AI GALAのステージに立った3人は何者?
この回は特別回です。2026年1月25日に名古屋市で開かれたイベント「AI GALA」で、しぶちょーさんとかねりんさんが佐々木亮さんと登壇した際のトークが公開されています。
かねりんさんの説明によると、登壇のテーマは「2026年、人とAIの役割分担はこう変わる。組織で活かすAIエージェント」です。約1時間のトークを、少しだけカットした形で届けています。
会場は名古屋のAI拠点STATION Ai ── 愛知県名古屋市にあるスタートアップ支援の大型拠点。AI関連の企業やイベントが多く集まる施設として知られていますです。しぶちょーさんは会場に「初めて来た人」を尋ね、多くの手が挙がっていました。しぶちょーさん自身も2回目の来訪時に、別の仕事で来ていた佐々木さんと偶然出会ったそうです。
佐々木さんは株式会社DeNA AI LinkのDevin推進部部長です。DeNA AI Linkは、DeNAのAI関連事業を外部企業と進めたり、ツールを販売したりするために2025年4月に設立された会社で、佐々木さんはアメリカのAIエージェント「Devin」の販売推進を担当しています。
佐々木さんは元天文学者という経歴の持ち主です。宇宙の話題を毎日配信するポッドキャスト「宇宙話」を5年ほど続けているほか、データ分析の番組「AIの隣のデータ分析屋さん」も配信しています。営業先で名刺の「博士」の肩書きを見せ、天文学者だったと明かすのが定番だといいます。
しぶちょーさんはこのイベントの共同主催者でもあり、運営側と演者を兼ねての参加でした。かねりんさんは愛知出身で、名古屋のポッドキャスト番組も担当している縁から、名古屋にはよく足を運んでいると話しています。
2026年はなぜ「組織でのAI活用」の年なのか
佐々木さんがこのテーマを選んだ理由は、個人のAI活用がすでにかなり進んでいるという認識にあります。SNSにも個人の効率化事例はあふれていますが、この先は組織としてどう使うかが重要になると考えたそうです。
佐々木さんは、名古屋ならトヨタのような大企業を例に挙げます。個人が出す成果よりも、大きな組織が特にAIエージェントをどう使うかのほうが、全体への影響は大きい。2026年はその点が問われる年になるだろう、という見立てです。
その一部を担えそうなのが、佐々木さんが扱うDevin ── 米Cognition社が開発した、ソフトウェア開発を自律的に進めるAIエージェント。「AIソフトウェアエンジニア」を掲げて登場し、大きな注目を集めましたです。しぶちょーさんは佐々木さんの番組で存在を知っていたものの、ほとんど触ったことがなく、この日のために試してきたといいます。
佐々木さんによると、Devinは世界的に見ても最初期に「AIエージェント」として登場したサービスに近いものです。2024年秋ごろにベータ版が出て、ソフトウェアエンジニアリングを大きく置き換える存在として話題になり、その後正式版として提供されるようになりました。
当時のAIはチャット型が中心で、コーディング支援もGitHub Copilot ── GitHubが提供するAIコーディング支援ツール。エディタ上でコードの続きを提案する補完機能から広まりましたやCursorのように、やりとりしながら少しずつ補完するものでした。佐々木さんは、指示を出すと自律的に作業を進めてくれる体験ができた「1発目」がDevinだったと振り返ります。
人とやりとりしながら、コードを少しずつ補完してくれる。GitHub CopilotやCursorなど
指示を受けると自分で作業を進める。Devinはこの体験を最初期に届けたサービス
佐々木さんは、これまで1つのプロジェクトにエンジニア10人を入れていた開発が、AIエージェントによって「エンジニア1人で5人分、10人分」の仕事ができる段階に来ていると話します。ただし、SNSで目にする事例の多くは、まだ1つのプロジェクト単位の効率化だといいます。
佐々木さんが2026年のポイントと見るのは、その先です。1つのプロジェクトにはデザイナーやPMなど複数の人が関わります。その中でAIエージェントをどう標準的に使えるようにするかが問われる、というのが佐々木さんの考えです。
バイブコーディングのサービスは使い物になる?
しぶちょーさんが「開発の現場は今まさにこうなっているのか」と尋ねると、佐々木さんは番組の「おちつきAI LAG」を例に挙げました。1人で作るのは難しかったはずだ、という指摘です。
しぶちょーさんによると、おちつきAI LAGは1人で作れば3〜4ヶ月かかる規模のものでした。それをReplit ── ブラウザ上でアプリ開発から公開まで行えるサービス。AIエージェント機能を持ち、指示からアプリを自動で組み立てられますのエージェントが、4〜5時間ほどで自律的に作り上げたといいます。
佐々木さんは、1人の仕事量とは思えない成果が細かく出てきていて、少人数でもサービスを作れるようになってきたと話します。
おちつきAI LAGの使い心地について、しぶちょーさんは「まだあれ」と苦笑いします。安いAPIを使っているため回答の質が低く、お金をかければ良くなるそうです。
ここで、しぶちょーさんが以前の配信で、バイブコーディングで作ったサービスはセキュリティホールが怖いと話していたことが話題になりました。佐々木さんは、それらしいものは作れるものの、最後の磨き込みには時間がかかると認めます。
しぶちょーさんも、押さえるべきところを人が「大丈夫だよね」と確認する工程は絶対に必要だと話しています。では、そのチェックのほうに時間がかかってしまわないのか。この問いから、佐々木さんの社内事例へ話が移ります。
オフショア開発の成果物をDevinで磨き込むとどうなる?
佐々木さんが紹介したのは、DeNA社内でAIプロダクトを作った事例です。自社のエンジニアではなく、オフショア開発で作ってもらう形を試したといいます。
かねりんさんの質問に、佐々木さんはオフショア開発 ── ソフトウェア開発を人件費の安い海外の企業やエンジニアに委託する手法。日本ではベトナムやインドなどへの委託がよく知られていますを「国内の開発会社に頼むことの海外版」と説明します。今回の委託先はベトナムでした。
佐々木さんによると、オフショア開発は要件をがっちり決めておかないと、それなりのクオリティのものが返ってきます。セキュリティの基準が甘かったり、使いづらかったりもします。それでも数百万円でエンジニア数人が1つのサービスを作ってくれるなら、安く済むという判断で発注できるそうです。
返ってきた成果物を、DeNAではすべてDevinで磨き込みました。まずDevinにセキュリティの脆弱性を指摘させ、社内のセキュリティ基準の資料や、一般的に指摘される項目も渡します。
その結果、社内のセキュリティチームが見つける問題の5〜6割をDevinが見つけ、すべて修正したといいます。
佐々木さんは、脆弱性は「ダメなもの」がはっきり決まっているため、AIエージェントに向いていると説明します。AIエージェントは、ゴールが明確であるほど、そこへ向かって突き進む性質を持つからです。
佐々木さんによると、ゴールを達成できなければ一度立ち返り、別の方法で再挑戦する。この自律性こそが「エージェント」と呼ばれる理由です。人が脆弱性を見つけ、エンジニアを割り当てて直すという手順を、Devinが1人で完結させるため、非常に速かったといいます。
ゴールを渡す
社内のセキュリティ基準や、一般的な指摘項目を資料として渡す
見つける
成果物の脆弱性を洗い出す
直して確かめる
解決策を実行し、うまくいかなければ立ち返ってやり直す
しぶちょーさんは、海外への開発委託ではコミュニケーションロスが大きいと話します。意図を正確に書かないと伝わらず、仕様がわかるドキュメントも用意されていない。そのやりとりに時間がかかり、結局は日本側でかかる人件費のほうが高くつく、というのがよくある課題だそうです。
そういう人たち(海外の開発者)とのやりとりの間にAIエージェントが入って精査したりとかしてくれるような使い方するとかなりいいなって思いましたね。
かねりんさんが「オフショアに出す部分もAIでできないのか」と尋ねると、佐々木さんは「できるはできる」と答えます。ただ、委託先の開発者もAIでベースを作り、最後の1〜2割の磨き込みには人の手をかけています。その人件費を含めても日本より安いため、AIでベースを作り、向こうで磨き込んでから納品してもらうのが効率的だといいます。
全工程をDevinで完結させる場合は、それなりにコストがかかります。それでも、Devinを部分的に使うだけで、社内のセキュリティ担当とのやりとりがなくなり、修正するエンジニアも半分で済んだそうです。
日本側の担当者は、エンジニアとPMの2人だけでした。佐々木さんによると、全体として期間は約半分になり、コストは半分から3分の1ほどに下がったといいます。同じ質のものができたかというしぶちょーさんの確認にも、佐々木さんははっきり「そうです」と答えています。
かねりんさんが「使い物になるじゃん」としぶちょーさんに振ると、佐々木さんは補足します。しぶちょーさんの注意は、バイブコーディングだけで何でも作れると思い込んでいる人に向けたもので、今回の事例はプロフェッショナルが使っている点が違う、という趣旨です。
AIエージェントが工程の「つなぎ目」を埋めるとは?
佐々木さんは、Devinを1人ひとりが使っても個人の作業は半分ほどになると話します。ただ、組織が目指すべきは全体としてどれだけ効率化したかです。世の中にあふれているのは、1つの業務部分の効率化の話だといいます。
佐々木さんが示した例では、デザイナーが作業を半分にし、次のPMも仕様書づくりを効率化し、エンジニアも効率化しています。それでも、工程と工程の間のやりとりには、会社ではとても時間がかかります。
しぶちょーさんも、工程間では手戻りも同時に起きると補足しました。そこでDeNAでは、Devinを「コミュニケーションのハブ」にして、工程の間を縮めようとしています。
人は自分の担当範囲をAIで効率化します。そのうえで間に入るDevinは、次の工程のことも把握しています。そのため、次の人が使いやすい形に整えてから仕事を渡せる、というのが佐々木さんの説明です。
デザイン、PM、エンジニアがそれぞれAIで効率化するが、工程間のやりとりや手戻りに時間がかかる
次の工程を把握したDevinが間に入り、次の人が使いやすい形に整えて渡す
佐々木さんは、ここでもゴール設定が鍵になると話します。次の人がどういう状態で仕事を受け取りたいのかが明確であれば、前の工程の人はそこに合わせて仕事ができます。
佐々木さんによると、この形はまだあまり実現していません。それでもDeNAでは社内で実現しなければならないと決まっています。背景にあるのは、DeNA創業者の南場智子 ── DeNAの創業者で、代表取締役会長。日本を代表する女性起業家の一人ですさんが1年前のスピーチで掲げた「AIオールイン」のスローガンです。
南場さんはそのスピーチで、DeNAの社員を半分にすると宣言しました。佐々木さんの説明では、既存サービスの運用を半分の人数で回し、残りの半分は新規事業でユニコーン企業を作るという意味です。組織的なAI活用をやり切らなければ、半分の人数では回せません。
かねりんさんが「やり切らないとクビになっちゃう」と振ると、佐々木さんも笑って応じています。しぶちょーさんは、個別最適ではなく全体最適、工程の最適化でAIエージェントが活躍するということだと受け止めました。
佐々木さんは、AIエージェントを個人のユースケースとして導入するのではなく、組織で1つのエージェントを回すほうがよいと考えています。その役割を担いやすいのがDevinだ、というのが佐々木さんの見方です。
営業とエンジニアのやりとりはAIで10分の1になる?
工程をつなぐ事例として、佐々木さんは社内の営業の例を挙げました。営業は技術の背景をあまり知らない「売るスペシャリスト」であることが多い職種です。
たとえば、地方自治体の公募案件に自社プロダクトを売り込みたい営業がいるとします。要件に対して足りている機能と足りない機能を洗い出し、追加でどれだけの工数が必要かを示すには、これまではエンジニアを連れて行って相談する必要がありました。
DeNAでは、その営業にDevinを持たせています。Devinは社内製品のソースコードを把握していて、エンジニアの作業状況もGitHubなどを通じてリアルタイムに理解しています。営業はDevinと話しながら、追加開発の見積もりまで作れるようになりました。
エンジニアはレビューするだけになり、数週間かかっていた案件ごとの作業が10分の1ほどになった事例が出てきているといいます。佐々木さんは、セールス、エンジニア、デザイナーといった職能を超えて内容を把握しているAIが社内にいることが大きいと話します。
営業
顧客や公募の要件を受け取り、Devinと話す
Devin
ソースコードと開発状況をもとに、足りない機能と追加工数を洗い出す
エンジニア
見積もりをレビューするだけで済む
しぶちょーさんは、この話がものづくりの文脈でも重要だと続けます。
ソフトウェアってまだ編集がきくんですよね、後から。ものづくりって物理的なものを作った瞬間にもう修正ほぼきかないんですよ、その後。
そのためものづくりでは、要件をなるべく開発の前工程で引き出すフロントローディング ── 製品開発の初期段階に検討や問題の洗い出しを集中させ、後工程での手戻りを減らす考え方。製造業で広く使われていますが重要になります。しぶちょーさんによると、営業が顧客の要望を十分に言語化できず、後から要件が出てきて手戻りが起きることも多いそうです。
佐々木さんは、これまで開発側がチェックシートを用意して「最低限これだけは聞いてきて」と営業に頼んでいたと話します。次の工程を把握したAIが会話を支えれば、細かいケースまで補えるため、手戻りはさまざまな場所で減らせるはずだといいます。
しぶちょーさんは、縦に流れていた工程が横並びになり、チーム同士がやりとりしながら一気に進むイメージだと表現しました。佐々木さんは、こうした事例は社内で複合的すぎて表に出にくいものの、各社で実は進んでいる可能性もあると話しています。
Devinは高い?ACUと「人件費」で考えるコスト感
しぶちょーさんによると、Devinは個人でも試せますが、料金はやや高めです。ACUという独自の単位があり、エージェントが動いた時間に応じて課金されるような仕組みになっているといいます。
佐々木さんは、Devinは他のAIツールと比べると一見高いと認めます。ただ、佐々木さんたちは「人を置き換える」ものとして捉えているため、比較の相手は人の時給になります。そう考えると割安だ、という見方です。
普段はReplitを使っているしぶちょーさんは、Devinには「人感」があったと話します。まず「よろしくお願いします」と挨拶し、返事をしながら作業が進む。Replitは指示を受けるといきなりタスクを分解して作業を始める、という違いがあったそうです。
ここで、しぶちょーさんがAIに暴言を吐くと性能が上がるという持論を持っていることが話題になり、「パワハラプロンプト」だと会場の笑いを誘いました。しぶちょーさん本人は、DevinやReplitにはパワハラしようと思わないくらい、しっかり働いてくれると話しています。
しぶちょーさんは、20ドル分だけ働かせられるプランでDevinを試しました。複数の作業を同時に動かせて「めっちゃ動く」と思った矢先、途中で「もう足りません」となり、タスクをやり切ってもらうために追加で課金したそうです。かねりんさんは、途中でやめられないのは少し怖いと笑っています。
それでも成果物はとても良かったといいます。しぶちょーさんによると、DevinはSlackやTeamsに常駐させて、そこから指示を出すこともできます。まさにチームメンバーを1人増やす感覚だそうです。
しぶちょーさんが強調したのは、使い方の感覚の違いです。Claude CodeやCopilotなどのツールは、自分の能力を拡張してくれる感覚があります。一方でDevinは、新卒の若手に仕事を投げて半日後にレビューするような、業務委託に近い使い方になるといいます。
佐々木さんによると、Devin自身も「ジュニアソフトウェアエンジニア」だとはっきり打ち出しています。そのため営業先では、Cursorの1人あたりの料金と比べて「高くないか」と言われることがあるそうです。
社内エンジニアの時間を使い続けるもので、1人あたりのツール代として比べられる
作業を人の脳のキャパシティから外すもので、新人の採用費や業務委託費と比べるべきもの
佐々木さんの説明によると、Cursorを使っている間は、社内エンジニアの時間をずっと使っています。Devinは作業をその人の頭から一度外すものなので、コストの考え方自体が違うということです。
Devinの強みは見せ方ではなく「自律性」?
かねりんさんは、中身の能力にはあまり差がないのに、見せ方がうまいから成功しているのではないかと尋ねました。佐々木さんはこれを否定し、ゴールを設定して動かす自律性が強みだと答えます。
開発では、「この機能を追加する」といったチケット単位でタスクを分けます。Devinはチケットごとにゴールを受け取り、そこへ向かって自律的に動きます。佐々木さんによると、ここまで自律性の強いツールは、Claude CodeやOpenAIのCodexなど、まだ少ないそうです。
Replitとの違いを聞かれると、使い方は似ているものの、組織への入れ方が大きく違うという答えが返ってきました。Replitは個人開発向けのイメージが強い一方、Devinは同時に動かせるエージェントの数も含め、規模が大きいといいます。
エージェントとしての使い方は似ているが、個人開発向けのイメージが強い
組織への導入を前提とし、同時並行で動かせるエージェントの数に上限がない
Devinは同時並行で動かせる数に上限がなく、100人に仕事を出せるようなキャパシティがあるそうです。さらに、指示の出し方やタスクの切り分けまでDevinにやらせる社内事例もあり、チームリーダー役のDevinの下に別のDevinがいる構成もあるといいます。
かねりんさんが「一人社長の大企業」のようだと言うと、佐々木さんはその未来はあり得ると応じます。そのとき社長に問われるのは、目指すゴールをどれだけ明確にできるかです。回し方が板についた人の仕事量は、大きくスケールしていくだろうと佐々木さんは見ています。
スペシャリストが使うAIはなぜ別物なのか
佐々木さんには、最近強く実感していることがあります。それは、ある領域のスペシャリストがAIを使うと、成果がまったく違うということです。
佐々木さんのDevin推進部には、Googleで働いていたエンジニアなどが加わり、佐々木さんが持っていた案件を引き継いでいます。その支援の様子を見ると、サービス提供のクオリティが佐々木さんと比べて「多分倍以上違う」と感じたそうです。
佐々木さんによると、佐々木さん自身は全体の流れをまとめるほうが得意で、個別のエンジニアリングタスクの分解は「標準レベル」だといいます。一方で、AI駆動開発を日常的に実践するスペシャリストは、顧客の目的を実現するまでのステップの明確さが段違いでした。
この経験から、佐々木さんは「一人社長」ではない未来も考えるようになったといいます。セールス、エンジニアリング、デザインのそれぞれで突き抜けた人が、従来の倍の仕事をこなすイメージです。
しぶちょーさんは、これまで部下がいたところがエージェントに置き換わり、少数精鋭の小さなチームが大きなことをできるようになる、と整理しました。
精鋭以外の仕事はなくなる?ディストピア小説と製造業の視点
少数精鋭の話を受けて、かねりんさんが率直な疑問をぶつけます。
精鋭が勝って他の人は死んじゃうんですか?
佐々木さんは、今も能力社会であることは変わらないのではないかと返します。それでもかねりんさんは、これまでは能力が高くなくてもそれなりの仕事があったのに、それがなくなるのではないかと食い下がりました。
佐々木さんは、AIエージェントが世界をどう変えるかをイメージするために、ディストピア小説を読むのがとてもいいと話します。中くらいの仕事までAIに代替されたとき、人は何をするのか。その未来は、ユートピアのようでもあり、ディストピアのようでもあるといいます。
佐々木さんは、働かなくても生活でき、すべてをAIに監視・支援され、そこから外れるとAIに怒られるような世界を例に挙げます。それが果たして人間らしいのか、という問いです。三大ディストピア小説に数えられる『一九八四年』などを読むと、嫌な方向への想像も膨らむため「どっちもある」と考えているそうです。
さらに佐々木さんは、未来を具体的にイメージできたなら、自分で小説にすればいいという話もしています。
佐々木さんは、製造業の人と話して、自分たちのAIの使い方や可能性の信じ方が偏っていたと気づいたとも話します。IT企業では「直せばいい」が常識で、作ったものを直せないという前提がありません。そのため「製造業はAI導入が遅い」と言われるのも当然だと感じたそうです。
しぶちょーさんも、分野によってスピード感も価値の感じ方も違うと同意します。製造業では物理的な形を作るうえでAIを使いにくく、「このぐらいか」で止まっている人が多いそうです。だからこそ、ものづくりでこう使えるという成功事例を出していきたいと話しています。
少人数の組織でAI活用はどう進める?
話は、かねりんさんの組織でのAI活用に移ります。いろいろな人に仕事を振る立場として、相手がAIでどう効率化しているかを把握できるのか、という問いでした。
かねりんさんは、自分は自己完結型で、組織的な活用はこれからの課題だと答えます。数人で会社を立ち上げる準備も進めていますが、メンバーのリテラシーはばらばらで、予算的にもいきなりDevinを導入するのは難しそうだといいます。今のところは、各自のリテラシーでそれぞれ力を上げてもらうくらいになりそうだと話しています。
佐々木さんは、2026年はまだ組織的なAI活用の入り口だと見ています。空気は1年で変わっていくだろうとしつつ、AIの能力も急速に上がっているため、Claude Codeで十分なのか、Devinに似たサービスが出てきていないかを、探りながら動いているそうです。
かねりんさんは、フリーランス的に1人で頑張るのか、専門家4人ほどでチームを組むのか、どちらがいいのかと考え始めます。組織の力でもっといいものが作られてしまうなら、早めに仲間を見つけたほうがいいのかもしれない、という迷いです。
これに対して佐々木さんは、AI以前も「どれだけ優秀な人と一緒に仕事をするか」が大事だったと答えます。その点は変わらないという考えです。
佐々木さんは、スペシャリストが加わるなかで、その人に任せ、その人が指揮者としてAIを使うほうが確実によいと実感しているといいます。そのうえで、結局は「人」なのではないか、と話をまとめました。
今年は事例を出して「爆盛り上がり」させる
まとめとして、しぶちょーさんは、今年は佐々木さんが組織的な活用事例を出して盛り上げていく、という結論でいいかと確認します。佐々木さんは「します、マジで」と応じました。
佐々木さんは、個人での発信と並行して会社の仕事をしてきた経験を生かし、社内でもメディアを立ち上げて事例を外に出していくつもりです。AIを使いこなす人がAI検索で自分たちの情報にたどり着けない状態を埋めたい、という狙いもあるといいます。
社内の確認を通さずに出して怒られる可能性もありますが、佐々木さんは「スピードがすごいから、とりあえず出して、怒られたら修正する」くらいの姿勢で発信していくと話しています。
Devinに興味を持った人は、DeNA AI Linkの問い合わせフォームから連絡できます。このイベントはTechGALAのサイドイベントでもあり、会期中は青いユニフォームを着たDeNA AI Linkのメンバーが会場を歩いているそうです。
佐々木さんは、隣の部署が手がける「LeadersAI」も紹介しました。社長やリーダーのナレッジをAIに詰め込み、伺いを立てたい内容を先にAIに聞けるサービスです。DeNA AI Linkの社長のAIも社内のSlackにいて、本人は同じSlackでやりとりを見られるといいます。
最後にかねりんさんは、2026年はポッドキャストが流行ると告知し、KANERIN Podcast Studiosへの問い合わせを呼びかけました。佐々木さんが物理スタジオは作らないのかと尋ねると、かねりんさんは、しっかりしたスタジオは普通の人を緊張させるので、公園のベンチくらいラフなほうがいいと答えています。
登壇後には、佐々木さんとしぶちょーさんが、かねりんさんの相槌のうまさを口々にたたえていました。1人で話すより2人で話すほうが楽しい、というポッドキャスト仲間らしい話でセッションは締めくくられました。
まとめ
この回では、DeNAでのDevin活用を手がかりに、AIエージェントの価値が個人の作業効率化から、工程と工程をつなぐ組織の効率化へ移りつつあることが語られました。鍵になるのは明確なゴール設定と、それを描けるスペシャリストの存在です。
- オフショア開発の成果物をDevinで磨き込んだ事例では、期間が約半分、コストが半分から3分の1ほどになった
- AIエージェントはゴールが明確なほど力を発揮し、次の工程の要求を把握すれば工程間の手戻りやコミュニケーションを減らせる
- Devinは能力拡張ツールではなく「ジュニアエンジニア」として、人件費や業務委託費と比べて考えるものだと佐々木さんは話す
- スペシャリストが指揮者としてAIを使うと成果が大きく変わり、佐々木さんは「結局は人」だと語った
- 佐々木さんは2026年を組織的なAI活用の入り口と見ている





