おたふく風邪とは何か
今回のテーマは、一歳になってから受けるワクチンの一つ、おたふく風邪です。
おたふく風邪は、医学的には流行性耳下腺炎と呼ばれる急性のウイルス性感染症です。よく「ムンプス」とも呼ばれます。
病原体であるムンプスウイルスは感染力が強く、咳やくしゃみの飛沫、唾液を介した接触で広がると話されています。
潜伏期間は約2〜3週間と比較的長く、特徴的な症状は唾液腺の腫れです。ほっぺたがぷくっと膨らみ、本当におたふくのような顔になります。
妹がかかったことがあって、その時には片方のほっぺただけがポコッて腫れて、なんか面白い顔になるなと思った覚えがあります
耳の付け根から顎にかけての耳下腺や顎下腺が腫れ、激しい痛みと38〜39度前後の発熱を伴います。通常は片方が腫れ、数日遅れて両方が腫れることが多いそうです。
症状は3〜5日でピークに達し、1週間から10日ほどで徐々におさまっていきます。
一方で、感染しても症状が出ない不顕性感染が全体の30〜35パーセントほどあります。無自覚のまま周囲に広げてしまうこともあると話されています。
ほっぺの腫れだけではない合併症
おたふく風邪は、罹患する年齢によって重症度が大きく変わります。
幼児や小児期では、発熱や唾液腺の腫れで済む比較的軽症のケースが多いとされます。
ただし、あきさんが最も警戒すべきだと語るのがムンプス難聴です。急性内耳炎から発生し、数千人に一人の割合で起こります。
現代医学では有効な治療法がなく、多くは片側が生涯にわたって聞こえなくなってしまいます。これは大人がかかった場合も同様です。
さらにウイルスが中枢神経に侵入すると、無菌性髄膜炎を発症し、入院や加療が必要になることもあります。
思春期や成人での感染は重症化しやすく、40度近い高熱や全身倦怠感で、食事や水分の摂取すら困難になるケースもあります。
そして重大なリスクが生殖腺炎です。男性患者の20〜40パーセントに精巣炎、女性の5〜7パーセントに卵巣炎が発生すると話されています。
男性の場合、精巣が萎縮して精子ができなくなり、男性不妊の原因になることがあります。
おたふく風邪って、最初にほっぺが膨れて、熱が出てしんどいねぐらいのものだと思ってたの
名前もちょっと間が抜けてて、侮っちゃうような気がしてたけど、思春期、成人でかかったらだいぶリスク高い
あきさんは、難聴によってめまいが続いたり、耳鳴りや破裂音のような症状を感じる人もいると補足します。生活の質が大きく下がると話されています。
なぜ任意接種のままなのか
これほどのリスクがあるにもかかわらず、日本ではおたふく風邪ワクチンは定期接種ではなく任意接種です。
定期接種は国から補助が出て自己負担がないのに対し、任意接種は自己負担です。ただし地方自治体の補助制度が進んでいるため、住む地域への問い合わせが勧められています。
なぜ任意接種なのか。その背景には過去の経緯があります。
1989年、日本では麻疹・おたふく風邪・風疹を合わせた三種混合のMMRワクチンが定期接種として導入されました。
しかし導入直後、おたふく風邪ワクチンの成分に起因する無菌性髄膜炎が想定を大きく超えて発生します。10万人に数名程度と見込まれていたものが、1200人に一人という高い頻度で出てしまったのです。
この無菌性髄膜炎自体は医療介入で後遺症なく治る病気ですが、頻度が高すぎることを重く見た厚生省は、1993年にMMRワクチンの接種を全面的に禁止しました。
その後、麻疹と風疹はMR混合ワクチンとして定期接種に残りましたが、おたふく風邪は単独ワクチンとして切り離され、任意接種のまま現在に至っています。
ちょうど今、ワクチン絶対反対っていう小児科の先生の本を読んでるんですけど。その本の中でちょうどこのMMRワクチンで髄膜炎の副反応がいっぱい出て、だからワクチンはダメなんだみたいな話があって、ちょうど昨日読んだなって今思いました
日本と世界の違いと、ワクチン開発の歴史
世界的に見ると、MMRワクチンはごく一般的です。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど、世界120か国以上で接種されています。
さらに水痘を加えたMMRV、四種混合ワクチンも定期的に実施されている国があります。それに対し、日本はおたふく風邪ワクチンが定期接種化されず、個人の判断に委ねられている状態です。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどで打たれているMMRやMMRVのワクチンは、日本で問題になったワクチンとは種類が違ったり、株が違ったりするの
まさにそこが分かれ道でした。ここで、ウイルスとワクチンがどう発見・開発されてきたのかを、あきさんが振り返ります。
おたふく風邪は古代から知られており、最古の記録は紀元前5世紀まで遡ります。医学の父ヒポクラテスが著書「流行病」に、ほっぺの腫れとともに精巣の腫れと痛みを特徴として記していました。
日本でも平安時代に「ふくらし病」として記されていましたが、病原体は長らく不明でした。
1934年、アメリカの病理医学者{要確認: エルネスト・グッドパスチャー}らの研究チームが、患者の唾液をアカゲザルに注入して同様の病気を再現し、原因が細菌ではなくウイルスであることを証明。これをムンプスウイルスと名付けました。
1945年には、公衆衛生局の科学者{要確認: カール・ハーベル}がインフルエンザウイルスの培養技術を応用し、卵でムンプスウイルスの培養に成功します。
翌1946年、オーストラリアの{要確認: ウィリアム・ベバリッジ}らがこの技術を洗練させ、卵で安全かつ大量にウイルスを扱えるようになりました。
当初は不活化ワクチンが作られましたが、免疫の持続が短く、弱毒株の生ワクチンが求められました。
アメリカのメルク社のウイルス学者{要確認: モーリス・ヒルマン}は、当時5歳だった娘のジェリルリンさんがおたふく風邪を発症した際、そのウイルスを分離し、鶏の胚で何代も植え継いで弱毒化しました。こうしてできたのがジェリルリン株です。
このジェリルリン株はアメリカで承認され、世界的に使われていきました。
一方、日本は独自の開発路線を進みます。占部株、星野株、鳥居株などが、阪大微研や北里研究所、武田薬品によってそれぞれ弱毒化され、生ワクチンとして使われました。
株の違いが招いた副反応と、その後の改良
日本もこれらの独自の株を三つ混ぜて接種を始めましたが、混合したことで副反応が強まってしまったと考えられています。
想定では10万人に数人だった無菌性髄膜炎が、1200人に一人という高頻度で発生してしまいました。
後に遺伝子解析によって原因が判明します。世界で問題のなかったジェリルリン株はジェノタイプAという型でしたが、日本の株はすべてジェノタイプBという型で、髄膜に入り込みやすい性質があったのです。
世界で使われた株。ジェノタイプAという型で、副反応の頻度が低かった
占部株・星野株・鳥居株など。すべてジェノタイプBで、髄膜に入り込みやすい性質があった
この結果、日本のワクチンは一旦頓挫します。しかし製薬会社はこれを乗り越えるため、株を変える以外の努力を重ねました。
一つは、何歳で打つと副反応が出にくいかという接種時期の見極めです。過剰な拒絶反応が起こらない一歳の早期に打つ手法などが取り入れられました。
もう一つは、ウイルスを増やす際の培地の工夫と精製の徹底です。ウイルス以外の成分が副反応の原因になるため、それを取り除く精製作業を当時よりはるかに高めました。
そして2026年5月、日本で新たな三種混合ワクチンが製造販売許可の承認を取得したと、あきさんはついこの間のニュースとして紹介します。
今後、治験を経て安全性が確認されれば、定期接種に切り替わっていくのではないかと期待されています。
科学の進歩と、国内でワクチンを作る意味
とみーさんは、任意接種という言葉が「どちらでもいい」という印象を与えてしまう点に触れます。
定期接種は大事なもので、任意接種はどっちでもいいよみたいな印象。実はすごくかかってしまうと重篤な症状が出るみたいなものが結構あるんだなって思いました
あきさんは、想定外のことは起こるので、その時にすぐ止める判断も、それを乗り越える研究を進めることも、どちらも大事だと話します。
話題は科学技術の進歩へ広がります。遺伝子解析の精度が上がり、かつて5年10年かかっていた研究が数か月で進むようになったと、とみーさんは指摘します。
あきさんは、自身が学生の頃はPCRですら夢の技術で、DNAの配列を一回に500文字読めればすごいという時代だったと振り返ります。つなぎ合わせる場所を目で探すようなアナログな作業だったそうです。
それが今ではコンピューターの力で何億文字も一瞬で読めるようになりました。一方で、技術が未熟だった当時によくワクチンを開発できたと、昔の科学者たちの知恵にも感嘆します。
最後に、なぜ世界の安全なワクチンをそのまま使わず、国内で開発し直すのかという疑問が語られます。
あきさんは、ワクチンには安全保障上の理由があると説明します。国内で開発できないと、別の国に供給を握られる状態になってしまうためです。
ただし、国内で開発する技術と人材を維持しつつ、代替としてしばらく海外の安全性の高いワクチンを入れる選択肢もあるのではないか、と話されています。
まとめの前に
話が大きくなりそうだったため、とみーさんの提案でこのあたりで締めくくられました。
まとめ
おたふく風邪はほっぺが腫れるだけの病気ではなく、治療法のない難聴や、成人での不妊につながる合併症のリスクがあります。日本では過去の副反応の経緯から任意接種にとどまっていますが、株の違いという原因が解明され、改良されたワクチンが承認されつつあります。
- おたふく風邪は数千人に一人がムンプス難聴になり、片側が生涯聞こえなくなることがある
- 思春期以降の感染は男性の精巣炎による不妊、女性の卵巣炎などの重篤なリスクがある
- 日本は1993年のMMRワクチンによる無菌性髄膜炎の多発を受け、おたふく風邪は任意接種のまま
- 原因は世界標準のジェリルリン株と異なる、髄膜に入りやすいジェノタイプBの独自株にあった
- 接種時期の見極めや精製技術の向上で改良が進み、2026年に新たな三種混合ワクチンが承認された
