AI薬歴を1か月使ってみて
たいぞーさんが勤める薬局では、この7月から薬歴システムの入れ替えが行われました。
新しいシステムには、薬剤師と患者のやりとりを音声録音し、それを文字起こししたうえで、AIが薬歴の下書きをしてくれる機能があります。
丸1か月このAI薬歴機能を使うなかで、出力される内容に少し気になる点が出てきたといいます。
下書きをしてくれること自体は便利だと感じつつ、使い方を誤ると危ういとも話します。
ある種諸刃の剣と言ったらあれですが、使い方を誤らないようにしないといけないなというふうに思いながら、日々そのシステムを使っています。
高確率で出力される「適切」というアセスメント
このシステムでは、会話のやりとりからAIが「あなたが考えていたのはこういうことではないか」とアセスメントの内容も記載してくれます。
そのアセスメントを見ると、高い確率で「血圧が安定しているので、今回の降圧剤の処方は適切である」といった内容が出てくるのが印象的だといいます。
状態に対して薬を評価し、最終的に処方が適切かどうかを判断したがる傾向がある、というのがたいぞーさんの実感です。
もちろん処方の適切さは自身も考えているため、出力として間違ってはいません。ただ、その頻度が非常に高いことに引っかかりを感じています。
僕の中でめちゃくちゃその処方の適切さを判断するために患者さんとやりとりしているかというと、そこはありつつも、メインはそこじゃないなということをいつも思っていて。
なぜAIは「適切さ」を出力したがるのか
なぜ「適切」という出力が高頻度でされるのか、たいぞーさんなりに考察しています。
薬剤師の処方監査という仕事では、処方が患者に合っているか、飲み合わせの悪い薬がないか、疾患や状態に悪影響を及ぼさないかを判断します。この「適切さ」の判断は、薬剤師の仕事の重要な中心を担ってきたのではないか、と振り返ります。
そのため、適切という判断を何らかの形で発信・出力している人が多いのではないか、とたいぞーさんは考えます。
それ自体は大切な仕事なのでないがしろにはできない、という前提も添えています。
薬剤師が患者とのやりとりで本当に見ている時間
一方で、たいぞーさんが考える「患者とのやりとりの時間」は、適切さの判断だけではありません。
過去から現在にかけて薬がちゃんと効果を示していたのか、副作用が出ていなかったのか。この状態に対するアセスメントこそ、やりとりの中で判断していることだといいます。
薬が効いてこうなっているのか、病気の治療が順調だから適切なのか。適切という言葉には、いろいろな判断の余地が残ると指摘します。
だからこそ、薬学的な知識を持って薬の影響を見ているということを明文化して伝えることが大切だと話します。それは自分自身のためであり、薬歴を引き継ぐ別の薬剤師のためでもあります。
「適切」で止まる思考と、その先の未来
過去から現在にかけて、薬学の知識で患者の変化を薬の影響としてとらえる。そうすると、次にこの先どうなるのかという未来の視点にもつながっていく、とたいぞーさんは考えます。
逆に、適切かどうかを判断するという思考に陥ると、今現在のところで思考が止まってしまいかねないと警戒します。
過去から現在
薬が効いていたか、副作用がなかったかを見る
未来
この先どうなるのかを考える
行動
そのために自分たちはどうするかを考える
この先どうなるか、そのために自分たちはどうするかを考えるためにも、薬がどうだったのかを見極めながら患者を見ていくことが大切だとまとめます。
AI薬歴とのうまい付き合い方
AI薬歴によって、薬歴を書く手間は大幅に軽減されます。
ただし、その出力をただ鵜呑みにして終わると、薬剤師が何をしているのかを見失い、思考力も奪われかねないといいます。
そもそも「書くときに考える」でいいのか、という問いもあります。患者に関わる前にきちんと考え、服薬指導しながら状況を確認し、そのうえで次の未来を考える。
そうした患者対応をしながら、書くという部分をAI薬歴に委ねていく。これが今のたいぞーさんが実践しているAI薬歴とのうまい付き合い方の現在地だといいます。
患者対応をしながら書くという部分をAI薬歴に委ねていく。それが、AI薬歴の使い方として、これがうまい使い方なんじゃないかなと思って実践している現在地になります。
まとめ
AI薬歴が高頻度で出力する「適切」という判断を手がかりに、薬剤師が患者とのやりとりで本当に見ているものを問い直す回でした。便利さと引き換えに思考力を手放さないための付き合い方が語られています。
- たいぞーさんの薬局では7月から薬歴システムを入れ替え、音声からAIが薬歴を下書きする機能を1か月使っている
- AIのアセスメントは「処方は適切である」という判断を高頻度で出力する傾向がある
- 薬剤師が本当に見ているのは、過去から現在にかけて薬が効いたか、副作用がなかったかという状態のアセスメント
- 「適切」で思考を止めず、この先どうなるか・どうするかという未来の視点までつなげることが大切
- 患者対応の中で自ら考え、書く部分をAIに委ねるのが、たいぞーさんが考えるうまい付き合い方
