臨床だけで働かず、なぜ発信を続けるのか
薬剤師のたいぞーさんは、臨床現場で働きながら、毎日の音声配信や講演会の講師といった発信活動を続けています。冒頭では、2026年12月8日にウェブセミナーへ登壇する予定が決まったことも紹介されました。
この回でたいぞーさんが語るのは、ただ薬剤師として現場で働くだけでなく、なぜ発信活動まで行っているのかという理由です。
たいぞーさんの音声配信は、すでに1年以上続いています。ただ、毎日の発信を続けることは決して楽ではないと、たいぞーさん自身が話しています。
毎日こうやって発信を続けていくのも決して楽なことではなくてですね。
講演会に講師として呼ばれることや、自分でセミナーを開催することも、準備まで含めると負担は小さくないといいます。
本当は臨床だけが一番「楽ちん」
たいぞーさんにとって、一番やりたいことは臨床現場で1人の薬剤師として患者さんに関わり、健康という価値を届ける仕事です。その仕事を、たいぞーさんは心から面白いと感じています。
それ(臨床の仕事)が一番やりたいことでもあるわけなので、それをしているのが一番楽ちんなわけなんですね。
たいぞーさんは会社員として薬局に勤め、1店舗を任される店長も務めています。周りのスタッフを束ねるマネジメントの仕事です。
ところが、臨床能力を発揮することが一番のやりがいであるたいぞーさんにとって、マネジメントは「ある種ちょっと余分なところ」だと率直に語ります。
正直ないなら僕はもう臨床に専念できて、それに越したことはないなというふうに常々いつも思っています。
それでも発信やマネジメントを担うのはなぜか。たいぞーさんの答えは逆説的で、臨床をやり続けたいからこそ、発信を続け、店舗でスタッフと関わる役割を選んでいるといいます。
たいぞーさんが1人で専門性を磨けば、目の前の1人の患者さんを救うことはできますし、やりがいを感じながら仕事を続けることもできると考えています。
1人で実践しているだけでは揺らぐもの
たいぞーさんが恐れているのは、社会が薬剤師に求める役割が変わってしまうことです。例として挙げたのは、調剤報酬 ── 薬局が調剤や服薬指導などを行った対価として受け取る報酬。国が点数を定め、改定によって評価される業務が変わりますの仕組みが変わり、別の役割が重視される場面です。
たとえば、専門性はひとまず置いて、患者さんから情報を集めて多職種 ── 医師や看護師、ケアマネジャーなど、患者さんの医療や介護に関わるさまざまな専門職のことに届けることこそ大事だ、と社会全体が動いていく可能性です。
一方でたいぞーさんがしたいのは、薬学を使って「この患者さんに何が起きているのか」「なぜ治療がうまくいく、あるいはいかないのか」を考え、治療の継続と健康を支える仕事です。
その仕事が社会から求められなくなれば、続けても自己満足になってしまいます。たいぞーさんはそれを強く意識しています。
それを自己満足としてやるのであれば、それはただの趣味になってしまうので、僕はこれ(臨床の仕事)を仕事として継続したいんです。
社会からの要請だけでなく、会社や組織の中で求められることが薄らぐことにも、たいぞーさんは強い危機感を持っていると話しています。
共感する仲間が増えると、何が変わる?
たいぞーさんによれば、1人で実践しているだけでは、こうした揺らぎが生じるリスクは高くなります。けれど、考えや実践に共感する仲間が集まれば、それは大きなムーブメントになると考えています。
目の前の患者さんは救えるが、社会や組織の求める役割が変わると、仕事として続けることが揺らぎやすい
共感と実践の輪がムーブメントになり、専門性を活かす仕事が当たり前として受け入れられやすくなる
たいぞーさんは、この広がりを店舗、会社、社会と段階を追って語っています。下の図は、その広がり方を整理したものです。
店舗
専門性を活かす面白さが店舗内に広がれば、その活動が当たり前になり身動きが取りやすくなる
会社
会社の中に考えが広がれば、店舗異動を言われても快く引き受け、別の店舗でも同じ仕事ができる
社会
会社・組織・地域の枠を超えて実践の輪が広がれば、社会から求められる仕事になっていく
こうやって考えながら患者さんに関わるってとても面白いし、やりがいもあるし、患者さんにも価値を届けられる、それってすごいいいよね。
ただし、1企業、1店舗、1薬剤師が活動を続けるだけでは、社会全体はなかなか動かないとたいぞーさんは見ています。だからこそ、地域を超えて共感する仲間を集める必要があるといいます。
毎日の発信は、そのための手段です。1人でも2人でも発信を聞いて思いを共有し、現場で実践しようと思う人が生まれれば、たいぞーさん自身が「薬学で患者を語る」仕事を末長く続けられるという考えです。
「自己中心的な利他」という位置付け
たいぞーさんは、講演会もマネジメントの役割も含めて、すべての活動は自分のためだとはっきり語ります。自分が面白いと感じる薬剤師の仕事をやり続けるために活動しているのです。
そのうえで、自分のための活動が結果的に周りの人にとっても価値あるものとして広がるなら、それはたいぞーさんにとって非常に嬉しいことだといいます。
たいぞーさんはこの姿勢を、発信などで見かけた表現を借りて自己中心的な利他と位置付けています。活動がその形で続けられているかを、常に自分で見直しているそうです。
講演の依頼についても、同じ考え方が表れています。たいぞーさんは講師を生業にするつもりは全くなく、仲間が1人でも増えることが何より嬉しいと話しています。
そういった活動(講演)を通して仲間が一人でも増えていけばいいなということが、何より僕の嬉しいことになります。
報酬をもらえるならもちろん嬉しく、断ることはないとしたうえで、予算には臨機応変に相談に乗るといいます。思いに共感でき、面白いものが生まれそうなら、無料で引き受けることもやぶさかではないそうです。
ウェブセミナーと姫路での講演会の告知
たいぞーさんは、この熱量を届ける機会があれば喜んで出向くと呼びかけたうえで、最後に2つの告知をしています。
| 日程 | 形式・場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 12月8日 | ウェブセミナー(90分) | 患者さんの状態や生活背景を薬剤師ならではの視点で評価し、課題を見いだして介入する実践のポイント |
| 2月14日 | 講演会(兵庫県姫路市) | 専門家としての力を、やりがいだけでなく社会や組織の価値と自分の報酬にも結びつける仕組みづくり |
12月8日のウェブセミナーは参加者を募集中で、申し込みリンクは概要欄に掲載されています。
2月14日の姫路での講演会は、たいぞーさんが主催します。自身の経験や模索中の実践も交えながら、専門的な薬剤師として生きるキャリアがどうしたら生まれるのかを参加者と一緒に考える場にしたいと話しています。
対象として、プロフェッショナルとして患者さんを救う人材を組織から生み出したいと考える組織のリーダーにも呼びかけています。詳細は調整中で、まずはスケジュールの確保をお願いしたいとのことです。
まずはスケジュールの確保、ぜひお願いします。
まとめ
たいぞーさんが発信やマネジメントを続けるのは、臨床で薬学を使って患者さんに関わる仕事を、趣味ではなく仕事として続けるためです。自分のための活動が仲間を増やし、結果的に他者の価値にもなる。その「自己中心的な利他」が、活動全体を貫く考え方になっています。
- たいぞーさんにとって臨床に専念するのが一番楽で、マネジメントは本来「余分」な仕事
- 1人の実践だけでは、社会や組織の求める役割が変わったときに仕事として続けることが揺らぐ
- 共感する仲間の輪が店舗・会社・社会へ広がれば、専門性を活かす仕事が当たり前になる
- 発信や講演は生業ではなく、仲間を増やして自分の臨床を守るための活動
- 12月8日にウェブセミナー、2月14日に兵庫県姫路市で講演会を予定している


