学会初日、人身事故から始まった一日
たいぞーさんは、昨日から参加している日本薬学教育学会大会について話を始めます。結論として、今回の参加はとても良かったと振り返ります。
ただ、初日はつまずきから始まりました。会場へ向かおうとしたところ、JRが人身事故で止まっていたのです。
急遽別の路線から迂回することになり、早めに家を出ていたものの、午前中のセッションには間に合いませんでした。
特別講演とか、ぜひ聞きたかったんですけどね。残念ながら聞くことができず、お昼から参加することになりました。
そうして午後から参加し、最初に聞いたのが「教育工学」という学問分野の話でした。
教育工学から見えた、薬剤師と患者の関係
たいぞーさんは、教育工学という学問を今回初めて知ったと話します。教育成果を上げるために、さまざまなフレームを使いながら教育の枠組みや、自分がどう教育者として関わるかを考える分野だといいます。
この話を聞いて、たいぞーさんは自分自身の関わり方を振り返りました。人材育成室として若手薬剤師や実習生に集合研修で関わるとき、自分本位の学習プログラムになっていないかと考える機会になったといいます。
さらに、この視点は教育の場だけにとどまらないと気づきます。薬剤師は日々、患者さんの行動変容や学習機会の提供にも携わっている職種だからです。
たいぞーさんは、立場が入れ替わる構造に注目します。研修では学習者であるスタッフが、現場では患者さんに対する教育者になる、というのです。
人材育成室
スタッフに研修という学習を届ける教育者
スタッフ
研修を受ける学習者であり、現場では患者への教育者
患者
スタッフから関わりを受ける学習者
だからこそ、教育者として患者さんに関わるときも、自分本位の介入になっていないかを考えるのに、教育工学の概念が役立つのではないかと話します。
これをスタッフに伝えられれば、患者さんとの関わりを薬学とは違った角度から見直せるのではないか。ただ、それをどう伝えるかが自分の課題だとも語ります。
モデルコアカリキュラム改定で変わる学び
学会で大きな話題になっていたのが、薬学部のモデルコアカリキュラム改定でした。
たいぞーさんは、コアカリが変わったことは知っていたものの、具体的にどう変わり、教育現場がどう変化しているかは、正直よく知らなかったと打ち明けます。
学会では、この改定にどう対応して教育環境を変えていくかが大きな話題で、さまざまなシンポジウムでコアカリがキーワードになっていたといいます。
大きな変化として挙げられたのが、科目間のつながりでした。薬理学、薬物動態学、解剖学、生物学、物理化学などを、単独の学問としてではなく学ぶという点です。
これらを連続性のある、患者さんの体を見るための知識として学んでいく。そうした意識を持った学習へと、教育内容が変わってきているという話でした。
「薬学で患者を語る」原点との重なり
たいぞーさんは、この変化が自身の大切にする「薬学で患者を語る」の原点に重なると感じます。
たいぞーさん自身は、6年制の最初のコアカリで学んだ世代です。当時は科目ごとの知識は学べても、科目間のつながりや患者さんへの活かし方は、現場で使いながら学んできたといいます。
そのため、科目のつながりや知識の活用は現場でしか学べないものだと考えていました。大学の先生は最先端の専門知識を伝える立場で、それを活かすのは現場の仕事だという認識です。
しかし今回、その課題意識が教育現場の共通認識であり、コアカリという大きな土台で変わっていることに気づきます。大切な視点なのに、自分はそこにたどり着けていなかったと振り返ります。
見に行かないと見えてこない、臨床と教育の距離
この話を聞きながら、たいぞーさんは以前、薬剤師革命家のりょうたさんと教育について対談したことを思い出します。
対談では、大学の先生方が現場での活かし方を意識せずに教育していて、活かすのは現場でやるしかないと考えている、とたいぞーさんが伝えました。
それに対し、りょうたさんはこう返したといいます。
それはこちらのことが臨床現場のことが大学側から見えていないのと同じように、臨床現場は逆に大学のことを見えていないんじゃないかな。
臨床側も教育現場の方に歩み寄っていって、何が行われているのかということにきちんと目を向けた方がいいんじゃないかな。
双方が自分の手元で起きていることしか見えていないまま、学生という共通の教育対象に関わっている。この言葉が、学会での学びの中で繰り返し思い出されたといいます。
臨床現場にいるたいぞーさんにとって、教育現場は主戦場とは少し外れる場です。だからこそ、そこへ学びに行くことで新たな気づきが得られたと語ります。
そして、こうした教育を受けた薬剤師が世に出てきたとき、彼らが活躍できる現場をどう作るか。臨床現場の役割を改めて考える一日になったと振り返ります。
学会の学びが、企画中のセミナーを変える
たいぞーさんは、学会での学びが自身のイベント企画にも影響していると話します。
9月26日に開催する学生向けオンラインイベント「トライコン」では、現場の薬剤師と学生が一緒に症例を通して、薬学の専門知識を患者さんに使うことを学びます。
当初は「学生はそんなこと知らないだろう」という前提でプログラムを考えていました。しかし学会での学びを踏まえ、それを考え直す必要があると感じているといいます。
新しいカリキュラムで学ぶ学生は、すでに科目間のつながりや患者さんへの活かし方の土台を教育現場で学んでいるからです。
だからこそ、その学びが臨床現場でも使うものだと伝えられるセミナーにしたい、とたいぞーさんは話します。参加費は無料で、学生に参加を呼びかけています。
なお、実務実習中の学生や、就職活動を終えて国家試験に向かう6回生は、改定前の最終のコアカリで学んだ世代にあたると補足します。下の世代はまた違った学びをしてきているといいます。
もう一つの告知として、10月25日に兵庫県姫路市でバイタルサイン講習会を開催します。
この講習会では、薬剤師が患者さんの情報を自ら収集し、薬学的な観点で読み解いて患者さんを見ていくことを学びます。残り3枠の募集だと案内しています。
まとめ
学会という自分の主戦場とは異なる場に足を運んだことで、たいぞーさんは教育現場の変化に気づき、臨床現場の役割を問い直しました。臨床と教育が互いに目を向けることの大切さを、改めて感じさせる回でした。
- 日本薬学教育学会大会で、教育工学やモデルコアカリキュラム改定を学んだ
- 令和4年度の改定では、科目間のつながりを意識し、患者さんの体を見る知識として学ぶ方向へ変化している
- 研修を受けるスタッフも現場では患者への教育者であり、教育工学の視点が関わり方の見直しに役立つ
- 臨床と教育は互いの現場が見えにくく、「見に行かないと見えてこない」という気づきが語られた
- 9月26日のトライコン、10月25日のバイタルサイン講習会が告知された
