算して評価するという考え方です。
営業だけが会社を回しているのか
安田さんは、この話から評価の本質を読み取ります。同じ行動でも、仕事として認知されるか、おせっかいとして消えていくかで、評価は大きく変わるという指摘です。
鍵開けや戸締り、雑用といった手間と時間のかかる作業も立派な仕事だ、と安田さんは受け止めます。
吉田さんは、営業畑の人が陥りがちな勘違いにも触れます。契約を取ってくる自分たちが会社を回している、という価値観です。
バックオフィスのメンバーとか、事務部門のメンバーをちょっと見下しちゃったりすると
営業が営業に専念できるのは、後ろで支えるメンバーがいるからだと吉田さんは言います。だからこそ、会社に必要な仕事を明文化することが重要だと結びます。
そもそも個人プレーは、悪なのか
話は相談の核心に戻ります。安田さんは、個人プレーでギクシャクしている状況を、良くないと判断すべきか、すぐ改善すべきかと尋ねます。
これに対し吉田さんは、必ずしもそうとは思わないと答えます。自立性がある、自己成長欲が強い、自分の結果に責任を持っている、といった前向きな見方もできるからです。
自分の仕事は自分のものなんだって、自分事に捉えてやっている人の方が、成果出してると思います
最後は会社が責任を持つ、誰かがやっているはず、と考える人はあまりいい仕事をしない、というのが吉田さんの実感です。個人プレーそのものは、いい方向のものとして肯定します。
埋もれた仕事を言語化して評価する
そのうえで、評価基準に加えるべき「会社全体への貢献」を吉田さんはいくつか挙げます。
- 指導や、教えた記録を残して評価する
- みんなが働きやすいようにマニュアルを作る
- 失敗を一人で抱え込まず共有し、上司に報告する
チャレンジしたことも、それを共有したことも素晴らしい、と吉田さんは評価します。営業成績など一つの指標だけで評価しないことが重要だという主張です。
安田さんは、この流れを2段階で整理します。まず自分の仕事に一生懸命になるのが第一段階で、個人プレーに走り気味なら軌道修正をかける第二段階に進めばよい、という捉え方です。
吉田さんも、個人プレーは目の前の仕事への熱意の裏返しだと言い添えます。当事者意識ややる気もなく最低限だけをこなす、いわゆるぶら下がり社員が多い状態に比べれば、ずっと良いという評価です。
認知されていない仕事を言語化して評価していけば、会社全体の成果につながる評価制度になる、と吉田さんは締めくくりました。
まとめ
個人プレーに走る社員を、吉田さんは頭から悪とは見ません。仕事への熱意の表れとして肯定したうえで、営業成績だけに偏らない評価基準へと組み替えることを勧めています。埋もれた貢献を言語化し、記録し、評価に反映する。それが組織全体の成果につながる、という回でした。
- 個人プレーは自立性や当事者意識の裏返しでもあり、必ずしも悪ではない
- 営業成績だけの評価は、後輩指導や雑務など会社を支える仕事を埋もれさせる
- 仕事を列挙し「誰が教えたか」を記録して、指導も評価対象にする
- マニュアル作成や失敗の共有・報告も、会社全体への貢献として評価する
- 埋もれた仕事を言語化して評価すれば、会社全体の成果につながる






