初回収録の「もやもや」の正体は何だったのか
今回のテーマは、メタ認知をどう鍛えればいいのか。前回の初回収録を例に、玉置さんが感じていた違和感を分解していきます。
玉置さんは、収録中にもやもやを抱えていたと振り返ります。配信されたものを聴いてみると、やはりぎこちなかったといいます。
なんでこんな話しづらいのかなっていうのをちょっと考えてみたんですよ。
結論から言うと、原因は話し方の「モード」が混在していたことでした。
岡島さんと二人で話すつもりでも、リスナーがいると思った瞬間、玉置さんは自然に一対多のモードへ切り替わってしまうといいます。
「あ、違う違う違う、これは一対一の体なんだ」っていうのでまた戻るんですよね。自分の中のモードを、「そうじゃない、そうじゃない」ってこう戻しながらずっとやってるんですね。
一対一と一対多で、思考モードはどう変わるのか
玉置さんにとって、この2つのモードはマインドセットも思考も全く別物です。一対一を「クラフトマンシップ」、一対多を「アーキテクト」と表現します。
一対一のときは、目の前の相手との会話体験を目指し、表情や呼吸、間合いをリアルタイムでスキャンしているといいます。
会話のほとんどが相手の言葉とか表情とかのインプットに集中しちゃってるんですよ。
一方、一対多になると重心が変わります。頭の中に平均的なリスナーを置き、その人に届くかどうかを考えながら話すようになります。
ロジックを先に設計して、一語一句を置いていくみたいな話し方をするんですよ、頭の中で。
この2つが混ざると、どっちつかずになってしまう。玉置さんは収録中、斜め上にいる「監督」の声を聞きながら話していたと表現します。
斜め上にいる監督が「おいおいおいおい、ちょっと今一対多のモードに入ってるぞ」とか言うんですよ。
これはまさに、話しながら自分を認知するメタ認知の実演でした。
相手の表情や呼吸をスキャンし、インプットに集中する。重心は「聞く」側にある
平均的なリスナーを想定し、ロジックを先に設計して言葉を置いていく
「野村さん」を配置したら、なぜ話しやすくなったのか
どちらにも振れない状態を、玉置さんは過去の似た構図から解決策を探します。行き着いたのが、3人でのパネルディスカッションでした。
聞き手が優位でも話し手が優位でもなく、そこにリスナー代表が1人いて、3人で会話しているととらえる。それをみんなに見せる場だと考えればいい、というわけです。
その代表として登場するのが、玉置さんが作った仮想のリスナー像「野村さん」です。
玉置さんは、この野村さんの写真を目の前に置いて収録しているといいます。
私は今、野村さんの写真を目の前に置いて喋ってます。野村さんの方も見ながら喋ってるんで。
その効果ははっきりしていました。モードが整理され、話しやすくなったといいます。
岡島さんは、Podcastの面白さは一対一の会話をこっそり覗ける点にあると整理します。基本は9割を目の前の人へ向け、残りの1割でリスナーを気づかう、というバランスです。
その残りの1割を、いまは野村さんが担ってくれている。だから玉置さんは、完全なプライベートトークができていると話します。
その残りの1割を今野村さんが担ってくれているので。完全にプライベートトークをしているんですよ、今、3人で。
意志の力ではなく、環境に頼るという発想
野村さんの写真という一見馬鹿げた手段が効くのはなぜか。玉置さんは、インプットの力を軽視しすぎだと指摘します。
例えばオフィスの壁に貼られた標語のように、毎日目にするものは思っている以上に自分に作用しているといいます。
一見馬鹿げてるんですけど、目の前に野村さんの写真があるだけで、やっぱり私のムーブが全然変わるんですよね。
ここで玉置さんは、意志や意識に頼ることの難しさへと話を進めます。岡島さんも、玉置さんと知り合ってから何度も交わした話だと振り返ります。
玉置さんは、目に入るものに影響を受けるタイプだといいます。散らかった場所が視野に入ると、思考も散らかる気がしてしまうそうです。岡島さんも、机が散らかると仕事に影響が出そうだと体感で同意します。
だからこそ、良いものを選ぶより「変なものを入れない」ことを気にしているといいます。SNSをあまり見ないのも、その一環です。
一対一と一対多のモードが混在し、話しながらどちらでいくか分からなくなる
リスナー代表の写真を目の前に置くことで、モードが整理され話しやすくなる
「分かった気になる情報」がなぜ一番の害なのか
情報の摂取について、玉置さんは最近考えていることを挙げます。それは、分かった気になる情報が一番害かもしれない、というものです。
これはこうなんだって結論出しちゃうと、その先考えなくなっちゃうので。
玉置さんは、思考を止めること自体は使いどころ次第だと整理します。考えても仕方ないことを反芻しているときには有効です。
一方で、建設的に考えたり探求したりすべきことについては、結論じみた情報で思考を止めるのは害悪だと話します。
この流れ自体が、具体例から掘り下げて枝葉に広がっていくPodcastらしさだと二人は笑います。台本に置いたテーマへの立ち返りメモが、本題を思い出させました。
メタ認知は「認知する訓練」として鍛えられる
では、メタ認知はどう鍛えるのか。玉置さんは、リアルタイムで強く意識しているわけではないと言います。
大事なのは、後から振り返ったときに、自分の感情や心持ちを認知できているかどうかだといいます。
後から振り返った時に、「あ、そういえばそういう風な心持ちだったな」とかいう、自分の感情とかを認知できているかどうかだと思うんですよね。
そして、これは訓練で鍛えられると玉置さんは言い切ります。玉置さんが実践するのは、期間を決めて自分の感情と思考をメモする方法です。
朝から晩まで、気持ちが動いたときに、その感情と頭で考えたことを記録していく。書くと決めると、認知しようという意識が働くといいます。
書くって決めてしまって、いちいち何かした時に、今気持ちが動いたっていう時に、気持ちと頭で考えたことを記録してみるんですね。
最初はうまくいかないといいます。強く腹が立ったり驚いたりは気づけても、些細な感情の変化には気づけないからです。
ちょっと焦った、違和感を感じた、モヤっとした。振れ幅の小さいものは、最初はなかなか気づけません。しかし繰り返すうちに、だんだん気づけるようになってくるといいます。
20歳で起業した「怖くない」の正体
この訓練を、玉置さんはいつから意識してきたのか。話は20歳での起業時代に及びます。
当時の玉置さんは、ビジネスライクな人付き合いが全く分からなかったといいます。友達としか接したことがなく、上司にあたる存在もいませんでした。
友達とだったら感情を交えて話してもいいじゃないですか。でも社会人となると、感情を交えて話す場面ってそうそうないじゃないですか。
自身のスタートを、玉置さんは率直に振り返ります。
私最初、「大丈夫かな、この人」スタートなんですよ。
30年以上前、大学生で起業する人は周りに一人もいませんでした。玉置さんは、その状況をむしろ強みだったと語ります。
怖いっていうセンサーがないんですよ。欠落です。
岡島さんは、玉置さんが怖がりだと聞いていたと切り出します。玉置さんは、怖がりだからこそ直視するのだと答えます。
幽霊って見えないから怖いじゃないですか。怖がりなんで直視するようにしてるんですよ。ガン見するんです。
ガン見してみると、案外そこまで怖くないと分かる。大学生で起業しても命をとられるわけではなく、当時は知識がないので怖さを測ることすらできなかったといいます。
玉置さんは、失敗したら何が起こるかを自分の知る範囲で突き詰めました。後ろ指をさされる、借金で自殺する。それでも、自殺さえしなければいいと結論づけます。
和歌山のサラリーマンの娘で、周りに経営者は誰一人いなかった。情報がないからこその「バカの強さ」だったと玉置さんは笑います。
「Tシャツぐらい」で話せる場としてのPodcast
当時のエピソードは、他の関係者が語るオフィシャルストーリーと食い違うため、玉置さんは話しづらいと言います。
皆さんのオフィシャルストーリーと違ったりするので、喋りづらいんです。
岡島さんは、当時は訂正される機会が少なく、語り手の脳内で着色された話が本当になっていくこともあると整理します。玉置さんも、何十年も語るうちにデフォルメされて面白くなってしまうと同意します。
だからこそ二人は、Podcastを気楽な場としてとらえます。テキストメディアのように「求められた正解」しか言えない場ではないからです。
岡島さんは、スーツにネクタイの話ばかりになるテキスト取材に対し、Podcastで求められているのは「Tシャツで来ました」ぐらいの話だと表現します。玉置さんも、パジャマまでは崩しすぎだと笑って応じます。
今回の収録について、玉置さんは野村さんのおかげで話しやすかったと振り返り、岡島さんも2回目にして硬さが取れてきたと話しました。
まとめ
初回収録の話しづらさを分解すると、原因は一対一と一対多のモードの混在にありました。玉置さんはリスナー代表「野村さん」の写真を置くことでモードを整理し、意志ではなく環境に頼る形で解決します。メタ認知は感情を記録する訓練で鍛えられ、その姿勢が20歳での起業から続いていることも語られました。
- 話しづらさの正体は、一対一と一対多という別々の思考モードの混在だった
- 意志や意識に頼るのは難しく、写真など外部のインプットに頼る方が効果は確実に出る
- 分かった気になる情報は思考を止めるため、探求すべきことでは害になりうる
- メタ認知は、感情と思考を記録する訓練を繰り返すことで、振れ幅の小さい変化にも気づけるようになる
- 怖さは直視して測ると、案外そこまで怖くないと分かることが多い






