ポップに振り切ったビジュアルは「変化」なのか
鞘師里保さんはメジャーデビューを果たし、まずシングル『Super Red』を出しました。川邊健太郎さんはLINE MUSICで自分の音楽に設定しているそうです。
川邊さんが注目したのは、ボクシングのポーズをとったEPのジャケットです。これまでとはテイストが違い、かなりポップになったという印象について、背景を尋ねました。
鞘師さんによると、今回は再出発で新たにブーストをかけたいタイミングでした。一発目として、自分の意思が視覚で一発で伝わるビジュアルが大事だと、ビジュアルディレクターとも話したといいます。
私の意思が視覚で一発で伝わるビジュアルっていうのが大事になるなっていうのを、(ビジュアルディレクターの方からも)お話いただいたり、私自身もそうだなというふうに思ったんですよ。
表情やスタイリング、メイクまで振り切ったビジュアルですが、鞘師さん自身は「違うことをしている」感覚とは少し異なると話します。
本当に自分の根っこにいる自分みたいなものがどんどん暴かれていってる感じがあるというか。
違うところに手を伸ばしてるっていうよりも、自分に近づいていってるっていう気持ちが強いですね。
鞘師さんにとって今回のポップな振り切り方は、新しい自分を演じることではなく、根っこにある自分に近づいていく過程だと語られています。
過去の「赤」に縛られていた理由とは
川邊さんは、『Super Red』の紹介文にある「これまでの自分を肯定しながらも、さらにその先へと踏み出し、新たに塗り替え超えていく」という言葉を取り上げました。
鞘師さんはモーニング娘。のエースで、メンバーカラーは赤でした。川邊さんは、ソロになった鞘師さんが一度はその赤を否定したかったのではないか、それでも赤いペンライトを振るファンとの間で葛藤があったのではないか、と自身の解釈を伝えます。
鞘師さんは、川邊さんの推測は「芯をついている」と認めたうえで、当時の気持ちを語りました。
(復帰してから)赤で応援してくれてるっていうのは、すべてを大事にしてくれてるファンの方の愛を感じて嬉しかった反面、
過去の輝いてた自分に固執してた部分も、一つあるのかなっていうふうに思ってて。
復活した当時の鞘師さんは、自分に自信がありませんでした。そのため赤いペンライトを見ると、ありがたさと同時に、過去の自分の顔を思い出してしまったといいます。
(赤を)振ってくれてるのを見ると、ありがたさと同時に自分は過去の自分の顔を思い出しちゃうんですよね。
その気持ちから、鞘師さんは自分を塗り替えなければと考え、違う自分を表現しようと必死になっていたそうです。
なぜ今、赤を受け入れられたのか
鞘師さんが赤を受け入れられるようになったのは、活動を再開してからの年月で自信がついてきたからだといいます。
自分がパッと赤色を思い浮かべた時に、私自身が自分の昔の顔を思い出すんじゃなくて、また自分の今の姿で更新できるなっていう風にこのタイミングで思ったんです。
鞘師さんは、それが4年間の活動の中での気持ちの変化なのか、単純に年齢を重ねたからなのかはわからないとしつつ、寛容になって受け入れることができ、同時に自信もついてきたと振り返ります。
復帰直後は自信がなく、赤いペンライトを見ると過去の輝いていた自分の顔を思い出した。違う自分を表現しようと必死だった
4年の活動で自信がつき、赤を思い浮かべたときに今の自分の姿で更新できると思えるようになった
鞘師さんは、赤を意識しすぎていたのは、それだけ大事だったからだろうとも話しています。
川邊さんはこの話を、過去の燦然と輝く赤ではなく、これから新しくしていく赤だとまとめ、鞘師さんもそれにうなずきました。
EPの発売日は7月23日です。鞘師さんは、初めて聴いても気に入ってもらえるように作っているとしたうえで、こうした経緯を知って聴くと深さが出てくるかもしれないと話しています。
AKB48への振付で感じた「子供を産んだような気持ち」
話題はダンスに移ります。川邊さんは、振付師の振りで踊るダンス、自分で振り付けるダンス、そして話題になったAKB48の楽曲への振付提供と、鞘師さんのダンスにはいくつもの形があると整理しました。
鞘師さんは、自ら振り付けることは今後も続けたいと言います。ただ時間をかけるタイプで生みの苦しみもあり、今は振付師を立てる形も多いそうです。
自分がこういうことを表現したいっていうキーワードに対して、クリエイターの人たちがまたそれを広げていってくれる光景を見るのがすごく好きになってしまって。
それでも、ゆくゆくは自分で振り付ける楽曲を増やせるのが理想だと話しています。
AKB48への振付は、自分の曲ではなく、誰かのことを思って振り付ける作業でした。鞘師さんは普段のパフォーマンスを見て、どんな動きなら新鮮に映るかを考えたといいます。
単純にAKB、元モー娘。みたいな立ち位置の中で私が振り付けてるっていう事実自体が、共通点と異物感みたいな、どちらも持ってるなというふうに思ったので、
川邊さんは、かつてAKB48に押されていたモーニング娘。を盛り返した鞘師さんが、今度はAKB48に振付をするという構図を「大河ドラマみたい」と表現しました。鞘師さんは「そうかしら」と受け止めつつ、同じ時代のグループなのでいろいろな見られ方はあったと話します。
一度誰かに手渡したものが、その人たちの手によって育っていったりとか、その人たちの表現の仕方になっていったりとかする。子供を産んだような気持ちみたいなのも初めて覚えたりとか。
自分に振り付けるものは自分で育てていくものですが、人に手渡した振付は相手の手で育っていきます。その違いが、鞘師さんにとって新しい経験になったようです。
「またやっちゃった」の繰り返しで生きる
川邊さんが、振付師の振りで踊ること、自分で振り付けること、他の曲を振り付けることのどれも続けたいのかと聞くと、鞘師さんは機会があれば全力で取り組みたいと答えます。ただ、直面すればかなり苦労するタイプだとも付け加えました。
川邊さんの「やっちゃった」という言葉に、鞘師さんは強く同意します。
そうなんですよ。またやっちゃったの繰り返しですね。この世界で生きるのって。
映画に出たときも、乗り越えられれば素晴らしい作品に携われると思いながら進む一方で、「話を受けちゃった」と感じることがあるそうです。鞘師さんは「そういうことばっかりですね」と笑います。
ダンスの醍醐味は「音を体で奏でる」こと
前回の配信で、歌の醍醐味は歌詞に乗せて誰かにメッセージを届けることだと語っていた鞘師さん。川邊さんは、ダンスの醍醐味は何かを尋ねました。
ダンスでいろんな考え方もあるし、いろんな楽しみ方もあるんですけど、音を表現するのがすごい好きなんですよ。
鞘師さんは、ダンスを楽器のような感覚で捉えているといいます。曲をミュートして動きだけを見ても、音を感じ取ってもらえるダンスが好きで、それを20年ほど続けてきたそうです。
案外やっぱ曲とダンス相まって見て、なんとなくふむふむって思ったものも、音抜いたら結構つまんなくなっちゃうことってすごい多いんですよ。
鞘師さん自身、自分のパフォーマンスに対してそう感じることがいまだにあるといいます。だからこそ、体で音を奏でることを常に考えながら踊っていると話しています。
ミュートしても音を感じるアーティストとして、鞘師さんは菅原小春 ── 日本のダンサー・振付師。国内外のアーティストの振付や舞台、映像作品などで活躍していますさんの名前を挙げました。ダンスがうまいだけでなく、どんな音やエナジーの曲で踊っているのかが視覚だけでわかるといいます。
本当に魂が動いてる。
川邊さんは、歌は詩であり、ダンスは音である、と鞘師さんの表現を整理しました。
歌詞に乗せて、誰かにメッセージを届けること
楽器のように、体で音を奏でること。ミュートしても音が伝わる動き
DJに挑戦して上がった音楽の解像度
鞘師さんは最近DJを始めました。川邊さんに「やっちまったことなのか」と聞かれると、鞘師さんは「全然やっちまった方」と答えます。
きっかけは、ライブツアーに帯同しているDJの存在でした。決めた構成を土台に進化させていく従来のライブと違い、DJにはその場で流れを作るライブ感があると感じたそうです。
こういうここのイントロ伸ばしたいですとか、ここをこういうテンションにしたいですっていうのを、その場でコーディネートしてくれたりするDJの方なので、そういうのを見てると私もすごい憧れを抱いたりして。
さらに、これまで一緒に仕事をした人から「DJをするとより音楽が理解できる」と勧められたこともあったといいます。
鞘師さんによると、ジャンルごとにBPM ── Beats Per Minuteの略で、1分間の拍数を示す曲のテンポの指標です。DJは近いBPMの曲同士をつなぐことが多いですはおおよそ決まっています。頭ではわかっていても、実際に手を動かして組み立てると解像度が上がるそうです。
鞘師さんのDJは、自分の持ち曲だけでなく他の楽曲も含めたものです。セットリストを決めるのとは違う頭の使い方が必要になるといいます。
アウトロとイントロ
前の曲の終わりと次の曲の始まりを混ぜる
BPMを選ぶ
テンポがあまり遠くない曲を選ぶ
相性を見る
混ぜても気持ち悪くない曲を選ぶ
川邊さんはコンサートでDJをする鞘師さんを見て、機材に全集中して緊張している様子に、自分まで緊張したと振り返ります。鞘師さんは「見守られちゃってましたね」と笑いました。
演じることは「好きではなかった」
最後の軸は俳優業です。鞘師さんはモーニング娘。加入前からミュージカルなどに出ており、演じることのキャリアは古いものです。ところが、演じること自体は好きではなかったといいます。
歌わないし踊らないしみたいな。まずそういう始まりなんですけど。
単純に難しいという理由もあり、苦手意識が強かったそうです。それでも演技レッスンを受け、作品を重ねるうちに学べることが増えていきました。
表現してる楽しさもあるんですけど、どちらかというと身になってる瞬間みたいなのが喜びだったりするので、それを糧に今も前に進めてる感じはあるのかなと。
作品ごとの立ち位置は確立できるよう努めてきた一方で、「鞘師里保がこうしていく」という形はまだ探る必要があると話しています。
コメディから時代劇まで、全部が難しい理由
活動再開後、鞘師さんは幅広い役を演じてきました。川邊さんが難しかった役を尋ねると、答えは「全部難しい」でした。
映画『11人の賊軍 ── 戊辰戦争を舞台に、罪人たちが決死の任務に挑む時代劇映画。白石和彌監督作品として2024年に公開されました』では、女郎で罪人という役でした。男に裏切られた女性の気持ちや、罪を犯した者としての未来の見方を考えなければならなかったといいます。
ほかにも、未婚で子どももいない鞘師さんが子どものいる母親を演じたり、視聴者の癒やしになるような穏やかなコメディに出たりと、役の幅は広がっています。
歌だと自分の作品になるので、ある程度自分の手癖があった方がいい場合もあるんですけど、
鞘師さんは歌と演技の違いをこう説明します。演技ではトーンも題材も多種多様なため、自分がどう適応するか、どんな心の持ちようでいるのが正しいかを毎回迷うそうです。
台本の読み込み方など、演技の土台はできてきたといいます。ただ、監督の表現したいことが自分と違う場合もあり、大人数の現場でのコミュニケーションには今後も苦労するだろうと話しています。
アクティングトレーナーが見抜いた「シュールコメディ」の適性
得意な役柄について、鞘師さんは意外な評価を明かしました。通っている演技レッスンのアクティングトレーナーから、シュールコメディが似合うと言われているそうです。
真面目な顔して意味わかんないこと言ってるみたいなトーンの役柄とかが、鞘師さんっぽいんじゃないかみたいなのは言っていただいてます。
レッスンの台本で試してみると、確かに楽しく、すっと入りやすいと感じたといいます。
その方にすごいよく言われるのは、あなたはすっとこどっこいだからって言われることがあって、そうなんだと思ってたんですけど。
日常会話でよくわからずに話しているような「突き詰めきれていない感」が、会話のトーンの個性だと指摘されたそうです。鞘師さんは、それが生かせるならやってみたいと話します。
川邊さんは、鞘師さんの抜けたところはファンの間でギャップ萌えになっていると言います。鞘師さんは、演じるときは狙いに行かないほうがいいのだろうと答えました。
松岡茉優さんとの共演で演じたい関係は
川邊さんは、鞘師さんの「トップオタ」として知られる松岡茉優 ── 日本の俳優。ハロー!プロジェクトの熱心なファンとしても知られていますさんとの共演について尋ねました。
鞘師さんは、関係性が変わってしまいそうだと笑いつつ、共演できれば大きな学びになるだろうと話します。
それぞれの素の我々としては、距離感とか考えるだろうなって(松岡さんも)気使ってくださってたりもすると思うので、そこを乗り越えさえすればご一緒できると嬉しい。
一方で、松岡さんと共演できるだけの力量をもっとつけなければ、とも語っています。
演じてみたい役を聞かれると、鞘師さんは姉妹を挙げました。松岡さんが姉、鞘師さんが妹の関係になれば、プライベートでももっと仲良くなれるかもしれないといいます。川邊さんが男を奪い合うドロドロの関係を提案すると、「想像できない」としながらも変化球として面白がっていました。
『Too much!』に込めた「ちょうどよく生きられない」自分
最後に川邊さんは、仕事面での抱負と、人としてどうありたいかを尋ねました。
鞘師さんはメジャーデビューアルバムのタイトル『Too much!』から語り始めます。「〜すぎる」という意味の言葉です。
私がやっぱり集中しすぎて働きすぎるとか、逆に力尽きて休みすぎるとか、ちょうどいいところで生きていけない人間で。
でもそれは別に私に限らず、どんな方でもバランス取れるように頑張ってるだけで、そういう瞬間って多くあると思うんですよ。
自分を振り返りながら前に進むことは、精神的な負担になり、つらいと感じる時もあるそうです。それでも、その作業が今の自分を作ってくれたことは間違いないといいます。
鞘師さんは、そういう自分を受け入れながら、私らしく前に進むことを願い、同じキーワードに共鳴する人がたくさんいればいいと話します。インディーズで積み上げてきた活動を、この機会に新しい人との出会いへ広げたいとも語りました。
ムラだらけでも、真摯に生きる
川邊さんは、ファンが感じる鞘師さんらしさと、本人が感じる自分らしさにはギャップがあるのではないかと問いかけました。鞘師さんは長く考え込んでから答えます。
ムラがある日常なんですけど、それに対して自分を呆れたりもするんですけど、人生を無下にしないようには踏ん張ってるような人なのかなって自分では思っていて。
人からはストイックそう、真面目そうと言われますが、時と場合によっては全くそうでないこともあるといいます。
そのムラのある波をうまく乗りこなし、人として成長し続けたい。それが鞘師さんの考える自分らしさです。
型にはまる使命感から、自由を率先する立場へ
歌手、俳優、そしてDJと、表現者として幅を広げる鞘師さん。自由でいることの面白さを年々実感しているといいます。
型にはまらなきゃいけないっていう使命感を持ってたような人間なので、もともと。
そんな自分がいろいろな可能性を実行する姿が、近いマインドの人の後押しになればいいと鞘師さんは考えています。踏み出す瞬間には緊張や不安がありますが、その先には毎回楽しいことが待っていたそうです。
川邊さんは、型にはまったアイドル時代から、20代、30代、40代と年を重ねるほど表現が自由になり、人間関係も豊かになって、もっと楽しくなるはずだと語りかけました。
自分の人生に対して思うことがあった時に、人のせいにしたくない。自分で選んだから今ここにいるんだっていうのは絶対感じてないといけないなって私は思うので、
周りの提案や環境に支えられていることを認めつつ、やるかやらないかは最終的に自分で決めている。鞘師さんは、10年後、20年後もそう自信を持って過ごせるように今を生きたいと話しました。
川邊さんは、鞘師さんが楽しそうに人生を歩んでいく姿をファンは一番見たいはずだと伝え、これからも生き様を見せてほしいとエールを送りました。
まとめ
鞘師里保さんは、かつて過去の自分を思い出させた「赤」を、自信を得た今の自分で塗り替えようとしています。ダンス、DJ、演技と表現の幅を広げながら、ちょうどよく生きられない自分も受け入れて進む姿勢が、『Too much!』のメッセージにつながっていました。
- 『Super Red』の赤は、過去の栄光ではなく、これから更新していく今の自分の色として受け入れられた
- ダンスの醍醐味は、ミュートしても伝わるように体で音を奏でること
- DJへの挑戦は、BPMや曲のつなぎを通して音楽の理解を深める学びになっている
- 演技では毎回苦労しつつ、シュールコメディという新たな適性にも挑みたいと語られた
- 『Too much!』には、ムラのある自分を受け入れ、自分で選んで前に進む思いが込められている





