「コミュニケーションが大事」は本当か?
薬剤師のたいぞーさんは、薬剤師の仕事を語るうえで「コミュニケーションスキルが重要だ」と主張するネット記事や発信が、体感として最近増えていると話します。
たいぞーさんによれば、その背景にはAIの発展と普及があります。AIが専門的な内容をわかりやすく要約してくれるため、多くの人が難しい情報にもアクセスしやすく、理解しやすくなっています。
そこで、AIに代替されにくい領域として、患者さんに寄り添うためのコミュニケーションスキルが挙げられるようになった、という流れです。たいぞーさんはこの主張について、言っていることはよく理解できるとしています。
僕自身、まあそういった発信を見るたびにですね、「それってほんまなんかな」っていうのをいっつもちょっと、こう、なんとも疑問に思ってしまうようなところがありまして。
この回は、たいぞーさんが自分の中にある疑問や「なんとも言えないもやっとした気持ち」を整理する意味で語られています。
心地よい会話だけなら、薬剤師でなくてもいい
たいぞーさんがまず問いかけるのは、薬剤師が何のために患者さんに寄り添っているのか、という点です。ここを理解していないと、コミュニケーションの使い方がずれてしまうと考えています。
たいぞーさんは、患者さんと熱心に話すことで共感が生まれ、そこから信頼が生まれることも確かにあると認めます。そのうえで、心地よい会話のためだけにコミュニケーション能力を使うことには疑問を示します。
(心地の良い会話のために)薬剤師がコミュニケーション能力を使うのであれば、正直それは別に薬剤師じゃなくてもいいんじゃないかなっていうのを僕は思うところがあって。
たいぞーさんは、資格と能力を持った薬剤師が患者さんと関わる価値は何なのかを見据えておかないと、いずれ「薬剤師が関わる価値はあるのか」という課題として問われるようになるのではないか、と話します。
一人の人間として関わる価値は実感してもらえるかもしれません。けれど、ただ普通に会話する能力としてコミュニケーションスキルを使うだけでは、「薬剤師としてのあなたに関わってもらった」という価値は生まれにくい、とたいぞーさんは危惧しています。
たいぞーさん自身も、患者さんや他職種とのコミュニケーションが重要だという点には同意しています。ポイントは、コミュニケーションが「何のためにあるのか」を捉え違えないことだといいます。
心地よい会話や共感を生むために使う。たいぞーさんは、これだけなら薬剤師でなくてもよいと考えています
薬剤師の専門的な能力を活かすために使う。薬剤師として関わる価値につながります
1つ目の軸、情報を集めて薬学で読み解く
たいぞーさんは、薬剤師にとってのコミュニケーションのポイントを2つ挙げます。1つは情報を収集すること、もう1つは情報を届けることです。
情報収集について、たいぞーさんは、患者さんと円滑にコミュニケーションを取ることで、さまざまな情報を得られるようになると話します。
得られた情報は、患者さんを理解する材料であると同時に、薬学の専門性を働かせる材料にもなります。今患者さんに何が起きているのか、なぜこの人の病状はこうなっているのかを、薬剤師ならではの薬学の視点で読み解くためです。
そのためには材料となる情報、これがなければ、患者さんの状態を的確に薬学的な観点で捉えるということはできないと思います。
たいぞーさんによれば、コミュニケーションで情報が集まるほど薬学の専門性がさらに活かされ、薬剤師として患者さんに関わる価値も高まっていきます。
2つ目の軸、他職種や患者に「届けきる」力
2つ目の軸は情報を届けることです。たいぞーさんは、薬剤師が情報を収集し、薬学的に読み解き、問題点を把握して解決策を打ち出すことで、より良い薬物治療や、患者さんが健康に向かうための支援ができると考えています。
ただし、その実践は薬剤師一人の力では難しいといいます。患者さん自身が行動を起こすことも必要ですし、患者さんには医師、看護師、ケアマネージャー ── 介護支援専門員のこと。介護保険サービスを利用する人のケアプランを作り、事業者や医療職との調整を担います、ヘルパーなど、さまざまな専門職が関わっています。
たいぞーさんは、こうした患者さん本人や他職種との連携を実践する場面でも、コミュニケーションスキルが重要になると話します。巧みな話術で円滑な関係を築くことも、それはそれで大切だとしています。
そのうえでたいぞーさんが強調するのは、薬剤師が考えている薬学的な視点を、他の人にきちんと届けきって初めて、専門性が本当の意味で活かされるという点です。
届けきるためにはコミュニケーション能力が必要不可欠になる、というのがたいぞーさんの見立てです。
専門性にこだわり抜いた先に、コミュニケーションがある
たいぞーさんは、情報を収集する、情報を届けるという2つの軸で、薬剤師が自分たちの専門的な力を遺憾なく発揮するために、コミュニケーションスキルは重要なファクターになると整理します。
ここまでの話は、情報を集めるところから専門性が活きるところまでの一続きの流れとして捉えられます。
情報を収集する
患者さんと円滑にやりとりし、さまざまな情報を得る
薬学で読み解く
体で何が起きているかを理解し、問題点を把握して解決策を打ち出す
情報を届けきる
患者さん本人や医師、看護師、ケアマネージャーなどに薬学的な視点を届ける
専門性が活かされる
より良い薬物治療や健康に向かう支援につながる
ただし、たいぞーさんは、コミュニケーションスキルだけあればよいわけではないと念を押します。薬剤師という専門的な資格と能力があって初めて、薬剤師としてのコミュニケーションスキルの価値が生まれると考えています。
たいぞーさんは、自分の中でのコミュニケーションの立ち位置を理解したうえでスキルを磨き、使っていかなければ、薬剤師であることの意味を見失ってしまうのではないか、と話します。
そして、薬剤師が薬剤師として患者さんに関わり価値を届けるために何ができるのか、そのためにコミュニケーションスキルはなぜ必要なのかを、リスナー自身にも考えてほしいと呼びかけています。
12月8日のウェブセミナーと2月14日の姫路講演会
回の最後に、たいぞーさんは2つの告知をしています。12月8日のウェブセミナーへの講師としての登壇と、2月14日に兵庫県姫路市で企画している講演会です。
たいぞーさんによると、12月8日のウェブセミナーでは、薬剤師ならではの仕事をし、価値を社会や患者さんに届けていくために、どのような能力の活かし方があるのかを伝える予定です。申し込みは概要欄のリンクからできると案内されています。
2月14日の姫路の講演会では、能力を研鑽して価値を届けることが会社の利益や社会の価値に結びつき、外的な報酬も含めて評価される仕組みを作るには何が必要か、を話したいとしています。会場や時間は固まりつつあり、詳細は今後の放送で伝えるとのことです。
まとめ
たいぞーさんは、薬剤師にコミュニケーション能力が必要だという主張に同意しつつも、それは目的ではなく、薬学の専門性を活かすための道具だと位置づけました。情報を集めて読み解き、届けきるまでを一続きで捉えることで、薬剤師として関わる価値が生まれると語られています。
- 心地よい会話のためだけにコミュニケーション能力を使うなら、薬剤師でなくてもよいのではないかという問題提起
- 1つ目の軸は情報収集で、集めた情報が薬学で患者さんの状態を読み解く材料になる
- 2つ目の軸は情報を届けることで、他職種や患者さんに届けきるところまでが勝負
- 専門的な資格と能力にこだわり抜いた先に、薬剤師としてのコミュニケーションの価値が生まれる


