採用でいつも難しかったこと
たいぞーさんは以前、中川調剤薬局という会社で、採用や育成、現場のオペレーション設計、薬局パートナー制度の設計など、幅広い業務に関わっていました。
現場の仕事もこなしながら様々な経験をする中で、特に難しいと感じていたのが人の採用だったと振り返ります。
採用には大きく2つの壁があると言います。まず、そもそも人が来ないという問題。そして、来たとしてもその人が会社に馴染み、力を発揮して働き続けてくれるかという問題です。
採用するとなっても、まず人が来ないという問題をどう解決するかを考えないといけないのが一つ。採用したとしても、その人が会社に馴染んで、しっかり力を発揮して継続的に働いてくれるか、そこもまた課題が一つあったりします。
「誰でもいい」採用がもったいない理由
従業員からは「人がいないから何とかしてほしい」という声も上がっていました。しかし、とりあえず誰でもいいと採用してしまうと、別の問題が起きるとたいぞーさんは言います。
現場とミスマッチな人を配置すると、既存のスタッフに負担をかけてしまいます。それだけではありません。
時間をかけて育てても、マッチしていない人はすぐに辞めてしまいます。やっと一人前になったところで去られると、育成にかけたコストが溶けてしまうと話します。
せっかく教えて、やっとこの人が一人前に働けるなというところで「辞めます」と去っていかれると、育成にかけたコストも溶けてしまうので、非常にもったいない。
だからこそ、ミスマッチなく採用するにはどうすればいいかを考え、当時実践していた方法があると切り出します。
会社説明に2〜3時間かける採用面接
その戦略は、一見すると迂回に思えるほどシンプルなものでした。会社説明に、おおむね1時間半から2時間、長い人だと3時間ほどをかけて、やりとりをしながら面接を行うというものです。
これは薬剤師だけでなく、調剤事務の採用でも同じように時間を取っていたと言います。
なぜそこまで時間をかけたのか。中川調剤薬局では、薬剤師が専門性を活かして患者に健康という価値を届けることを重視していました。
そのため、一般的な薬局勤務のイメージを持って入社を希望する人とは、少し違った働き方を実践しているという感覚があったのです。
この違いをきちんと説明して理解してもらわないと、十中八九ミスマッチが起きてしまう。伝わっていない人を採用した結果、調剤事務では1日で来なくなる人や、半日で昼休憩後に来なくなる人もいたと振り返ります。
「何を」ではなく「なぜ」を伝える
ミスマッチを極力避けるために大切なのは、会社の理念や思い、実際に実践していることを丁寧に伝えることだとたいぞーさんは言います。
何をやってますではなくて、なぜ私たちはこんなことをしているのかということから、きちんと伝えようと思ったときに、だいたい2時間ぐらいの時間は必要になる。
たいぞーさんが採用に関わっていたのは5年から10年ほど前で、タイパやコスパが重視される今とは時代が違うかもしれない、とも話します。
それでも、理念や思いを伝えて採用したことで、合わない人は離れていく一方、入社する人は目を輝かせて「ぜひここで働きたい」と来てくれることが多かったと言います。結果として、ミスマッチが起きる確率はかなり減ったと振り返ります。
中途採用と紹介会社での実践
薬剤師の採用では、新卒採用は時間と労力がかかり、そのコストを割く余裕が会社になかったため、紹介会社を利用して中途採用する戦略を取っていました。
中途で入ってくる薬剤師には、現場で経験を積んだ末に夢破れて転職を考えている人もいたと言います。そうした人に会社の思いを伝えることで、「この会社なら花開けるかもしれない」と期待を持って入社してくれる人もいました。
中川調剤薬局は地域で十数店舗を営む、小さくはないが大きくもない規模の薬局でした。社長曰く、紹介会社にお金を払ってもなかなか人が来てくれないのが現実だったと言います。
それでも、たいぞーさんが関わっていた期間は、綱渡りの状況もありながら何とか人を採用できていました。これも採用戦略が結果に結びついていた表れだったのではないか、と振り返ります。
長い説明が果たす2つのふるい分け
理念を共有することには、もう一つの意味合いがありました。2〜3時間という長い時間そのものが、マッチするかどうかを見極める材料になっていたのです。
2〜3時間は映画1本分、あるいはそれ以上の長さです。スライドで視覚的にも情報を届けるとはいえ、基本は言葉で伝えるため、興味が湧いていない人にとっては苦痛な時間になります。
面接中の相手の表情や様子を見ると、その差は感じ取れたと言います。目を輝かせて聞いている人はマッチする可能性が高く、途中で飽きたり眠そうにしたりする人はマッチしにくいと判断できました。
さらに、薬剤師の面接には紹介会社の担当者が同席することも多く、その担当者にも2〜3時間の話を一緒に聞いてもらっていました。
これによって、担当者自身が会社の理念や思いを理解し、本当にマッチしそうな人材を紹介してくれるようになったと言います。担当者が同席する紹介会社とは、高い確率でマッチングがうまくいったと振り返ります。
理念と思いを伝える
なぜその働き方をするのかを説明し、入社希望者の理解を深める
応募者を見極める
長い説明への反応から、マッチするかどうかを判断する
紹介会社に伝わる
同席した担当者が理念を理解し、合う人材を紹介するようになる
職場選びは、お互いが慎重に決める大きな選択
きちんと伝えることには、話す側の大変さも、双方が時間というコストを払う負担もあります。それでもたいぞーさんは、その時間には意味があると考えています。
どういう環境で働くかによって、仕事の充実や人生の充実は大きく変わります。だからこそ、職場選びは大きな選択だと言います。
まとめ
採用に時間をかけないことが効率的に見える時代でも、理念を丁寧に伝えることがミスマッチを防ぎ、定着につながっていたという実体験が語られました。職場選びをお互いにとって大きな決断と捉える姿勢が、この戦略の根底にあります。
- 採用には「人が来ない」問題と「来ても続かない」問題の2つの壁がある
- 誰でもいい採用は、現場の負担と育成コストの損失を招く
- 会社説明に2〜3時間をかけ、「何を」ではなく「なぜ」やっているのかを伝えていた
- 長い説明は、応募者と紹介会社担当者の双方をふるい分ける役割も果たした
- 職場選びは人生を左右する選択だからこそ、お互いに時間をかけて慎重にマッチングを考える
