エコーチェンバーを越えろ ── 映画を"届ける"ためのキーワードは「オフライン」と「ギフト」
西野さんの朝礼にて、西野亮廣さんが映画『えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』公開2週間の手応えと課題を語りました。初週の数字は前作を下回ったものの口コミで粘りを見せる中、「エコーチェンバーの壁をどう越えるか」という問いに対して、オフラインとギフトという2つのキーワードを提示しています。その内容をまとめます。
舞台挨拶4時間でも声が枯れない理由
前日の大阪で行われた舞台挨拶は、なんと8本。司会者なし、マイク1本で30分ずつ喋り通し、合計4時間に及んだそうです。それでも声がまったく枯れていないと西野さんは語ります。
理由は2つ。1つ目はメンタル面で、上映前の「楽しみにしてます」というエネルギーや、上映後の「面白かったです」というポジティブな声が活力になっていること。2つ目はフィジカル面で、映画館の音響設備がとにかく優秀だという点です。
映画館だからさ、音の跳ね返りとか全部計算されてるわけじゃないですか。結構ボソボソ喋っても後ろの席まできちんと届く
地方の公民館などでは声を張る必要がありますが、映画館ならVoicyで話すくらいのトーンでトークショーが成立するため、喉に負担がかからないのだとか。舞台挨拶ツアーの「ホームグラウンド」が映画館であることの意外なメリットです。
東宝グッズランキングで健闘するペンケース
映画の劇場グッズは映画館ではほぼ完売に向かっている状況で、東宝オンラインショップでは引き続き販売中とのこと。そして嬉しいニュースとして、東宝日本最大手の映画会社の一つ。ドラえもん、名探偵コナンなどの配給も手がける。がオンラインで取り扱うすべての映画のオフィシャルグッズの中で、『えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』のペンケースが総合上位にランクインしていることが判明したそうです。
このペンケースの色を決めたのは、最終段階での意外なエピソード。ベージュと水色で迷った際、その場にいたダイノジの大地さんお笑いコンビ「ダイノジ」の大地洋輔さん。エアギター世界チャンピオンとしても知られる。が娘さんに画像を送って即断を仰ぎ、娘さんの「水色」という即答で決まったのだとか。
いや、それわかるわ、俺も水色なんだよこれって言って。で、そこでバッって決まった
西野さんのおすすめはペンケース、ピンバッジ、水筒。裏地のデザインも凝っているそうで、「おじさんが持ってもめちゃくちゃ可愛らしい」とのことです。
フルーティスト・ひのなみさんの「凪を求めて」メイキング
Voicyパーソナリティのフルーティスト・ひのなみさんが、映画の劇中曲「凪を求めて」をフルートとピアノでカバーするメイキング映像をVoicyにアップしているそうです。楽譜が公開されていないため耳コピ楽譜を使わず、音源を聴いて音を採譜すること。正確な音感とスキルが求められる。から始まり、編曲して演出を加えていく過程がリアルタイムで進んでいく内容です。
「ここちょっとピアノ足しません?」といったやり取りのリアルさが楽しく、西野さんは「俺これ泣いちゃうよ」と感動を語っていました。ひのなみさんの配信はこちらから聴けます。
公開2週目 ── 22%減にとどめた口コミの力
映画『えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』は、ベルリン国際映画祭カンヌ、ヴェネツィアと並ぶ世界三大映画祭の一つ。ドイツ・ベルリンで毎年2月に開催される。での高評価や国内試写会の好反応から「スタートダッシュを決めるのでは」という期待がありました。しかし初週の興行成績は前作を下回る結果に。
ところが公開2週目、通常なら大きく落ち込む興行収入が22%減にとどまりました。一般的な映画では2週目に40〜50%以上落ちることも珍しくないため、口コミの力が数字に表れている格好です。「あれ、ひっくり返るの?」という空気が生まれつつあると西野さんは語ります。
2週目で40〜50%以上の減少が通常。初動がすべてと言われる
2週目の減少が22%にとどまる。口コミによるじわじわ型の可能性
ただし西野さん自身は「メイクドラマがそんなにすぐ始まるとは思っていない」と冷静な見方。「届けば刺さる」ことは確認できているので、長期戦に持ち込んでじわじわ伸ばす覚悟と体制を整えているとのことです。
「映画の届け方」ではなく「えんとつ町のプペルの届け方」
長期戦に入る上で西野さんが強調するのは、「映画の届け方を模索するのではなく、えんとつ町のプペルの届け方を模索する」という姿勢です。
世間が知っている映画のプロモーション方法とは異なるやり方を取るため、ネガティブに報じられることもあり得ると予想しているそうです。たとえば「再生回数よりもバックエンド商品最初の接点(フロントエンド)で集客した後に販売する、より高単価な商品やサービスのこと。マーケティング用語。の成約率を重視しているYouTubeチャンネルに対して『再生回数回ってないじゃん(笑)』と言われるようなもの」と例えを出しています。
マネタイズの設計までオリジナルの戦い方を見つけなければ、ベンチャー的な立場では勝ち目がない――これが西野さんの基本的な戦略観です。
長崎発・子ども200名の貸切上映会
ここから具体的な話に移ります。えんとつ町のプペルシリーズの強みは「エログロ暴力がない」「希望の物語である」こと。原作が絵本であり、もともと子どもへの贈り物と相性が良い作品です。
そんな中、各地で「地元の子どもたちに映画を届けたい」という声がポコポコと上がり始めているそうです。先行事例として長崎では、保育園の先生を中心とした有志グループがTOHOシネマズ長崎東宝グループのシネマコンプレックス。長崎県長崎市に所在。と掛け合い、地元の子ども200名を無料招待する貸切上映会を企画。すでに1回実施済みで、2回目は5月9日14時から開催予定とのことです。
応援スポンサーの詳細はこちらから確認できます。一般の方が劇場と直接交渉して子ども向けの上映会を実現させるという、まさに「映画のギフト化」の産声と言えるかもしれません。
エコーチェンバーを越えるキーワード
西野さんはここで、最近よく耳にする「エコーチェンバーSNSやアルゴリズムによって、自分と似た意見ばかりが反響・増幅される閉じた情報空間のこと。反響室(エコーチェンバー)に例えた表現。」という現象に話を接続します。
今の時代、私たちは自分で情報を選んでいるようでいて、実際にはプラットフォームがおすすめしてくる情報をパクパク食べて生きている。あるコミュニティでは話題沸騰のことが、隣のコミュニティではまったく知られていない――そんな情報の偏りが加速しているわけです。
この壁を越えて、隣のコミュニティに情報を届けるためのキーワードとして西野さんが挙げたのが、「オフライン」と「ギフト」の2つです。
たとえば、「親戚のおじさんから映画のチケットをもらって、そこで映画の存在を知った」というケース。ここにはプラットフォームのアルゴリズムは一切介在していません。人から人への直接の手渡しだからこそ、エコーチェンバーの壁をすり抜けることができるというわけです。
西野さんは、この方法ではバズのような爆発は起きにくいとも認めています。しかし、長崎の貸切上映会のように「うちの地元でもやってみよう」「私も、俺も、僕も」という連鎖が広がったとき、初めて時計の針が動くのではないかという見立てです。
まとめ
映画『えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』は、初週こそ前作を下回ったものの、口コミの力で2週目の減少を22%にとどめています。西野さんはこの現状を冷静に受け止めつつ、「届けば刺さる」作品を長期戦でじわじわ届けていく戦略を明確にしました。
そして、その突破口として示されたのが「オフライン」と「ギフト」。プラットフォームのアルゴリズムに依存しない、人から人への直接の手渡しこそがエコーチェンバーの壁を越える手段だという結論は、映画に限らず、何かを広めたいすべての人にとってのヒントになるかもしれません。
- 映画館の優れた音響設備のおかげで、舞台挨拶8本(合計4時間)でも声が枯れない
- 東宝オンラインショップで、プペルのペンケースが全映画グッズの中で総合上位にランクイン
- 初週は前作割れも、2週目は22%減にとどまり口コミの粘りを見せている
- 「映画の届け方」ではなく「えんとつ町のプペルの届け方」をオリジナルで模索する必要がある
- 長崎では有志が劇場と交渉し、子ども200名を無料招待する貸切上映会を実現
- エコーチェンバーを越えるキーワードは「オフライン」と「ギフト」── プラットフォームに依存しない情報伝達
