演者と観客が移動する体験型の舞台
今回は、踊場cueで行われた人形劇団クラルテとのコラボ舞台『星の王子さま』の感想編です。野村さんは支配人による一人語りとして収録しています。
会場のグラフィホールを、パーテーションやトラスで区切り、ステージ以外の場所も演者と観客が移動していく新しい試みだったといいます。
待機場所だった空間が観客の入る場所になったり、タップダンスのゾーンではダンサーを観客がコの字型で取り囲んだりと、演者と観客の距離が非常に近い作りになっていたと話されています。
今回このグラフィホールを、なんとパーテーションとトラス等で区切って、かなり新しい試みとして、ステージ以外も演者とお客様が移動していくという形になっております。
全員でアイデアを出し合って作った舞台
今回の一番の感想は、みんなで作った新しいエンターテインメントだったという点だと野村さんは語ります。
人形劇団やダンサーだけでなく、音響、照明、舞台監督も含めて、全員が前例のない試みに取り組んだといいます。セットを組む前からアイデアを出し合い、組み上げた後も相談しながら作り上げていったと話されています。
全員がやったことない、前例のないことだったので、全員でセットを組む前からアイデアを出し合って、実際に目にしてみて、どこをどうしたらもっと面白いものができるのかって、全員でいろいろ相談しながら作り上げていった舞台になっていました。
リハーサルを重ねるごとに、人形とお客様の距離が近づき、人形の表情も良くなっていったといいます。人形劇の素人である自分から見ても、クラルテのクオリティが上がっていくのが伝わってきたと話されています。
目の前のお客様に見せて育った子どもたち
この舞台では、出演した子どもたちの大きな成長が実感できたといいます。
子どもたちは普段、レッスンや発表会、コンテストやバトルで踊っていますが、それらとは観客との距離感が違ったと野村さんは指摘します。
今回はほんと結構もう目の前。目の前で全く知らない人に対して踊ったりとか、踊る中でも演技の中でお客さんと少し交流を持つみたいな演技もしてもらうというところがあって。
最初は緊張もあり、いつものイベントの延長のように踊る子も多かったといいます。しかし本番が5回あるなかで、先生のフォローも入り、表情やプロ意識が出てきたと話されています。
踊っているときにお客様と目を合わせに行き、笑顔で演技の表情をする場面が、どのセクションの子どもにも増えていったといいます。
この変化は保護者からの声でもダンサー側から見ても感じられたそうで、子どもの成長という舞台のテーマが実現できたと振り返っています。
老舗人形劇団クラルテへの感謝
続いて、人形劇団クラルテと先生方への感謝が語られます。
野村さんは、歴史とプライドを持つ劇団が、ダンサーと関わる新しい試みに挑んでくれたこと自体がすごいことだと話します。
舞台では2匹の渡り鳥が案内役として登場し、観客と交流しながら星を巡っていく構成でした。この空気感と世界観をクラルテが作ってくれたことが、成功の大きな要因の一つだといいます。
王子様、蛇、狐といった物語の根幹はダンサーだけでは表現しきれない部分で、人形の動きとセリフの両方を担う人形劇団の力に感謝を述べています。
演技しながら、喋りながら、人形操作しながら、移動しながら、今回は本当にご負担も大きかったであろうなというところに、まずは最大の感謝と。
アンケートには、人形劇をこんなに間近に見られて役得だったという声もあったといいます。人形劇の側でも近くで人形を見る機会は少ないだろうと話されています。
ダンサーを支えたReinaさんの細やかなサポート
今回はダンサー統括としてReinaさんを迎えました。第1回で薔薇の花と地理学者役を務め、キッズ指導も担当した人物です。
Reinaさん自身は出演せず、ダンサーとキッズダンサー、そしてクラルテをつなぐ役割を担いました。星の王子さまへの理解度とプロデューサー能力を頼りにしたといいます。
例年に比べて決めるべきことが無限に出てくるなか、Reinaさんが率先してスケジュールを引っ張り、ダンサーや保護者への一言を添えた連絡までこなしてくれたと話されています。
ダンサーからも玲奈さんがいてくださったからできましたと。この精神的な支えの部分やサポートというのがやっぱり大事なんだなというところを痛感させていただきました。
子どもたちの控えスペースづくりでも、Reinaさんは机や椅子を自ら運んで準備したといいます。
さらに部屋ごとに紙を作り、小屋入りしてから毎日「頑張りましょう」「怪我はないようにね」といった一言を書き添えていたそうです。目に見えないところで子どもたちを大切にした姿に感銘を受けたと語られています。
再び集まったダンサーと雄大先生の挑戦
今回のダンサーは、第1回・第2回に出演した方々を基本的に招集しました。今回で3回目となります。
野村さんは、第1回・第2回に出た人たちが本当に出てよかったと思っていたか不安もあったと明かします。それでも、星の王子さまとクラルテを知るメンバーなら新しいものを作れると考え、声をかけたといいます。
新規メンバーとして加わったのが雄大先生です。踊場企画をほぼ全て観に来てくれていた人物でした。
雄大先生は本当に一回目からほぼ全て見に来てくださってて。見て「ありがとうございました」って言ってパーッと帰っていくみたいな。
雄大先生には2つのハードルがありました。1つは演技や舞台の経験がないこと、もう1つは平日働きながらの参加でスケジュールを合わせにくかったことです。サラリーマン経験のある野村さんだからこそ、その難しさが分かったといいます。
雄大先生が変わったのは現場に入ってからで、リハを重ねるなかで演技とダンスが相まわる部分、特にパイロット役のダンスが良くなっていったと話されています。
裏話として、王子様が蛇に噛まれて倒れる場面で、雄大先生は人形の手首を握って脈を測る仕草を2公演目あたりから加えていたといいます。見えにくい場所での工夫に、野村さんは面白さを感じたそうです。
タップとイマーシブが生んだ臨場感
タップの翔太さんは、王様の星と、てんとうむしの星のような星で踊りました。第1回はソロで出演していた人物です。
今回は翔太さんの生徒の双子姉妹に加え、Reinaさんが紹介した凛美ちゃんも加わりました。翔太さんと凛美ちゃんには縁があったといいます。
凛美ちゃんは十数年前、翔太さんがストリートでタップをしていた姿を見てタップを始めたそうです。その2人が今回共演することになったと明かされています。
凛美ちゃんはその翔太さんのタップに出会ってタップダンスを始めたらしいんですよ。そのストリートで見た翔太さんのタップを見て始めた凛美ちゃんと、今回この星の王子様で一緒に共演する。
タップゾーンはコの字型に板を組み、観客のすぐ目の前で踊る構成でした。舞台監督や音響照明とも相談しながら実現したといいます。
本当に目の前でタップを踊っている人を目の前にして、タップの音とちょっと振動したりとか、このライブ感を味わえるという経験って本当になかなか貴重かなって思う。
タップチームは観客が次の星へ移動しても世界観を崩さず演じ続けたといいます。王様の星では、観客が去ったあとも王様が権力を振りかざす演技を続けていたと、没入感を彩ったことが語られています。
蛇と酔っ払いの役を演じたアカネ先生は、第1回に続いて蛇を担当し、質感や巻き込み方がさらに冴え渡っていたといいます。同じ役を複数回演じることでブラッシュアップができたのではないかと話されています。
制作・音響・照明まで含めた総力戦
制作メンバーの活躍も語られます。舞台のセットは事前に3Dのパース図面を作ってもらい、トラスの使い方や中央の幕の使い方など、打ち合わせを重ねて形にしていったといいます。
もう本当に私じゃなんでも頭にはないことを、皆様と事前にいろいろ打ち合わせする中で、この形が出来上がって、なお現場でどんどんブラッシュアップしていく感じ。
舞台監督は、小道具の出し入れやロープの復元、椅子の設置などを2名でこなしていたといいます。グラフィのスタッフも、ドアの開閉や札が降ってくる演出などで協力しました。
照明と音響は、席から見えない位置での調整が求められました。照明はH2から来たしおんさん、音響はCSEの若手カズくんが担当したといいます。
しおんさんは、バラシの際に野村さんと同じ関西大学SBCの後輩だと判明したという嬉しい出会いもあったそうです。
音響のカズくんは、スピーカーの位置でシーン転換を表現するイマーシブならではの試みに、見えず聞こえない環境から挑んだといいます。照明と音の両面で、良い環境が作られたと振り返られています。
ダンスとイマーシブに感じる可能性と課題
来年以降も続けてほしいという声がアンケートにあったものの、来年はクラルテの予定が埋まっており、再来年は80周年イベントで多忙だといいます。野村さんは2028年あたりで再びやりたいと考えていると話します。
野村さんは、この形式に可能性しか感じていないといい、ダンサーだけのイマーシブ公演もできないかと考えていると語ります。
一方で大きな弱点も認めています。費用がかかりすぎ、1回の動員が少なく採算が合わないという点です。
大弱点はお金がかかりすぎる。そして一回の動員が少なすぎて採算が合わなさすぎるっていうことなんですよ。
今回は助成金を活用しましたが、再現性のためには商業ベースで最低でもトントンを目指したいといいます。費用の大半が舞台セットや設置なので、ロングラン公演にしてダブルキャストで回す形などを模索していると話されています。
その根底にあるのは、生の身体が持つ価値への実感です。ミスやちょっとした仕草すら、人間が発するメッセージとして伝わるものだといいます。
みんなの想いが一つの形になった
最後に、今回伝えたいことはみんなで作り上げた舞台だったという点に尽きると野村さんはまとめます。
ダンサーだけでなく、子どもたち、制作メンバー、グラフィのメンバー。みんなの想いが一つの形になり、お客様にダイレクトに届いたといいます。
今回私がお話ししたいことは、もう本当にみんなで作り上げることができた舞台だったなということに尽きる。
アーカイブ配信は収録時点で明後日の水曜日まで視聴できるとのことで、映像と合わせてポッドキャストを聴いてほしいと呼びかけています。
まとめ
演者と観客が移動するイマーシブシアター『星の王子さま』は、人形劇団クラルテ、ダンサー、子どもたち、制作・音響・照明までが一体となって作り上げた舞台でした。技術以上に育った子どもたちの表現意識や、目の前の観客に届く生の価値が、この試みの手応えとして語られています。
- 会場を区切り、演者と観客が移動する体験型公演として作られた
- 目の前のお客様に見せる経験が、子どもたちの表現意識を大きく育てた
- 老舗人形劇団クラルテの世界観や、Reinaさんの細やかなサポートが舞台を支えた
- 雄大先生の挑戦やタップチームの臨場感など、それぞれの成長と工夫が随所にあった
- 費用と採算という課題を抱えつつも、生の身体が持つ価値に大きな可能性を感じている
