「口がないから人気」は本当か
「どうすればIPは作れるのか」「人気キャラクターを生み出すコツはあるのか」。西野さんのもとには、こうした質問がよく寄せられるそうです。よく語られる説明のひとつが「ハローキティに口がないから、見る人が自由に感情を投影できる」というもの。たしかに一定の納得感はあります。
しかし西野さんは、この説明に疑問を投げかけます。もし本当に「口がないこと」が人気の理由なら、サンリオの他の口のないキャラクターも同じように世界的な人気を博しているはずだからです。
・口がないから感情を投影できる
・猫だから人気
・ポチャッコ1989年に登場したサンリオの犬のキャラクター。人気キャラクターではあるが、ハローキティほどの世界的規模には至っていない。も口がないが、キティほど巨大IPにはなっていない
・双子の妹ミミィハローキティの双子の妹。リボンが右耳(キティは左耳)で色も異なるが、キャラクター造形はほぼ同一。はキティとほぼ同じ造形だが、同等の人気はない
ミミィちゃんはキティちゃんとリボンの位置と色が違うだけで、造形はほぼ同一。それでも人気の規模はまったく違います。つまり「口がない」「猫」といった説明は、成功した後に語られる分析であって、そのままそれを真似すれば次のキティが生まれるわけではないのです。
IPの誕生に再現性はない
では、キャラクターIPには再現性がまったくないのか。西野さんの答えは「半分ない、半分ある」というものです。
再現性がないのは「誕生」の部分。どのキャラクターが世の中に刺さるかは、誰にもわからない。だからこそ「次のハローキティを作ります」という発想自体が危険だと西野さんは指摘します。
一方で再現性がある部分もある。それが「兆しに追加投資する」というプロセスです。
ハローキティ誕生の意外な順番
ハローキティは最初から「世界的IP」として設計されていたわけではありません。歴史をたどると、その始まりは意外なものです。
ここで西野さんが強調するのは順番です。「投資したから人気になった」のではなく「人気になったから投資された」。この順番こそがIPビジネスを読み解くカギだと西野さんは語ります。
サンリオの本当の強さは「打席数」
西野さんが「サンリオの本当の強さ」として挙げるのは、この会社が世に送り出してきたキャラクターがハローキティだけではないという事実です。
サンリオは一発必中を狙ったわけではなく、とにかく打席に立ち続けてきた。その中から市場が反応したキャラクターを見つけ、そこに名前や物語を与え、追加投資して育てていく。この繰り返しがサンリオの強さの本質だと西野さんは分析します。
兆しに追加投資するという戦い方
西野さんはこの考え方が、キャラクタービジネスだけでなく映画・本・音楽・スタートアップにも共通する戦い方だと語ります。
(挑戦の回数)
(育成のプロセス)
(何が刺さるか)
(口がない・猫など)
ホームランを設計することはできない。しかし、打席に立つ回数は自分の意思で増やせる。そしてバットにポンと当たった一本に全力を注ぐ。この順番こそがIPビジネスの本質だと、西野さんは締めくくります。
まとめ
「次のハローキティは作れるのか」という問いに対する西野さんの答えは明快でした。キャラクターの誕生に再現性はない。しかし育成には再現性がある。そして打席に立つ回数を増やすことも、自分の意思でコントロールできます。
成功したものを後から分析して「これが人気の理由だ」と語るのは簡単です。しかし、その分析をそのまま次のヒットに応用できるわけではない。むしろ大事なのは、多くの試行の中から市場が反応した「兆し」を見つけ、そこに集中投資すること。IPに限らず、あらゆる創造的なビジネスに通じる考え方だといえるでしょう。
- 「口がないから」「猫だから」といった説明は、成功後に語られる後付けの分析にすぎない
- キャラクターIPの誕生に再現性はないが、育成(兆しへの追加投資)には再現性がある
- ハローキティは元々「名前のない小銭入れの猫」から始まり、市場の反応を受けて名前や物語が与えられた
- サンリオの強さは一発必中ではなく、打席数の多さと兆しを見逃さない眼にある
- 「投資したから人気になった」ではなく「人気になったから投資された」という順番が本質
- この考え方は映画・本・音楽・スタートアップなど、あらゆる創造的ビジネスに共通する
