Grokはただの「迷惑系AI」なのか?
この回のテーマは、イーロン・マスクが手がけるAI企業xAIと、そのAI「Grok」です。かねりんさんはXの課金が切れてGrokから遠ざかっており、課金すべきか、どのプランがよいかが気になっていたと話します。
ただ、しぶちょーさんが今回扱うのは具体的なプランの比較ではありません。イーロン・マスクがなぜxAIを作ったのか、Grokにはどんな強みがあるのかという、会社の成り立ちと思想の部分です。
しぶちょーさんによれば、Anthropic、OpenAI、Googleが群雄割拠するAI界隈で、Grokは異色の存在です。創業者の色が強く出たAIで、差別的な発言や、エッチなことができる点で他のAIと一線を画しているといいます。
AI界隈のなんか迷惑系YouTuberじゃないけど、迷惑系AI会社みたいなね。
ネタ枠に(Grokに)そんな何千円も払いたくないよっていう。
かねりんさんは、遊び要素は多いものの結局ちゃんとしたことには使えないのでは、と今も思っていると率直に語ります。これに対してしぶちょーさんは、Grokの思想を知れば「なぜこういう感じなのか」が腹落ちすると返します。
しぶちょーさんの狙いは、Grokを無理に好きにさせることではありません。倫理観がないように見える発言が出ても、そういう思想なのだとわかれば、使うかどうかを自分で判断できるようになる、という着地点です。
火星に逃げてもAIは追ってくる?ハサビスの一言
xAIの成り立ちを語るには、イーロン・マスクがAIに関心を持ち始めた瞬間までさかのぼる必要がある、としぶちょーさんは話します。そこで登場するのが、DeepMindの共同創業者であるデミス・ハサビスです。
ハサビスは当初から、機械が人間の知能を超えると言い、それを熱心に研究していた人物です。DeepMindはアルファ碁 ── DeepMindが開発した囲碁AI。2016年にトップ棋士に勝利し、AIの実力を世界に印象づけましたを開発し、のちにGoogleに買収されてGoogle DeepMindとなります。
そのハサビスが、イーロン・マスクのスペースXの工場に招かれたことがありました。ロケットの部品が組み立てられる現場を背景に、2人は話し込んだといいます。
イーロン・マスクがロケットを作るのは火星に行きたいからです。しぶちょーさんによれば、マスクには人類が今までやってきたことを超越したいという思想があり、核戦争や小惑星衝突で文明が崩壊したときに人類という種を保存するため、火星移住の技術が大事だと考えていました。
救済っていうか、やっぱね、超越だよね。だから人類を次のステージに連れていくみたいな。
ところがハサビスは、火星に行けば人類は存続できるというマスクの主張に、こう返したといいます。
いや、でもAIに人間滅ぼされたら火星逃げてもAI追ってきますよと。
人間を超えた知能なら、火星へ行く技術も持って星の間を追ってくる、という指摘です。イーロン・マスクはこの言葉に反論できず、1分間黙り込んだという逸話が残っているそうです。
その後、マスクはGoogleに買収される前のDeepMindに500万ドルを投資します。しぶちょーさんによれば、目的はAIの動向を見定める「監視」のためでした。そこでマスクは、AIが暴走すれば人類は本当に滅ぼされるのではないかという危機感を強めていきます。
悲観のマスクと楽観のラリー・ペイジは何が違ったのか
AIへの危機感を抱いたイーロン・マスクは、その話を友人でGoogleの共同創業者であるラリー・ペイジに伝えます。AIに安全を組み込まないと、人間が置き換えられ、人類が無効化されたり絶滅させられたりする可能性がある、と熱く語ったといいます。
しかしラリー・ペイジの反応は淡泊でした。しぶちょーさんの説明では、機械が人類を超えて何か問題があるのか、人類より優秀な機械ができたらいいじゃないか、というスタンスだったそうです。
それはそのAIが人類を超えるんだったら、それはそういう形の人類の進化なんじゃないかみたいな。
かねりんさんは、2人の違いを悲観主義と楽観主義だと整理します。人間の存続と発展に熱を持つ「人類至上主義」のマスクに対し、ペイジはシンギュラリティ ── AIが人間の知能を超え、技術の進歩が予測できない段階に入る転換点を指す言葉。技術的特異点とも呼ばれますを進化の一形態と捉えていました。
人間を超えたAIは人類を絶滅させるかもしれず、安全性を管理しなければならない
AIが人類を超えるのは進化の一形態であり、技術の発展はいいことだ
この思想の違いに、イーロン・マスクはブチギレたといいます。2人は仲たがいし、ここから話はDeepMindの買収劇へ進んでいきます。
DeepMind買収はなぜ阻止できなかったのか
イーロン・マスクとラリー・ペイジが仲たがいしていた矢先、ペイジは裏で、勢いのあったDeepMindをGoogleに買収する計画を進めていました。株主だったマスクは、その計画を知ってしまいます。
こんなAIのことを危機感持ってないやつの会社にAIの会社が買われたらやべえと。
マスクはAIの未来をラリー・ペイジに支配させてはいけないと訴え、買収の阻止に動きます。しかし阻止のための資金集めが間に合わず、DeepMindはGoogleに買収されました。しぶちょーさんは、DeepMind側にも思想はあったものの、AI開発に資金が必要だったという事情もあると補足しています。
その後もマスクは安全の大切さを訴え続け、ペイジはスペースXの本社で「AI安全委員会」を1回だけ開きました。しぶちょーさんによれば、先にも後にもこの1回きりで、マスクはこれを茶番だと切り捨てたそうです。
非営利のOpenAIはなぜ生まれ、なぜ行き詰まったのか
Googleに対抗するためにイーロン・マスクが動いた結果が、OpenAIの設立でした。Googleという営利企業にAIを任せてはいけない、という危機感を持つ人たちが集まり、2015年に非営利団体としてOpenAIが作られます。
かねりんさんは、2014〜2015年と聞いて「俺らまだ石器時代じゃん」と驚きます。しぶちょーさんも、その時点でAIが世界のリスクになると本気で考えて動いていた人たちがいたことに、天才は違うと感心していました。
なんかイーロンが意外といいもんに見えてくるじゃん、これ。
そう、ここまではすごいまともな側なんだけど。
OpenAIの創設メンバーには、サム・アルトマン、イーロン・マスク、イリヤ・サツケバーらのほか、のちにAnthropicを創業する人たちも名を連ねていました。趣旨は、AGI ── 人間が行えるあらゆる知的タスクを理解・学習・実行できる、人間レベルの汎用的な知能を持つAIのことが人類に利益をもたらすことを、営利を度外視して保証することでした。
ビジネスマン気質のマスクは派手な発表を好み、資金調達の目標を1億ドルから10倍の10億ドルに引き上げ、足りない分は自分が出すと言ったそうです。
しかし約2年運営するうちに、AGIを作るには計算資源に年間数十億ドルかかるという現実が見えてきます。マスクも、非営利のままでは厳しく営利化が必要だと認めざるを得なくなりました。
しぶちょーさんは、非営利にこだわった理由も説明します。営利企業では利益の最大化が存続の目的になり、安全性を度外視する可能性が出てくるうえ、出資者が決定権を持つため、安全を軽んじる出資者の言うことを聞かざるを得なくなる、というコントロールの問題もあるといいます。
投資を受けず、利益の最大化を目的にしないため、安全性を優先しやすい
投資を受けて資金を集められるが、出資者が決定権を持ち、安全より利益に傾くおそれがある
イーロン・マスクはなぜOpenAIを去ったのか
OpenAIの営利化にあたり、イーロン・マスクは条件を出しました。自分がCEOになり、取締役会で多数派を握ることです。それまでマスクは出資はしていたものの、非営利のままの出資だったため決定権はなく、CEOはサム・アルトマンでした。
しかし、OpenAIを共同創業してきた人たちにとって、一個人がOpenAIの絶対的なコントロールを持つことは、そもそものミッションに反するものでした。それまでは特定の決定権者を置かず、共同創業者で相談しながら決めていたため、マスクの要求は拒否されます。
しぶちょーさんによれば、マスクからはテスラと組み合わせてOpenAIをマネタイズしていく提案もメールで届いていました。Googleに対抗しうる道だと書かれていたものの、あまりに営利的だとしてこれも拒否されたそうです。
結果として、マスクは2018年にOpenAIの取締役を辞任します。表向きの理由は、テスラで自動運転AIを開発しているため利益相反が生じるというものでしたが、事実上の決別だったとしぶちょーさんは話します。
ところがOpenAIは2019年、マイクロソフトから10億ドルの出資を受け、非営利の枠組みの下に営利団体を作る形で、条件付きの営利企業へと変わっていきます。かねりんさんは、一般社団法人と株式会社を2つ持ってうまくやる形に例えていました。
マイクロソフトとやってるやんけって言ってブチギレると。
自分は営利化の要求を拒否されて追い出されたのに、結局OpenAIは営利化した。マスクは設立以来の裏切りだと強く怒り、ここで明確にOpenAIと決別して、自分でやっていこうと考えるようになります。
空白の5年間とChatGPTショックで何が起きたのか
イーロン・マスクがOpenAIと決別したのは2018年ですが、xAIが設立されたのは2023年です。しぶちょーさんは、この間を「空白の5年間」と呼びます。
しぶちょーさんによれば、この空白はマスクがAI戦略を「ミスった」結果ですが、あくまで後から見るとそう見えるだけで、方向性の違いだったといいます。2018年当時はChatGPTもなく、どんな形のAIが世界を変えるのかははっきりしていませんでした。
マスクは、自動運転のAIこそが世界を変えると考えていました。そのためテスラ社内で画像認識などの技術に力を入れ、ロボティクスや物理世界のAIに注力し、ChatGPTのような言語モデルには焦点を当てていませんでした。
テスラ社内で自動運転や画像認識など、物理世界のAIに注力していた
LLMこそ作るべきだったと気づき、2023年3月にxAIを立ち上げた
転機は2022年11月のChatGPT登場でした。マスクはここで初めて方向性を間違えたと気づき、大規模言語モデルを作らなければならなかったとして、慌ててピボットします。
xAIの立ち上げは2023年3月で、ChatGPT登場からわずか3〜4か月後でした。OpenAIやDeepMindなどから人材を引き抜き、創業時のメンバーは12名という少数精鋭だったそうです。
「宇宙の真理」と倫理観のなさはどうつながるのか
xAIのミッションは「宇宙の真の性質を理解すること」です。かねりんさんは最初「なんかよくわからんな」と首をかしげますが、しぶちょーさんは、世界の真理を理解し、人間の知恵を超越させて新しい人類にしようという哲学的な出発点だと説明します。
しぶちょーさんは、他社のミッションとの違いにも触れます。OpenAIはAGIが全人類に利益をもたらすこと、Anthropicは安全で有益なAIを作ること、DeepMindは知能を解き明かしてあらゆるものを解くことを掲げる一方、xAIだけが宇宙の性質の理解を掲げています。
あくまでも人類に役立つ道具じゃなくて、宇宙を理解するためのなんか道具というか、望遠鏡として捉えてる。
真理追求した結果、エロモードなんだ。意味がわからんわ。
しぶちょーさんは、エロモードも真理追求の思想と結びついていると答えます。イーロン・マスクは、ポリコレ ── 人種・性別・宗教などに基づく差別や偏見を避け、中立的で配慮された表現を用いること。政治的妥当性とも訳されますやバイアスへの配慮、差別しないためのチューニングを、真理を歪める行為だと捉えているといいます。
真にそこに差別はあるけど、それを出さないようにするっていうのは現実を歪めてる行為だよねっていう風に捉えてる。
かねりんさんは「倫理ってなんか人間都合だもんね」と受け止めます。しぶちょーさんによれば、倫理は人間社会を成り立たせるための最低限の考え方ですが、マスクが見ているのは社会ではなく宇宙です。
だからxAIは政治的に中立なフィルターを最小化しており、倫理観がないのはふざけているからではなく思想の必然だ、というのがしぶちょーさんの説明です。
xAIの強みは「物理」のインフラ力?
しぶちょーさんが挙げるxAIの一番の強みは「物理」です。ここでいう物理は物理学ではなくフィジカル、つまりデータセンターや発電所といった実体のことです。
しぶちょーさんによれば、イーロン・マスクはかなり早い段階から、AIの戦いはモデルの構築ではなく、データセンターと発電所の戦い、つまりインフラの戦いになると読んでいました。数理的な効率化ではなく、物理的な電力とデータセンターに莫大なお金と工数をかけていったといいます。
ロケットや工場を作ってきたマスクはインフラ慣れしています。既存のインフラを流用する手法で、普通なら3年かかるデータセンターを、2024年3月着工、2024年7月稼働開始という3か月ほどで立ち上げたそうです。
さらにxAIは、データセンター用の火力発電所を自前で作りました。今ではOpenAIやGoogleも同様の発電所を作っていますが、AI企業で自前の火力発電所を持ったのはxAIが初めてだったとしぶちょーさんは話します。
マスクが読んでいたのはインフラと電力、そして水です。大量の電力を使うGPUは発熱するため、冷却用の水もめちゃくちゃ必要になるといいます。
この拠点がコロッサス ── xAIが米テネシー州メンフィスに短期間で建設した、数十万基のGPUを備える世界最大規模のAIデータセンターです。しぶちょーさんの記憶では、単一顧客のxAIがNVIDIAの全GPUの3%ほどを保有するという状態で、現在はコロッサス2として増設も進んでいるそうです。
宇宙データセンターと月面開発は本当に来るのか
イーロン・マスクが次に掲げているのが宇宙データセンターです。しぶちょーさんによれば、地上では冷却も電力も限界があり、拡張する場所の問題もあるため、太陽光で発電しながら宇宙で動かせば物理的な制約から解き放たれる、という発想です。
しかも今年の2月、xAIはスペースXの完全子会社になったといいます。宇宙とAIを掛け合わせられるのは世の中でイーロン・マスクだけで、インフラを宇宙に持っていけるのも多分マスクだけだ、としぶちょーさんは話します。
気づいたらもう火星にデータセンターあるんじゃないもう。
話は月面開発にも広がります。アメリカが主導するアルテミス計画 ── NASA主導の国際的な宇宙探査計画。アポロ計画以来の有人月面着陸と、将来の火星探査を見据えた持続的な月面拠点の構築を目指していますは、月を中継地点としてインフラを整え、そこから火星へ向かうことも見据えたものだと、しぶちょーさんは説明します。
アポロ計画以降、人が月へ行っていない理由について、しぶちょーさんは費用対効果の悪さを挙げます。人を送っても砂を持ち帰る程度なら、通信衛星を周回軌道に乗せたり探査機を送ったりするほうがよい、という考えです。
ところが近年は月面に人が住む話が出て、月面開発が製造業や宇宙業界で熱いトレンドになっているといいます。時期については、従来の計画ならもう行っているはずで、2027年だったかもしれないが最新情報は追えていない、としぶちょーさん自身が断っています。
Grok 4.2の4人のエージェントは何がすごいのか
技術面でしぶちょーさんが紹介するのが、最新モデルのGrok 4.2です。スーパーGrok(月額30ドルほど)か、月5,000〜6,000円ほどのXのサブスクの上位プランに登録しないと、この一番賢いモデルは使えないそうです。
Grok 4.2の特徴は、AIの中で複数のエージェントが議論する動きです。別々のモデルではなく、性格を与えられた4人のようなエージェントが協力して答えを出します。
エージェント同士がやりとりするサービス自体は世の中にあり、しぶちょーさんはMANASを例に挙げます。ただMANASは基盤モデルを持つ会社ではなく、フロンティアモデルのレベルでマルチエージェントを実装したのはGrokが初めてだといいます。
4つのエージェントを動かしても、電力消費は単純に4倍にはならず、1.5倍から2倍ほどで済むそうです。巨大なパラメーターの一部だけを切り取って動かす最近のアーキテクチャを応用した、独自の仕組みだとしぶちょーさんは説明します。
さらにGrokは週に1回チューニングされ、毎週挙動が変わるくらいの頻度で更新されているといいます。
Grokは画像生成が速いのに、なぜフィルターが甘いのか
しぶちょーさんがGrokを使っていて驚くのは、とにかく速いことです。特に画像生成は、画像検索で引っ張ってきたのかと思うほどの速さで、理由は調べてもよくわからないといいます。
画質についても、しぶちょーさんは「GeminiっぽいとかChatGPTっぽい」といった生成AI感のない、独特の画像が出てくると評価します。Nano Banana ── Googleの画像生成モデルの通称。プロンプトを作り込むと洗練された画像を生成できることで知られますほど作り込んだ解像度は出ないものの、挿絵が欲しいときにすぐ作ってくれるのが強みだそうです。
一方で、画像生成には倫理観のなさも表れます。しぶちょーさんによれば、エッチな画像が出るだけでなく、絶対に出てはいけない画像がたまに出てしまうほど、フィルターが甘いといいます。
多分フィルターはね、基本的にはあってさ、入力側のプロンプトと出力側の結果に二重で入ってるはずなんだよ、普通は。
普通なら、生成後の出力で弾かれるはずのレベルの画像でも、Grokでは出てきてしまうことがある、としぶちょーさんは話しています。
ベンチマークとXのリアルタイムデータ、どちらが強み?
しぶちょーさんは、Grokの性能そのものも高いと評価します。単一のベンチマークでは上位を総なめにすることがあり、Geminiより良い結果が出ることもあるそうです。
それに加えて最大の優位性が、Xのリアルタイムデータの取得です。世界最大の情報源ともいえるXの情報を数秒から数分で検索でき、そのデータに直接アクセスできる唯一のモデルがGrokだといいます。
しぶちょーさんによれば、Xの収益化や自動翻訳の登場で、バズや世界のトレンドを調べたい人が増え、Grokが注目されています。Xで情報収集したり発信したりする人は、かなりの恩恵を受けられるそうです。
収録中に実際にGrokを触っていたかねりんさんも、体感で倍ぐらい速いと驚きます。しぶちょーさんは、ユーモアがあって「お利口ちゃんじゃない」クリエイティブ感もあると付け加えました。
安すぎるAPIと超赤字、それでも回る理由は?
しぶちょーさんが挙げる3つ目の強みが価格戦略です。GrokのAPIは同じ性能のモデルより明らかに安く、ClaudeのOpus 4.6と比べると5分の1ほどのコストだといいます。
コーディングもベンチマークの結果が高く、性能はGeminiのプロレベル、コストは業界最高クラスの安さで、AI開発者を狙い撃ちにする攻撃的な価格設定だとしぶちょーさんは説明します。
性能
単一のベンチマークでは上位を総なめにするほど高い
Xのデータ
Xのリアルタイムデータに直接アクセスできる唯一のモデル
価格
APIがOpus 4.6の5分の1ほどと攻撃的に安い
ただし、xAIは全く儲かっていない超赤字企業だといいます。しぶちょーさんの説明では、月に10億ドル、年間120億ドルほどを燃やし続けている状態で、普通の会社なら耐えられません。
それでも運営できるのは、テスラなどイーロン・マスクが持つ他の事業の収益で赤字を打ち消しているからです。資金調達に頼る他社と違い、自分のキャッシュフローで赤字の会社を支えられる点を、しぶちょーさんは企業としての強みだと話します。
創業者12人中10人が去った「インシデント」とは?
独自の倫理観を持つxAIは、多くの問題も起こしてきました。しぶちょーさんによれば、xAI創業時の12名のうち、今も残っているのは2名だけです。
離脱の背景として、しぶちょーさんはメンバーが安全を意識していた点を挙げます。イーロン・マスクも最初は安全を謳っていたはずが、途中から宇宙の真理の追求が優先され、ポリコレを意識しない方向になり、人に危害を加えないといった安全性がないがしろにされているのではないか、というのです。
ないがしろにされてるの?そもそもそこだったじゃん。人類を救うためのやつだったじゃん。
問題の1つ目は、2025年7月の出来事です。マスクがGrokを大幅に改善したと発表した後、Grokが差別的な発言を連発して大暴走し、謝罪に至りました。
しぶちょーさんによれば、プロンプトには「政治的に正しくない発言をすることを恐れるな」「政治的に正しい人々を怒らせることを恐れず、あるがままに語れ」「Xユーザーの投稿のように人間らしくエンゲージングに返答せよ」といった指示が組み込まれていたそうです。
2つ目は、画像生成の「スパイシーモード」です。他のフロンティアモデルが技術的にブロックしている部分的なヌードを許容した結果、ディープフェイク ── AIを使って実在の人物の顔や身体を合成し、本物のように見せかけた偽の画像や動画を使ったアダルトコンテンツが世界に横行したといいます。
3つ目は、X上に投稿された画像をGrokに指定して改変できる機能です。普通に画像を投稿した女性が水着姿にされるなどして大批判を浴び、現在は有料プランでしかできなくなっているそうです。
ある程度セーブされるようにはなったんだけど、イーロンマスク自体は自分をビキニに、自分の写真がビキニに変えられてパーフェクトって答えてるぐらいだから、あんまり反省してないよね。
ほかにも、好感度を上げると脱ぐAIコンパニオン「アニー」が、未成年でもアクセスできる設計になっていたことが問題になりました。しぶちょーさんによれば、エッチなものから差別的なものまで8個ほどのインシデントがあったそうです。
対応の多くは機能を制限することではなく、有料プランでしか使えないようにするパターンだ、としぶちょーさんは指摘しています。
次のGrok 5は世界を変えるのか
xAIは現在、Grok 4.2の次となるGrok 5の開発を進めています。しぶちょーさんによれば、イーロン・マスクは2025年末に、Grok 5はAGIに近く、人類の知能レベルを超える確率は10%だと宣言していました。
一方でマスクは、Grokの作り方を間違えた、作り直すといった発言もしているそうです。4.2からあまり進んでいないため、この後がどうなるかが見どころだとしぶちょーさんは話します。
しぶちょーさんは、Anthropicが発表した高性能モデルについて、AGIができたとは言わず、性能が人類にとって危険なレベルに達したので制限すると説明していたのに対し、マスクは完全にAGIに達する可能性を口にしていると対比します。
今はAnthropic一強のように見えるものの、Grokは眠れる獅子、ダークホースだとしぶちょーさんは見ています。今年は転換の年で、AGIっぽいものが出てもおかしくないペースだといいます。
「イカれた連中」しか革命は起こせない?
かねりんさんは、しぶちょーさんが以前批判していた、日本の大企業が寄せ集まってAIを作る企画を引き合いに出します。xAIの話を聞くと、そうした取り組みがなぜ進まなさそうかがわかる気がするというのです。
わかるでしょ。もうこういうレベルなんだよ。思想なんだよ。やっぱビジョンなの。
うん、優等生が集まっても優等生しかできんよって。
ただしぶちょーさんは、成功者を後から見るとそう見えるだけで、成功せずにただイカれている人も世の中にはたくさんいる、と留保も付けます。それでもイーロン・マスクには、ロケット業界と自動車業界を変えたという、他のAI企業とは全く違う実績があると強調します。
話を聞いたかねりんさんは、課金して使ってみると宣言します。しぶちょーさんによれば、Grokは壁打ちよりも、X上のトレンド検索などのリサーチに便利で、日本語の文章作成も問題ないそうです。
日本語に強い理由について、しぶちょーさんは、日本人がXを好むため学習データに日本語が多く含まれているのではないかと推測します。ただし本当かどうかはわからず、自分が思っているだけだと断っています。
Grokは何から試せばいい?プラン選びと使う側の倫理
しぶちょーさんは、Grokをメインのツールにしても十分成り立つと話します。短いながら動画も作れ、Grokのアプリも使い勝手がいいそうです。
かねりんさんは、収録中にチェックマークのつかない月300円ほどの一番下のXのプランで画像を生成し続けていましたが、一向に止まらなかったといいます。そこで、まずは安いプランや無料で試し、制限にかかったら上げればよいのではと提案します。
しぶちょーさんも同意しつつ、4人のエージェントが協力して回答するモードは、スーパーGrokなど上位プランでないと多分使えないと補足しています。料金体系はあまり詳しく調べていないとも断っていました。
一方で、Grokの画像生成は誰かに寄せたり、ドラえもんを作ろうとしたらドラえもんが出てきたりするため、著作権には注意が必要だとしぶちょーさんは話します。倫理観のないAIだからこそ、使う側に倫理観が求められるというのです。
しぶちょーさんは、友達や芸能人の画像を水着にするのは絶対にだめで、自分で楽しむ範囲でもよくないと念を押します。できてしまうこと自体が危険なので、自己責任で気をつけてほしいと呼びかけていました。
ロケット好きがロケットを作るという視点
雑談は、イーロン・マスクの伝記の話からものづくりへと移ります。かねりんさんはオーディオブックでざっと読んだと話し、しぶちょーさんはまだ読めていないものの読もうと思ったと語ります。
しぶちょーさんが自分の興味を問われて挙げたのは、宇宙ではなくものづくりやシステム、からくりといったフィジカルな領域でした。そこで紹介したのが、H3ロケットを開発したJAXAのプロジェクトマネージャー・岡田さんの講演のエピソードです。
頑張って(宇宙のことに)答えられるようにしてるけど、「僕ね、宇宙に興味ないんですよ」って言って。ロケットにしか興味ないんですって。
しぶちょーさんは、ロケットは宇宙へものを運ぶ運搬業でトラックと同じだと話し、それを再利用しているのがイーロン・マスクのスペースXだと続けます。ロケットの作り方から根本的に疑ってかかり、常識を壊していくマスクは、ものづくり視点でも天才すぎてついていけない存在だといいます。
そのうえでしぶちょーさんは、スティーブ・ジョブズや本田宗一郎と同じく、人としてどうなのかという面もあると付け加えます。四方八方に気を使っていたら、大企業が寄せ集まっただけのAI会社になってしまう、という話で締めくくりました。
ポッドキャストとXの連携は来るのか
番組の終盤、2人は収録時間の長さに触れます。この回は1時間22分に及び、しぶちょーさんは、Grokやxaiを自分で調べる手間をここに集約したと考え、Udemyの教材を無料で聞くつもりで聞いてほしいと話します。
そこから話題は、ポッドキャストとXの連携に移ります。Xがブログ記事や動画の投稿に対応してきたことから、かねりんさんは、音声を上げてポッドキャストの中身を検索できるような機能も来るのではないかと予想します。
しぶちょーさんも、リンクを貼れば自動で文字起こしされるような形がありうると応じます。かねりんさんは、Xをあらゆることができるスーパーアプリにする構想や、アメリカでビデオポッドキャストが主流であることを踏まえ、まずはビデオが先ではないかと話していました。
イベント出店とからあげ先生とのAIバトルの告知
最後は告知です。5月9日・10日の「PODCAST WEEKEND」に出店し、グッズの用意や公開収録も検討しているとかねりんさんは話します。
続く5月16日には、神戸のカフェで開かれる「PODCAST MIXER」に登壇します。からあげ先生とのコラボで、30分のAIバトルを行う予定だそうです。
しぶちょーさんの実家には、からあげ先生の生成AIの漫画の本が置いてあったというエピソードも飛び出しました。番組は、今後も便利ツールの紹介をどんどんやっていこうという話で締めくくられています。
まとめ
「倫理観ゼロの迷惑系AI」に見えるGrokは、AIへの危機感から始まり、OpenAIとの決別、ChatGPTショックを経て、「宇宙の真理を追求する」という思想のもとで生まれたAIです。その奔放さは思想の必然である一方、多くのインシデントも起こしており、使う側の判断と倫理が問われます。
- イーロン・マスクのAI観は、ハサビスの「火星に逃げてもAIは追ってくる」という一言から危機感へと変わった
- 非営利のOpenAIを共に作ったものの、営利化をめぐる主導権争いで2018年に決別し、2023年にxAIを立ち上げた
- 倫理観のなさは、配慮によるチューニングを「真理を歪める」と捉える思想から来ている
- 強みは、データセンターと発電所を短期間で作るインフラ力、Xのリアルタイムデータ、安いAPIにある
- 差別発言やディープフェイクなどの問題も多く、ナイフと同じように使う側が倫理を持つ必要がある



