表現者は自分だけでなく関わる全てを背負っている
番組冒頭、西野さんが前日にXへ投稿した内容が話題になりました。あるポールダンサーのプロフィール写真で、逆さになった自身のお尻の上にモフのぬいぐるみが置かれていた件です。
モフはえんとつ町のプペルに登場するキャラクターで、多くの人の愛情で育まれてきたものです。それを安易な笑いの小道具にすることに、西野さんは品位を感じなかったと話します。
ただし、これは個人攻撃ではないと繰り返します。怒っているわけでも嫌いになったわけでもなく、端的に「損するからやめておいた方がいい」という助言でした。
表現は自由であるべきですが、表現者である以上、自分一人を表現しているのではなく、自分が関わる全てのものの人生や品格まで背負っているという想像力は持っておいた方がいいと思います。
近い人ほど違和感があっても言えないだろうから、あえて自分が言わせてもらった、という立場です。
もう一点、肌の露出がある表現とファミリーエンターテインメントの相性について、慎重になった方がいいと補足します。ポールダンス自体をエロだとは思わないが、子供やファミリーが楽しむものだからこそ気をつけたい、という趣旨でした。
B面社長とA面社長、これからどっちの時代が来る?
リスナーから、SNSで年少自慢や喧嘩芸を繰り返す「B面社長」と、クリーンな「A面社長」のどちらの時代が来るか、という質問が寄せられました。
SNSで年少自慢、キャバクラ漫談、喧嘩芸を繰り返すB面社長と、クリーンなA面社長の話をされていましたが、西野さん的にはこれからどっちの時代が来ると思いますか?
西野さんはまず、B面社長はもう数が増えたため、物珍しさが減るのは避けられないと分析します。
その上で、社長がSNSで再生回数やフォロワー増を喜ぶ姿に感じた違和感を語ります。社長はデビューが遅く、承認欲求が満たされる経験が中年になってから訪れる、という見立てです。
中年になってからちやほやされ、中年デビューみたいな感じだから、抜けないんだろうなと思いますね。ちやほやされて気持ちがいいっていうのが。
自分にはちやほやされて嬉しい感覚が一切ないと西野さんは言います。理由は「初日から売れていたから」で、その快感はもう何周もしてしまった、という表現でした。
一方で、そうした社長を否定しているわけではありません。「中年から急にモテたら浮かれるしかない」というリスナーコメントに、そりゃそうだ、可愛いんだ、と共感も示します。
結論として、B面社長は人を前面に出し、A面社長は商品やサービスを前面に出すため、評価の対象になりにくいのは後者だと整理します。GoogleやChatGPTを使う人が開発者の顔を知らないのと同じ構造です。
ただ個人的な思いとしては、経営者ならせっかくなら大きい山を狙ってほしい、とA面推しの気持ちを述べます。自分も両面出すが、B面で出すのは顔ではなく肛門だ、という冗談で締めました。
人を前面に出す。SNSで目立ちやすいが物珍しさは減少中。
商品やサービスを前面に出す。着実に事業を拡大するが評価対象にはなりにくい。
資金調達はゴールではなく制限時間のスタート
続いての質問は「Voicyはどうなりますか?」というもの。西野さんはVoicyのエンジェル投資家でもあります。
まず、これはVoicyに限らずスタートアップ全般の話だと前置きします。大型の資金調達を「安泰」と受け取る声があるが、実際は逆だ、と語ります。
資金調達っていうのはゴールじゃなくて、当たり前ですけども、制限時間のスタートなんですね。
たとえば50億円を調達しても、それは利益ではありません。人を採用しオフィスを借り広告を打つと会社は大きくなり、その分だけ毎月出ていくお金も増えていきます。
月1000万円で回っていた会社が月1億円かかる会社になることもある。だから資金が尽きる前に自力で利益を出せるかどうかのレースが始まる、というわけです。
エンジェル投資家とは、創業初期のスタートアップに個人の資金を出資する投資家のことです。事業を応援する立場で、経営に細かく口を出さないケースも多いといいます。
資金調達
口座にお金が入るが、これは利益ではない
会社が拡大
採用・広告・開発で固定費が増大する
黒字化レース
資金が尽きる前に自力で利益を出せるかが勝負
西野さんはコロナ禍を例に、市場の変化がいかに厳しいかを説明します。巣ごもり需要で伸びればアクセスも増え人も雇わざるを得ないが、コロナが終われば固定費だけが残る、という構造です。
だから見るべきはいくら調達したかではなく、利益を生み出す仕組みを持っているかどうかだと強調します。
自身は物言わぬ株主で、お金を出しPRを手伝うだけの立場だと明かします。その上で、Voicyが今、利益を出せているのかまだ資金が目減りしているのかは定かではないが、肌感ではまだ後者だと思う、と率直に語りました。
Voicyの社員とパーソナリティで合宿しよう
利益を作る装置が必要だという流れから、西野さんはVoicyの社員やパーソナリティと合宿して一緒に考えたいと提案します。
一旦集まって、みんなで「どこでお金作る?」みたいな。Voicyってどうやってお金作ればいいんだろうなって日常的に考えてる人ってあんまりいないじゃないですか。
パーソナリティは自分の収益は考えても、プラットフォーム自体の稼ぎ方まではあまり考えない、という指摘です。プラットフォームが終われば、そこから受け取る収入も消えてしまいます。
CHIMNEYTOWNではミュージカル制作の際にも合宿を行い、照明や美術のスタッフとプロデューサーが一緒に「どうやってお金を作るか」を議論するそうです。クリエイティブとお金周りのチームを分けないのが流儀だといいます。
河口湖合宿の場所も手配する、みんなでバスに乗ってカレーを作りながら考えよう、と具体的に呼びかけました。
売れないと嘆く前に、まだ打席に立っていないだけ
最後の相談は、アーティストからの「いつまで経っても売れません。自分には何が足りないのでしょうか」というものでした。
いつまで経っても売れません。自分には何が足りないのでしょうか。
西野さんは、才能やセンスは今は測れないと前置きした上で、足りないというより「平均打率を見誤っている」のかもしれないと答えます。
CHIMNEYTOWNもよくこける、出しても売れないことは日常茶飯事だと明かします。ヒットの平均打率は一割ほどで、当たったら寿司や焼肉に行けるくらいのものだといいます。
いろいろ球打ちまくって球打ちまくって、ダメだなダメだなダメだなで、パーンっていくのはもう一割ぐらい。
売れないと言う人の多くは、まだ四打席、五打席しか立っていないのに結論を出している、と指摘します。打率が一割なら、五打席でヒットが出ないのは算数的にごく自然なことです。
野原ひろしぐらい汗だくで、まだ営業している
ここで西野さんは、その日に投稿したもう一つのXの話へ移ります。映画『えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』のムビチケをまとめ買いした人の家や会社まで、直接チケットを配達する「玄関プペル」を今も続けているのです。
この日は藤沢で社内講演会を行い、厚木と新百合ヶ丘へムビチケを届けました。急な坂道を汗だくで歩く様子を投稿したところ、批判的なコメントが届いたといいます。
こんなパフォーマンスしなくてもみんなが見てくれるような映画を作ってほしい。まとめ買いとか、この人こういうのばっかり。
西野さんは「確かにそうだ、そらもう何もせずに作品が届いたら一番いい」と受け止めます。しかし、社員15人のベンチャーには潤沢なPR費もテレビの枠もなく、映画を届けるには足を使うしかないと語ります。
自分は世間ではメジャー枠に入れられがちだが、実態は自主映画と同じ規模で戦っていると強調します。中小企業の恥ずかしいところであり、情けないところだと自嘲しながらも、これがリアルだと言います。
そして、シミ取り直後で日焼けしてはいけない体で電車に揺られ、坂を登り、靴をボロボロにしながら営業に回った様子を語ります。無駄な経費を使うくらいならコンテンツやお客さんに還元したい、という自分の言葉に沿った行動でした。
あのクレヨンしんちゃんのお父さん、野原ひろしいるでしょ? スーツで汗だくになって営業回って、足臭くなってんじゃん。あれまだやってんだよ、俺。
帰宅後はふくらはぎがパンパンになり、シャワーを浴びてパンツを履く前に疲れて気絶していた、と明かします。それでもチケットを届けるためだと語り、売れないと嘆くアーティストへ言葉を向けます。
売れないアーティスト聞いてるか? そんなとこで売れないとか言ってんなよ。俺まだ営業してっからな。まだやってないって。俺もお前も。こっからなんだから。
誤解も理不尽もあらゆる痛みを背負いながら歩く、その繰り返しなのだと締めくくりました。
まとめ
表現の品格、社長のあり方、資金調達の本質、そして売れないと嘆く前に打席に立ち続けることまで、西野さんが自身の実践を交えて率直に語った相談回でした。
- 表現者は自分だけでなく、関わる全てのものの品格を背負っている
- B面社長は物珍しさが減り、商品やサービスを出すA面社長は評価されにくいが大きい山を狙える
- 資金調達はゴールではなく、資金が尽きる前に自力で利益を出せるかのレースの始まり
- プラットフォームの稼ぎ方は、社員とパーソナリティが一緒に考えるべき課題
- ヒットの平均打率は一割ほど、四、五打席で売れないと判断するのは早すぎる
