1年続いた番組の最終回とMCの卒業
この回は、Growth Radioの51回目にあたります。番組が始まってからちょうど1年が経ち、2年目に入るタイミングで、MCの清沢さんがこの回を最後に卒業することが冒頭で告げられます。
清沢さんは、次回からのパーソナリティを、immedioでインサイドセールスやBDRを担当する加藤さんに引き継ぐと話します。シーズン1はおよそ50回分、1年間の積み重ねになりました。
ちょうど1年やりましたね。このGrowth Radioも2年目というところで、ちょっと私はですね、この回で引退。
清沢さんは1年を振り返り、始めた当初はどう話せばいいか難しかったものの、続けるうちにペースがつかめてきたと語ります。お客さん訪問の際に「聞いてますよ」と言われることも増え、リスナーとの出会いが嬉しかったと話しています。
なんかありがたいですね、非常に。ちょっと恥ずかしい気持ちもありながら、はい、やってみたというところなんですが。
印象的だった回として、清沢さんは年末回でDNXの長島さんとM-1やお笑いの話で盛り上がったことを挙げます。アイスブレイクだけで時間を使ってしまうほどだったといいます。
一方で、ユニコーン企業やIR分析を取り上げた回は、純粋に学びになったと振り返ります。ルールオブフォーティーのように、わかっているようで実はわかっていなかったものを調べ直す機会が良かったと話しています。
自分でこれをやろうって言って、人に話せるくらいにちょっと調べてみるみたいなのがね。
後任の加藤さんについては、MAベンダー出身でSaaSキャリアが長く、営業、CS、IS、マネジメントまでほぼ一通り経験している人物だと紹介されます。番組がまた新鮮にアップデートされることへの期待が語られました。
メンタルモデルとは何か――経験と思い込みの表裏一体
ここから本題の『学習する組織』後編に入ります。前回はシステム思考と自己マスタリーを扱い、今回は第9章のメンタルモデル ── 人が世界をどう捉えるかを形づくる、無意識の前提や思い込みのこと。『学習する組織』では、これが新しい現実を見る妨げになりうると指摘されていますから取り上げていきます。
浜田さんは、メンタルモデルを「無意識の前提や思い込み」と説明します。当たり前だと思っていることが実はそうではなく、その考え自体が組織の成長を妨げていることがある、と整理します。
これがなんか普通に当たり前のことだと思ってるけど、実はそうではなかったりとか、その考え自体が成長を妨げているみたいなところがあって。
清沢さんが「認知の歪みのような話か」と問うと、浜田さんは、それを単純に歪みと言い切れない難しさを指摘します。職人が一瞬で判断できるのは経験による知見であり、その知見が同時に本当の原因を覆い隠す思い込みにもなりうる、という点です。
浜田さんは、社会人20年を超えた自分の実感として、感情が動く場面がメンタルモデルに気づく手がかりになると話します。「なぜこれが当たり前なのにやらないんだろう」と苛立ったとき、それは自分の思い込みが強いからかもしれないと一歩引くことが大事だといいます。
たとえば「ここはこう報告する」「報告するなら改善策や再発防止策も添える」といったことを、浜田さんは当たり前だと感じています。しかしそれは人のバックグラウンドによって違い、言語化していない自分の責任でもある、と振り返ります。
組織のメンタルモデルとバリューの役割
話題は個人から組織のメンタルモデルへ移ります。浜田さんは、組織として揃えようとしているものがバリューだと捉えています。immedioでは「顧客の成功にこだわる」を掲げ、満足ではなく成功、売上より先に顧客の成功を話す、という基準を共有していると説明します。
明確に書けてないし、フィードバックでもちゃんと伝えられてないことで、向こうが当たり前と思ってなければ、それはある意味こちらの責任である。
清沢さんは、組織が大きくなるほど難しさが増すと話します。ミッションやバリューに共感して入った人でも、育ってきたバックグラウンドや信じる価値観は根本的に異なるためです。
immedioには「対話に乗り越える」というバリューがあり、清沢さんは、互いに歩み寄りながら認識を合わせていく場をどう作れるかが難しくも面白いところだと語ります。
三つ子の魂百までって結構社会人においても成り立つなと思ってて。最初の3年くらい、どんな会社で育ったかによって、物事の捉え方の背骨みたいなのが変わってくる。
浜田さんは、全員が同じ考え方をするのはそもそもつまらないと言います。考え方には多様性があってよく、ゴールやバリューという一番土台のところだけは揃えておくという幅の持たせ方が経営には必要だ、と話しています。
白黒思考という自分のメンタルモデル
清沢さんは、自分自身のメンタルモデルとして、成果が出ていないと意味がないと考えてしまう白黒思考を挙げます。目標を達成しても「あそこと比べるとまだしょぼい」と感じ、承認しきれないといいます。
目指す成果が大きすぎることが、チームの息苦しさにつながっているのではないか、と清沢さんは最近考えるようになったと話します。
浜田さんも、リーダーとして周りの経営者や幹部に触れる機会が増えるほど、相対的に自分たちのできている度合いは下がって見えると共感します。一方で内部では組織は着実に進化し、ジュニアのメンバーも育っている、と対比します。
内部的には上昇のベクトルがあるんだけども、マネージャーは外を見れば見るほど下向きのベクトルとかもあったりして。
清沢さんは、内的な前進だけに満足すると基準が内部的になってしまうとも述べ、外と内のバランスの難しさを認めます。
寺田さんの「憧れをやめた方がいい」という言葉
比較の話から、清沢さんはSansanの寺田さんとのエピソードを語ります。内定者インターンシップのころ、22歳の清沢さんは「誰かに憧れるのはやめた方がいい」と言われたといいます。
清沢さんが「寺田さんは誰かと比べるのか」と尋ねると、返ってきたのは意外な答えでした。
(寺田さんが比べる相手は)唯一イーロン・マスクだけ。イーロンは結構刺激を受けるかなみたいな。
その基準の高さに学生ながら衝撃を受けたと清沢さんは振り返ります。そのため、自分が出した成果を今も「しょぼい」と感じてしまい、それが十字架にもなっていると語ります。
浜田さんは、モチベーションの源泉を比較ではなく内発的なものに置くという寺田さんの助言を、非常に本質的だと受け止めます。清沢さんも、憧れや敵意を「やめる」というより「捨てる」感覚だったと話し、この言葉が今も残っていると振り返りました。
共有ビジョンは上から降ってくるものではない
続いて第10章の共有ビジョンに移ります。浜田さんは、これを自己マスタリーで持った個人のビジョンが重なり合ったものだと説明します。上から降りてくるMVV ── ミッション・ビジョン・バリューの略。企業が掲げる使命・目指す姿・行動指針を指しますとは少し違い、内発的なビジョンが重なることを重視している印象だと語ります。
清沢さんは、やらされる目標と自分たちで選んだ未来では、生まれるエネルギーが違うと補足します。前段で話した内発的動機とも近い考え方です。
浜田さんは、ビジョンへの関わり方に3つの段階があると紹介します。「そういうビジョンなんですね、わかりました」という服従、「自分もそう思います」という合意、「むしろ私がこうしたい」というコミットメントです。
清沢さんは、番組の引用記事にあったサン=テグジュペリ『星の王子さま』の一節を紹介します。船を作りたいなら作業を割り振るのではなく、広大な海を慕うことを教えよ、という言葉です。
これは有名なレンガ職人の話に近い、と清沢さんは重ねます。同じ作業でも、立派な教会になり人々が集まって世の中への貢献につながると思っている人とでは、モチベーションがまったく違うという話です。
個人のビジョンと会社をつなぐ――未来合宿の経験
浜田さんは、immedioが昨年行った「未来合宿」を例に挙げます。経営合宿に特化したコンサルタントの支援を受け、まず相互理解や会社の歴史を共有し、その上で個人のビジョンを扱い、周りの人や会社と後からつなげていく設計だったといいます。
共有ビジョンは、そのさらに先にあると浜田さんは捉えます。ビジョンを話せたところでもう一度アップデートし、本当にコミットできるものかをみんなで議論する、ボトムアップ寄りのイメージだと語ります。
清沢さんは、個人の物語やストーリーを会社のビジョンとどうつなげるかが難しい、と課題を挙げます。
浜田さんは、Sansanで全社を巻き込んでビジョンの要否を議論した経験を印象深く振り返ります。長く在籍する人が「なんとかのプラットフォームになる」と語ったとき、「プラットフォームは作るものでは」という問いに対し、「なるんだ」と返ってきたといいます。
(Sansanという)組織が作っているものと、自分たちSansan組織っていうもの、完全に一体化している世界観とかあって。
浜田さんは、長く続けている人ほど自分のキャリアと会社の重なりが整合しており、だからこそそこにいるのだと解釈します。そうした人が語る言葉を他の社員が聞くだけでも価値がある、と語りました。
ビジョンを自然に語り合う仕掛けをどう作るか
清沢さんは、組織のビジョンやミッションを個人とどう同一化していくかが一つのテーマだと整理します。トップダウンではなくボトムアップで、しかもマネージャーとメンバーではなくメンバー同士で会話が生まれる仕掛けが望ましい、という仮説を述べます。
マネージャー対メンバーだとすごい機械的にも捉えられる。
浜田さんは、Sansanのバリュー議論が層ごとに分けられていたことを紹介します。メンバー、マネージャー、部長、役員とレベルを分け、下層の議論を経営陣に報告して受け取る形にしていました。
浜田さんは、この設計を、思想の違う人が混ざりすぎて意見が抑圧されないよう混ぜる範囲を限定した工夫だと評価します。
一方で清沢さんは、仕掛けなくてもオフィスや飲み会で自発的にそういう話が出てくる状態が理想だと話します。上場前のSansanにはそうした空気があったといいます。
マネジメントがそう仕掛けないとそういうものが生まれてこないというのは、ある種作為的でもあるじゃないですか。
浜田さんは、バリューを日常使いされる言葉にする工夫にも触れます。Sansanの「感謝と感激」のように、長いバリューをキーワード化して普段から使われるようにするのは経営の工夫だろう、と語ります。
清沢さんはメルカリの小泉さんの講演で「口癖」がテーマになっていたことを挙げ、Be a proやGo boldのような言葉を当たり前に使う例を紹介します。浜田さんも、DeNAの「球の表面積」「コトに向かう」のように、言葉を極限まで短くする例を重ねました。
チーム学習――議論と対話は別のもの
最後のディシプリンはチーム学習です。清沢さんは、本文でNBAの話が出てくると紹介し、13年で11回チャンピオンになったチームの説得力に触れます。個人のスキル以上に、メンバーがどれだけ心を一つにプレーできるかが重要だという話です。
浜田さんは、チーム学習のキーワードとして「対話が起きているか」を挙げます。議論と対話は別物であり、議論 ── ディスカッション。AかBかなど、複数の案から今何をすべきかを決める話し合いのことがAかBかを決めるものだとすれば、それとは別に対話の場を持つ必要がある、と説明します。
相互の意見の違いを認識した上で、チームとしてより理解が進んで、前に進んだ状態を作るみたいな。この対話の場を増やしましょうみたいなことが書かれてる気がしますね。
清沢さんは、NBAが好きな立場から、選手だけでなくメディカルスタッフやコーチ陣まで全員が目的達成のためのチームだと語ります。ドキュメンタリーを見ても、互いに意見を交わし合っている点が印象的だといいます。
浜田さんは、サッカー日本代表を例に、タイムアウトが限られる中で選手間でどれだけ対話できるかが、結局チームの強度につながると話しました。
ジャズとティーミング――変化の中でチームをどう作るか
話題はセルティックスからジャズへと展開します。浜田さんは、ミュージシャンが演奏しながら音楽だけで会話しているのではないか、と関心を寄せます。
清沢さんは、昨年5月に見たエリック・クラプトンの武道館ライブを挙げます。譜面通りではなく即興的で、言葉のコミュニケーションなしにグルーヴだけでかっこいい音楽を成立させていたといいます。
楽器しかやってない、言葉でコミュニケーションしてないけど、お互いのグルーヴですっげえかっこいい音楽やってて。
そのメンバーは20年、30年と長く一緒にやってきた信頼し合うチームだったと清沢さんは調べたといい、これまで聞いた演奏で一番感動したと振り返ります。
浜田さんは、企業もスポーツチームも同じメンバーで5年やれることはほぼないと現実に引き戻します。限られた時間の中で、そうした信頼をどう作るかが課題だ、というわけです。
清沢さんは、スタートアップでは事業内容も状況もフォーメーションも変わると話します。半年に一度のチームオフサイトで新メンバーが加わると、タックマン理論 ── チームの発展を形成期・混乱期・統一期・機能期などの段階で捉える考え方。フェーズが上がっても新メンバーが入ると混乱期に戻ることがありますでいう混沌期に戻ることもある、と語ります。
清沢さんは、NBAの八村選手が「レイカーズは最も変化が激しいチームだ」と語っていた例を挙げます。トレードもバックオフィスもコロコロ変わるからこそ、ティーミングの強度が高いのだといいます。
浜田さんは、ディズニーのレイカーズのドキュメンタリーに触れ、シャキール・オニールとコービー・ブライアントが最初はうまくいかず、ブルズ出身のフィル・ジャクソンが上からまとめて機能させた例を紹介します。混沌期には強いリーダーシップが効き、逆に拡散させてうまくいくこともあると語ります。
結構こう、答えも一つじゃない感じがすごいしますよね。
清沢さんは、状況やチームの状態、メンバーの特性によって、取り得るリーダーシップは変わってくると受けます。スタートアップの日々の苦悩そのものだ、と最終回を締めくくりました。
まとめ
『学習する組織』後編の3つのディシプリンを、2人はメンタルモデル、共有ビジョン、チーム学習の順に、自分たちの経営やSansan・NBA・ジャズの具体例に引きつけて語り合いました。1年続いたシーズン1の最終回でもあります。
- メンタルモデルは経験と思い込みの表裏一体であり、感情が動く場面で一歩引くことが気づきの手がかりになる
- 組織では考え方の多様性を認めつつ、ゴールやバリューという土台だけを揃える幅の持たせ方が経営には必要
- 共有ビジョンは上から降ろすものではなく、服従・合意・コミットメントの段階を経て、内発的なビジョンが重なったもの
- チーム学習では、AかBかを決める議論とは別に、違いを認識して前に進む対話の場が重要
- 市場もメンバーも変わり続ける中で、何をピン止めしてチームを作るかは状況ごとに答えが変わる





