「技術についていく」を私はあまり頑張ってこなかった
そもそも私は元々、クリエイティブ側の現場上がりでこの仕事をやってきました。
だから「技術の変化にどう対応してきましたか」と聞かれることがあるんですけど、身も蓋もない話、あんまり対応しようと思ってやったことがないんですよね。
昔だったらプロトタイプやjQuery、今だったらAstroとか。ああいうのを触るのがそもそも好きだし、興味もある。
気づいたらそれが主流になっていて、「まあ使えるわ」みたいな感じで来ただけなんです。
新しい技術を発信している人を追いかけて、この間もリアルなセミナーに行ってきました。
そこで「あ、そんなことできるようになったんだ」とか「昔に比べればめっちゃ楽じゃん」みたいな話を聞くのが、私は単純に好きなんですよね。
気になったツールはとりあえず自分のマシンに入れて触ってみる。AstroやHTMXも、今でもそうやっていじっています。
だから「頑張って追いかけている」というより、技術実装そのものが好きというだけなんです。
スキルが高度になっても給料が正比例しない理由
ここからが本題です。「去年より高度なスキルを身につけているのに評価されない」という悩みについて。
結論から言うと、高度なスキルは、そのまま給料にはならないと私は思っています。
給料って最終的にどうやって決まるかというと、お客さんが何に価値を認めてくれるか、ここ以外にないんですよね。
どんなにいいものを作っても、お客さんが価値と感じてくれなかったら売れない。売れても「その金額じゃ買えない」と言われれば安くなってしまう。
そして、当たり前に求められるスキルって、年々どんどん上がっていくんです。
私が94年にインターネットを始めた頃のHTMLなんて、1ヶ月も勉強いらないくらい簡単なもので仕事になっていました。
でも当時の方が価値は高かった。今のHTMLはむちゃくちゃ高度になっているのに、です。
極端な話、産業革命の頃と比べたら僕らのスキルは信じられないほど高度になっているはずですよね。
でも、それで給料が正比例して上がるなら、僕らは一億倍くらいもらえていないとおかしい。でも実際そうはならない。
なぜかというと、みんなが「それくらいできて当たり前だよね」と言うようになるからなんです。
「何と比べて高度か」がすべて
だから大事なのは、その高度なスキルが何と比べて高度なのかということなんですよね。
去年の自分より高度なスキル。それはもちろん立派な成長です。でも「それは当たり前でしょ」で終わってしまうことがある。
世の中が変化しているから、去年より伸びていても、求められる水準に追いついただけということが起こるんです。
たとえば私が2000年代前半、フルCSSでレイアウトするのがやっと出始めた頃。ブラウザのCSS解釈もぐちゃぐちゃで、いろんなハックを使って書いていました。
当時それが書けるのはむちゃくちゃスキルが高いことだったんです。
でも今は、HTMLがセマンティックに書けて、CSSが普通に書けて、JavaScriptも多少使えて、で「当たり前だよね」になってしまう。
会社の中で本当に誰よりも高度、というならまだ大丈夫かもしれません。
でも、世の中で求められる水準に追いついただけなら、「普通のことが普通にできている」としか言えなくて、評価のしようがないんですよね。
だから、頑張って頑張ってやっているのに評価されないというのは、この価値基準がずれていると、ものすごく不幸なことになると思うんです。
世の中で求められるスキルのプラスアルファになっていて初めて評価してもらえる。ここのチューニングだけは、ぜひやっておいてほしいなと思います。
デザインだけ、実装だけ、では狭まっていく
これはコーディングが苦手というWebデザイナーの方の悩みにも通じる話です。
正直に言うと、ビジュアルデザインができますというだけでは、相対的にWebデザイナーの価値は下がってしまうように私は思っています。
先日、不動産テックとクリエイティブがテーマのイベントに出てきたんですけど、そこで印象的だったことがあって。
登壇されていたデザイナーの方々は、ビジュアルデザインはもちろんやりつつ、業界の動向や業法まで知っておかないとダメだよね、という感覚を持っていたんです。
「自分たちが疑似的にでもお客様の商売を体験しないと意味がわからない」というくらい、プロダクト自体をどう作れば事業がうまくいくか、そこを見ている方が多い印象でした。
だからWebデザイナーの方も、純粋なビジュアルデザインから半歩横に広げて、インタラクションやUI、UXにも興味を持ってほしいなと思うんですよね。
利用者が触ったときにどう動くか。その動きがあると、企業や商材の魅力がより伝わる。そう思えると、フレームワークやライブラリへの興味も自然に湧いてくるんじゃないかと思います。
デザインだけ、実装だけ、で止まっていると、年齢を重ねているのに給料が下がっていく、なんてことも起こりうる。
業界がしぼんでいるんじゃなくて、デザインだけできればいい時代が終わった、私はそう思っています。
年齢を重ねたら、追いかけ方を変えてもいい
ここまで書いておいてなんですが、一つ補足しておきたいことがあります。
新しい技術を追いかけ続けるって、若いうちは馬力があるからいいんです。感性もあるし、いざとなれば頑張れる。
でも40代後半、50代になってくると、そういう無理はきかなくなってくるんですよね。
頑張ってスキルを身につけ続けないと仕事にならない、という状態を延々と続けるのは、たぶんつらくなってくると思うんです。
だからその年齢になったら、技術実装を追いかけるんじゃなくて、マネジメントや企画、マーケの方に行く。そういう選択もあっていいと思っています。
もう一つ。会社の中でトップオブザトップなのに評価されないなら、それを評価してくれるところに行く方が私は全然いいと思います。
昔、私が2004年頃に「サイトを全部フルCSSでやり直しましょう」と言ったら、「そんなの追いかけない方がいい」と言われたことがあって。
結局その会社を辞めて半年くらいしたら、そのサイトはフルCSSになっていました。「ほら、言ったじゃん」って思いましたよ。
技術実装に詳しくない人には、それの何がおいしいのか伝わらないこともある。だからこそ、そこはちゃんとコミュニケーションを取った方がいいなと思っています。
まとめ
高度なスキルなのに評価されない、という悩みの正体は、たぶん「何と比べて高度か」という基準のズレなんじゃないかと、今の私は思っています。去年の自分と比べて満足するより、世の中の水準のプラスアルファになれているか。まずはそこを一度チューニングしてみてほしいです。
- 給料は最終的に「お客さんが何に価値を認めるか」で決まる
- 去年の自分より高度でも、世の中の水準に追いついただけなら「当たり前」で終わってしまう
- デザインも実装も、それ一本だけで止まると価値は狭まっていく
- 年齢を重ねたら、技術を追う以外の道に舵を切る選択もある






