東大・議員・アイドル・経営者という異色のキャリア
番組冒頭、進行の三浦崇宏さんはまず橋本さんへの感謝から切り出します。ツギステから紹介を受けた元アイドルの川口葵さんが、GOで社員として活躍しているためです。
本当にありがとうございます。もう大活躍。YouTubeも拝見して、いつもこちら勝手に誇らしく思うぐらい。
橋本さんの経歴は、東大受験生アイドルとしての芸能界デビューから始まります。東京大学卒業後は渋谷区議会議員選挙に当選し、議員として活動する傍ら、2023年に株式会社ツギステを立ち上げました。株式会社ツギステは、アイドル経験者のセカンドキャリアを支援する企業で、橋本ゆきさんが2023年に創業しました。元アイドル人材を一般企業などに紹介する事業を行っています。
要素の多い経歴について、橋本さん自身は苦労もあると話します。
自己紹介が長くなりがちだし、勝手にすごいみたいな感じになってしまって、壁ができやすいんです。
橋本さんが所属していたのは仮面女子というグループです。大学に通いながらのアイドル活動は、想像以上に過酷なものでした。
昼は1限から6限まで大学に行って、365日ライブがあるので毎日劇場に走っていく。平日は2公演、土日は3から4公演やって、ハイエース1台で全国も回るし、海外でもライブをする。
1日も休みがないことが当たり前という生活だったので、本当に軍隊みたいでした。
休みがなく、将来を考える時間すらなかったアイドル時代
当時、将来のキャリアに不安はなかったのか。川口さんの問いに、橋本さんは「全く考えていなかった」と答えます。周囲の大学の同級生が就活を始めていても、自分は別世界にいたといいます。
休みがなかったので考える時間もないし、情報もない。浮世離れしてしまって、そういう話題が出ることも自分の職場ではない。本当にネバーランドというか。
不安や課題感は、自分の現状を客観的に見て、理想とのギャップに気づいて初めて生まれます。橋本さんは、そのスタートラインにすら立てない状況が何年も続いていたと振り返ります。
ずっと短距離走をやり続けているという形だったので、自分の理想とのギャップに気づくスタートラインにすら立たない状況が何年も続いていました。
橋本さんは17歳から26歳までアイドルとして活動しました。
外の世界に出て気づいた「居場所はある」という発見
アイドルを辞めた後、橋本さんはたまたま見つけたやりたいことに向かって政治の世界へ飛び込み、議員になります。通用しないのではと不安もあったものの、意外にも力が発揮できたといいます。
区民の方とコミュニケーションを取るときも、議会の中で発言するときも臆せずいける。やっぱり場数を踏んできたからだと思います。
アイドル時代の度胸や、運営など複数のステークホルダーと関わる力が、政治の世界にそのまま生きたのです。橋本さんは、外に出たことで自分の見え方が大きく変わったと語ります。
一方で、かつての仲間たちと集まると、状況は違いました。多くのメンバーがアイドルを辞めた後、何をしていいかわからず、パートやアルバイト、配信の投げ銭でなんとか生活していたのです。
自分の人生のピークをアイドル時代に持っていっちゃってるなと、すごく感じたんです。
橋本さんは、卒業ライブの写真を毎年SNSに投稿し、ファンに「覚えてますか」と問いかけるような姿を「アイドルあるある」として挙げます。この共感には、元アイドルの川口さんが強く反応していました。
戦友のために作ったキャリア支援サービス
橋本さんがツギステを立ち上げた背景には、仲間への強い思いがあります。過去に囚われた状態から抜け出し、それぞれが理想に向かって進めるようにしたいと考えたのです。
私よりも人気があって、人望もあって、絶対幸せになってほしいと思っていたメンバーが、その時がピークでずっと過去に囚われてるって悔しいんです。
もっと幸せに生きられるし、どこにでも居場所がある。その気になればどこでも活躍できると信じていたので、じゃあ機会がないだけなんだと感じました。
しかし、サービスの立ち上げは順調ではありませんでした。企業からは「ちやほやされてきた人が普通に働けるのか」といった反応もあり、橋本さんが特に壁を感じたのは芸能事務所側だったといいます。
事務所さんによっては、いや、タレントにそんなことできるわけないでしょみたいな反応もありました。
守る対象として接してきた事務所が、可能性を諦めてしまっている。橋本さんは、それが本人の未来の選択肢を奪う面もあると感じたと話します。
一方で、橋本さんは「アイドルは全員が働ける」と美化はしません。頑張れるタイプもいれば、そうでないタイプもいる。それは一般の人と同じだと冷静に語ります。
正直、二極化しているというか、頑張れるタイプもいれば頑張れないタイプもいる。でもそれって一般の方と一緒で、突出して多いわけではないです。
アイドルが企業で発揮する意外な強み
橋本さんによれば、アイドル人材は特に人事や営業の現場で企業に刺さっているといいます。人事に入ると採用候補者が増え、社内のコミュニケーションも円滑になるという効果があります。
三浦さんは、仕事は最後に営業とクライアントの相性で決まる面が大きいとし、人の心をつかむ仕事をしてきたアイドルは営業に向いていると指摘します。橋本さんは、その背景にグループ内の競争があると説明します。
新規のお客さんが来た時に、いかに自分の推しになってもらうか。数ある候補者の中から自分を選んでくださいと常に続けてきたからこその魅力があるんです。
橋本さん自身がステージで意識していたのは、笑顔と圧倒的な活動量、そして東大アイドルというプロフィールとのギャップでした。プロレスラーとの対戦企画でも、自ら前に出たといいます。
私はもう誰よりも雑巾がけしますみたいな感じで、泥臭くいきますって。プロレスラーとコラボする時も、他のメンバーではなく私に技をかけてくださいという感じでした。
川口さんが工夫していたのは配信でした。グループで誰もやっていなかった配信を毎日続け、そこで勝負したといいます。
グループの誰も配信をしていなくて、私が勝てるのは配信だと思って毎日続けていました。ライブで気になってから接点があった方がいいので、ライブの後に配信をするのは戦略的にやっていました。
笑顔と圧倒的な活動量、東大アイドルというギャップで差別化。企画では自ら前に出る泥臭さで印象づけた
誰もやっていない配信に注力。ライブで気になった人と配信で接点を持つ流れを戦略的に設計した
熱意は活動量で可視化される
橋本さんは、政治の選挙にも通じるものがあるとして、人は最終的に感情や情で動くと語ります。政策より「この人頑張ってるな」で投票が決まる人の方が多いのと同じ構造です。
誰よりも泥臭くやってる姿を見て、頑張ってるからこの人を応援しようとか信頼できるとか、そういうところが大きい業界だなと思います。
三浦さんは、熱意は活動量で可視化できるという自身の考えを重ねます。クライアントに何回会いに行くか、プレゼンをどれだけ練習するかといった量が、熱意を目に見える形にするというのです。
ただし橋本さんは、活動量が必ずしも本質と一致するわけではないと補足します。むしろ熱意も意欲もあるのに、それを目に見える形で見せられていない人は損をしていると話します。
強みは内側ではなく外の世界で見つかる
一般企業で働けると思っていないアイドルに、橋本さんはどう向き合うのか。その自信のなさは「知らないから」に近いと分析します。営業や事務のイメージだけで無理だと決めつけている人が多いのです。
業種が何かというより、自分がどういう生き方、どういう働き方を望んでいるのかをまず言語化することから始めます。
面接を終えたアイドルに電話で感想を聞くと、多くが「楽しかった」と答えるといいます。怖い、絶対に無理そうと思っていた企業のイメージが、面接一回で変わる瞬間です。
川口さんが「自分の強みの見つけ方」を尋ねると、橋本さんの答えは明確でした。強みが見つからないのは、能力の問題ではなく環境が合っていないだけかもしれない、というのがこの回の核心です。
橋本さん自身、アイドル時代は自己肯定感が低く、自分が大嫌いだったと明かします。東大に合格しアイドルもやっているのに売れない現実が、かえって自分を追い詰めたのです。
あんなに勉強して東大に合格して、毎日ライブしてて売れないって、私よっぽど問題があるんじゃないかと思っていた時期もありました。
状況が変わったのは、アイドルを辞めてからでした。評価される尺度が世界によって全く違うことに気づいたのです。
アイドル業界だと人気か可愛いかで測られ続けて、ずっといい点数をもらえなかった。でも外の世界に出ると、そうじゃないところにフォーカスして褒めてもらえると気づいたんです。
三浦さんは、自分の価値を探すとき人は内側に入り込みがちだが、実際は外に出て世界を広げることで本当の価値がわかると整理します。
今の環境では見つからない
一つの業界の尺度だけで測られ続け、評価されない自分を「問題がある」と思い込む
世界を広げる
外に出て、これまでと違う人や場所に出会う
別の尺度に出会う
これまで注目されなかった一面が評価され、褒められる
強みに気づく
自分にはこういう強みがあったと発見し、自己肯定感が回復する
アイドル業界を健全化したいという目標
今後の目標として、橋本さんは業界の健全化を挙げます。若さを換金する商売のようになり、アイドルを使い捨てる運営も増えているという問題意識があります。
アイドルってその先の人生もあるよとか、こういうスキルが身につく過程なんだという認知が広がれば、アイドルを目指すことがもっとヘルシーになっていくと思います。
橋本さんは、自身が青春を諦めて打ち込んできたのに「チャラチャラしている」と思われた悔しさを語ります。アイドルを、若さを消費するビジネスではなく、一気に成長するプロセスへと変えたいという願いです。
三浦さんが「東大とアイドル、どちらがいいか」と尋ねると、橋本さんは活動の仕方によると前置きしつつ、今の社会では学歴の意味が薄れてきていると話します。
東大に行ったから何なのって感じもするので、ちゃんとしたアイドルグループの中で意欲や成長、特有のスキルを身につける方が即戦力になれるんじゃないかと思います。
まとめ
この回は、自分の強みが見つからないのは能力不足ではなく環境の問題かもしれない、という視点を軸に展開しました。橋本さんは自身の経験とアイドル支援の実践を通じて、世界を広げることが自己肯定感と可能性を取り戻す鍵だと語りました。
- アイドル時代は休みがなく、将来を考えるスタートラインにすら立てなかった
- 外の世界に出たことで、橋本さんは自分の居場所と価値に気づいた
- アイドルの強みは見た目ではなく、努力する姿や心をつかむ力にある
- 熱意は活動量で可視化され、それはアイドルもビジネスも共通する
- 強みが見つからないのは、環境が合っていないだけの可能性がある
