管理部門は「守り」で評価されない問題
最初の相談は、急成長スタートアップで社員500人以上の労務管理を担うカイちゃんから。
AIを使った業務フロー改善やコスト削減、システムのリプレースまで手がけているのに、評価されるのはいつも事業サイドだといいます。
「管理部門の人間が攻めてると認められるには何をすればいいか」という悩みです。
箕輪さんは、自身が攻めるプロジェクトばかりやる人間だと前置きしつつ、管理部門の重要さを語ります。
例に挙げたのが、幻冬舎で制作を担うホンマさん。紙を選んだり、印刷所とやりとりしたり、地味な工程を担う人だといいます。
ホンマさんいつも僕がぶち上げると「またすごいネタ持ってきたね」って言いながら、楽しんでやってくれるんですよ。でもホンマさんがやるのは攻めることじゃなくて、「気持ちはわかるけど、本当にこれ用意しないと事故るよ」って言ってくれることなんです。
つまり、攻めるプロジェクトの中で守ることで、その成功に貢献する。ただしホンマさんも攻め始めたら終わりだ、と箕輪さんは話します。
自分が攻めるプレイヤーになりたいなら管理部門にいちゃダメで、事業サイドに移らなきゃいけない。でも攻めるプロジェクトの中で守ったという人間で、そのプロジェクトを成功させることはできるんじゃないですか。
けんすうさんは、相談者の不満は「評価されないこと」にあるのではと指摘します。箕輪さんは褒められるが、ホンマさんはネットで言われない、という構図です。
どう褒められたいかでキャリアを選ぶ
箕輪さん自身も、似た悩みを抱えているといいます。
自著『人生最高のコンディショニング』の編集はカタノくんが担当し、箕輪さんは企画。手柄をカタノくんにしたくてクレジットを分けたそうです。
「編集カタノ」ってクレジットにしたんです。でもSNSで褒めようと「編集カタノくんです」って言うと、「ミノワさんやってないのか」ってなっちゃう。だから最初は自分の名前を出しちゃう。悩んでるんだよね。
この話から、話題は「どう褒められたいか」へと展開します。
箕輪さんは、そもそも「攻めてるね」「すごい」と言われたい人が管理部門に行くこと自体が向いていないと話します。
AIの回答にあった「社外の同業者から評価される」という視点も、けんすうさんは有効だと評価します。編集と制作を比べるのではなく、制作部門同士で「あの会社は動きが早い」と言われる道です。
箕輪さん自身が求める評価は「面白かったです」ではなく、賛否を生むことだといいます。
トークイベントでも「面白かったです」が一番しんどい。やってしまった時に、三割の異常な男が「面白い」と言って、七割が「もうこういうやつ出すなよ」ってなる。その後「これが俺だよ」って復活してくるのが好きなんですよ。
一方けんすうさんは、新しい構造や仕組みを作り、そこから面白いものが生まれることを褒められるのが一番嬉しいと話します。二人のタイプの違いが浮き彫りになります。
爪痕を残す箕輪、仕組みを作るけんすう
褒められたい形の違いは、そのままプラットフォーマー向き・不向きの話につながります。
けんすうさんは仕組み側を好みますが、箕輪さんは仕組みにまったく興味がないといいます。
YouTubeを俺が作ってヒカルがバズってたらムカつくもん。「俺が作ったんだけど」って。アルゴリズム変えると思う。
僕はだからHIKAKINとかBANしちゃうと思う。プラットフォーム向いてない。
箕輪さんは、これは嫉妬というより「俺の方が面白いだろ」という感覚だといいます。自分はコンテンツ側にいたい、プラットフォーム側ではないという整理です。
俺が主催した飲み会で、すげえ受けてるやついたら出禁にするもん。俺が全部仕切ったのに。だから場を作ることに向いてないんだよ。呼ばれる方がいい。
番組MCについても同じで、聞き役に回る「メインMC」は苦手だと明かします。
三人でやると、自由な三人目が一番面白くなりがちなんですよ。俺は三人目でふざけるのが一番向いてる。仕組みも作りたくないし、仕切りたくもない。常に自由に。
結論として、管理部門も「頼りになります」と言われて嬉しい人には向いている、と二人は着地します。
賛否を生み、爪痕を残したい。コンテンツ側でありたく、仕切りやプラットフォームには向かない
新しい仕組みや構造を作り、そこから生まれる面白さを褒められたい。プラットフォーム側を好む
編集スキルは活かそうとするな
二つ目の相談は、20年間書籍編集をしてきた人から。最高で5万部、ベストセラーはなく、編集者として限界を感じているといいます。
在籍していた出版社が2019年に倒産し、独立。次の一手として、地下アイドルにインタビューする「街録の地下アイドル版」のような動画企画を考えているそうです。
編集スキルを活かして推し活業界でどう戦えばいいか。動画をリアルイベントで黒字化したいがどうか
箕輪さんは、「編集スキルを活かそう」という発想自体が危ういと指摘します。
編集スキルを活かそうと思ってYouTubeやると多分ダメなんです。むしろアンインストールして、ゼロからそのルールを学んで、うまくいった時に「あ、これって編集スキルと同じだ」ってなるぐらいの感覚です。
何かで成功した人が、その経験を活かして別のことをやろうとすると、大体失敗する。二人はネット黎明期に紙の編集者が全滅した例を挙げます。
一度ゼロにする
過去の書籍編集の経験や自信をアンインストールする
その場のルールを学ぶ
YouTubeやPodcastのお作法をゼロから習得する
自分なりに構築
その領域で自分にできることをゼロから組み立てる
後から気づく
うまくいった時に「これは編集スキルと同じだ」とつながる
知らない人のコンテンツは見たくない
企画そのものについても、二人は厳しい見立てを示します。
そもそも、知らない地下アイドルのインタビューを見たいと思う人がいるか、という問題です。
知らない地下アイドルのインタビューは拷問されても見たくない。街録みたいなオールジャンルでもネタが枯渇するのに、地下アイドルに限定したら二、三ヶ月で終わると思うよ。
「有名ではないけど面白い人を取り上げたい」という企画は、ほぼ失敗するとけんすうさんは言います。面白くないから有名じゃないケースが多いからです。
けんすうさん自身、無名の人や有名人の意外な一面を見せる企画で何度も失敗したと明かします。
本田圭佑に漫画のインタビューをしてクッソスベったんです。サッカーの話を聞きたいんだな、っていう当たり前のことに後で気づいたんですよね。
この人にインタビューすればうまくいく、ではなく、受けるテーマは限られている。箕輪さんですら受けるテーマは4つほどで、それ以外はダメだといいます。
当てて「この人が作るなら面白い」という土台を作った上で、チャレンジ枠を混ぜるしかない、という話に展開します。
NewsPicksBooksの時は、これなら買うって人ができてから無名な人や硬いものをやった。売れないけど、他のレーベルよりは売れるよねっていうぐらい。ファンを育てた後じゃないと誰も見ないよ。
趣味でやれ、余剰の体力でやれ
では、この相談者はどうすればいいのか。箕輪さんの答えは「趣味でやる」でした。
次の一手として食い扶持にしようとすると苦しくなる。超楽しいからやる、を繰り返すうちに自分なりの方法論が見つかる可能性がある、という考え方です。
リアルイベントでの黒字化についても、二人は否定的です。
リアルイベントなんて自己満足だよ、トントン。地下アイドルが儲かってないから地下アイドルなんでしょ。なんでリアルイベントで黒字化するのよ。
箕輪さんは、SNS時代の「新しいチャレンジ神話」にも注意を促します。
新しいことやってうまくいった人が取り上げられる世界だから、やらなきゃと思うんだけど、やらない方がいい人もいっぱいいるのよ。余剰の体力でやるべきだよ。
マネタイズを前提にすると、再生数を狙ったサムネや過激な内容になり、似たものになってつまらなくなる。趣味なら自分のツボを追求できる、というのが二人の共通見解です。
最後に二人は、こうした挑戦を煽ってきたのは自分たちかもしれない、と振り返ります。当時は本気で再現性があると信じていたといいます。
地方移住は場所よりコミュニティ
三つ目の相談は、福岡出身の34歳男性から。役者を目指すと言い訳して上京し、フリーター生活を続けてきたといいます。
動画制作やウェブサイト運営の経験はあり、ギターや散歩、鳥を眺めるような静かな暮らしを求めて地方移住を考えています。
懸念は、地方で仕事があるか、高齢フリーターが奇異の目で見られないか、役者志望という盾を外せるか、の3つです。
まず二人が指摘したのは、その職歴は「バイト」ではなく、福岡で十分に食える専門職として成立しているという点でした。フリーターではなく、フリーランスの専門職だという整理です。
移住先について、箕輪さんは自身のコミュニティがある横瀬を挙げつつ、より本質的な考え方を示します。
結局、地方がどうっていうより、コミュニティがあるかじゃないですか。場所がどうかよりも、自分の価値観や特技が活かせるコミュニティがあるかを見た方がいい。
箕輪さんは、唐津や東出さんのコミュニティなど、地域ごとに人のタイプが違う例を挙げます。狩猟中心のコミュニティと、ウェブ制作中心のコミュニティでは、自分のバリューが出せるかが変わるという話です。
先にコミュニティの人と仲良くなれるかどうかですね。旅行やバーベキューで行って「移住したいんです」と言いながら、空気感が合うと思ったら移住すればいい。
福岡はPodcastが盛んなので、動画制作の経験を活かしてその方面を狙う手もある、とけんすうさんは付け加えます。
嫌いな人はいない箕輪、人を記号で見るけんすう
石丸さんの話から、話題は「人をどう見るか」へと広がります。
箕輪さんは、自分と絡むと相手がみんな「いい人」に見えると話します。ビジネス感が消え、素が見えるからではないかといいます。
本当に嫌な奴なんていないよ。嫌なやつっていうのは、俺がその人のことをあんまり知らないってこと。ちゃんと知ったら別に嫌なやつじゃないなって思う。
箕輪さんは、どんな人間にも背景があり、社会と出自が作用し合ってそうなっている、だから嫌いになる理由がないと語ります。
一方でけんすうさんは、人を記号としてパターンで捉える傾向があると箕輪さんに指摘されます。けんすうさんは、独裁者の本を読むのが好きで、独裁者も同じ人間だと思えることに安心感があると話します。
最適化したら量産型AI動画みたいになるだけじゃん、人間なんて。そこからいかにはみ出てる人を愛でるかが面白いんじゃない?
ただし、箕輪さんが興味を持つのは、世間で個性的とされているが実は記号的な人ではなく、本人が意図せず闇落ちしているような人だといいます。
本人が意図せず闇落ちしてたり、そういうのが大好きだよね。全員結局記号だから、「あ、こんな感じね」って思う人には興味を持たない。
最後に箕輪さんは、料理対決に行こうとして階段から落ちた前夜の顛末を語り、そうした「人間的な一日」が好きだと締めくくります。
三十四歳男性への結論
三つ目の相談への結論は明確でした。
田舎にはいろんなコミュニティがあるから、探して、自分が合ってるところに行けばいいと思う。
けんすうさんは、海外の日本人コミュニティという選択肢もあると付け加え、相談は締めくくられました。
まとめ
3つの相談を通じて浮かんだのは、自分が何を求めているかを起点に選ぶという共通した視点です。褒められ方、挑戦の距離感、暮らす場所。どれも、外の正解ではなく自分の性質から逆算する話でした。
- キャリアや職種は「どう褒められたいか」で選ぶと自分に合いやすい
- 管理部門で「攻めてる」と言われたい人は、そもそも向いていない可能性がある
- 新しい領域では、過去のスキルを活かそうとせず一度ゼロから学ぶ
- 知らない人のコンテンツは見られにくく、新規挑戦は趣味・余剰の体力でやる方がよい
- 地方移住は場所より、自分の価値観や特技が活かせるコミュニティで選ぶ

