仕事があるダンサーとは何か
前回はヒールダンスや社会人経験の話が中心でした。今回のテーマは「仕事があるダンサーとは何か」です。
パンチさんは、Reinaさんと話がしやすい理由を、仲がいいからではなく、見えている世界や目線が近いからだと語ります。
そのうえで、舞台やイベントの現場でReinaさんの力を強く感じてきたと切り出しました。
Reinaさんはこれまで、舞台の振付、アーティストのMVの振付と出演、アイドルの振付、そしてインストラクターと、幅広い仕事を経験してきました。
踊りが上手いだけでは仕事にならない
ダンサー業界の外の現場は、純粋なダンスの現場と何が違うのか。Reinaさんは「対応力」という言葉を挙げます。
踊りがうまいだけじゃダメなんだなっていう仕事だなっていうのは、この舞台の振り付けも、その他の振り付けに対しても思うことはありますね。
たとえば舞台の振付では、演出家からイメージや注文を聞き、自分で振りを考えて渡す流れになります。
ところが、渡した振りをチェックしてもらった時に「ちょっと違う」と言われることがあると言います。時間も限られているため、その場で頭をフル回転させて作り直すそうです。
現場でのアンテナを常に張って、踊るじゃなくて、臨機応変に対応する能力が、ただ踊るだけのダンスの世界じゃなく、必要な部分なんだなっていうのは思いました。
ダンサーの本来の姿は、自分が踊りたいものを表現することです。
一方で振付の仕事は、踊る対象が自分ではなかったり、見せる相手がダンサーではなく一般の人だったりします。前提条件が変わるため、ダンスだけのコミュニケーションではうまくいかないこともあると、パンチさんは整理します。
Reinaさんは、初めて振り付けた舞台で「イメージと違います」と何度か言われ、焦って時間をもらったこともあったと振り返ります。ただ、それが経験となり、今はスムーズに対応できる自信につながっていると話します。
人形劇団とのコラボで見えた仕事の広がり
パンチさんは、Reinaさんの対応力を象徴する例として、舞台公演プロジェクト「踊場cue」の『星の王子さま』を挙げます。
この舞台では、住之江区にある老舗の人形劇団クラルテと組み、人形劇とストリートダンスを掛け合わせた、前例のない作品づくりに挑みました。
その中でReinaさんは、ジャズパートやストーリーの根幹となる重要なポジションを任されました。
パンチさんは、Reinaさんの仕事ぶりが人形劇団にも伝わり、結果として人形劇団の演出面の仕事につながったと後から知り、驚いたと語ります。
自分のパフォーマンスで(仕事を)取ってきてるっていうところが、なんかダンサーの新しい仕事を一個作れたなっていうところと、そういうのを任せてもらえる存在なんだなっていうところに凄みを感じて。
人形は可動域が限られ、表現も限られます。それでも表情があるその動きを、ダンサーとしてどう演出するか。Reinaさんは相当頭をひねったと言います。
Reinaさんは、まず人形の動きをじっと見て、可動域や顔の向き一つでどう見えるかを、動画で確認しながら細部まで追求したと振り返ります。
あんまり自分が知らない世界を知ることがまず大事だなと思うことが、大前提に自分の中では常にありますね。
知らない世界でも、やろうと思えば「こんな感じ」で進めることはできます。それでも自分から知りに行く姿勢が、パフォーマンスと相手からの信頼の両方につながっているとパンチさんは指摘します。
クライアント目線・速さ・言うべきことを言う
パンチさんは、Reinaさんの強みを3つに整理します。
とくに「言うべきことは言う」姿勢について、パンチさんは、依頼を引き受けるだけでなく、押さえるべき部分はきちんと伝えていると評価します。
なぜそうできるのか。Reinaさんは、自分に嘘をつくのが嫌いだからだと答えます。思い描いているものが崩れるのが自分の中で許せないのだと言います。
なんか自分に嘘つくのが嫌いなんですよ。
Reinaさんは自分を厳しい方だと自覚しており、それは過ごしてきた環境が今の自分を形づくったからだと話します。
師匠、高校のダンス部、そして社会人時代を通して、社会常識や一般的なマナーを叩き込まれ、忍耐を鍛えられた環境にいたと振り返ります。
筋通ってないのが多分嫌いで、嘘つくのも嫌いが、こうやっぱこうズバッと言うべき自分になったのかなっていう。
信頼が仕事を呼ぶ社会と、次世代への継承
パンチさんは、Reinaさんの働き方を、ビジネスの言葉で「プロジェクトマネジメント能力」と表現します。
期日や担当ごとの進行、共有すべき情報を筋道立てて整理し、関係者をまとめていく。これは優秀なプロジェクトマネージャーのスキルだとパンチさんは言います。
ダンサーという側面だけでなく、そこまでできることが、企画者や主催者にとっての信頼につながると語ります。
仕事はお金が発生するものであり、それにきっちり応えることで信頼が積み重なる。そしてその信頼が次の仕事を呼ぶと、パンチさんは続けます。
こんだけAIとか、デジタルの世界でも、結局仕事って誰々さんから紹介とか、いいなって聞いたから誰々さんにお願いするとか、めっちゃそこ属人的なつながりでなってるんで。
Reinaさんも、お金が発生する以上、生半可な気持ちではできないと教わってきたと話します。もしダンサーの道だけを選んでいたら知らなかった世界であり、社会人を経たからこそ今の仕事につながっていると感じているそうです。
ある意味、今こう仕事につながれてるのは、自分の社会人があったからだろうなとも感じてはいます。
そうした価値観を、Reinaさんは今、下の世代の生徒たちにも厳しく伝えているとパンチさんは言います。社会に出ると誰も教えてくれない部分だからこそ、その指導に安心感があると語ります。
宣言――ヒールダンスだけの舞台をつくりたい
最後は、番組恒例の「宣言タイム」です。GRAFFYが掲げる「一生ダンサー宣言」にちなみ、Reinaさんに宣言を求めます。
Reinaさんは、踊場cueが始まった時からずっと抱いてきた夢を明かします。
きっかけは留学時代にありました。ロサンゼルスのハリウッドで、ヒールダンス限定のショーに出演した経験です。
それはヒールを始めて舞台に立った初めての経験であり、何年経っても忘れられないと言います。「これを日本に持ち帰ってヒールを広めるんだ」と思って帰国したそうです。
もう一回自分で実現したいなっていう思いがもう本当に持ち続けてます。パンチさんがこの踊場cueを企画された時に、私絶対いつかヒールでやろうって思ってはいます。
パンチさんは、これまでの話を聞けば必ずやる人だとして、いつでも待っていると応えます。一人では難しいため、ヒールを踊れる生徒を育てながら実現していく形も見えてきたと語ります。
パンチさんは、ヒールの魅力は踊る本人だけでなく見る人にもエネルギーが伝わる点にあると話します。女性らしさも男性らしさも、生き様や佇まいから伝わるものだと言います。
いろんなヒールダンサーさんも巻き込んで実現できたら、自分の通ってくれてる生徒さんも、ヒールに憧れてやってる方も増えてはきてるんで、そこを一回立ち上げれたらなっていうのはいつか夢見てます。
まとめ
この回は、踊りの技術だけでは仕事にならないという現実から出発し、対応力、知ろうとする姿勢、そして言うべきことを言う誠実さが、ダンサーとして社会で信頼を得る土台になることを浮き彫りにしました。
- 舞台やMVの現場では、踊りの上手さ以上に、その場で作り直す対応力が求められる
- 知らない世界でも自分から知りに行く姿勢が、パフォーマンスと信頼の両方につながる
- クライアント目線・レスポンスの速さ・言うべきことを言う姿勢が、仕事があるダンサーの条件になる
- 仕事はお金が発生する以上、きっちり応えることが信頼を生み、その信頼が次の仕事を呼ぶ
- Reinaさんは、踊場cueでヒールダンスだけの舞台公演をつくることを宣言した
