練度を上げるだけでは、どこかで頭打ちになる
まず、給料ってどうやって決まるのかという話から始めたいと思います。
一つは、その会社でちゃんとスキルが上がっているか。できることが増えているかどうか、ですね。
ただ、ここで大事なのは、できることが「熟練する」のと「増える」のは別だということです。
今までできなかったことが、できるようになる。これはもちろん給料が上がる要素になります。
でも、練度が上がるというのは、どこかで頭打ちになるんですよね。
だってキーボードを1秒間に10万個打つなんて、どんなに練習したって無理じゃないですか。
普通の仕事において、練度には上限が出てくると思うんです。
だからキャリアを考えるなら、練度を上げることよりも「できなかったことができるようになる」方を考えないといけないんじゃないかと思っています。
私たちの仕事は、無形だけど「製造業」に近い
もう一つ、給料には市場の価値というものが関わってきます。
今この業界で本当に大変だなと思うのがAIです。私も戦々恐々しているところなんですけども。
確かGoogleの新しいソースコードの25%くらいは、もうAIが書いているという話でしたよね。
単純に言えば、Googleのエンジニアの25%がいらなくなるということが起こり得るわけです。
そうなったときにそのまま残るなら、給料が安くならないと多分無理なんですよ。
給料を維持したまま残らせてくれというのは難しくて、そうなると相対的にエンジニアの市場価値が下がってしまう。
私はずっと、私たちの仕事は感覚的に「製造業」だと思っているんです。
無形とはいえ物を作っている以上、時間が経つと相対的に作れる技術の価値は下がっていくはずなんですよね。
わかりやすいのが印刷業界で、だんだんコストのダンピングが進んでいく。トップのデザイナーさんは別ですが、そうでない場合はテンプレートから選んでもらって薄利多売、という形にならざるを得ないと思います。
IT業界も、そうなる可能性は十分にあると私は思っています。
「掛け合わせ」と、会社が求めているかどうか
じゃあどうやって生き残るか。まず、自分が持っていないスキルを学ばないといけないと思います。
デザイナー、フロントエンド、サーバーサイド、ディレクター、みんな同じです。
今の職域の練度を上げるのではなくて、全く違うスキルを身につける。
例えばディレクターさんがマーケティングをできるようになる、とかですね。
ただ、これがデジマのレベルなのか、ガチのマーケティングなのかで話は全然違います。
私は大学院のMBAでマーケティングの授業を受けたのですが、同級生にいわゆる電博系の代理店の人がいたんですよ。彼らが本気でやっている勉強の中身は、デジタル領域とはもう全く違っていて、「これは簡単には勝てないな」と思いました。
逆に言えば、それだけ頑張ればすごく武器になるわけですよね。
マネジメントも同じで、私たちの専門職の延長線上にはありません。
HTMLをやったからマネジメントになるわけでもないし、サーバーサイドを書いたからできるわけでもない。全く違う能力だと思っています。
よく言われるのが掛け合わせですよね。100人に1人のスキルを2つ掛ければ1万人に1人の価値になる、という話です。
ただ、ここに落とし穴があって。市場としての給料なら今の話で大丈夫なんですが、自分のいる会社で給料が上がるかは別なんです。
掛け合わせるものが、会社が求めているものの延長線上になかったら、認めてもらえないんですよね。
私がよくする例なんですけども、部下の私が「部長、会社に貢献するために資格を取りました。フォークリフトです」と言ったら、「お前バカか、Web全く関係ないじゃん」となりますよね。
自分では意味があると思っても、会社が意味を感じてくれなければ全く評価されない。
これが起こると最悪で、こんなに頑張ったのになんで認めてくれないんだ、という評価のズレが生まれてしまうんです。
これからは「黙っていても上がる」業界ではない
なので、身につけるべき新しいスキルは、自分の会社で価値を感じてもらえるものは何だろうと考えて選んだ方がいいと思います。
そこは上司や、ちゃんと評価してくれる先輩と話をした方がいいですね。
サーバーサイドの方なら、インフラ側というのも一つですし、商売の観点でマーケの話もそうかもしれません。
今年Web業界で話題のアクセシビリティ、WCAGやJIS X 8341あたりの観点を勉強して、自分の実装に空気を吸うように活かせるかどうか。これもすごく大事な要素になってくると思います。
その上で言うと、AIとはちゃんと付き合って、使う側にいた方がいいですね。私も毎日ChatGPTと喋っていますけども。
手作業そのものはなくなっていくので、その手作業でどんな価値を作るのかが問われてくると思うんです。
だから給料の発展が期待できるかと聞かれれば、できるとは思います。
ただ、普段の仕事を頑張っていれば黙っていても水準が上がる、という業界ではもうないんじゃないかと思います。そのピークは、多分もう超えているんですよね。
まとめ
正直、答えは一つではないのですが、今の私はこんなふうに考えています。練度を極めるだけでなく、会社が本当に必要としているスキルを掛け合わせていく。それがこれからのキャリアの鍵になるんじゃないかと思っています。皆さんは、今どんなスキルを掛け合わせようとしていますか。
- 練度を上げるだけでは、どこかで頭打ちになる。できなかったことをできるようにする方が大事
- 私たちの仕事は無形でも「製造業」に近く、時間が経つと技術の価値は相対的に下がっていく
- 生き残る鍵は「掛け合わせ」。ただし会社が価値を感じるスキルでなければ評価されない
- 黙っていても給料が上がる時代はもう終わりつつある。AIとは付き合って使う側にいたい






