何度も歩かないと見えてこないもの
この回で西野さんがまず取り上げたのは、川口こども音楽と森の美術館の手直しについての話です。
この土日をかけて、入り口のエントランスをリニューアルしたと語ります。
以前は入ってすぐの場所にレンタルドレスがずらりと並んでいたそうです。建物や窓の位置、差し込む光が計算されているのに、そこを塞いでしまっているのがもったいなかったと振り返ります。
風の流れ、水の流れ、光の流れを止めることに、あまりいいことはないと考えていたと話します。
改装の中で、倉庫に眠っていたディスクオルゴールの盤に着目します。錆びて使えなくなっていたものの、円盤が美しかったため、エントランスの壁一面に貼り付けることにしました。
スタッフからは、どういう思考回路で壁に貼ろうと思ったのかと聞かれたそうです。西野さんは、考えすぎて理由を忘れたと笑いつつ、いくつか理由を挙げます。
一つは、たくさんの人を感動させてきたオルゴールの盤が、壁の模様として再び活躍する光景に重みを感じたことだと話します。
僕が逆立ちしても作ることができないのは時間だったり、樹齢1000年とか、100年前のオルゴールとか、そういうの作ることできないじゃない。時間とか歴史っていうのに対して、僕はすごいリスペクトがあるので
もう一つの理由は、エントランスの最初の壁に貼ったアンティークの鏡でした。差し込む光を美術館の中に増やしたくて鏡を貼ったところ、とても綺麗だったと言います。
鏡をもっと貼りたかったものの在庫がなく、似たように反射するものを探していたときに、あのオルゴールの盤が見つかったという流れです。
こうした複数の理由の合わせ技で、オルゴールの壁が生まれました。
西野さんが強調するのは、このアイデアが運営を引き継いで4ヶ月目にようやく思いついたものだという点です。何百周と歩き回っても、最初の1、2ヶ月では出てこなかったと振り返ります。
4、5回しか現地に足を運んでないコンサルタントみたいな人が、地方創生とか言っちゃうのって、もう改めて本当に寝言で
東京唯一の木造映画館・シネマ猫
2つ目のトピックは、青梅にある映画館シネマ猫についてです。
仕事を終えて都内に戻る道すがら、青梅という町に立ち寄ったと言います。猫の看板が多く、猫の町だと知ったそうです。
この青梅にあるシネマ猫で、映画『えんとつ町のプペル~約束の時計台~』が上映されており、舞台挨拶とツーショット撮影会が行われました。
館長からは小さな映画館まで来てくれて申し訳ないと言われたそうですが、公開から4ヶ月以上経った今も上映してくれる映画館があること自体がありがたいと西野さんは話します。
建物の雰囲気も印象的だったと言います。雨が降る窓の外と木造の内装の対比が良かったと振り返ります。
ここで西野さんは、自分がいま狙っていることとして映画館づくりを挙げます。
自分でソフトとハード両方持ってる方が、任天堂みたいなノリでね、絶対強いなと思ってて。美術館作ってみて、自分で劇場持ってる強さっていうのを最近痛感してます
美術館を運営してみて、ソフトメーカーがハードを持つ強さを実感したことから、映画館づくりへの思いがじわじわ強くなっていると話します。
シネマ猫は5年前にできた映画館だそうです。元々あった木造建築を活かし、DIYで立ち上げられたのではないかと推測しています。
オーナーに映画館運営の大変さを聞いたそうで、改めて美術館にも来てくれる予定があるため、そこで話せればと語りました。
芸人にボケてはいけない
シネマ猫での出来事から、西野さんはある注意点に話を広げます。
ロビーで小さな子どもが近づいてきて、プペルの感想を伝えてくれたそうです。西野さんはお礼を言いました。
その横にいた父親が、自分からも感想を言わせてほしいと切り出します。
漁港の肉子ちゃんの方が1億倍おもろかったです、みたいなことをおっしゃって。いや、これどっち?と思った
これは、前作の際にミーシャさんがラジオでプペルより漁港の肉子ちゃんの方が面白いと語ったコメントのオマージュだと、西野さんは解説します。
本当の感想なのかボケなのか判断がつかず、難しかったと振り返ります。そこから、素人が芸人にボケることへの注意へとつながります。
芸人は毎日プロのお笑い芸人と対峙しているため、面白さの水準が高いと説明します。テレビで芸人同士がボケとツッコミをやり取りするのを見て真似したくなるものの、素人がやってもろくなことはないと言います。
そのお父さんが悪い人ではないと重々承知しているとしつつも、芸人は素人からボケられることを面倒に感じることが多いと語ります。
都庁のプロジェクションマッピングはなぜ難しいのか
3つ目のトピックは、前日にXへ投稿したという都庁のプロジェクションマッピングについてです。
都庁のプロジェクションマッピングは、ダサい、センスがない、税金を使って何をしているのか、といった声が上がりがちだと西野さんは指摘します。
内容の評価は横に置いたうえで、もし自分が都庁のプロジェクションマッピングを依頼されたらどうするかを考えてみたと言います。
そうすると見えてきたのが、めっちゃむずいっていうことが分かった
理由は建物の形にあります。プロジェクションマッピングは、建物に凹凸があるほど、その凹凸に合わせた絵が動くところが面白いと説明します。
一方で都庁は比較的フラットな形をしているため、凹凸を動かすような表現がしにくいと語ります。
大聖堂やシンデレラ城のように柱などがボコボコしており、その凹凸自体を動かす演出ができる
比較的フラットで平面に近く、巨大なスクリーンに映像を投影するかたちになりやすい
大聖堂やシンデレラ城では、柱が動いたり回り始めたりする演出ができますが、フラットな都庁では、実質的にスクリーン上でストーリーのある映像を見せるしかなくなると言います。
キャラクターが出てきて走るような映像になると、それはもうスクリーンだと感じてしまい、期待されるプロジェクションマッピングにはなりにくいと話します。
さらに西野さんは、やりがちな失敗として「間違ったインバウンド」を挙げます。
外国人の方に受けようと思って、すぐ富士山出すみたいな。鳥居出すみたいな。忍者みたいな。いや、もういい加減にしてくれみたいな
海外経験が少ない作り手が、富士山や鳥居、忍者などをすぐ出してしまうパターンだと説明します。
西野さんは、これはクリエイターだけの問題ではないと整理します。もう少し頑張れる余地はあるかもしれないとしつつ、そもそも都庁をキャンバスにする企画自体が難しいと述べます。
フラットな場所で勝ち筋が乏しいまま制作が続けば、クリエイターが次々と苦しい立場に置かれてしまうと懸念します。
エンタメ屋の立場から、都庁のプロジェクションマッピングはやめておいた方がいいというのが、西野さんのアドバイスでした。
まとめ
現場に何度も足を運ぶことでしか見えないもの、ソフトとハードを両方持つ強さ、そして企画の前提そのものが結果を左右するという視点が、3つのトピックを通して語られた回でした。
- 美術館のオルゴールの壁は、運営4ヶ月目に何百周と歩いてようやく生まれたアイデアだった
- 西野さんは映画館づくりに関心を持ち、ソフトとハードを両方持つ強さを実感していると語った
- 素人が芸人にボケるのは、面白さの水準が高い相手だけに面倒がられやすいと注意を促した
- 都庁のプロジェクションマッピングは、建物がフラットで凹凸を動かせないため企画自体が難しいと分析した
- フラットな場所では勝ち筋が乏しく、エンタメ屋としてはやめた方がいいというのが西野さんの見解だった
