薬剤師の専門性を活かすために考えたこと
たいぞーさんは前職で、薬剤師と調剤事務スタッフが共同して、より質の高い専門的なサービスを患者に届ける体制づくりに取り組んでいました。
現場に立ちながら薬局全体のマネジメントも考えるという働き方の中で、常に意識していたのが「薬学で患者を語る」ことをどう実践するかでした。
そこで見えてきたのは、薬剤師が薬剤師でなくてもできる仕事を担えば担うほど、専門性を活かすところから離れていってしまうのではないか、という懸念だったと話されています。
簡単な仕事が「専門性」を遠ざける理由
薬剤師が専門性を活かす仕事とは、患者にしっかり向き合い、状態を深く読み解いていくことです。これは体力も精神力も必要とする、大変な仕事だといいます。
一方で、目の前に簡単な作業がちらつくと、ついそちらに意識が向いてしまう。それは人間誰しもあることだ、とたいぞーさんは指摘します。
強い意志を持って、患者さんのためにと思ってやることもあるかもしれないですけど、人というのは弱いものだなと僕自身認識しています。
だからこそ、労力を必要としない仕事が役割として与えられる環境は、専門性を活かしたくても活かしにくくする要素になると考えたそうです。
そこで、薬剤師以外のスタッフにそうした仕事を任せる仕組みづくりを進めていきました。
「調剤事務」という名前が生む違和感
ところが、薬剤師でなくてもできる仕事を任せていくと、調剤事務スタッフが担う仕事の範囲がだんだん広がっていきます。
はじめは処方箋の受付や処方内容の入力といった事務的な仕事が中心でした。しかし、錠剤を棚から取り揃えるような、事務仕事とは言いにくい作業も増えていきます。
そうなると「それって事務仕事なの?」という曖昧さが生まれます。ここで「名は体を表す」という問題が浮かび上がる、とたいぞーさんは言います。
調剤事務という役割の名前を与えてしまっていると、私たちは事務仕事をする人たちだと自分自身のことを認識してしまいます。
その結果、事務仕事以外を頼むと「私ら事務やのに、なんで事務仕事以外の仕事せなあかんの?」という気持ちが、本人の感性とは別に生まれてしまうのではないか、というのです。
そうしたフラストレーションは体力や精神力を奪います。それが生じないようにする方が健全だと考えました。
「サポーター」でも「補助」でもない名前を選ぶ
そこでたいぞーさんは、共同体制をつくるにあたって、まず調剤事務スタッフの名前を変えることを重要だと考えました。
候補として薬剤師を支援する「サポーター」という呼び方も浮かびましたが、あえて避けたといいます。
理由は、サポーターや補助という言葉には、薬剤師の業務を中心軸として、それを支えるという上下の関係が生まれてしまう印象があったからです。
サポーターとか補助というのは、薬剤師の業務が中心軸にあって、それをサポートする、補助するという、仕事における関係性に上下の関係が生まれてしまうんじゃないか。
薬剤師は資格を活かした役割を果たし、それ以外の仕事も薬局全体を回す貴重な役割を担う。どちらも大切で、上下の関係が生じるような仕事ではない、とたいぞーさんは考えました。
「ファーマシストパートナー」という答え
そこで選んだのが「ファーマシストパートナー」という名前でした。
パートナーという言葉には相棒という意味合いがあり、横並びに立つ存在を表せると考えたそうです。ただのパートナーではなく、薬剤師に特化したパートナーになってほしいという思いを込めました。
名前を変えたところ、現場のスタッフの意識も実際に変わっていったといいます。
だんだんと薬剤師を対等な存在として支えるという仕事に、それぞれ自信と誇りを持って、しかも責任と覚悟も持って仕事をしてくれるようなスタッフが生まれていきました。
パートナーがいることで薬剤師の専門性が上がる
パートナーが支えてくれるほど、薬剤師は責任ある専門性を活かした仕事をしなくてはならなくなります。
担ってもらっている分、自分たちの責任を果たすことが求められる。その結果、薬剤師は必然的に専門性を活かした仕事に向き合うようになったといいます。
当時は専門性を活かしたいという思いを持つ薬剤師を採用していたため、本人の思いと環境が一致し、業務の質がぐんと上がる経験をしたと話されています。
呼称を変更
調剤事務からファーマシストパートナーへ
スタッフの意識変化
対等に支える役割への自信と責任
薬剤師への波及
担ってもらう分、専門性を果たす必要が生まれる
業務の質向上
薬局全体のサービスの質が上がる
名前は名前、されど名前
調剤事務という名前のまま役割だけを変えていくと、さまざまな不都合が生まれてくる、とたいぞーさんは振り返ります。
名前を変えるのはシンプルなことですが、大事なことだといいます。組織で課題を抱えているなら、名前を変える視点を持ちながら組み立てを考えるのも一つだと提案します。
名前にどういう意味を持たせるのか、みんながどんな印象で仕事と向き合っているのか。名前を通してそれを考えるきっかけになれば、と締めくくられています。
まとめ
薬剤師の専門性を活かすために、たいぞーさんが取り組んだのは調剤事務スタッフの呼称を「ファーマシストパートナー」に変えることでした。名前が変わると意識が変わり、薬剤師の専門性の発揮にまでつながったといいます。
- 薬剤師でなくてもできる仕事を任せることが、専門性を活かす前提になる
- 「調剤事務」という名前は、事務以外の仕事への違和感を生むことがある
- 上下関係を感じさせる「サポーター」「補助」を避け、対等を表す「パートナー」を選んだ
- 名前が変わるとスタッフの自信・誇り・責任感が育ち、薬剤師も専門性に向き合うようになった
- 名前を変えるのはシンプルだが、組織の課題を解く有効な視点になり得る
