冒頭30秒が全てを決める、という前提
今回のテーマは、電話がつながった直後の第一声です。廣田さんは、着電率がそもそも15〜20%、5人に1人ほど、もっと言えばもっと低い確率になっていると話します。
だからこそ、つながった時の最初の10秒、20秒、30秒あたりが全てを決めると言われている、と2人は考えています。
つながらないなと思ってかけた時にこそ出てしまう、あの謎の現象ってありますよね。
最初に「結構です」「大丈夫です」と切られてしまう場面は、2人でも経験があります。そこをどう工夫して会話の時間を伸ばしているかを話していく回です。
シチュエーションは大きく4つに分けて進みます。過去商談済みの相手、直近の流入の相手、ご無沙汰のコールドリード、そして「はじめまして」のアウトバウンド。だんだん難易度が上がっていく順番です。
過去商談済みの相手には「覚え方」を当てにいく
1つ目は、半年や1年より前に商談したことがある相手への再連絡です。樋口さんの王道は、まず過去の接点で合意を取り、話せる体制を整えるやり方です。
以前、いついつに弊社の◯◯とこういう内容のお打ち合わせをさせてもらってたハコモノです、という感じで入っていくのが僕の王道かなと思ってます。
そこに、今回連絡した理由、いわゆるwhy you why nowなぜあなたに(why you)、なぜ今(why now)連絡したのかという、アプローチの理由づけを指す営業用語。相手が話を聞く動機になる。も必ず付け加えます。失注理由や停滞理由をチェックし、そこへのオブハンから入るのが第一問になる、という流れです。
一方で廣田さんは、そもそも「覚えてもらってますか?」という質問自体を愚問だと考えます。覚えている相手にそれを聞くと「忘れてると思ったの?」という疑念が生まれるからです。
覚えてる場合に僕がまず意識してるのは、お客さんとの認識をどれだけ同じところに揃えられるか、なんですよ。
だから廣田さんは、相手が自社を「何の会社」として覚えているかまで当てにいきます。ハコモノなら「予約システムの会社」なのか「顧客管理の会社」なのか、覚えられ方はそれぞれ違うからです。
会社名よりも、同業の事例を持ってる会社っていう認知をされ方が多いんですよ。
過去履歴から「予約システムの話をよくしているな」と読み取れれば、「予約システムについて◯◯さんの事例の話をさせていただいた企業なんですけど、覚えてますか?」という問いに変えていきます。
逆に覚えられていなさそうな時は、「覚えてますか?」とは聞きません。覚えていないのに聞くと相手が申し訳なくなってしまうからです。半歩下がった位置から思い出してもらえるよう語りかけ、覚えてくれていたら「えー!」と喜びを見せる、というトーンを取ります。
断られても土台を積み上げると、次の一問が良くなる
廣田さんは、覚えられ方を当てたあとの認識合わせを丁寧にやります。「予約システム」として覚えられていた場合、そのまま一段上のレイヤーへ会話を引き上げます。
「前回は予約の話だったけれど、実は我々はこういう会社で、顧客管理を通してリピート状況やお客さんの分析までできる」と説明することで、次の話を違和感なく上のテーマから始められる、という展開です。
樋口さんは、自分が受け手として体験したいい営業を思い出します。1〜2年に3回ほど連絡をくれる企業が、過去の商談履歴や流入内容をきちんと把握して話してくれた時のことです。
ちゃんと過去の内容をわかって話してくれるだけでも、受け手としてすごく印象が違うし、ちゃんと自分たちの情報を話そうと思ってくれてるんだなって感じるんですよね。
廣田さんは、この土台の積み上げこそがインサイドセールスで大事だと強調します。断られている中でも、相手の業務範囲や考え方、興味のある領域を蓄積していくと、次の第一問が良くなっていくからです。
流入した相手には、自社ではなく「相手の興味」を聞く
2つ目は、ウェビナーや資料請求など、直近で何かしら接点があった相手への電話です。ここから難易度が上がっていきます。
樋口さんは、自社の話ではなく、接触してくれたコンテンツについて話します。相手がセミナーに参加できたかどうかはこちら側でわかるので、そこを起点にします。
今回興味を持ってもらえたとか、面白いなと思ってもらったポイントってどういうところだったりしますか、というところから入ることが多いですね。
廣田さんが「やめた方がいい」と指摘するのは、イベント名をそのまま読み上げる人です。情報収集に熱心な相手ほど、いろんなイベントに申し込んでいて、名前ではどれかわからないからです。
名乗った時点でわかんない単語がツラツラ並んでると、もう耳を塞いじゃうんですよ。
だから廣田さんは、覚えてもらえていそうなワードで語ります。「予約システムの効率化のウェビナーをやっていたハコモノです」「こういうことに興味があってお申し込みいただいたんじゃないかと思うんですけど、合ってますか?」といった聞き方です。
「調査です」と嘘をつくのはNG、正々堂々と情報提供を
廣田さんは、自分がインサイドセールス系のウェビナーに参加した際の実体験を挙げます。参加していないのに、いきなり「どうでしたか?」と聞かれる違和感です。
「どうでしたか?」は、見ている前提の人に投げる問いです。見た・見ていないがわからないうちは、まず「見てもらえましたか?」で状況を確認するのが正しい順番だと話します。
さらに問題視するのが「調査目的でご連絡しています」と嘘をつくパターンです。アンケートを装って「取り組みされてますか?」と聞き、最後に提案につなげてくる流れは、何が聞きたいのかもわからず不信感につながります。
この点で2人が特に注意を促すのが、営業代行を使っている事業会社です。忙しさからトークスクリプトを放置していると、未経験者がテンプレートを回しているだけのケースがある、と指摘します。
この問いをしているパートナー企業さんがいたら、もう即行やめた方がいいです。会社的にもブランド毀損になるんで。
樋口さんも発注側の立場から、型で回せるようにする必要性は認めつつ、ヒアリング項目や考え方をきちんと設計すれば徐々に上手くなるはずだと補足します。発注側が放置していることも問題だ、という指摘です。
コールドリードには、商談打診より「事実」を聞きにいく
3つ目は、1年前などの流入からずっと接触できていない、いわゆるコールドリードです。廣田さんは、総量としてこれが一番多いだろうと話します。
樋口さんは「潔く」入ります。「2年ぶりのご連絡になります」「急なご連絡失礼します」と正直に伝え、以前の接点を挙げて「印象に残ってたりしますか?」と聞くやり方です。
そのうえで樋口さんは、一本釣りでいきなり商談を取りにいくのではなく、複数回の接点を通じて相手の状況を把握していく順序を意識していると話します。
廣田さんは、ここでも興味の有無を直接聞かないことを重視します。「興味ありますか?」は相手にとってハードルが高く、内面をさらけ出させる問いだからです。
興味あるかないかっていう問いはできるだけしないようにしてて。どっちかというと、状況を聞きに行くに近い質問の仕方をするんです。
代わりに使うのが、相手の事実や状況に対する問いです。「全く興味なかったらごめんなさいなんですけど」と前置きしつつ、「こういうテーマは関心のない領域ですか?」「今はどういうフェーズですか?」と、できている・できていないの状況を聞きにいきます。
樋口さんも「事実を聞きにいくのはいいな」と改めて共感します。気持ちを聞くと嘘を言われる可能性も高くなるからです。
アウトバウンドはサービス名を言わず、自信を声に出す
最後は「はじめまして」のアウトバウンドです。関係値がなく、相手はこちらを絶対に知らない前提での電話になります。
2人とも、初っ端の「はじめまして」を強く、はっきり言うようにしています。「初めてご連絡させてもらったんですけど」と、初めてであることをきちんと伝えます。
樋口さんは、まず「なぜ連絡したか」を伝えたうえで、サービスの話に入らず相手の状況を聞きにいきます。自分が持ってきた仮説が合っているか、相手がどう見ているかを1つ2つ確認するのが最初です。
廣田さんが強調するのは、自己紹介でサービス名を言わないことです。事例を交えながら「こういう業界で、こう使ってもらっている会社です」というお客さん視点の自己紹介にします。
こういう業界さん、企業さんで、こういうふうに使ってもらっている会社です、っていう自己紹介で、僕はサービス名を言わないですね。
さらにアウトバウンドで重要なのが、業界のビジネスモデルの構造を理解して相手に伝えることです。時代背景と業界構造から「どこを伸ばすべきか」を特定しておき、自分の仮説が合っているかの確認を一度挟みます。
まさに御社もこういう形態かなと思ってるんですけど、合ってますか、って自分の仮説が合ってるか間違ってるかの確認を一旦挟むんです。
強い「はじめまして」
太めの声で伸ばさずに名乗り、自信を声に出す
お客さん視点の自己紹介
サービス名は言わず、事例を交えて何ができる会社かを伝える
why you why now
なぜあなたに・なぜ今かを、時代背景と業界構造から示す
仮説の確認
「こういう構造ですよね、合ってますか?」で仮説の当たり外れを確認
深掘りと打診
状況を深掘りし、そのままお時間を「言い切って」打診する
廣田さんは、ジム業界を例に仮説の立て方を具体化します。店舗体験の良さ、自社の強みが伝わっているか、できることの多さの3つが重要だと整理し、「御社はここに長けてると思うんですけど、合ってますか?」と当てにいきます。
断られたら「いきなりの営業ですいません」と受け止めつつ、「今の話は全くずれているのか、それともこういう話なら聞きたいのか」を聞いて情報を蓄積します。メールを送り、1〜2週間後にまたかける、と接点回数を増やしていきます。
まずは一本足打法、最後は「自信」がものを言う
廣田さんは、高度に聞こえる話をしたことを踏まえて、ステップとしてはまずテンプレを学ぶことでいいと補足します。大事なのは、トークスクリプトを丸暗記することではありません。
最初はAという訴求で当てる「一本足打法」で構いません。オブハンで「いや、Bなんです」と返ってきたら、その言い回しを理解し、Bが多ければ最初からBで当てにいく。そうやってお客さん理解を積み上げていくものだと話します。
そして2人が最後に一致したのが、結局は「自信」だという点です。廣田さんは、最初の「はじめまして」を太めの声で、伸ばさずに言うと語ります。
熱量と具体性の両方を掛け合わせて投げると、ちゃんと「違うよ」って言ってくれるんですよ。これ、言ってもらえたらまず一つクリアです。
逆に、自信のない声で「◯◯のご提案もしてきたらなと思ったんですけど、いかがですかね?」と言ってしまうと、その時点で「大丈夫だよ」と切られてしまう、と2人は話します。「違うよ」と言ってもらえないうちは、まだ自分のトークが悪いと捉えた方がいい、というわけです。
まとめ
着電後の第一声は、相手との過去接点によって設計を変えるのが2人の共通した考え方でした。共通して流れているのは、自社の売り込みより先に相手の状況と事実を聞きにいく姿勢と、断られても土台を積み上げる発想、そして最後は声に出す自信です。
- 過去商談済みの相手には、自社が「何の会社」として覚えられているかを当てにいき、認識を揃える
- 流入した相手には自社の話ではなく、接触したコンテンツと相手の興味を情報提供者として聞く
- 「調査です」と嘘をついたり、見た前提で「どうでしたか?」と聞くのはNG
- コールドリードやアウトバウンドでは、興味の有無より相手の事実・状況を聞きにいく
- まずは一本足打法で王道の訴求を自分の言葉で話し、最後は太い声で自信を込めて名乗る
