なぜあの人は存在感があるのか?仕事で「覇気」を出すための3つの条件
メタ仕事論の第38回では、玉置真理株式会社ユデイモニア代表取締役。ダイヤル・キュー・ネットワーク創業、インターキュー(現GMO)創業、ザッパラス創業・上場など連続起業家としての経歴を持つ。さんと岡島匠さんが、会議やイベントで「存在感のある人」と「ただ座っているだけの人」の差を生む"覇気"について語りました。21歳で倒産寸前の会社を背負った原体験から導き出された、覇気を出すための3つの条件と、その使いどころまで。その内容をまとめます。
会議室の「存在感格差」はなぜ生まれるのか
パネルディスカッションで何人かが並んでいても、なぜか一人だけ目が離せない人がいる。打ち合わせに先方から4人来ていても、「この人に向けて話すんだな」とわかる人が1人だけいる。残りの3人は「ついてきました感」が漂っている──。玉置さんはこうした現象を「覇気の有無」で説明します。
存在感のない3人と存在感のある1人だったりするんですよね
名刺交換の場でも同じことが起きるそうです。大量に挨拶を受ける側からすると、ほとんどの人は記憶に残らない。しかし、短い時間でも「言葉が選ばれている」人は覚えている。口からなんとなく出た言葉ではなく、選び抜かれた一言を発する人には、その場に磁場のようなものが生まれるといいます。
覇気の第一条件──「なぜ自分がここにいるのか」の自覚
玉置さんが覇気の第一条件として挙げたのは、「自分がそこにいる理由を明確に自覚していること」です。登壇であれ、会議であれ、飲み会であれ、「私はなぜ今ここにいて、何をするのか」を意識している人は少ないと玉置さんは指摘します。
イベントに登壇する人でも、「何を話そうか」は考えていても、「この場における自分の存在理由」までは考えていないことが多いそうです。ところが、その存在理由を自覚的に持っている人は、発する言葉が的確になり、振る舞いに一貫性が出る。それが周囲に「磁場」を生むのです。
なんとなくその場にいる
口から出た言葉を話す
置物のように座っている
自分がいる理由を自覚している
選び抜いた言葉を発する
一言も話さなくても聞き方で存在感がある
興味深いのは、「一言も喋っていないのに覚えている人がいる」という話です。偉い人に同行してきた"その他大勢"の中にも、聞き方や挙動で存在感を発している人はいる。自分がなぜそこにいるのかを理解している人は、喋らなくてもにじみ出るものがあるというのです。
覇気の第二条件──責任を引き受ける覚悟
第二の条件は、「果たすべき使命や責任を引き受けていること」です。玉置さんによれば、自分がそこにいる理由を自覚しているだけでは「存在感」は出ても、まだ「覇気」には至らない。その場で何を果たすべきかという責任を引き受けた人だけに、覇気が宿るというのです。
岡島さんはこれを「飲み会の幹事」にたとえました。誰も店を決めない空気の中で、「俺がやらないと」と引き受けて「こっち取ったよ、行こうよ」と動く人は、その瞬間とても頼もしく見える。「この人の言うことを聞こう」という空気が生まれ、発する言葉の力が強くなるのです。
引き受けてる人間にだけ出る"気"みたいなものがあって、それが覇気につながっていくと思っています
覇気が出ているときは、同じ内容を話しても届き方がまったく違うそうです。相手への浸透の深さ、人を動かす力が段違いになる。自分でも「普段ここまでの届き方しないよね」という実感があるといいます。
覇気の第三条件──執着の先にある「手放し」
玉置さんが覇気を初めて体感したのは、最初の会社であるダイヤル・キュー・ネットワーク玉置さんが創業に関わった会社。NTTのダイヤルQ2サービスを活用した情報提供事業を展開していた。が倒産寸前だったときのこと。当時わずか21歳。資金繰りが行き詰まり、支払い先を一件一件回って、金額の圧縮や期限の延長を交渉していたそうです。
こちらには何の大義名分もない。100%自分たちの責任で「経営力不足です、申し訳ございません」と頭を下げて回っている。そんな極限状態で、初めて「言葉以上に、スタンスによって届き方が変わる」という体験をしたと語ります。
ここで玉置さんが強調したのが、第三の条件です。執着を超えて「どちらに転んでも引き受ける」という境地に至ること。絶対にイエスと言ってもらわないと困るという強い執着が発生しているうちは、力みや気負いは出ても覇気は出ない。やれることをすべてやり尽くし、「もうあかんかったらあかんかったで背負おう」と腹をくくったときに、初めて覇気が出るのだそうです。
① 強い執着の発生
「絶対にイエスと言ってもらわないと困る」
② やれることをすべてやり尽くす
策を尽くし、準備を完了させる
③ 執着の手放し=覇気の発動
「どちらに転んでも引き受けよう」と腹をくくる
もうあかんかもしれへんけど、あかんかったらあかんかったで背負おうと。そこまで行った時に初めて覇気が出てくるんですよね
重要なのは、これは過去の実績や肩書きから出るものではないということです。玉置さん自身、当時は21歳の女性で、何の実績も貫禄もなかった。「普通に21歳の女の子が来ても何の圧もない」。それでも覇気が出たのは、覚悟の上に乗った「未来への前傾姿勢」があったからだと振り返ります。
普段使いの覇気をどう身につけるか
極限状態でなくても覇気は出せるのか? 玉置さんの答えはイエスです。ただし、一度はむちゃくちゃ追い詰められた経験の中で「この感覚」をつかむ必要があるとのこと。ワンピースでも、追い詰められたときにたまたま覇気が発動し、それを再現できるように訓練していく流れがありますが、現実でも同じだと岡島さんは指摘しました。
では「普段使いの覇気」はどうやって出すのか。玉置さんは、自分が無意識にやっていることを言語化してくれました。
ここで岡島さんが前職での教えを紹介しました。「会議は答え合わせの場。試合前の準備で結果はもう出ている」。アジェンダも「これを話しましょう」ではなく「こういう結果に導きましょう」という設計にし、誰に振るか、誰が味方かまで事前に組み立てておくべきだという考え方です。
玉置さんはこれを「むちゃむちゃ正しい」と同意しつつ、新卒であっても実践できると付け加えました。会議の主導権やリーダーシップを取れない立場でも、「自分がこの会議で果たす使命はなんだろう」と考えてやりきる心構えで挑んでいる人がいたら、ものすごく伸びるだろうと。
なんとなく暇つぶしみたいに参加して、ちんって座って置物と変わんない状態の1時間を過ごすのか、ものすごく頭の中で考えて「この縄跳びにいつ入ろうか」って、ずっと縄を見てる人。絶対違いますよ
新卒が会議で大縄跳びの縄を1時間見続ける──発言のタイミングはなかなかつかめないかもしれません。でも「縄を見続けた人」と「置物だった人」では、成長のスピードがまるで違うはずだと玉置さんは語ります。しかもこの訓練には思考体力が必要なので、続けるだけで思考力そのものも鍛えられるという副次効果もあるそうです。
覇気を「出さない」という選択
覇気は強力だからこそ、使ってはいけない場面もあります。玉置さんは自身が運営するキャリア逆転塾ヒトハタ玉置さんが塾長を務めるビジネスの基礎力を鍛える伴走サポート付き学習プログラム。受講料は約35万円。の説明をするときは、意識的に覇気をオフにしているそうです。
理由は明快。35万円という安くない金額の商品を、覇気の力で「その気にさせて」売ってしまうのは良くないから。受講者自身が冷静に検討し、自分で決断する必要がある。「覇気押し」──社内用語だそうですが──をしてしまうと、舞い上がった判断になってしまうのです。
一方で、「今何か一歩を踏み出す背中を押すとき」には覇気押しをしてもいい、と玉置さんは区別します。一歩目は背中を押してもらってよくても、二歩目は自分で踏み出さなければいけないから。この「使い分け」こそが、覇気を真にコントロールしている証だといえるかもしれません。
ちなみに玉置さんは、普段は「情弱なおばちゃんとして扱われることが多い」と笑います。岡島さんも「消してるなと思ったことはありました」と証言。覇気の出し方がわかれば、消し方もわかるのだそうです。
まとめ
会議で存在感がある人とない人の差は、テクニックではなく「覇気」にある。そして覇気は、才能や実績ではなく、3つの条件がそろったときに誰にでも生まれるものだと玉置さんは語りました。
まずは日々の会議や打ち合わせを「試合」だと思うところから始めてみる。自分がなぜそこにいるのかを言語化し、果たすべき使命を考え、失敗しても引き受ける覚悟を小さくでも持つ。それだけで、「置物」から「縄を見続ける人」に変わり、いつか覇気が出せるようになるかもしれません。
- 覇気の第一条件は「なぜ自分がここにいるのか」を自覚的に意識すること。これだけで存在感が生まれる
- 第二条件は「責任を引き受ける覚悟」。引き受けている人だけに、言葉を届ける力が宿る
- 第三条件は「執着を超えた手放し」。やり尽くした先で「どう転んでも背負う」と腹をくくったときに覇気が出る
- 覇気は才能や実績ではなく「未来への前傾姿勢」から出る。若くても経験が浅くても出せる
- 普段の会議を「試合」と捉え、存在理由・使命・着地点を事前に準備することで「普段使いの覇気」を鍛えられる
- 覇気は強力だからこそ、相手に冷静な判断を求める場面では「覇気押し」をしないことも大切
