一ヶ月前の依頼から始まったイベント
今回の『もふもふ大応援上映会in東京国際フォーラム』は、ニッポン放送在京のAMラジオ局。エンタメ・イベント事業も手がけ、ホールイベントの企画運営にも関わる。からの一本の打診で動き出しました。「一ヶ月後の東京国際フォーラムが空いた」という相談だったといいます。
休日のホールが急に空くのは、別のイベントがキャンセルになったケースがほとんど。普通なら、その短期間で大規模イベントを成立させるのは無理筋です。ですが西野さんは、ここに大きな可能性を見ました。
一ヶ月前の打診を成立させられるなら、他会場で同じような「急に空いた」案件にも手を挙げられる。汎用性のある武器を持てる、ということです。実際、定番化した『えんとつ町に踊るハロウィンナイト』幕張メッセで開催される、えんとつ町のプペルを題材にした大型ハロウィンイベント。も、最初は「五ヶ月後の幕張メッセが空いた」という似た経緯で始まったといいます。
当日設営・当日バラシという常識破り
西野さん自身は別の仕事が詰まっており、会場入りは開演3時間前。下見も行けないまま当日リハーサルに突入したそうです。それどころか、会場のステージは当日設営・当日バラシ。一日二回公演で約5,000人を集める規模のイベントとしては、業界の常識では考えられない進行だったといいます。
準備に数ヶ月〜数年/前日仕込み/美術セットに億単位
準備一ヶ月/当日設営当日バラシ/出演者4人/二回転で約5,000人
出演者も西野亮廣キングコングのボケ担当。絵本作家、映画プロデューサーとしても活動し、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』を運営。、梶原雄太キングコングのツッコミ担当。YouTubeチャンネル『カジサック』でも活動。、大吉先生、堤下くんの4人だけ。これが成立した最大の理由は、上映する映画というコンテンツがすでに完成しているからです。照明も音もチェックは5〜10分で済んだといいます。
ミュージカルなら2年前から準備し、稽古場を2ヶ月押さえる規模になります。それに比べ、映画上映+応援という形式は、運営コストとリスクが圧倒的に低い。だからこそ「他の劇場が急に空いたとき」にも手を挙げられる、汎用性の高い武器になり得るのです。
子供と家族に徹底的に優しい上映会
西野さんが特に手応えを感じたのは、観客体験の優しさです。5,000人のうち体感で2,000人ほどが子供。通路を子供が走り回り、最前列より前のスペース(スクリーンの大きさに合わせて潰した3列分)にちょこんと座ってサイリウムを振る子もいたといいます。
「お前ちょっと待てよ。座席指定の意味」
映画上映中も、客電は完全に落とさず10%ほど点灯。子供が走り回る前提で、足元が見える設計にしていました。子供が泣いても騒いでも、誰も悪者にならない。なぜなら大人の方が大声でヤジを飛ばしているからです。
映画『えんとつ町のプペル~約束の時計台~』を全国の劇場で観てきた西野さんは、子供が泣いて親が肩身の狭い思いをする場面を何度も目にしてきたといいます。「お父さんお母さんが悪者になっちゃう感じ」をどう守るか。その答えの一つが応援上映でした。
リード応援団が作った熱狂の空気
当日の盛り上がりを大きく支えたのが、約200名のリード応援団でした。一般来場者より1時間ほど早く会場入りし、応援のレクチャーや練習を行うチームです。
ところが西野さんが現地で見たのは、レクチャーの必要すらないほどテンションマックスの応援団の姿でした。応援団席のチケットを買ってまで参加する人たちが、開演前から自然と熱狂を作り出していたのです。
彼らが最前列で声を出してくれることで、「今日は声を出していい」「ヤジを飛ばしていい」「子供が泣きわめいてもいい」という空気が会場全体に広がりました。上映前の盛り上がりは、まるでアイドルライブのようだったといいます。
「本日MCの俺たちキングコングだ。よろしく!」つったら、もう客席が数千人「うわぁー!」映画だよこれ」
10年・20億円のIP投資が結んだ景色
西野さんは、この景色は『えんとつ町のプペル』を10年育ててきたからこそ実現したものだと振り返ります。学生時代に作品に触れた世代が親になり、子供に絵本やグッズを買い与える流れが生まれていました。
例えばパリのエッフェル塔パリの観光名所。展望台や展示スペースが貸し出されることもある。で開催した『えんとつ町のプペル光る絵本展』は入場無料。設営費2,000〜3,000万円規模が、その瞬間には回収できない投資です。それでも一つひとつ履歴を積み上げ、ポジションを作り続けてきた結果が昨日のロビーの景色だ、と西野さんは言います。
「アンパンマンに何年しがんどんねん」と言う人はいない。アンパンマンやなせたかし原作の国民的キャラクター。50年以上にわたり世代を超えて愛され続けている。やミッキーマウスディズニーの代表的キャラクター。1928年の誕生から100年近くIPとして育てられ続けている。のように、IPは50年・100年単位で育てるものだという認識を、西野さんは繰り返し強調しました。
「爆死」報道とドブ板営業の意味
映画『えんとつ町のプペル~約束の時計台~』は公開直後、一部で「爆死」と報じられたといいます。西野さんは「初登場4位で爆死とは何なのか」と疑問を呈し、コンテンツのクオリティと数字が合っていないと強く反論しました。
このとき周囲からは「インフルエンサーやヒカキン日本を代表するYouTuber。社会的影響力が非常に大きい。と絡めば売れる」というアドバイスもあったといいますが、西野さんはそれを断りました。理由は「再現性がないから」。
短期で数字は出るが、他の中小企業や個人には真似できない。「西野だからできた」で終わる
毎日全国の映画館を回り、頭を下げて歩く。誰でも再現できる「諦めない姿勢」を見せる
同じように「人生の11時台」にいる人々──届かないコンテンツを作っている人、お客が来ない店を営む人、オーディションに受からない俳優志望者──にエールを送るのが、自分の役目だと西野さんは語ります。だからこそ、戦略に逃げず、何百キロも歩いて頭を下げるドブ板営業を選んだ、と。
次は横浜アリーナへ
体験を踏まえ、西野さんは次回構想に踏み込みます。次は横浜アリーナ神奈川県横浜市にある大型アリーナ。コンサートやスポーツイベントに使われ、収容人数は最大約17,000人。で『もふもふもふもふ大大大応援上映会』をやりたい、と。
段階的に会場規模を上げていくのではなく、二発目でいきなり横浜アリーナへ。リード応援団も今回の200名から大幅に増やし、早めに会場入りしてお弁当を食べながらみんなで応援練習をするような、桁外れのイベントを構想しているといいます。
西野さんは、映像を観るだけではない「体験としての応援上映」に映画の未来があると見ています。「みんなで声を枯らした」体験はAIで複製できない。だからこそ、この形式は伸び代がある、と。
また、会場ロビーを彩ったルビッチバルーン(支援者からの祝い花代わりに送られたバルーン)も大きな話題になりました。終演後、子供たちが一人一個ずつ持ち帰ることができ、駅へ向かう道がバルーンで埋まったといいます。送り主は「遅れたお祝いができ、かつ子供のお土産にもなる」二重のメリットを得る仕組みです。8月の川西市キセラホール兵庫県川西市の文化施設「キセラ川西せせらぎ公園」内にあるホール。での上映イベントでも同様に展開予定とのこと。
まとめ
一ヶ月前の依頼から始まり、当日設営・当日バラシで5,000人を二回転させた『もふもふ大応援上映会』。それは単発のイベントレポートではなく、運営効率・観客体験・IP育成・諦めない姿勢という、西野さんがこれまで積み上げてきた要素が結実した一日でした。
「全方位に優しい」イベントの可能性、そして10年・20億円の投資が結ぶファミリーコンテンツとしての景色。次は横浜アリーナで、より大きな熱狂を作り出すという宣言で締めくくられました。
- 一ヶ月前の依頼で東京国際フォーラム5,000人規模・二回転・当日設営当日バラシのイベントを成立させ、汎用性の高い「武器」を手にした
- 応援上映の形式により、子供が泣いても騒いでもお父さんお母さんが悪者にならない「全方位に優しい」場が生まれた
- 200名のリード応援団が熱狂の空気を作り、開演前から会場が一体化する仕組みが機能した
- 10年・20億円のIP投資を続けてきたからこそ、親子・三世代で楽しむファミリーコンテンツとしての景色が結実した
- 「爆死」報道に対しインフルエンサー戦略ではなくドブ板営業を選んだのは、人生の11時台にいる人々への再現性あるエールにするため
- 次は横浜アリーナで桁外れの応援上映会を構想。身体性を伴う共体験はAIで代替できない映画の未来になりうる
