NFTは「唯一無二の権利」を送る技術
番組では、大塚雄介さんがイーサリアムの話を深掘りする流れで、まず西山直也さんにNFTのイメージを尋ねます。
NFT知ってますよ。なんかアートとかをデジタルで買えるやつですよね。なんかちゃんと価値がある。
デジタルアートとしてのイメージは、2020〜2021年ごろのブームの記憶によるものです。大塚さんも「よくわからないアートがすごく値上がりした時代」と振り返ります。
なんか画像が買えるんだけど、これはNFTだから価値があるっていう。そういう時代もありましたね。懐かしい話ですけども。
大塚さんは、より身近な例として広告でも見かけるNOT A HOTELを挙げます。NOT A HOTEL ── 全国各地に高級宿泊施設を展開する事業。宿泊権を販売するモデルを採用している。
NOT A HOTELは当初、30泊や10泊などの単位で販売されていましたが、30泊で5000万円ほどするため、簡単には手が出せませんでした。
これをもう1泊から買えたら、もうちょっと買える人も増えるし、価格もすごい下げることもできるじゃないですか。
そこで、1泊単位で売る方法にNFTが使われているといいます。大塚さんは、なぜ宿泊がNFTに向くのかを説明します。
2月1日の1泊って、もう2月1日の1泊って決まってるじゃないですか。なんでもうその唯一無二の予約じゃないですか。
つまりNFTとは、唯一無二のデジタル的な価値のあるものを人に送ったりできる技術だと大塚さんは整理します。ノンファンジブルトークンの略で、トークン、つまり「しるし」の一種です。
ファンジブルって何ですか?
大塚さんは、通貨との違いで説明します。ビットコインは、誰が持っていても同じビットコインで、混ぜても区別がつきません。一方、NOT A HOTELの2月1日の1泊は、他に代えのきかない唯一の存在です。
エラーコインというか、ギザ10の中で唯一のやつみたいな。
予約に楽しみを埋め込むイーサリアムの仕組み
こうしたNFTを使えるようにしているのが、イーサリアムという技術です。西山さんは、以前の回で話題になった開発者ヴィタリックの名前を思い出します。イーサリアム ── プログラム(スマートコントラクト)を書き込めるブロックチェーン。NFTなど多様な用途で使われる。
プログラミングできるって言ってましたもんね。
大塚さんは、宿泊のNFTには日付などをあらかじめプログラムで組み込めると話します。受け取った人が開けると、いつ泊まれるかがわかる仕掛けを埋め込めるといいます。
開けるタイミングでいつ泊まれますよっていうのがわかったりする楽しみが埋め込まれたりする。
大塚さんは、それがカードを引くような体験になると表現します。「あなたの特別な日はこの日ですよ」といった演出が、予約に付け加えられるわけです。
輸送で傷つくトレカを「置いたまま」売買する
大塚さんは、次の実用例としてポケモンカードのNFT化を挙げます。西山さんは驚きつつ耳を傾けます。
大塚さんによれば、ポケモンカードには2つの要素があります。ゲームのカードとして遊ぶ側面と、レアなキャラだと価格が上がる資産としての側面です。若者の中には資産として持つ人も出てきているといいます。
なんかリザードンがすごいみたいな。3000万で売れたみたいな。
大塚さんは、同じリザードンでも傷ついたものとそうでないもので価値が違う点に注目します。だからみんな傷つけたくないと。西山さんも遊戯王のカードをパックに入れて保管していた世代です。
ここで大塚さんは、輸送による傷という物理的な問題を指摘します。カードを現物のまま送ると、その過程で傷ついてしまいます。
そこに置いといて、どっかの業者が管理しといて、その価値の移転だけをすれば売買できるようになるじゃん。
現物を業者が保管したまま、NFTとして権利だけを移す。すると海外の買い手にも、実物を郵送せずに売買でき、流動性が生まれます。デジタルの証券のようにやり取りできるようになるわけです。
西山さんは、株を買っても株券は手元に来ない今の仕組みと重なると理解します。大塚さんは、1つしかないものはNFTと相性がいいと補足します。
誰が持っていても同じ。混ぜても区別がつかず、代替が利く
特定の1泊やレアカードなど、他に代えのきかない唯一の価値を表す
なぜデータベースではなくNFTなのか
西山さんは、素朴な疑問を投げかけます。単にデジタルで「これは誰々の権利です」とデータベースに書いておくだけでは駄目なのか、というものです。
これは誰々の権利ですって書いておくだけじゃダメなんですか?データベースに。
大塚さんは、誰かが書き換えてしまえば権利が消えてしまうと答えます。特定の企業に寄らず、全世界共通で担保されている点が重要だと西山さんは受け取ります。
つまり、ビットコインに価値があると担保するのと同じ仕組みを、デジタルアートやトレカ、ホテルへと拡張しているわけです。それを可能にしたのがイーサリアムだと大塚さんは述べます。
NFTブームの正体はイーサリアム高騰の余り金
西山さんは、あれほどのブームだったのに今はめっきり聞かない、と率直に問います。大塚さんは「あれはやっぱりバブルだった」と答えます。
大塚さんは、暗号資産を理解するにはお金の流れを押さえる必要があると説明します。当時はイーサリアム自体の価格が大きく上がり、投資家は次の投資先を探していました。
その受け皿になったのがNFTでした。値上がりで生まれた余り金が、新しい投資機会であるNFTへ一気に流れ込んだといいます。
円で買ったものが1万円になってるので、9900分はある意味あずく銭というか、余ってるものじゃん。
西山さんは、唯一のアートが欲しい人ばかりではなく、値上がりを見込んで持っていた人が多かったのだと理解します。大塚さんも「基本的にはそういう感じ」と認めます。
NFTを難しくする「技術・お金・法律」の3つの視点
大塚さんは、暗号資産やブロックチェーンが難しい理由として、3つの視点を押さえる必要があると整理します。
1つ目はNFTのような技術進化、2つ目は金融的なお金の流れ、3つ目は各国の法律的な扱いです。これらを押さえないと本質が見えてこないといいます。
技術進化
NFTのような新しい技術がどう出てきたかを押さえる
お金の流れ
どこが盛り上がり、どこへ資金が流れるかを押さえる
法律
各国で法的にどう解釈され、動いていくかを押さえる
西山さんは、法律を押さえていなかったNFTがあったのかと尋ねます。大塚さんは、賭博性を例に挙げます。
1つのものを出すだけなら問題ないものの、購入時にランダムで価値あるものが当たる仕組みにすると、賭博に当たる恐れがあると説明します。しかも人はいいものを当てようとお金を注ぎ込み、依存に近づきかねません。
買う側はそこまでじゃないけど、NFTを出す人たち、事業者側っていう人はそこら辺を理解しておかなくちゃいけない。
コレクターが3人いれば価値はつく
数多のNFTが消えていったという西山さんの言葉を受け、大塚さんはコレクターの世界の性質を語ります。
大塚さんにとってガラクタに見えるものでも、他の人には価値があります。欲しい人が2人いれば、そのアートの価値は何億円にも上がっていく、と大塚さんは言います。
3人とかいれば、その人たちが富豪であれば価値がついてくるって話だと思うんで。
最も有名なNFTの例として、大塚さんはクリプトパンクを挙げます。レアキャラが数体しかなく、その希少性に価値がつくといいます。クリプトパンク(CryptoPunks) ── 初期に登場した代表的なNFTコレクション。ドット絵のキャラクターで知られる。
西山さんは、自分に興味がないからといって、そのNFTがゴミになるわけではないと理解します。大塚さんも「別にならない」と答えます。ただし絵には実用的な利便性がない一方、宿泊権のように使えるものは今後より広がると見ています。
発行側が業界を知らないと交わらない
大塚さんは、実際にやってみて難しいと感じる点を挙げます。NFTの技術的な理解と、発行する側の業界知識を両立させる必要があるという点です。
たとえばアイドルのチケットをNFTで出すなら、アイドルチケット業界のことをわからなければなりません。異なる業界の人が手を組んでいいものを作るには、一定の時間がかかるといいます。
有望な業界を問われ、大塚さんは不動産を挙げます。リゾートマンションを1億円で売ると買える人の母数は少ないものの、100万円に分割すれば買える人が一気に増えます。
そうすると、1億円で買える人の人数分しか売れないところが、細かくすることでもっと多くの人が売れる。
大塚さんは、大きなロットでしか売れなかったものを小さくすることで、新しいビジネスチャンスが生まれると述べます。証券の小口化と同じ発想で、不動産などに向いているといいます。
Coinbaseが買った「放送する権利」のNFT
大塚さんは、面白い例としてアメリカのあるポッドキャストの話を紹介します。番組名は思い出せないとしつつ、暗号資産の投資を扱う人気番組だったといいます。
その番組は、出演者がいろいろなプロジェクトを本音でこき下ろしたり評価したりする点で人気を集めていました。しかし途中で打ち切りになったといいます。
そこで運営が取った手段が、次のエピソードを放送する権利をNFTで売るという宣言でした。西山さんは戸惑いつつ聞き返します。
え、次のエピソードを放送する権利?どういうことですか。
仕組みとしては、放送を続けてほしければNFTを買ってスポンサーになってほしい、というものです。ただし、買った人に忖度せず本音で話す前提で発行されました。
このNFTを、暗号資産取引所のCoinbaseが去年、しかも高値で購入したといいます。Coinbase ── アメリカの大手暗号資産取引所。
えーすご。
大塚さんによれば、Coinbaseは暗号資産を盛り上げてきた番組を後継したいという狙いに加え、番組から批判されても止める権利がない前提でも構わないと考えて買ったといいます。
大塚さんは、「なんとかの権利を売る」という形はNFTに向いていると評価します。西山さんは、ワールドカップの放送権のようなものを思い浮かべますが、こちらはスポンサー権に近い形だと整理されます。
使い古された「NFT」という言葉をどう捨てるか
西山さんは、他にどういう業界で使うのが有望かと尋ねます。大塚さんは、高いアセットを持つ人ほど興味を示していると答えます。
さらに大塚さんは、既存の金融アセットはすでに仕組みができている一方、ポケモンカードのように新しく生まれた資産の方が向いていると考えています。若い人にとって身近なものです。
西山さんは、サザビーオークションにコロコロコミックの1号目のようなものが出ていると聞いた話を挙げます。大塚さんは、スニーカーなどストリートカルチャー系のものにも同じ感覚があると応じます。
一方で大塚さんは、2020年代のブームが与えたイメージの弊害を指摘します。当時、価格高騰で儲けを狙う人が目立ちすぎたため、今NFTをやると同類に見られるのを嫌がる人が多いといいます。
今自分がそれやっちゃうとそう見られちゃうっていうのを意識して嫌がってる人が結構いました。
大塚さんは、ここに世の中の見られ方と本質的な価値のギャップがあり、むしろそこにチャンスがあると見ています。だからこそ、これから取り組むなら「NFT」という言葉を使わない方がいいと助言します。
もっと利便性が良くなったみたいなことだけを言っていく方が多分いいんじゃないか。
つまり、裏側の技術としてはNFTでも、前面には出さず利便性だけを語る方がよいという見立てです。西山さんは「NFTに見えない何かが今後出てくる」と受け取ります。
大塚さんは、そうしたチャレンジは若い人からやってほしいと述べ、取り組むなら個人としても応援したいと話します。最後に、自身は投資として深追いはせず「正しくやっている」と語り、回を締めくくりました。
まとめ
この回では、NFTがデジタルアートのバブルとしてだけでなく、宿泊権やトレカ、放送権といった「唯一無二の権利」を扱う技術として捉え直されました。ブームの正体を理解したうえで、言葉に頼らず利便性で語る形にこそ次の機会があると整理されています。
- NFTは唯一無二のデジタル的価値を送れる技術で、宿泊権や日付入りの予約など代えのきかないものと相性がよい
- トレカは現物を業者が保管したまま権利だけをNFTで移すことで、輸送による傷を避け流動性を高められる
- ブームの実体はイーサリアム高騰で生まれた余り金がNFTへ流れ込んだバブルで、本質理解には技術・お金・法律の3視点がいる
- 不動産の小口化のように、大きなロットを分割して買える母数を増やす用途に有望さがある
- Coinbaseが放送する権利のNFTを買った例のように「権利を売る」形は向いており、今後は「NFT」を前面に出さず利便性で語る方がよい




