しばらくサブスク配信はしない──映画館でしか出会えないお客さんに賭ける理由
西野さんの朝礼にて、西野亮廣さんが映画『えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』のサブスク配信を当面見送ると発表しました。全国の舞台挨拶を駆け抜けるなかで実感した「映画館でしか出会えないお客さん」の存在、特典をめぐるファンとの温度差、そしてオンラインライブの実験構想まで。その内容をまとめます。
特典オンラインライブ案と予想外の反応
西野亮廣さんは映画『えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』を一人でも多くの人に届けるため、合間を縫ってライブ配信を行い、お客さんが何を求めているかを探っているそうです。そのなかで、ある企画案が浮上しました。
インスタライブ中に「この週末、映画館に行った人のチケット半券があれば、日曜夜のオンラインライブに参加できる特典をやってみては?」という話が盛り上がったとのこと。さらに「おしゃべりではなく楽曲にフォーカスして、西野さんが弾き語りをしながら裏話を語る1時間はどうか」という提案も出たそうです。
そんなん価値あんのかね
半信半疑ながらも、ライブ配信に参加しているお客さんから「絶対やります」「そういう面も見てみたい」という声が上がり、西野さんはその場で「やります」と宣言。さっそくYouTubeで配信してみたところ──。
「何考えてるんだ」っていうコメントが殺到しました
お客さんの要望に応えたはずが、YouTube側では真逆の反応が返ってきたのです。「特典とかやめろよ」「映画の中身をもっと宣伝して」というコメントが多かったといいます。
「特典やめろ」は西野だけに向けられる不公平
「特典をやめろ」という声に対して、西野さんは率直に「ちょっとかわいそうな話だな」と漏らしています。
映画業界では9割近くの作品が何らかの来場者特典を付けているのが実情です。漫画一冊をまるごとプレゼントする作品もあれば、ポケモンゲーム内で使えるポケモンを映画館で配布する施策。シリーズ映画では恒例の集客手法として知られています。のようにゲーム内アイテムを配布するものもあります。特典第1弾〜第5弾までリレーし、何度も映画館に足を運んでもらう設計をしている作品もあるとのこと。
そうしたなかで、えんとつ町のプペルは今作で特典を付けていないにもかかわらず、西野さんがやろうとした瞬間だけ「特典やめろ」と言われるのは不公平ではないか、と感じたようです。
一方で、アンチだけでなくファンの方からも同様の反応があった事実は受け止めなければならないと語っています。振り返ると、「2人以上で映画館に来た方を対象」という条件設定が引っかかった可能性があるとのことで、すぐに該当の動画を取り下げ、条件を1人でもOKに変更したそうです。
舞台挨拶39回で見えたもの
映画公開から2週間で、舞台挨拶は39回。昨日までの3日間は地元の兵庫・大阪・京都で、マイク1本・30分一本勝負の舞台挨拶を計17ステージこなしたそうです。
さすがに疲れが出るかと思いきや、「吉本芸人時代は漫才を1日10ステージやっていたし、今はアドレナリンが出ている」と至って元気だそうです。お客さんからもらう作品の感想が力に変わるとも話しています。
ただ、こみ上げるのは元気だけではないとのこと。「お客さんに届きさえすれば刺さるという確信」と、同時に「まだまだ届けきれていない忸怩たる思い」。映画を観た方のなかにも「もっとみんなに知ってほしい」という悔しさを抱いている人がいるかもしれず、それを思うと申し訳ないやら情けないやら、と語っています。
映画館でしか出会えないお客さん
39回の舞台挨拶を通じて見えてきたのが、「映画館でしか出会えないお客さんが明らかに存在する」という発見です。
西野さんは自身の子ども時代を振り返ります。兵庫県川西市で育った少年時代、お笑いライブやミュージカル、講演会に行った経験は一度もなかったとのこと。唯一足を運んだ劇場型エンタメが映画館だったそうです。川西市には映画館がなかったものの、年に一度、文化会館で映画の上映があり、家族で観に行ったといいます。小学5年生のとき、隣町の池田市の映画館まで自転車を漕いで『ゴジラvsキングギドラ』を観たのが、強烈な原体験として残っているそうです。
全国を回って舞台挨拶をするなかで目の当たりにするのは、ミュージカルのお客さんでも、講演会のお客さんでも、イベントのお客さんでもなく、「映画館のお客さん」だと語っています。
ここでの区別はとても重要です。「映画」というコンテンツに出会うだけなら配信でも可能ですが、「近所の映画館でやってるなら観に行こう」「西野が舞台挨拶に来るなら行ってみよう」──そういう動機で足を運ぶお客さんは、映画館という物理的な場があって初めて生まれるのです。
作品自体に興味がある。配信でもDVDでも、手段は問わない
「近所でやっている」「舞台挨拶がある」など、場の偶然や体験がきっかけ。映画館という場でしか出会えない
サブスク配信を当面しない理由
こうした実感を踏まえて、スタッフから「サブスク配信NetflixやAmazon Prime Videoなどの定額制動画配信サービスでの公開のこと。映画の劇場公開後、一定期間を経て配信に移行するのが一般的です。はどうするんですか?」と聞かれた西野さんは、「しばらく控えておかない?」と返したそうです。
理由は明快です。サブスク配信を始めてしまうと、現在取り組んでいるいくつかの施策──映画館での舞台挨拶やオンラインライブ特典など──が成立しなくなる可能性があるからだといいます。
AI時代の到来
ハイクオリティの映像コンテンツがさらに溢れる
偶然の出会い・場の共有の価値が上がる
配信で済ませられるものとの差別化
映画館という「場」に賭ける
サブスク配信は当面見送り、映画館での出会いを掘り下げる
効率という観点では最適解ではないかもしれないと認めつつも、舞台挨拶に来てくれるお客さんの表情や、その場で交わされる反応を目の当たりにすると、「映画館という場に賭けてみる選択には十分な意味がある」と感じたそうです。
周囲に「プペルは配信で観ればいいや」と言っている人がいたら、「当面は配信するつもりはないらしいよ」と伝えてほしいとのことです。
弾き語りオンラインライブという実験
サブスク配信を控える代わりに、「映画館だからできること」を模索する西野さん。その一環として、映画にまつわる楽曲──「えんとつ町のプペル」や劇中歌「三百六十六日」などを弾き語りするオンラインライブを実験的に開催するとのことです。
対象は、その週末に映画館で映画を観た方。チケットの半券(デジタル購入の場合はスクリーンショット)があれば無料で参加できるという特典です。楽曲制作の裏側についても話す予定だそうです。
俺の歌なんかに価値がないってのはわかってますよ。わかってますけども、一回これがいかほどのものなのかっていうのをテストでやってみます
自虐を交えつつも、お客さんからの声を真に受けて動く姿勢がうかがえます。あくまで「実験」という位置づけで、反応を見ながら次の打ち手を考えていくようです。
また、渋谷HUMAXシネマ渋谷にある映画館。えんとつ町のプペルのグッズ販売で積極的に応援しており、一度完売した後に再度仕入れてくれたとのこと。がグッズを再仕入れしてくれたことへのお礼として、翌日の上映回に合わせて西野さん自らが劇場に出向き、グッズ購入者を対象にサイン会・撮影会を行う計画も語られました。さらに、ZOOM座談会映画を観た人同士が15名限定で集まり、西野さんと感想を語り合ったり、進行中のプロジェクトをチラ見せしたりする1時間のオンラインイベント。も不定期で開催しているとのことです。
まとめ
今回の放送の核心は、「映画館でしか出会えないお客さんがいる」という舞台挨拶39回の実感に基づく判断でした。配信すれば効率的にリーチできるのはわかっている。でも、AIの進化で映像コンテンツが溢れるこれからの時代、偶然の出会いや場を共有する体験の価値はむしろ上がっていく──そう考えた結果が「しばらくサブスク配信はしない」という決断です。
特典をめぐるファンとの温度差にも正直に向き合いながら、弾き語りオンラインライブやサイン会など、映画館を起点にした新しい施策を「実験」として次々に打ち出していく姿勢が印象的でした。
- 映画『えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』のサブスク配信(Netflix等)は当面見送り
- 理由は「映画館でしか出会えないお客さん」が明確に存在するという39回の舞台挨拶での実感
- AI時代に映像コンテンツが溢れるからこそ、偶然の出会いや場の共有体験の価値が上がるという判断
- 特典をめぐる批判にはファンの声も含まれており、条件を緩和して即座に対応
- 弾き語りオンラインライブ、劇場でのサイン会、ZOOM座談会など映画館を起点にした実験的施策を展開中
