日本のAIは本当に「終わっている」のか?
おちつきAIラジオでは毎週火曜日に速報回を配信していますが、しぶちょーさんによると、日本関連のAIトピックはほとんど扱ってこなかったといいます。ChatGPT、Gemini、Claudeといった海外のサービスの話題に比べ、日本の動きは表に出てきにくいからです。
かねりんさんは冒頭から「あんまり期待してません」と話し、日本のAIはそもそも何もないと思っていると率直に明かします。
表に出てこないんじゃなくて(日本のAIは)もないんじゃないですか。
しぶちょーさんは、AI界隈には「日本オワコン」「AIはもう海外」と言う「逆張り驚き屋さん」もいると指摘します。今回は、そうした声に当てられて不安になった人に向けて、日本の勝ち筋を知って落ち着いてもらう回だと位置づけます。
最初に今日の結論を言っちゃうけど、バチバチに進んでますよっていう話。
しぶちょーさんによると、国産LLMの動きは技術だけでなく法整備も含めて急速に進んでいます。ただし、まだ結論が出た段階ではなく、これから変化や新しい取り組みが続く段階なので、何を見ておけばよいかを知っておくことが大切だといいます。
チームみらい・安野貴博氏が訴えた日本語データの重要性
国産LLMの最近の動きとして、しぶちょーさんがまず挙げるのは、チームみらい党首の安野貴博 ── AIエンジニア、SF作家として知られ、政党「チームみらい」の党首。参議院議員として、AIやテクノロジーを使った政治の仕組みづくりを掲げていますさんの国会での発言です。11月末、参議院の総務委員会の様子がYouTubeで配信され、そこで国産LLMの話題が出ていました。
しぶちょーさんの説明では、安野さんは国産LLMの開発を促すために、良質な日本語データセットが必要だと提案しました。テキストだけでは足りず、動画や音楽も扱うマルチモーダル化が進んでいることから、NHKの過去の放送アーカイブをデータとして使えないかという提案です。
プライバシーや権利関係の課題はあるものの、それらを除去すれば使えるのではないかという議論まで行われていたといいます。しぶちょーさんは、国産LLMの流れがそれほどリアルタイムで進んでいる例として紹介しています。
一議席でこうも変わるのかみたいなね。
かねりんさんは、チームみらいの政治の「見える化」の取り組みに一票の重さを感じたと話します。しぶちょーさんも、政治に興味がなかった自分でも動きがわかると評価し、チームみらいのYouTubeを追えば国のAI政策をかなりリアルタイムで追えると勧めます。
話はチームみらいのサブスクリプション型の党員制度や、番組と同じ緑のカラーへと脱線します。かねりんさんが「支部長も政治家になるかも」とからかい、しぶちょーさんが「エロいこと喋れないじゃん」と返すなど、番組らしい掛け合いが続きました。
2025年に成立した「AI推進法」は何を定めたのか?
しぶちょーさんが次に押さえるべき法令として挙げるのが、AI推進法です。2025年5月28日に国会で可決、6月4日に公布された、日本初のAIに特化した包括的な法令だと説明します。
ChatGPTはもう、隣の島の話だね。どんなにモデルが良くなっても。これは我が家の話だから。
しぶちょーさんによると、法案づくりには安野さんや東京大学の松尾教授もアドバイザーとして関わり、国産LLMの開発が大事だという話もしていたといいます。
AI推進法の特徴は、名前の通り規制ではなく推進を目的とする点にあります。厳しい罰則や義務を課すのではなく、ガイドラインを定めてAIを使える環境を整えていく法律だと、しぶちょーさんは説明します。
厳しい罰則や義務を課して、使い方を縛る
ガイドラインを定め、AIの研究開発と活用ができる環境を整える
基本理念では、AI関連技術を国の基盤技術と位置づけ、研究開発と活用を計画的に進めるとしています。その下にある「人工知能基本計画」は、12月5日時点ではまだ案の段階です。
計画案のコンセプトは「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指すというものです。これを聞いたかねりんさんは、信用していない表情を見せます。
もうなんかもうブロックチェーンの時でもうお腹いっぱいだから、もうやる気もないのに。ブロックチェーン大国とか何とか言って。
暗号資産業界に長く関わってきたかねりんさんは、新しい技術に対する日本の政治の動きには「げんなり」だと話します。それでも、AIは少し違うかもしれないとも付け加えました。
「使う」を重視する基本方針と、スモールJAPANという勝ち筋
しぶちょーさんは、人工知能基本計画の案に4つの基本方針が掲げられていると紹介します。中でも強調されているのが、AIの利活用の加速的促進、つまり「使う」部分だといいます。
国産LLMを作る開発力も当然大事ですが、それ以上に使うことを推しているとしぶちょーさんは見ています。信頼性を高めるAIガバナンスを主導し、政府主体で役所でもどんどん使っていく方針だといい、かねりんさんは「それはやれたらすげえな」と反応します。
では、日本の勝ち筋は何か。ChatGPT、Gemini、Claude、DeepSeekなど、各国が巨額の予算で巨大なモデルを作る中、今から追いつくのは難しいという見方があります。
しぶちょーさんによると、計画では、ChatGPTを超えるモデルを作るのではなく、医療やものづくりなど日本の産業基盤に特化したAIを作って使っていく方向が書かれています。サッカーの「スモールジャパン」のように、小さなプレーを積み重ねて勝ちにつなげるイメージだと例えますが、スポーツに興味のないかねりんさんには伝わりませんでした。
作るといってもゼロからではなく、オープンソースのモデルをチューニングして、日本語に特化したものを精度よく作るのだとしぶちょーさんは説明します。
日本語をうまく喋ってはくれるよ、ChatGPTとかでも。だけど日本のドメイン知識持ってないのね。
しぶちょーさんの言うドメイン知識 ── 特定の分野や業界に固有の知識のこと。業務の手順や慣習、専門用語など、一般的な知識だけでは補えない情報を指しますとは、日本の役所の業務フローや文化など、ローカルな知識のことです。こうした知識を持つ日本特化のLLMを作り、産業ごとに使うというニッチな戦略で勝負しようとしている、という整理です。
ChatGPTはトランクス、日本はベジータ?
しぶちょーさんは、汎用LLMと国産LLMの違いを『ドラゴンボール』で例えます。セル戦でトランクスは「俺は父さんを超えてしまった」とムキムキの形態になりますが、パワーをつけすぎて動きが遅くなり、攻撃が当たりません。ベジータはそれに気づいて、あえてその形態にならなかったという場面です。
(ChatGPTは)もうムキムキ。もうモデルを大きくすることしか考えてない。もうとにかく大きくなろう。身動きが取れない、もう。
すげえなんか自己肯定感めっちゃ上がるじゃん。
しぶちょーさんは、ものづくりの分野でも同じことが言えると話します。何でもできる便利ツールは大きく、邪魔な部分も多いため、専用に特化したツールを複数持つほうが使いやすいことがあります。
ナイフだけで使うと思ったら絶対ナイフだけの方がいいじゃん。
今の汎用LLMは十徳ナイフのようになっていて、専門的なことに使うと大きなモデルのごく一部しか使わず、もったいないとしぶちょーさんは指摘します。
何でもできるが大きく、専門的な用途では使わない部分が多くコストがかかる
用途を絞っているため鋭く、低コストで取り回しがよい
GPU不足は絶望的か?「後の先」で追いつく可能性
しぶちょーさんは、セミナーで聞いた話として、GPUなどの計算資源は後出しでも勝てるのではないかという見方を紹介します。
現状では、日本は計算資源で大きく差をつけられています。しぶちょーさんによると、AmazonやGoogle、Microsoftなどの海外クラウド事業者は数万基のGPUを持つ一方、日本の産総研や東工大は960基ほどです。ここでの1基は、H100やA100といった高性能GPU1個を指します。
一方で、GPUの進化は爆発的です。しぶちょーさんの説明では、5年前と比べて今のハイエンドGPUは性能が10倍〜20倍になり、価格は10分の1〜20分の1ほどに下がっているといいます。
海外がすでに導入しているのは数年前のGPUです。性能が上がって安くなった新しいGPUを日本が後からまとめて導入すれば、意外と追いつける可能性があるというのが、しぶちょーさんの言う「後の先」です。
海外は先行導入
数年前のGPUを大量に保有している
GPUが急速に進化
性能は大きく上がり、価格は大きく下がった
日本は後から導入
新しく安いGPUをまとめて入れられる
差が縮む可能性
既存資源を捨てにくい海外との兼ね合いで、追いつける余地がある
もちろん海外も新しいGPUを入れますが、すでにある資源を捨てるわけにはいかないという事情もあります。かねりんさんは「まだ説得性ありそうな負け惜しみ」と評しつつ、DeepSeekのようにGPUに頼らない手法が出てくれば、なおさら差は縮まるのではと応じました。
ガバメントAI「源内」と国産LLMの公募
しぶちょーさんによると、日本の戦略はDeepSeek寄りの、よりコンパクトに作る方向です。その具体例が、デジタル庁のガバメントAI「源内 ── デジタル庁が進める行政向けの生成AI。行政文書の作成や調査業務の効率化を目的とし、安全性や情報管理を重視した設計が特徴とされています」です。
源内は、政府内で翻訳などの業務に国産LLMを使っていくプロジェクトです。さらにデジタル庁は、ガバメントAIで使う国産大規模言語モデルの公募を12月から始めています。まずデジタル庁の中で使い、政府のAI活用をこのモデルをベースに広げていく計画だといいます。
かねりんさんは、応募が中国系ばかりだったらどうするのかと心配します。しぶちょーさんは、国産であることが条件で、海外のものを日本で「詰め直した」だけのものは認められないと説明します。
単純な性能だけじゃなくて、その後その人たちと開発するとか、やっぱ国産で国の中で完結してるっていうストーリーが重要だから。
懸賞金8億円、経産省主導の「GENIAC」とは?
LLMを作れる事業者はそんなにあるのか、というかねりんさんの問いに、しぶちょーさんは国が支援していると答えます。それが経済産業省のGENIAC ── Generative AI Accelerator Challengeの略。経済産業省が主導する生成AIの開発支援プロジェクトで、計算資源や資金、実証の場を提供していますです。
GENIACは、採択したプロジェクトに計算資源を提供したり、データ実証の場を用意したり、企業とのマッチングを支援したりします。かねりんさんが「僕らも応募したら」と冗談を言うと、しぶちょーさんは応募しているのはガチの研究者たちだと返しました。
現在はGENIAC Prizeというチャレンジも始まっていて、懸賞金は合計8億円です。一括ではなく4つのテーマに分かれていて、研究者たちが研究費を得るために競い合う形だといいます。結果は来年3月に出る予定です。
チェックしといた方がいい項目が多いけど、多分チェックしないです。
しぶちょーさんはかねりんさんがそう言うのを見越して、GENIACで支援されたプロジェクトをまとめてきたと明かします。採択されると1年ほど支援を受けながら開発でき、2025年の第2次採択は進行中です。今回は2024年に始まり結果が出た第1次採択の8〜9社ほどから、有名な3社を紹介します。
ELYZAは既存モデルに「脳みそを足した」
1社目は株式会社ELYZA ── 東京大学の松尾研究室発のAIベンチャー。社名は、1960年代に作られた初期のチャットボット「ELIZA」にちなむとされますです。しぶちょーさんによると、東大の松尾研究室からスピンアウトしたベンチャー企業で、ガチの研究者集団です。
ELYZAは、Metaがオープンソースとして公開しているLlamaをベースに、日本語を学ばせて日本語性能を高める取り組みを行いました。
しぶちょーさんが特徴として挙げるのは、デプスアップスケーリング ── 既存のモデルの層を増やして、後からモデルを大きくする手法。一から作るより低いコストで性能向上を狙えますという手法です。既存のLlamaを後付けで大きくし、パラメータ数を独自に増やしたうえで学習させ、性能を向上させたといいます。
脳みそをもう一個つけたみたいな。このぐらいの脳みそだったのを、なんかもう一脳つけようかなみたいな感じでパラメータを増やしたよね。
かねりんさんは、既存モデルにデータを入れただけではと思いそうだと話します。しぶちょーさんは、データを入れるだけなら誰でもできるが、ベースのモデル自体を拡張したことが技術的なポイントだと説明しています。
ABEJAとSakana AIは「小さく賢く」を追う
2社目は株式会社ABEJAです。しぶちょーさんの説明では、ABEJAは小さなモデルで性能を出すことを目指し、エージェントとRAG ── 検索拡張生成。AIが回答するときに外部のデータを参照して答えを組み立てる仕組みで、モデル自体を再学習させずに知識を補えますを組み合わせました。
AIを賢くしようとパラメータを増やすと、開発にも運用にもコストがかかります。ABEJAは、公開モデルとRAGを組み合わせて、コンパクトかつスピーディーに特化モデルを作るアプローチを取ったといいます。
3社目はSakana AI ── 東京を拠点とするAIベンチャー。自然界の仕組みに着想を得た手法で、大規模化に頼らないAI開発を掲げていますです。しぶちょーさんによると、CTOのライオン・ジョーンズ氏は、2017年に登場しChatGPTの「T」にもなっているTransformerの発明者の一人です。
Sakana AIのロゴは、魚の群れの中で1匹だけ違う方向を向いた魚です。しぶちょーさんは、大規模化を競う流れとは違うアプローチを取るというアピールだと説明します。
いっぱいの学習データとでっかい脳みそとでっかいの計算リソース。これだけあれば、どんどんあった分だけ、その賢くなるよねという。
このスケール則 ── モデルの規模、学習データ量、計算量を増やすほど性能が向上するという経験則。大規模化競争の根拠とされてきましたを、かねりんさんは「札束則」と言い換えました。Sakana AIはそこから脱し、柔軟でしなやかなAIを目指しているといいます。
GENIACの第1次採択でSakana AIが取り組んだのは、知識蒸留とsparse化です。しぶちょーさんによると、蒸留は機械学習では以前から使われていた手法ですが、言語モデルでは当時ほとんど例がなかったとプレゼンで語られていたそうです。
| 企業 | ベース・特徴 | 狙い |
|---|---|---|
| ELYZA | Llamaをデプスアップスケーリングで拡張 | 高性能な日本語LLM |
| ABEJA | 小さいモデルにRAGとエージェントを組み合わせ | コンパクトな特化モデル |
| Sakana AI | 知識蒸留とsparse化 | 小型で高精度なモデル |
ロゴの話から、スイミーは小さな魚が集まって大きな魚を追い払う物語だという話になります。しぶちょーさんは、GPTやGeminiを大きな魚と見れば、小さなものをたくさん組み合わせて戦う日本の戦略とイメージが合うと、自分なりの解釈を話しました。
ベンチャーのプレゼンが面白い理由
第2次採択にはELYZA、ABEJA、Sakana AIも入っていて、今年の結果も楽しみだとしぶちょーさんは話します。第1次採択の結果や第2次採択の計画は、YouTubeなどで公開されています。
かねりんさんは普通の人が見てわかるのかと疑いますが、しぶちょーさんは一般向けの発表なので内容はわかりやすいと答えます。細かい技術はわからなくても、どんな課題にどう取り組んだかはつかめるといいます。
ベンチャー企業の人ってプレゼンうまいのよ。やっぱ資金調達さ、するから。
しぶちょーさんは、ベンチャーの世界を「崖から落ちながら飛行機を組み立てる」ものだとよく言われると紹介します。スピード感がなければ地面に激突してしまうような厳しい世界だといいます。
大手企業は「日本版ChatGPT」を目指す
ベンチャーだけでなく、日本の大企業も国産LLMの開発を進めています。しぶちょーさんは、大企業は小さく作るよりやや大きめのモデルを作る傾向があり、特にソフトバンクは物量でいこうとしている印象だと話します。
かねりんさんが「それでも勝ち筋はあるのか」と尋ねると、しぶちょーさんは日本語に特化していることが重要だと答えます。ベンチマークでGeminiに勝たなくても、日本のタスクで特化した性能が出せればよいという考え方です。
つまり同じニッチ戦略の中に、より小さく作ろうとする人たちと、大きなモデルで日本版ChatGPTを作ろうとする人たちがいるという整理です。プレイヤーとしては、NTT、NEC、富士通、ソフトバンクなどがあります。
| 企業 | モデル名 | 補足 |
|---|---|---|
| NTT | tsuzumi | 10月にtsuzumi 2の提供開始 |
| NEC | cotomi | - |
| 富士通 | Takane | - |
| ソフトバンク | Sarashina | 物量で大きなモデルを目指す |
しぶちょーさんによると、どれも日本風の名前をローマ字で表記しています。これらは一般の人がChatGPTのように使うものではなく、企業と契約して社内システムに組み込む形だといいます。
元刑事のかねりんさんは、官公庁、特に捜査機関にどの程度導入されるかが気になると話します。しぶちょーさんは、完全な国産LLMならセキュリティは担保されると応じ、全官公庁に広げていくのが国の方針だと説明しました。
公務員の仕事がなくなるのではという心配も出ますが、しぶちょーさんは、紙でしか申請できない仕組みが残る日本ではリープフロッグ ── 段階的な発展を飛び越えて、一気に最新技術が普及する現象。固定電話が普及する前に携帯電話が広まった例がよく挙げられますが起こるのではないかと見ています。デジタル化を飛ばしていきなりAIが浸透し、30年の遅れを一気に埋める可能性もあると期待を語りました。
学校でAIが使えない?教育現場で痛感した国産の必要性
しぶちょーさんは、国産の大切さを実感した体験を語ります。先週、工業高校の先生向けに「AIとものづくり」をテーマに2時間ほど講演し、画像から3Dモデルを作るサービスのデモを見せました。
先生の写真をその場で3Dモデルにしてみせるとウケがよく、先生たちも自分でやってみたいと言いました。ところが、実際に試してもらおうとするとできなかったといいます。
中国のサービスだから。
使ったのは番組でも紹介した中国のサービスでした。公立校のネットワークは行政のもので、中国のサービスにはアクセスできないようになっています。しぶちょーさんによると、3D生成サービスはほとんど中国系なので、何も使えなかったそうです。
だからさ、やっぱ国産のサービスめっちゃいるわって思った。その時。
先生が自宅で趣味として使うことはできますが、生徒と一緒に授業に取り入れることはできません。責任問題もあるため、個人の端末で使うといった抜け道も現実的ではないと、しぶちょーさんは話します。
しぶちょーさんは、行政や教育の現場で安心して使えるのは国産のサービスだと実感したといいます。国が主体となって官公庁ベースで国産LLMを進めるなら、許可も下りやすいと考えられます。
勝つ戦略ではなく「負けない戦略」
こうした取り組みから、しぶちょーさんは「日本はオワコンではない」と結論づけます。かねりんさんが、結局は日本国内向けなのかと尋ねると、しぶちょーさんは世界を取るための戦略ではないと認めます。
しぶちょーさんの考えでは、狙いは海外へのお金の流出を止めることです。食料自給率のように、AIも国内で自給して使っていきたいのだといいます。
世界でトップを取り、海外の人にも使ってもらう
国内で自給して使い、海外へのお金の流出を止める
かねりんさんは「我が国の国民が使えばいい」とまとめ、「聞いてますか、政府の方」と冗談めかして呼びかけました。話を聞く前は「はいはい」としか思っていなかったと、反省も口にしています。
10年後、国産LLMはどこで使われている?
かねりんさんは、10年後に国産LLMが広まったら、日本人はみんなGPTよりそちらを使っているのかと問います。しぶちょーさんの答えは、汎用タスクやプログラミングは引き続きChatGPTなどを使うだろう、というものでした。
一方で、日本語の文章を作る用途や日本人向けのサービスには、国産LLMを組み込むほうがよい場面があるとしぶちょーさんは話します。特に国の仕組みの中にある無駄が、国産LLMで少しずつ改善されていくと見ています。
なんか破壊的なイノベーションが起きて、こんなことなるんだよっていうよりは、改善とか良くなるよっていう文脈であると思う。
かねりんさんは、裁判手続きもAIで合理化できそうだと話します。法律は条文と過去の判例の積み重ねで、それを全部踏まえて条件を当てはめて判断するからです。
しぶちょーさんは、知財や特許とも相性がよいと続けます。特許の文章は人間には読みにくいものの、網羅的かつ体系立てて書かれているため、AIにとってはとても扱いやすいフォーマットだと考えられるからです。
汎用のChatGPTではドメイン知識が足りずに難しくても、日本の仕組みに入っていく国産LLMなら可能性がある、としぶちょーさんは期待を語って番組を締めくくりました。
まとめ
海外の巨大モデルの話題に隠れがちですが、日本でもAI推進法、ガバメントAI「源内」、GENIACなど、国産LLMを後押しする動きが進んでいます。番組では、巨大モデルと正面から張り合うのではなく、日本語と日本の産業に特化して国内で使っていく戦略が、日本の現実的な勝ち筋として語られました。
- 2025年に成立したAI推進法は、規制ではなく推進を目的とし、特に「AIを使う」ことを重視している
- 日本の方針は汎用の巨大モデルではなく、日本語と産業に特化した小さく鋭いモデルで勝負すること
- GPUの急速な性能向上と低価格化により、後から導入する日本にも追いつく余地があるという見方がある
- GENIACではELYZA、ABEJA、Sakana AIなどが、それぞれ異なる手法で日本語LLMの開発に取り組んでいる
- 教育や行政の現場では海外サービスが使えない場面があり、国内で自給する「負けない戦略」として国産LLMが必要とされている





